老人会の連絡をどうするかという話は、たいてい行き詰まったところから始まります。電話連絡網は不在が続いて途中で止まり、案内のはがきは印刷と切手で費用がかさみ、家族のスマートフォンに転送してもらっている会員がいる一方で、そもそも携帯電話を持っていない会員もいる。役員会で「連絡手段を見直そう」と話が出ても、全員が同じ道具を使える見込みがないため、結論が出ないまま次の総会に持ち越されます。この記事では、老人会の連絡手段を決めるときに何をどの順番で判断すればよいのかを、決める立場の人が使える形で整理します。先に結論を書くと、老人会の連絡は「全員を1つの道具にそろえる」ことを目標にすると必ず失敗します。うまくいっている会は、情報を置く場所を1か所にまとめたうえで、そこから電話と紙へ流す出口を残しています。
老人会の連絡が難しくなった本当の理由
老人会の連絡がうまく回らなくなった原因を、会員の高齢化だけに求めると打つ手がなくなります。実際には、受け取り手の事情と、届ける側の事情の両方が同時に変わったことが効いています。
会員のあいだで通信手段の差が大きく開いた
いまの老人会は、通信手段の面で見ると1つの集団ではありません。スマートフォンを使いこなして写真をやり取りする会員と、固定電話しか持たない会員が、同じ名簿に並んでいます。この差は年齢が5歳違うだけでも大きく変わります。
令和4年の通信利用動向調査によれば、インターネットを利用している個人の割合は、70代で65.5%、80歳以上では33.2%だった。年齢層が上がるにつれて利用率は下がり、80歳以上ではおよそ3人に2人が利用していないことになる。 出典: soumu.go.jp
老人会の会員構成を思い浮かべると、この数字の意味がはっきりします。会員の中心が70代前半であれば、3人に2人には電子的な連絡が届く見込みがあります。しかし85歳以上の会員が2割を占める会では、その2割はほぼ全員が電話か紙でしか受け取れません。つまり老人会の連絡手段を決めるという作業は、平均値で決める話ではなく、届かない人が何人いてその人たちにどう届けるかを決める話です。
さらにやっかいなのは、この構成が毎年変わることです。新しく入ってくる会員は前の年より通信手段に慣れている傾向があり、長く在籍している会員は年齢が上がるほど道具を減らしていきます。「今年は電話が要る人が12人」だったものが、翌年には8人になり、その次の年には新たに入会した人の事情で10人に戻る。固定した仕組みではなく、人数が増減しても壊れない形が必要になります。
役員のなり手が減り、連絡そのものが負担になっている
老人会の役員は、会員の中から選ばれます。つまり役員自身も高齢です。ここに、連絡作業の負担が集中する構造があります。電話連絡網を1回まわすと、会長や班長が10件前後に電話をかけ、つながらなかった相手には時間をおいてかけ直します。1回の連絡で2時間以上を使うことも珍しくありません。月に2回の行事があれば、それだけで月4時間から5時間が連絡だけに消えます。
この負担は、次の役員のなり手が減る直接の原因になります。相談の場でしばしば出るのは「役員をやると連絡が大変だと知られているから、誰も引き受けてくれない」という話です。連絡手段の見直しは、会員の利便性の話に見えて、実際には役員のなり手を確保するための話でもあります。ここを役員会で共有しておくと、議論が「新しいものは面倒だ」という方向に流れにくくなります。
紙と郵送の費用が会計を圧迫している
はがきや封書で案内を出している会では、費用が静かに効いてきます。会員80人にはがきを1回出すと、郵便料金だけで1万円を超えます。年に6回出せば6万円以上で、これに印刷代と封入の手間が乗ります。年会費が1,000円前後の会にとって、この金額は活動費を大きく削ります。
ただし、費用だけを理由に紙をやめると失敗します。紙をやめた結果として参加者が減れば、削った費用よりも失うものが大きくなります。正しい進め方は、紙をやめることではなく、紙で出す通数を減らすことです。80人全員に出していたものを、電子で受け取れる人を除いた25人にだけ出す。これだけで費用は3分の1以下になり、届かない人は1人も出ません。
手段を選ぶ前に、連絡の中身を4つに分ける
老人会の連絡手段が決まらない会には、共通した特徴があります。すべての連絡を同じ重さで扱っていることです。「全員に必ず届けなければならない連絡」と「知りたい人が見にくればよい情報」を同じ経路で流そうとするから、どの道具を選んでも不満が残ります。まず連絡の中身を分類してください。
