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町内会の安否確認をどう取るか|返事が来ない人をどう扱うか

2026年9月10日 ・ Tsudoo編集部

町内会の安否確認でつまずく場所は、ほぼ1点に集約されます。返事が来ない世帯が出たときに、次に何をするかが決まっていないことです。訓練の当日に「◯◯さんから返信がありません」という状態になり、役員が現場で判断を迫られ、結局は誰かが走って見に行く。この繰り返しになっている会は珍しくありません。ここでは、返事が来ないという状態を異常として扱わない設計に組み替えたうえで、段階の分け方と名簿の扱いを決める順番で整理します。

町内会の安否確認は問い合わせでは成立しない

会社の安否確認や、部活の連絡網と決定的に違うのは、相手が構成員ではなく住民だという点です。会社なら、安否確認のメールに答えることが業務です。部活なら、顧問からの連絡に返事をすることが前提として共有されています。町内会にはその前提がありません。返事をしない自由が住民の側にあり、しかも加入していない世帯が同じ区域に住んでいます。

この違いを踏まえずに、会社の仕組みをそのまま持ち込むと必ず失敗します。全世帯に「無事なら返信してください」と一斉に投げる方式は、返信率が上がりません。旅行に出ている、入院している、携帯電話を持っていない、そもそも通知に気付いていない。返事がない理由の大半は無事です。それでも安否確認の建前上、返事がない世帯は確認対象として残ります。200世帯の町内会で返信率が6割なら、80世帯を歩いて確かめることになります。班長が10人いても1人あたり8軒です。災害の直後にこの人数を動かす計画は、現実的とは言えません。

そこで発想を入れ替えます。安否確認は、こちらから問い合わせて答えを集める作業ではなく、住民の側から無事を出してもらい、出ていない家だけを見に行く作業として組みます。この形にすると、確認対象は「返事がない世帯」から「無事の表示がない世帯」に変わります。数の上では同じに見えますが、住民の行動が「返信する」から「玄関に何かを出す」に変わることで、参加のしやすさがまるで違ってきます。停電していても、携帯電話が使えなくても、出せます。

自主防災組織の位置づけを確認しておくと、この方式が主流である理由が分かります。消防庁の手引きは、地域が孤立した場合に共助が最も重要な行動になるとしたうえで、実際の災害での例を挙げています。

平成 16 年の新潟県中越地震における旧山古志村(現長岡市)で、発災当日に住民すべての安否を確認できたことや、平成 26 年の長野県北部を震源とする地震における白馬村で、発災後、救助活動、避難誘導を実施し、数時間で全世帯の安否を確認できたことは、こうした「共助」の最たる例といえる。 出典: fdma.go.jp

いずれも通信の復旧を待って集計した話ではなく、地域の人が地域を回って確かめた話です。安否確認の骨格は歩くことにあり、道具はその歩く量を減らすために使う、という順番になります。

3つの場面を混ぜない

町内会で安否確認と呼ばれているものには、性質の違う3つが混ざっています。混ざったまま議論すると、話が噛み合いません。

1つ目は、災害の直後に生存を確かめる場面です。目的は、下敷きになっている人や逃げ遅れている人を早く見つけることで、求められるのは速さです。丁寧さは要りません。

2つ目は、平常時に高齢の単身世帯を見守る場面です。目的は、体調の変化や孤立に気付くことで、求められるのは継続です。速さは要りません。週に1回の声かけでも、続いていれば機能します。

3つ目は、訓練として行う場面です。目的は、1つ目の手順が実際に動くかを確かめることで、求められるのは記録です。何分かかったか、どこで止まったか、何世帯漏れたかを残さない訓練は、やった事実だけが残ります。

この3つは、使う名簿も、動かす人も、判断の基準も違います。平常時の見守りで「3日連絡が取れない」は異常ですが、災害直後の「3時間返事がない」は異常とは限りません。逆に、災害直後に丁寧な聞き取りを始めると時間が足りません。会則や防災計画を書くときは、どの場面の話をしているのかを最初の一文で明示してください。

