町内会の個人情報の扱いは、法令の話に見えて、実際には名簿を誰がどこに置いているかという運用の話です。役員が代わるたびに紙の名簿が家から家へ移り、誰が何部持っているか分からなくなる。この状態を放置したまま連絡手段だけを電子に変えると、リスクは減るどころか増えます。この記事では、町内会が置かれている法律上の位置づけを確認したうえで、何を集めるか、集めた情報を誰まで配ってよいか、どこに置くか、役員交代と退会のときに何をするかを順に書きます。専門的な判断が要る場面は最後に整理します。
町内会も個人情報保護法の対象になっている
まず前提の確認です。町内会・自治会は、規模の大小にかかわらず個人情報保護法の適用を受ける立場です。以前は取り扱う人数が少なければ対象外とされていましたが、その扱いは2017年に変わりました。総務省の研究会がまとめた報告書に、経緯が整理されています。
個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の平成27年9月の改正により、平成29年5月30日以降は、5,000人分以下の個人情報を取り扱う事業者にも個人情報保護法が適用されることとなり、その中に自治会等の非営利団体も含まれている。 出典: 総務省
50世帯の小さな町内会でも、名簿を作っている以上は同じ扱いです。「うちは小さいから関係ない」という前提は、すでに2017年で終わっています。
同じ報告書は、具体的に何をすべきかも書いています。
自治会等においても、メールアドレス等を含め、個人情報を集める前にその利用目的を予め特定し、本人から書面で個人情報を取得する場合に本人に対して利用目的を明示し、個人情報の保管に当たっては、集めた個人情報の漏洩防止のために適切な安全管理措置を講じる必要がある。 出典: 総務省
ここに書かれている3つ、つまり利用目的を先に決めること、集めるときに相手へ示すこと、集めた後に守ること。この3つが実務のすべてです。難しい解釈は必要なく、順番どおりにやれば足ります。制度の詳細や相談先については、個人情報保護委員会が窓口を用意しています。
町内会が個人情報保護法をどう解釈すべきか、という細かい判断は専門家の領域です。この記事では、多くの会がどう運用しているかという範囲にとどめます。判断に迷う場面では、市区町村の自治振興担当や、相談窓口に確認してください。
何のために集めるのかを、先に書く
利用目的を先に決める、というのは、名簿の1枚目に書くということです。
町内会の名簿に書かれる利用目的は、おおむね次のようなものです。
・会の運営に関する連絡のため ・会費の集金と管理のため ・行事の案内と出欠の確認のため ・災害時および緊急時の安否確認のため ・慶弔に関する連絡のため
この5つを書いておけば、日常の運営でやることはほぼ収まります。逆に、ここに書いていない目的で使うことはできません。たとえば「地区の商店から広告の案内を出したい」という話が出たとき、利用目的に含まれていなければ、あらためて同意を取る必要があります。
書き方で気をつけたいのは、抽象的にしすぎないことです。「町内会の活動のため」とだけ書くと、範囲が広すぎて何にでも使えるように見え、かえって信用されません。具体的に5つ並べたほうが、住民から見て安心できます。
この利用目的は、加入申込書の裏面か、名簿記入用紙の冒頭に印刷しておきます。口頭で説明するだけでは、あとから確認できません。すでに何年も前から会員である世帯については、名簿を更新するタイミングで用紙を配り、そこに書いておけば足ります。
利用目的を書いたら、あわせて次の3点も書いておくと問い合わせが減ります。
・誰が保管するか。「会長および会計が保管します」 ・どこまで共有するか。「班長までが閲覧します」 ・いつ廃棄するか。「退会から1年後に廃棄します」
集めなくてよいものを決める
名簿の項目は、放っておくと増えます。「あったほうが便利だから」で追加され、一度入った項目は削られません。
町内会の名簿で、実務上必要になる項目は次の程度です。