全員に必ず届かないと困る連絡
行事の中止、日程の変更、会費の集金、緊急時の安否確認がここに入ります。この種類の連絡は、届いていない人が1人でもいると事故になります。訃報や葬儀の連絡もここです。
この分類の連絡だけは、電子的な手段を主にしてはいけません。理由は単純で、受け取れない会員が確実に存在するからです。ここは電話と紙を残し、電子的な手段は「電話をかける件数を減らすための下ごしらえ」として使います。具体的には、電子で受け取れる会員には先に流し、そのうえで残った会員にだけ電話をかける。これで電話の件数は半分以下になります。
参加する人にだけ届けばよい連絡
日帰り旅行の集合時間、グラウンドゴルフの雨天中止、カラオケ大会の順番決め。参加を申し込んだ人だけが関係する連絡です。この分類は、参加者の中で通信手段がそろっている場合が多いため、電子的な手段だけで完結させやすくなります。
ここで重要なのは、参加しない会員に流さないことです。関係のない連絡が届き続けると、会員は通知を見なくなります。老人会に限らず、連絡が届かなくなる最大の原因は「関係のない連絡が多すぎて見なくなること」です。行事ごとに相手を分けられる仕組みかどうかは、道具を選ぶときの重要な判断材料になります。
見たい人が、見たいときに見にくればよい情報
年間予定表、会則、役員名簿、活動の写真、月々のたより。これらは、届ける必要がありません。置いておく場所があればよい情報です。
老人会でこれを電話や紙で配ろうとすると、負担が跳ね上がります。年間予定表を配ったあとに1か所だけ日程が変わると、また全員に配り直すことになります。置く場所を1か所決めて、そこを直せば全員が最新版を見られる形にすると、この種類の作業はほぼ消えます。紙で持っておきたい会員には、置き場所から印刷して渡せばよく、全員分を印刷する必要はなくなります。
返事をもらう必要がある連絡
出欠の確認、弁当の数、送迎の要不要、会費の納入状況。老人会の役員がもっとも時間を取られているのはここです。
返事を集める作業は、電話だと1件ずつ聞いて紙に書き写すことになり、書き間違いも起きます。集計の途中で「あの人はどっちだったか」が分からなくなり、もう一度かけ直す。この往復が、行事1回あたり数時間を消していきます。出欠を電子的に集められる仕組みがあると、返事をした人の分は自動で集計され、返事がない人だけが一覧に残ります。役員は残った人にだけ電話をかければよくなり、集計表を作る作業がなくなります。老人会の連絡手段を見直すとき、いちばん効果が出るのがこの分類です。
手段ごとの向き不向きを、正直に整理する
どの手段にも、向いている連絡と向いていない連絡があります。老人会では、1つに絞るのではなく組み合わせることが前提になります。
| 手段 | 向いている連絡 | 弱いところ |
|---|---|---|
| 電話連絡網 | 緊急・訃報・必ず届けたい連絡 | 役員の負担が大きい。不在で止まる。伝言が変わる |
| 回覧板・掲示 | 日常のお知らせ、予定表 | 回るのが遅い。一人暮らしの会員に届きにくい |
| はがき・郵送 | 総会案内、会費の請求 | 費用がかさむ。変更のたびに出し直し |
| 個別のショートメール | 短い連絡、電話の補助 | 一斉送信が手間。返事の集計ができない |
| LINEグループ | 参加者どうしの短いやりとり | 過去の連絡が流れる。読んでいない人が分からない |
| 団体向けの連絡アプリ | 予定・出欠・掲示・写真をまとめて置く | 使えない会員が残る前提で設計する必要がある |
電話連絡網は、やめずに軽くする
老人会の電話連絡網をやめようとすると、たいてい反対が出ます。反対する人が守ろうとしているのは、電話そのものではなく「声で無事を確認できること」です。一人暮らしの会員が多い会では、連絡網が安否確認を兼ねています。この機能は、電子的な手段では置き換えられません。
したがって、電話連絡網は残します。変えるのは、かける件数と、かけるきっかけです。全員に順番にかける形から、電子で受け取れなかった人にだけかける形に変えると、件数は半分から3分の1になります。安否確認としての価値は、対象が減っても失われません。むしろ、本当に電話が必要な会員に時間をかけられるようになります。