災害に備える活動全般をどこまで町内会が担うかは、町内会での使われかたにある行事と連絡の分け方が参考になります。安否確認だけを切り離して精緻に作り込んでも、日常の連絡が回っていない会では当日に動きません。

無事を出してもらう方式の作り方

住民の側から無事を出してもらう方式で、広く使われているのが玄関先の掲示です。消防庁の手引きには、団地の自治会と管理組合が連携した取り組みとして、次のような例が載っています。マグネットシートで作った安否確認のステッカーを全戸に配り、居住者全員のネームプレートも作って防災訓練や地域活動のときに身につけてもらう、という手順です。無事な世帯が玄関にステッカーを出し、出ていない家だけを回る形になります。

この方式を自分の会で作るときに決めることは4つあります。

・何を出すか(マグネット、札、タオル、旗のいずれか) ・どこに出すか(玄関ドアの外側、門扉、道路から見える窓) ・いつ出すか(震度いくつ以上で自動的に、あるいは放送を聞いてから) ・いつ引っ込めるか(確認が終わった合図をどう返すか)

3つ目が抜けている会が多く、ここが抜けると出す人と出さない人に分かれます。「震度5弱以上の地震が起きたら、自分の判断で出す」と決めておけば、役員からの合図を待たずに動けます。通信が止まっていても機能する条件にしておくことが要点です。

4つ目も忘れがちです。回り終わった班長が確認済みを記録する手段がないと、二重に回ることになります。ステッカーを裏返す、確認済みのシールを貼る、といった簡単な合図で足ります。

出すものの色は、道路から見て判別できるものを選びます。夜間や停電を考えると、反射材が入っているものが有利です。黄色は視認性が高い一方で、地域によっては別の意味で使われていることがあるので、市区町村や消防団の取り決めと重ならないかを先に確かめてください。

そして、出せない人がいることを前提に組みます。寝たきりの方、認知症のある方、ひとりで玄関まで出られない方は、この方式では無事を出せません。ここが次の論点につながります。

要配慮者の名簿をどう扱うか

出せない人を把握するには名簿が要ります。市区町村は避難行動要支援者の名簿を作っており、平常時に自主防災組織や町内会へ提供する仕組みがありますが、提供には本人の同意が前提となる扱いが基本です。同意していない人の情報は、災害が発生した時点では同意なしで提供できる場合がありますが、平常時には来ません。つまり、町内会の手元にある名簿は、常に実際の対象者より少ないと考えて計画を立てる必要があります。

名簿を受け取るだけでなく、支援の中身を詰める作業への関与も求められています。消防庁の手引きは、災害対策基本法の改正を受けて自主防災組織が担う役割を、次のように整理しています。

個別避難計画の作成にあたっては、避難行動要支援者との打合せや、避難行動要支援者の支援にあたる各団体間の役割分担の調整などで市町村から協力を求められることになるので、自主防災組織においては、市町村や他の団体、ケアマネジャーなどの関係者と連携して、避難行動要支援者を個別に訪問し、本人と打合せを行った上で、災害時に「誰が、どこに、どのように避難支援するか」、つまり情報伝達の方法、避難先、高齢者等避難の発令など避難のタイミング、避難先までの経路・交通手段、支援する人などを整理しておく必要がある。 出典: fdma.go.jp

つまり、町内会が持つべきなのは名前の一覧ではなく、その人をどう支えるかを書いた計画です。一覧だけを預かっても、当日に何をするかが決まっていなければ動けません。市区町村から協力を求められた段階で、この作成に関わっておくと、後から独自に台帳を作り直す手間が省けます。

なお、町内会が独自に台帳を作る場合、非営利の団体であっても個人情報を扱う事業者にあたります。取得のときに利用目的を明示すること、本人以外へ提供する場合には原則として本人の同意を得ることが求められる点は、他の名簿と変わりません。安否確認の台帳は、班長に配って初めて使えるものです。つまり、作った時点で本人以外への提供が発生します。取得のときに「災害時の安否確認のために班長へ提供する」と利用目的を書いて同意をもらっておかないと、いざというときに配れません。ここを後から取り直すのは大変なので、加入時の書式と、毎年の名簿更新の書式に、この一文を最初から入れておいてください。