・世帯主の氏名 ・住所 ・世帯の連絡先(電話番号1つ) ・班または組
これだけで、会費の集金と行事の案内と当番の割り振りは回ります。
一方で、よく入っているが、目的を説明しにくい項目もあります。
・世帯全員の氏名と生年月日。行事の対象年齢を決めるために必要という説明はできますが、全員分を毎年更新する会は少なく、実際には古いまま残ります ・勤務先。町内会の運営で使う場面がありません ・家族構成の詳細。防災の観点で必要なら、それは別の仕組みで集めるべきものです ・メールアドレスと携帯番号の両方。片方で足りるなら片方にします
集めない、と決めることの利点は2つあります。ひとつは、漏れたときの被害が小さくなること。もうひとつは、更新の手間が減ることです。項目が多い名簿ほど古くなるのが早く、古い名簿は緊急時に役に立ちません。
項目を減らす提案は、役員会で反対されることがあります。「災害のときに世帯人数が分からないと困る」「生年月日がないと敬老の対象を決められない」といった意見です。どちらも正しい指摘ですが、それは通常の名簿で持つべき情報かという問いとは別です。敬老の対象を決めるのは年に1回であり、そのときに該当しそうな世帯へ確認すれば足ります。年に1回しか使わない項目のために、全世帯の生年月日を1年中保管し続ける必要はありません。
判断の基準をひとつ置くなら、「その項目が漏れたときに、本人が困るかどうか」です。困る項目ほど、持つ理由を厳しく問います。氏名と班だけなら被害は限定的ですが、家族構成と在宅時間が並んだ一覧が外に出れば、防犯上の問題になります。町内会の名簿は、地区の全世帯の住所が並んだ資料でもあるので、そもそも扱いが軽い書類ではありません。
町内会に特有の悩ましさは、自治体から項目の追加を求められることです。要支援者の把握、高齢者の見守り、防災の名簿。これらは町内会が自主的に集めたものではなく、依頼を受けて集めるものです。この場合、依頼元と目的を用紙に明記し、町内会の通常の名簿とは別に管理するのが安全です。混ぜてしまうと、どの情報がどの目的で集められたのかが分からなくなります。
名簿を会員に配る前に確かめること
町内会でいちばん相談が多いのが、名簿を会員に配ってよいかという点です。
考え方はこうです。会が持っている名簿を会員全員に配ることは、集めた情報を本人以外に渡すことにあたります。ですから、集めるときに「会員に配布します」と伝えて同意を得ていなければ、そのまま配ることはできません。
多くの会がとっている対応は次のいずれかです。
・配布しない。役員と班長までが閲覧できる形にとどめる ・掲載してよい項目だけを本人に選んでもらう。氏名と班だけ載せる、電話番号は載せない、といった選択肢を用意する ・掲載を希望しない世帯を除いて作る。用紙に「名簿への掲載を希望しない」の欄を設ける
近年は1つめか3つめが多数です。世帯全員の氏名と電話番号が並んだ名簿を全戸に配る形は、減っています。
配る場合に、あわせて決めておくべきことが3つあります。
・部数を記録する。誰に何部渡したかを控えておきます ・複製しないことを明記する。「複写・転載はご遠慮ください」を表紙に書きます ・回収の時期を決める。翌年の名簿を配るときに古いものを回収する形にすると、出回る部数が増えません
紙で配った名簿を回収しきることは、現実には難しいです。だからこそ、配る前に載せる項目を絞る判断が重要になります。回収できない前提で、載せてよい範囲を決めます。
災害時の要支援者の情報は、別の仕組みで来る
避難に支援が必要な方の情報は、町内会が独自に集めるものと、自治体から提供されるものの2つがあります。この2つは、根拠も扱い方も違います。
自治体が作成する名簿は、災害対策基本法にもとづくものです。市区町村が作り、本人の同意などの条件のもとで、自主防災組織や民生委員、町内会に提供されることがあります。提供を受ける場合、自治体との間で取り扱いの取り決めを結ぶのが一般的です。
町内会側で必ず決めておくことは次のとおりです。