数珠つなぎの連絡網は、この機会にやめてください。1人が不在だとその先が全部止まる形は、老人会でもっとも事故が起きやすい仕組みです。班長が班員に直接かける形に変えるだけで、止まる範囲は1件に限定されます。
紙は「全員分」から「必要な人の分」へ
回覧板やはがきをやめる必要はありません。減らすのは通数です。会員名簿に「電子で受け取れる」「紙が必要」の欄を1つ足し、紙が必要な人にだけ出す。この欄は毎年の会費徴収のときに聞き直せば、更新の手間もほとんどかかりません。
紙で出す場合も、内容を毎回作り直さないことが大事です。置き場所に最新版があれば、それを印刷して渡すだけで済みます。会報の原稿を役員が手書きで清書していた会では、この工程が消えるだけで作業が半分になったという話も聞きます。
LINEグループが老人会で行き詰まりやすい理由
LINEグループを使っている老人会は多くあります。手軽に始められ、家族との連絡ですでに使っている会員も多いため、入口としては現実的です。ただし、会の連絡をこれ一本でまとめようとすると、いくつかの壁に当たります。
第一に、過去の連絡がさかのぼれません。3週間前に流した集合場所を探すには、大量のやりとりを上にたどる必要があります。年配の会員にとって、この操作は負担が大きく、結局「もう一度教えて」という電話が役員にかかってきます。第二に、誰が読んでいないかが分かりません。既読の数は出ても、誰が読んでいないかは分からないため、確認のためにまた電話をかけることになります。第三に、退会や役員交代のときに、グループの管理を移す作業が発生します。作った人が会をやめると、管理者がいないグループが残ります。
こうした違いを機能ごとに並べて確認したい場合は、LINEグループとの比較に、連絡の流れ方や過去の情報の追いやすさを軸にした整理があります。いま使っているものをやめる前提ではなく、どの連絡をどちらに置くかを決めるための材料として読むと役に立ちます。参加者を電話番号でつながっていない相手にも広げたい場合は、LINEオープンチャットとの比較に、参加のしかたと見られる範囲の違いがまとまっています。老人会では、会員以外に見られない形を保てるかどうかが判断の分かれ目になります。
掲示板型の道具は、老人会と相性がよい
老人会の連絡で効くのは、流れていくやりとりではなく、置いておける掲示です。行事の案内が上から順に流れず、決まった場所にとどまっていること。予定表がいつでも同じ場所にあること。この2つがあるだけで、「もう一度教えて」の電話が大きく減ります。
掲示と予定を中心に据えた道具の考え方は、BANDとの比較で確認できます。掲示板と予定表を組み合わせる形は、老人会のように行事が定期的にある集まりと相性がよく、比較の観点も整理されています。写真を中心に交流する形が向いているかどうかを検討するなら、Facebookグループとの比較に、公開範囲と参加の手続きの違いがまとまっています。老人会では、会員登録の手続きが増えるほど参加率が下がるため、ここは慎重に見てください。若い世代の集まりでよく使われる道具との違いを知りたい場合は、Discordとの比較が参考になりますが、老人会の会員構成では操作の複雑さが壁になりやすい点も含めて書かれています。
スマホを持たない会員を残したまま組む、二層構造
老人会の連絡を組み直すときの基本形は、二層構造です。上の層に「情報を置く場所」を1つ作り、下の層に「電話と紙という出口」を残します。全員を上の層に上げようとしないことが、この形の要点です。
上の層は、役員と受け取れる会員だけで始める
まず、情報を置く場所を1か所決めます。年間予定、行事の案内、会報、写真、会則。これらを全部そこに置きます。この時点で参加するのは、役員と、電子的に受け取れる会員だけで構いません。会員80人の会なら、最初は30人程度で始まることが多く、それで問題ありません。
ここで大事なのは、置き場所を1つに絞ることです。予定はここ、写真はあちら、会報は別の場所、という形にすると、役員自身が迷います。老人会のように役員が毎年代わる組織では、置き場所が複数あることが、そのまま引き継ぎの失敗につながります。
上の層に置いた情報は、会員以外は見られない状態にしておいてください。老人会の会報には、体調を崩した会員の見舞いの話や、住所を含む連絡先が載ることがあります。誰でも検索でたどり着ける場所に置くと、後から取り返しがつきません。
下の層は、電話と紙をそのまま残す