保管の仕方も決めます。実務で採られているのは、封をした一覧を班長に預け、開けてよい条件を明記し、年度末に未開封のまま回収する形です。開封した場合は理由を書いて返す運用にすると、使われた記録が残ります。班長の交代時に回収し忘れると、名簿が地域に散ります。回収の期日を、当番や役員の引き継ぎと同じ日に固定しておくのが安全です。

情報を減らす工夫も効きます。安否確認に必要なのは、住所と、支援が要るかどうかと、緊急の連絡先です。生年月日や病名まで抱え込むと、保管の負担だけが増えます。台帳に載せる項目を先に絞ってください。

一次から三次までの段階を分ける

安否確認は、1回で終わる作業ではありません。段階に分けて、それぞれの担当と終わりの条件を決めます。

一次は、住民が自分で無事を示す段階です。掲示物を出す、あるいは会の連絡網に無事と入れる。ここで大半の世帯が片付きます。終わりの条件は時間で切ります。地震の発生から30分など、あらかじめ決めておきます。

二次は、班長が歩いて確かめる段階です。対象は、掲示物が出ていない世帯と、台帳で支援が要るとされている世帯です。ここで初めて人が動きます。歩く順路は、要支援の世帯を先に回る順に組んでおきます。地図に順路を書いた紙を、台帳と一緒に預けておくと迷いません。終わりの条件は、対象の世帯をすべて見終えることです。

三次は、二次でも分からなかった世帯を集約する段階です。不在なのか、応答がないのか、立ち入れないのかを区別して、町内会本部でまとめます。ここから先は町内会の手に負えない領域で、消防や市区町村へ引き継ぐ判断になります。三次で大事なのは、判断ではなく整理です。何世帯が未確認で、その住所がどこかを紙1枚にまとめて渡せる状態にしておけば、受け取る側が動けます。

段階を分ける利点は、返事が来ない人の扱いが自動で決まることです。一次で返事がない世帯は異常ではなく、単に二次の対象になっただけです。役員がその場で判断する必要がなくなり、「見に行くかどうか」を議論する時間が消えます。訓練の当日に手が止まるのは、この段階分けがないためです。

自主防災組織と町内会の関係を先に整理する

安否確認の手順を書き始めると、途中で必ず組織の話に突き当たります。町内会とは別に自主防災組織があり、防災部があり、消防団の分団があり、それぞれに名簿と連絡網が存在する。この状態で手順書を作ると、誰が号令をかけるのかが曖昧なまま完成します。

整理の仕方は単純で、平常時と災害時で担当を分けます。平常時に名簿を更新し、掲示物を配り、訓練を計画するのは町内会の事務です。災害時に一次の締め切りを判断し、二次の順路を割り当て、三次を市区町村へ渡すのは自主防災組織の役割になります。この線を引いておくと、名簿の管理責任と、当日の指揮が別の人になっても混乱しません。

問題は、兼務している場合です。多くの町内会では、防災部長が会の役員を兼ねており、実質は同じ人です。そのときこそ、役割の名前で手順書を書いてください。「防災部長が」ではなく「自主防災組織の本部長が」と書いておけば、翌年に別の人が就いたときに読み替えができます。個人名で書かれた手順書は、その人が辞めた瞬間に使えなくなります。

消防庁の手引きは、自主防災組織が地域における共助の中核をなす組織であるとしたうえで、自治会など生活環境を共有している住民によって主体的に結成されることが望ましいとしています。つまり、町内会と自主防災組織を別の団体として厳密に分ける必要はありません。分けるべきは団体ではなく、平常時の事務と災害時の指揮という2つの仕事です。

集合住宅が区域にあるときの分け方

戸建てだけの区域なら、掲示物の方式はそのまま機能します。区域内にマンションや団地がある場合は、追加で決めることが出てきます。

第1に、玄関が外から見えません。廊下側のドアに掲示物を出しても、道路からは見えず、階段を上らなければ確認できません。したがって集合住宅では、階段や棟の単位で確認を担当する人を置く形になります。消防庁の手引きに載っている団地の例でも、各棟の人数が多いことから縦階段ごとにグループを分け、防災用具の色を変えるという工夫が紹介されています。町内会の班の区切りとは別に、建物の構造に沿った区切りを持つのが実際的です。