・誰が保管するか。会長個人ではなく、役職に紐づけて決めます ・誰まで見られるか。班長全員が見られる形にするか、防災担当だけにするか ・平時にどこに置くか。持ち出せる形にしておかないと、災害時に取り出せません ・役員交代のときに、どう引き継ぐか。自治体への届出が必要な場合があります ・使い終わったあと、どうするか。訓練で使った印刷物を、そのまま自宅に置かない
もうひとつ、町内会が独自に「支援が必要かどうか」を聞く場合があります。これは自治体の名簿とは別物なので、利用目的を明示し、答えない自由があることも書きます。答えないことで不利益が生じない旨を書いておくと、回答率はむしろ上がります。
注意したいのは、この種の情報が最も配慮の要る内容を含むことです。身体の状態、介護の必要性、日中の在宅状況。これらは、通常の連絡網とは違う場所に置く必要があります。メンバー以外は見られないことが確認できる場所であっても、会員全員が見られる場所に置くのは適切ではありません。役員だけが見られる範囲を作れるかどうかが、置き場所を選ぶ条件になります。
置き場所。紙の名簿がいちばん残る
漏えいの経路として実際に多いのは、複雑な技術的手段ではなく、紙です。
・役員宅に置いた名簿が、家族の目に触れる ・集金のときに持ち歩いた名簿を、どこかに置き忘れる ・古い名簿を、そのまま資源ごみに出す ・集会所の棚に、歴代の名簿が積まれたままになっている ・コピー機に原本を置き忘れる
いずれも、悪意のない状況で起きます。だからこそ止めにくいという性質があります。
紙で持つ場合の最低限の運用は次の3つです。
・保管する場所を1か所に決める。集会所の鍵付きの棚が使えるなら、それがいちばん確実です ・持ち出しの記録を残す。集金や訪問で持ち出すときに、誰がいつ持ち出したかを控えます ・古いものを廃棄する日を決める。年度末に、前年の名簿をまとめてシュレッダーにかけます
電子で持つ場合の注意点は、紙とは別にあります。
・役員個人の端末に保存しない。交代のときに残ります ・メールに添付して送らない。送信先の受信箱に永久に残り、転送も止められません ・共有する場合、誰が見られるかを一覧で確認できる仕組みを使う。招待した人を後から確認できないと、退会した人が見続けている状態に気づけません ・写真として撮らない。端末の写真フォルダに入ると、共有設定によっては家族の端末にも同期されます
紙と電子のどちらが安全か、という問いには一般的な答えがありません。ただし、更新の手間と、誰が持っているかの把握という2点では、電子のほうが管理しやすくなります。紙は、いったん複製されると追跡できません。
実務としては、両方を持つのが現実的です。日常の連絡は電子で回し、緊急時に備えた最小限の一覧だけを紙で持つ。紙で持つ範囲を「氏名と住所と電話番号だけ」に絞れば、万一の紛失でも被害は限定されます。100世帯の会なら、A4で3枚に収まります。全項目を印刷した分厚い名簿を持ち歩くのと比べて、扱いがまったく違います。
紙で持つ理由も、明確にしておいてください。停電や通信の途絶に備える、という理由なら、置き場所は集会所と会長宅の2か所で足ります。全役員が1部ずつ持つ必要はありません。部数が増えるほど、所在の把握は困難になります。持つ部数を先に決め、その部数以上は刷らない、という決めを議事録に残しておくと、翌年以降も守られます。
役員が代わるときが、いちばん漏れる
町内会の個人情報でリスクが最も高まるのは、役員交代の時期です。
理由は単純で、名簿が家から家へ物理的に移動するからです。しかも移動するのは最新版だけではありません。前任者の家には、数年分の古い名簿、集金の記録、行事の参加者名簿、写真が残っています。「返してください」と言われないまま、そのまま保管され続けます。
引き継ぎの手順を決めておくと、この状態を防げます。
・引き継ぐものの一覧を作る。名簿、集金台帳、参加者名簿、鍵、通帳、印鑑。一覧があれば、返し忘れが分かります ・前任者の手元に残すものをゼロにする。控えとして残したい気持ちは分かりますが、控えが残るほど所在が分からなくなります ・電子の情報は、権限を移す形にする。ファイルを送るのではなく、置き場所はそのままで、見られる人を入れ替えます ・引き継ぎの日付を記録する。いつ誰から誰へ渡したかを、役員会の議事録に残します