上の層に参加していない会員には、これまで通り電話と紙で届けます。変わるのは、役員がゼロから作り直す必要がなくなることです。上の層に置いた案内をそのまま印刷して渡し、電話では要点だけを伝える。作業の起点が1つになるため、内容の食い違いが起きません。
老人会でよく起きる事故に、「電話で伝えた集合時間と、はがきに書いた集合時間が違う」というものがあります。原因は、連絡の元になる情報が複数の場所にあることです。上の層を1か所にすると、この種の食い違いは構造的に起きなくなります。
代理で見る人を決めておく
スマートフォンを持たない会員のうち、同居の家族が使っている場合があります。この会員については、家族に代理で見てもらう形を選べることがあります。ただし、これを役員から強く勧めることはしないでください。家族に負担をかけたくないと考える会員は多く、断りにくい形で頼むと会そのものから距離を置く原因になります。
現実的な進め方は、会費徴収や総会のときに「家族の方に見てもらう形も選べます」と一言添えて、選ぶかどうかは本人に任せることです。選ばなかった人には、これまで通り電話と紙で届ける。この姿勢を最初に示しておくと、新しい仕組みへの反発が出にくくなります。
名簿と写真の扱いを、道具を決める前に決める
老人会は、個人情報を多く抱える組織です。住所、電話番号、生年月日、緊急連絡先、場合によっては持病や介護の状況まで役員が把握していることもあります。連絡手段を変えるときは、この情報をどこに置くかを先に決めてください。
名簿は、見られる範囲を分ける
名簿を電子化するときに起きやすい失敗は、全員が全員の連絡先を見られる状態にしてしまうことです。老人会の会員の中には、他の会員に電話番号を知られたくない人がいます。これは仲が悪いという話ではなく、勧誘や訪問販売を警戒する当然の感覚です。
役員だけが見られる範囲と、会員全員が見られる範囲を分けられる仕組みを選んでください。分けられない道具しかない場合は、名簿は電子化せず、これまで通り紙で役員が管理する形のほうが安全です。連絡手段を電子にすることと、名簿を電子にすることは別の判断であり、同時に進める必要はありません。
団体の名簿と個人情報の扱いは、老人会に限らずどの集まりでも共通の論点になります。運用上の注意点をまとめて確認したい場合はよくある質問に、名簿の管理範囲や退会した人の情報の扱いについての説明があります。役員会の前に目を通しておくと、その場で出る質問の多くに答えられます。
写真は、置き場所と申し出の窓口を先に決める
老人会の活動写真は、会の記録として価値がありますが、扱いを間違えると信頼を失います。旅行や食事会の写真には、本人が見られたくない場面が写っていることがあります。
多くの会が取っている運用は、次の3つです。第一に、誰でも見られる場所には置かず、参加している会員だけが見られる場所に置くこと。第二に、撮影する前に「会の記録や会報に使うことがあります」と一言伝えること。第三に、載せてほしくない人の申し出を受ける窓口を役員の中に1人決めておくことです。この3つを総会で確認して議事録に残しておけば、後から問題になったときに会として説明ができます。
法律上どこまでが許されるかを役員が断定するのは避けてください。判断が難しい場合は、載せないほうを選ぶ。老人会の写真は記録としての性格が強く、無理に公開範囲を広げる必要はありません。
役員が毎年代わっても、連絡が続く形にする
老人会の連絡手段の見直しで、いちばん軽視されがちなのが引き継ぎです。役員の任期が1年から2年の会では、仕組みを作った人が翌年にはいなくなります。
引き継ぐものを1つに減らす
いま引き継いでいるものを数えてみてください。名簿の紙、会報のデータが入ったUSBメモリ、連絡網の一覧表、行事のグループトーク、会計の帳簿、写真の入ったカメラ。これが5つも6つもある会では、引き継ぎのたびに何かが失われます。
情報を置く場所を1か所にまとめると、引き継ぐものは「その場所を管理する権限」だけになります。過去の連絡も、去年の行事の案内も、そこに残っています。新しい役員は前年の記録を見ながら同じ行事を準備できるため、「去年どうやったか分からない」という状態が消えます。老人会のように毎年ほぼ同じ行事を繰り返す組織では、この効果がとくに大きく出ます。
管理できる人を必ず2人以上にする