第2に、管理組合や賃貸の管理会社が別に存在します。町内会が建物の中で活動できる範囲は、管理側の了解がなければ広がりません。掲示物を配ること、階段に確認担当を置くこと、共用部の掲示板を使うことは、事前に文書で合意しておいてください。災害の当日に交渉することはできません。

第3に、入居と退去が速く、名簿が追いつきません。戸建て中心の区域では数年に一度の更新で足りますが、賃貸の集合住宅では毎年入れ替わります。ここは名簿の精度を追わず、階段ごとの人数の概数と、支援が要る人がいるかどうかだけを押さえる形に割り切るほうが続きます。世帯名まで揃えようとして更新が止まり、結局どの年の情報かも分からない一覧が残っている例が多く見られます。

集計の様式を1枚に決めておく

安否確認の当日に手が止まるもう1つの原因が、様式のばらつきです。班ごとに違う紙で報告が上がってくると、本部で数える作業が発生します。様式は会で1枚に統一し、班長に配る台帳と同じ紙に印刷しておくのが確実です。

1枚に載せる項目は5つで足ります。班の名前、確認した人の名前、世帯ごとの住所または番号、状態の記号、備考です。状態は記号にします。文章で書かせると、書く時間がかかるうえ、集計のときに読み解く手間が生まれます。実務では、無事、不在、要支援、応答なし、立ち入れず、の5つに分けておけば足ります。

記号の意味は、紙の下端に必ず刷り込んでください。訓練から次の訓練まで1年空くため、記号の意味は忘れられます。台帳と様式が別の紙になっていると、片方だけ持って出てしまう事故も起きます。

集計する側の手順も、様式に書き込んでおきます。何時までに本部へ持ってくるか、持ってこられないときは誰に電話するか、集計が終わったら誰に渡すか。この3行が紙にあるだけで、本部での問い合わせが減ります。

紙の様式は、電子化した後も捨てないでください。一次の申告を連絡ツールで受けている会でも、二次の歩く作業は紙で記録するのが確実です。手袋をした手で、暗い場所で、雨の中で操作する前提を置くと、紙が最も速い場面が残ります。道具を入れることと、紙を全廃することは別の判断です。

通信が使える前提で組まない

安否確認をアプリで済ませたいという相談はよく寄せられますが、災害の直後は通信そのものが不安定です。基地局の停電、回線の混雑、端末の電池切れが同時に起きます。したがって、道具は一次の段階を軽くするために使い、二次と三次は紙と足で回る前提を崩さないのが原則です。

そのうえで、道具が効く場面ははっきりしています。1つは、平常時の見守りと訓練です。ここは通信が生きているので、集計の手間をそのまま減らせます。もう1つは、災害から数日たった局面です。避難所の開設状況、給水の場所、在宅で避難している世帯の困りごとといった情報は、時間とともに更新されます。紙の回覧では追いつきません。

総務省の報告書も、震災時に在宅で避難する住民どうしで安否の確認が行われた例を挙げて、緊急時における共助の場としての町内会の役割に触れています。在宅避難は避難所の名簿に載らないため、地域が把握していなければ誰からも見えません。ここは連絡の道具が実際に効く領域です。

道具を選ぶときの判断軸は、平常時に毎日使っているかどうかです。年に1回の訓練でしか開かないアプリは、当日に誰も入れません。パスワードを忘れ、機種変更で消え、そもそも入れたことを覚えていない。日常の行事案内や回覧をそこで回している会だけが、非常時にも使えます。この点はLINEオープンチャットとの比較BANDとの比較で、参加の手続きと再参加のしやすさの違いとして比べられます。参加のたびに手続きが要る仕組みは、緊急時に弱くなります。

電池の話も計画に入れてください。安否確認を担う班長の端末が最初に切れると、集計が止まります。乾電池式の充電器を防災倉庫に入れておく、紙の様式を必ず併用する、といった備えは、道具を導入した会ほど手薄になります。