電子で運用している場合、引き継ぎの容易さは仕組みによって大きく変わります。前任者の個人アカウントで作られたグループは、その人が抜けると管理する人がいなくなります。役職に紐づいた形で管理できるか、複数人を管理者にできるかは、選ぶときに必ず確認しておく点です。
もうひとつ、辞めた役員のアカウントをいつ外すかも決めておきます。慣例で残したままにすると、会の情報が見え続けます。「役員でなくなった時点で外す」と決め、引き継ぎの手順に組み込んでおくのが確実です。
転出・退会したときに消す
町内会は、転出や退会が定期的に発生します。持ち続ける理由がなくなった情報は、消すのが原則です。
消す対象は次のとおりです。
・名簿の該当行 ・連絡網の登録 ・電子の連絡の場から、その世帯を外す ・集金の記録は、会計の記録として一定期間残す必要があるため、扱いを分けます
タイミングを決めておくのが実務のコツです。転出届が出た時点で外すのか、年度末にまとめて外すのか。年度末にまとめる場合、退会から最大で1年近く残ることになります。連絡の場に残っている間は、会の情報が見え続けます。
多くの会が採用しているのは、次の2段階です。
・連絡の場からは、退会または転出の申し出があった時点で外す ・名簿からは、次の年度更新のときに外す
前者を早くするのが重要です。名簿の更新は手間がかかるので年1回でも構いませんが、連絡の場に残り続けるのは実害があります。
削除の記録も残しておきます。「いつ、誰を、どの範囲から外したか」を役員会の記録に1行書いておくと、あとで問い合わせがあったときに答えられます。
加入申込書を作り直す。ここで9割が決まる
個人情報の扱いをまともにするうえで、いちばん効くのは加入申込書の作り直しです。集めるときの1枚に必要なことが書いてあれば、あとの運用で悩む場面がほとんどなくなります。
多くの町内会で使われている加入申込書は、氏名と住所と電話番号の記入欄だけがある1枚です。利用目的も、保管する人も、廃棄の時期も書かれていません。これを次の構成に作り替えます。
・表面は記入欄。世帯主の氏名、住所、連絡先1つ、班または組、世帯の人数 ・表面の下に、選択欄。「名簿への掲載を希望しない」「連絡は紙で受け取りたい」「災害時の安否確認の対象に含めてよい」 ・裏面に、利用目的の5項目、保管する役職、閲覧できる範囲、廃棄の時期、問い合わせ先
裏面は毎年変わらないので、一度作れば使い回せます。印刷は両面1枚で済みます。
すでに何十年も会員である世帯については、新しい申込書を書いてもらう機会がありません。名簿の更新を数年に一度行う会が多いので、そのタイミングで同じ用紙を配ります。「名簿の記載内容の確認」という名目にすると、抵抗が少なくなります。
作り直すときに一緒に決めておくとよいのが、記入を求めない欄の扱いです。空欄のまま出してよい欄には「任意」と書きます。すべて必須に見える用紙は、書きたくない項目がある人に加入をためらわせます。加入率が下がっている状況で、用紙が加入の障壁になるのは避けたいところです。
用紙を受け取ったあとの扱いも決めます。申込書そのものは、名簿に転記したら廃棄するのか、保管し続けるのか。保管するなら、名簿と同じ場所に置きます。転記した紙が別の場所に残ると、把握の対象が2つになります。
漏えいが起きたときにどうするか
紛失や漏えいは、どれだけ気をつけていても起こります。起きたときにどうするかを先に決めておくと、対応が遅れません。
町内会で実際に起きるのは、次のような形です。
・集金で持ち歩いていた名簿を紛失した ・古い名簿をシュレッダーにかけずに資源ごみへ出した ・連絡の場に、名簿の写真を誤って投稿した ・退会した人が、連絡の場に残ったままになっていた ・役員宅への空き巣で、書類ごと持ち去られた
起きたときの手順は次のとおりです。