管理者が1人だけの状態は、老人会ではとくに危険です。会長が入院したり、急に体調を崩したりする可能性が、他の団体より高いためです。会長と書記、あるいは会長と会計というように、役職で管理者を2人以上決めてください。個人の判断で誰かに任せるのではなく、規約や役員会の決定として役職に紐づけておくと、交代のたびに考え直す必要がなくなります。
個人のスマートフォンの中だけに会の情報がある状態は、必ず解消してください。その人が会をやめた時点で、写真も連絡先も一緒に消えます。ある老人会では、長年写真を撮っていた会員が転居した際に、過去10年分の活動記録が会に1枚も残らなかったという話があります。
切り替えの進め方は、3か月を目安に段階を踏む
老人会の連絡手段を変えるとき、一度に全部を切り替えると必ず混乱します。段階を踏んでください。
1か月目は、役員だけで使う
最初の1か月は、役員だけで情報を置く場所を使います。役員会の日程、行事の準備の相談、資料の置き場所。会員には何も知らせません。この期間の目的は、役員自身が操作に慣れることと、会員から質問が来たときに答えられる状態を作ることです。
役員が操作に自信がないまま会員に広げると、質問に答えられず「やっぱり難しい」という評価が固まります。老人会では、最初についた評価を覆すのに何年もかかります。ここは急がないでください。
2か月目は、希望する会員だけに広げる
2か月目に、会員へ案内します。ここで全員に参加を求めないことが重要です。「使ってみたい方はどうぞ」という形で募り、参加しない人には従来通り電話と紙で届けることを最初に明言します。この一言があるかどうかで、反対意見の量がまったく違います。
参加を希望した会員には、役員が対面で設定を手伝う時間を作ってください。集会所で30分の時間を取り、その場で終わらせる。説明書を配って各自でやってもらう形は、老人会ではほぼ機能しません。新しいIDやパスワードを増やさずに参加できる仕組みかどうかも、この場で効いてきます。覚えるものが増えるほど、途中で止まる人が増えます。
3か月目は、両方を並行して流す
3か月目は、同じ連絡を両方の経路で流します。電子でも流し、電話と紙でも流す。役員の手間は一時的に増えますが、この期間があることで「届かなかった」という事故を防げます。
3か月が終わった時点で、電子で受け取れている会員の割合を数えてください。4割を超えていれば、電話の件数はすでに半分近くまで減っています。2割にとどまっている場合は、操作を手伝う機会が足りていない可能性が高いため、もう一度対面の時間を作ります。ここで数を見ずに感覚で判断すると、役員会の議論が印象論になります。
老人会でとくに起きやすい5つの失敗
同じつまずき方が繰り返されています。先に知っておくだけで避けられます。
全員参加を条件にしてしまう
「全員が使えるようになったら切り替える」という条件を付けると、切り替えは永久に来ません。老人会では、通信手段を持たない会員がゼロになることはないからです。参加率が3割でも、その3割への電話が不要になれば役員の負担は減ります。全員参加は目標にせず、届かない人への出口を確保することを条件にしてください。
紙と電話を同時にやめてしまう
費用や手間を理由に、切り替えと同時に紙をやめる会があります。これは老人会でもっとも危険な進め方です。届かなくなった会員は、連絡が来ないまま行事の日を迎え、次から参加しなくなります。参加者が減った原因が連絡手段の変更だと分かるころには、戻すのが難しくなっています。紙と電話は、参加率を見ながら少しずつ減らすものであって、いっぺんにやめるものではありません。
導入の説明で機能の話ばかりする
会員向けの説明で操作方法を細かく話すと、その場で拒否感が生まれます。伝えるべきなのは、その人にとって何が変わるかです。「行事の予定がいつでも同じ場所で見られます」「集合時間を忘れても、電話しなくても確認できます」という説明のほうが、はるかに伝わります。操作は、必要になったときに1つずつ覚えれば足ります。
連絡の量が増えてしまう
新しい仕組みを入れると、役員が張り切って連絡を増やすことがあります。これは逆効果です。連絡が増えるほど、会員は見なくなります。老人会で流す連絡は、これまで電話と紙で流していた回数と同じか、それより少ない程度が適量です。日常の雑談は別の場所に置き、会の連絡と混ぜないでください。
役員が代わるときに説明を残さない
仕組みを作った役員が、翌年の役員に口頭で説明して終わる会が多くあります。1年経つと、細かい手順は本人も忘れています。誰がどの権限を持っているか、どこに何を置くか、紙が必要な会員は誰か。この3点だけでも紙1枚にまとめて、会の記録として残してください。これがあるかどうかで、3年後に仕組みが残っているかが決まります。