訓練で測る3つの数字

訓練は、やったかどうかではなく、数字で残します。測る項目は3つで足ります。

1つ目は、一次が終わるまでの時間です。掲示物が出そろうまで何分かかったかを、班ごとに記録します。30分で切ると決めたなら、その時点で何割の世帯が出せていたかを数えます。

2つ目は、二次で歩いた世帯数と所要時間です。ここが計画の現実性を測る数字になります。1人の班長が回る世帯が15軒を超えていて、1軒あたり3分かかるなら、それだけで45分です。要支援の世帯で立ち止まれば倍になります。数字が出れば、班を分けるか、回る人を増やすかの判断ができます。

3つ目は、最後まで確認できなかった世帯数です。ここには、留守だった世帯と、そもそも接触の手段がない世帯が混ざります。後者は訓練でしか見つかりません。未加入で、掲示物も配っておらず、連絡先も知らない世帯は、災害時にも見つけられません。訓練の目的の半分は、この空白を数えることにあります。

記録は、次年度の担当が読む前提で書きます。何分かかったという数字だけでなく、どこで止まったかを1行添えてください。「集合場所の鍵を持っている人が不在で、名簿を出すのに12分かかった」といった記述が、翌年の改善点になります。

平常時の見守りと切り分ける

災害時の安否確認を整えると、平常時の見守りにも同じ仕組みを使いたくなります。ここは慎重に分けたほうが安全です。理由は2つあります。

1つは、平常時の見守りが個人の生活に踏み込む活動だからです。何日か姿を見ないという理由で家に入ることはできません。町内会ができるのは、気付いて、しかるべき窓口に伝えるところまでです。民生委員、地域包括支援センター、市区町村の高齢者福祉の担当。この3つの連絡先を、役員が誰でも取り出せる場所に置いておくことが実務の要点になります。

もう1つは、担い手が続かないからです。見守りは日常の活動なので、当番として組み込むと負担が積み上がります。無理のない形は、専用の活動を作らず、既存の接点に乗せることです。ごみ集積所の当番、回覧板の受け渡し、集金のときに一声かける。新しい仕事を増やさずに済みます。

この切り分けを文章にしておくと、会として引き受ける範囲が明確になります。範囲を書かないまま見守りを掲げると、何かあったときに町内会の責任だと言われかねません。できることとできないことを、会報に1度書いておいてください。

外から問い合わせが来たときの線引き

災害の後、町内会の役員のところには、地域の外から問い合わせが入ります。遠方に住む子どもから親の様子を尋ねる電話、勤務先から社員の安否を尋ねる連絡、報道機関からの取材。この扱いを決めていない会は、その場で役員が判断することになり、後から苦情が出ます。

原則は、集めた安否の情報は会の中で使うために集めたものであり、外部へ答える前提では取得していない、というところに置きます。取得のときに示した利用目的の範囲を超えるため、本人や家族の同意なしに第三者へ伝えることはできません。したがって、外からの問い合わせには「町内会からはお答えできません」と伝え、市区町村の災害対策本部や警察の窓口を案内する形になります。

ただし、機械的に断るだけでは角が立ちます。実務では、問い合わせを受けた事実と連絡先を記録し、可能であれば本人へ「ご家族から連絡がありました」と伝える橋渡しにとどめる形が取られています。情報を渡すのではなく、連絡が来ていることを本人に伝える。この一段を挟むだけで、断りながら役に立てます。

役員のあいだで文言を揃えておくことも要点です。誰が電話を取っても同じ答えになるように、断り方と案内先を1行ずつ書いた紙を、安否確認の様式と一緒に綴じておいてください。当日に文言を考える余裕はありません。会の中で流す情報についても、地図に世帯ごとの状態を書き込んだ資料は写真に撮られて広がりやすいため、扱う人と保管場所を最初に決めておくほうが安全です。

相談から見えている詰まりどころ

集まりの連絡をひとつにまとめる道具の使われ方を追っていくと、安否確認に関する相談は、災害の直後よりも、その手前の準備段階に集中しています。内訳はおおむね3つです。

最も多いのが、対象の線引きに関する相談です。加入していない世帯を含めるのか、集合住宅を1つの世帯として扱うのか、事業所はどうするのか。道具の側では、閲覧だけできる立場を用意して防災の案内だけを届け、会員向けの連絡と分ける運用が取られています。ただし、これは会の方針が決まっていて初めて設定できます。決まっていない会では、登録の作業が途中で止まります。

次に多いのが、誰が見られるかに関する相談です。安否の一覧は、住所と支援の要否が並んだ資料です。班長だけが見られる場所に置きたい、という要望が必ず出ます。会の全員が読める場所と、役員だけが読める場所を分けられるかどうかが、道具を選ぶときの実質的な条件になります。メンバー以外は見られないことに加えて、メンバーの中でも段を分けられるかどうかを確かめてください。この観点はDiscordとの比較Facebookグループとの比較で、公開範囲の刻み方の違いとして並べられます。

この段を分ける要望は、平常時にはほとんど出てきません。日常の行事案内を回している段階では全員が同じものを見ればよく、分ける必要がないためです。要望が出るのは、防災の計画を書き始めて、支援が要る人の一覧を誰に見せるかという段になってからです。したがって道具を選ぶ時点では見落とされやすく、導入から1年後に作り直す羽目になります。日常の連絡だけを基準に選ばず、いずれ扱う資料の中で最も慎重に扱うものを想定して決めてください。

3つ目は、訓練の集計に関する相談です。紙で集めた結果を集計するのに、訓練の当日より長い時間がかかっているという声が多く聞かれます。ここは道具で素直に短くできる部分で、一次の申告だけを電子化し、二次と三次は紙のまま残す折衷が現実的です。全部を切り替えようとして、高齢の会員が使えず頓挫する例が多いのは、この折衷を検討しないまま進めるためです。

まとめて言えば、安否確認で決めることは、道具の選定ではありません。無事を出してもらう形にするか、問い合わせる形にするか。段階をいくつに分け、それぞれ誰が担当するか。名簿に何を載せ、誰に預け、いつ回収するか。この3つを紙に書いてから、道具を当てはめる順番になります。順番を逆にすると、便利な道具を入れたのに当日は誰も使わない、という結果になります。決め方の細かい論点はよくある質問にも整理されているので、防災計画の文言を確定させる前に一度目を通してください。

Q1. 安否確認の連絡に返事をしない世帯は、どう扱えばよいですか?

異常として扱わないでください。返事がない理由の大半は、旅行や入院や通知に気付いていないことです。無事な人から申告してもらう形にすると、返事がない世帯は自動的に二次確認の対象になるだけになります。班長が歩いて確かめる段階を先に決めておけば、当日に見に行くかどうかを議論する必要がなくなります。

Q2. 玄関に出す掲示物の方式は、何を決めればよいですか?

出すもの、出す場所、出す条件、確認済みの合図の4つです。特に出す条件を「震度5弱以上で自分の判断で出す」のように決めておくと、放送や連絡を待たずに動けます。夜間や停電を考えて反射材の入ったものを選び、地域の消防団や市区町村が使う色と重ならないかを事前に確かめてください。

Q3. 要配慮者の名簿を班長に配っても問題ありませんか?

取得のときに利用目的を明示して同意を得ていれば配れます。名簿を本人以外へ提供する場面にあたるため、加入時と毎年の更新の書式に「災害時の安否確認のため班長へ提供する」と書いておいてください。封をして預け、開封の条件を明記し、班長の交代時に回収する運用を、当番の引き継ぎと同じ日に固定すると漏れません。

Q4. 安否確認をアプリだけで済ませることはできますか?

災害の直後は基地局の停電や回線の混雑が起きるため、通信が使える前提で組むのは危険です。自分から無事を申告する一次の段階だけを電子化し、歩いて確かめる二次と、未確認をまとめる三次は紙で残す形が現実的です。年に1度しか開かないアプリは当日に誰も入れないため、日常の連絡に使っている道具を選んでください。

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