集まりの種類ごとに、判断の重心がどう変わるか
老人会の連絡手段を決めるとき、他の集まりの組み方を見ると判断が早くなります。同じ「集まりの連絡」でも、重心が置かれる場所は種類によって違い、その違いを知ると自分の会に必要な要素が絞り込めます。
老人会にいちばん近いのは町内会です。世帯単位で連絡し、高齢の会員が多く、役員が毎年代わるという条件がほぼ重なります。回覧板や班単位の連絡をどう電子に移すかという実際の流れは町内会での使われかたにまとまっており、老人会でもそのまま応用できます。違いは、町内会が世帯単位であるのに対し、老人会は個人単位である点です。名簿の作り方だけは、老人会のほうが細かくなります。
出欠の集計に重心がある集まりの例としては、サークルでの使われかたが参考になります。毎回の参加者が変わる活動で、返事を集める作業をどう減らすかという観点が中心にあり、老人会の日帰り旅行やグラウンドゴルフの出欠管理と同じ構造です。老人会の役員がもっとも時間を取られているのがこの部分であるため、ここだけ先に切り替えるという進め方も現実的です。
役員が毎年入れ替わる組織での引き継ぎに重心を置いた例はPTAでの使われかたにあります。任期が1年で、前任者が抜けたあとに情報が残らないという問題への対処が中心で、老人会の役員交代とほぼ同じ課題を扱っています。定期的に集まる場での連絡と、休んだ人への共有を分けて考える形は教室での使われかたに、学年や班をまたいだ一斉連絡の組み方は学校での使われかたにまとまっています。老人会は、この2つの性格を同時に持っています。定例の活動があり、かつ班や地区をまたいだ一斉連絡も必要になるためです。
これらを並べると、老人会の連絡手段を決めるときの判断の重心がはっきりします。重いのは、機能の多さではありません。届かない人への出口を残せるか、返事を集める作業が減るか、役員が代わっても続くか。この3点だけです。逆に言えば、この3点を満たしていれば、道具の細かい違いは会の運営にほとんど影響しません。
最後に、見直しに着手すべきかどうかの目安を1つ挙げておきます。連絡に関する作業で、役員1人が月に3時間以上を使っているなら、見直したほうが手間の総量は減ります。年間では36時間になり、これは行事を1つ増やせるだけの時間です。逆に、月1時間で回っているなら、いまの形を無理に変える必要はありません。老人会の連絡手段を決めるという作業は、新しい道具を入れる話ではなく、誰にどれだけ負担が集まっているかを数えて、届かない人への出口を確保する作業です。そこから始めれば、どの選択をしても大きくは外しません。
Q1. スマートフォンを持たない会員が多い老人会でも、連絡をまとめられますか?
まとめられます。ただし全員を同じ道具にそろえる形ではなく、情報を置く場所を1か所にしたうえで、そこから電話と紙へ流す出口を残す形にします。役員が連絡の元を1か所から作れるようになるだけで、伝え間違いが消え、電話をかける件数も電子で受け取れる人の分だけ減ります。参加率が3割でも効果は出ます。
Q2. 電話連絡網はやめたほうがよいですか?
やめないでください。一人暮らしの会員が多い会では、電話連絡網が安否確認を兼ねています。変えるのは件数とかけ方です。電子で受け取れなかった人にだけかける形にすれば件数は半分以下になります。あわせて、1人が不在だと先が止まる数珠つなぎの形はやめ、班長が班員に直接かける形に変えてください。
Q3. 会員に説明するとき、何から話せばよいですか?
操作方法ではなく、その人にとって何が変わるかから話してください。予定がいつでも同じ場所で見られること、集合時間を忘れても確認できること。あわせて「使わない方にはこれまで通り電話と紙で届けます」と最初に明言すると、反対意見がほとんど出なくなります。設定は集会所で30分ほど時間を取り、対面で手伝うと定着します。
Q4. 活動写真を会員で共有したいのですが、注意点はありますか?
誰でも見られる場所ではなく、参加している会員だけが見られる場所に置く運用が多く取られています。撮影前に会の記録や会報に使う場合があることを伝え、載せてほしくない人の申し出を受ける窓口を役員の中に1人決めておいてください。この取り決めを総会で確認し議事録に残しておくと、後から問題になったときに会として説明できます。