・まず、何が漏れたかを確定する。どの名簿の、何年版の、何世帯分か。項目は何が入っていたか ・関係する会員に知らせる。伏せると、後から分かったときに信用が失われます ・市区町村の担当課に相談する。自治体によっては報告の窓口があります ・再発しないための手当てを決め、役員会の記録に残す ・被害が想定される内容(電話番号や住所が含まれる場合など)については、不審な連絡があれば知らせてほしい旨を会員に伝える
連絡の場に誤って投稿した場合は、投稿を消せば済むと思われがちですが、消す前に見た人が保存している可能性があります。消したうえで、投稿した事実と経緯を会員に伝えるのが誠実な扱いです。
事前にできる備えとしては、名簿に版数と作成年月を入れておくことが挙げられます。「令和7年度版」と書いてあれば、紛失したときに何が漏れたのかがすぐ分かります。版数のない名簿が出てくると、どの範囲の情報なのかを特定するところから始めることになります。
行事の写真をどこまで出すか
町内会の行事で撮った写真は、名簿とは別の悩みを生みます。
会報や掲示板に載せる、地区のホームページに載せる、連絡の場で共有する。それぞれ、見る人の範囲が違います。掲示板に貼れば通りがかりの人も見ますし、公開のホームページに載せれば地区外の誰でも見られます。
多くの会が運用しているのは、次のような線引きです。
・会の中だけで共有する写真は、行事の案内に「撮影した写真を会の中で共有します」と書いたうえで撮る ・会報や掲示板に載せる場合は、撮影時に本人へ確認する。特に子どもが写っている場合は、保護者に確認する ・公開の場所に載せる写真は、顔がはっきり分かるものを避けるか、個別に同意を得る ・撮られたくない人が申し出られる方法を用意する。行事の受付に一言添える欄を作る会もあります
子どもの写真については、法律の解釈を断定できる立場ではないため、ここでは実務の傾向だけを書きます。近年は、公開の場に子どもの顔を載せない会が増えています。学校やPTAの運用に合わせる形で、町内会も同じ扱いにするところが多いです。
写真の置き場所も決めておきます。役員個人の端末に溜まっていくと、その人が辞めたときに全部が失われるか、逆にそのまま残り続けます。行事ごとにまとめて置ける場所を用意し、公開範囲を確認できる形にしておくのが安全です。
会費の未納を貼り出してよいか
町内会でしばしば議論になるのが、会費の未納世帯の扱いです。
集金の効率を上げるために、未納の世帯名を掲示板に貼る、班の集まりで読み上げる、といった運用が提案されることがあります。これは、本人の同意なく個人の状況を公にすることにあたるため、避けたほうがよい扱いです。会の中で本人の立場を悪くする効果もあり、退会の引き金になります。
代わりの方法はいくつかあります。
・集金の期限と方法を、全体に対して繰り返し案内する ・班ごとの集金率だけを共有する。個人が特定されない粒度にとどめます ・未納の世帯には、班長が個別に案内する。人目のない形で伝えます ・振込や電子決済の経路を用意し、対面で渡す負担そのものを減らす
同じ考え方は、行事の不参加や当番の未実施にも当てはまります。誰が来なかったかを一覧にして共有すると、記録としては便利ですが、会の空気を確実に悪くします。名前を出さずに件数だけを共有する、というのが実務上の落としどころです。
置き場所を選ぶときに見る点
連絡と名簿を電子に移すとき、個人情報の観点から見るべき点は次の5つです。
・誰が見られるかを、一覧で確認できるか。招待した人を後から確認できない仕組みだと、退会した人が残っていることに気づけません ・見られる範囲を分けられるか。会員全員が見る場所と、役員だけが見る場所を分けられないと、要支援者の情報や慶弔の連絡を置けません ・外部から見えないか。メンバー以外は見られないことがはっきりしている必要があります ・引き継げるか。前任者の個人アカウントに紐づく形だと、役員交代のたびに作り直すことになります ・退会した人を外せるか。外したときに、その人が過去の内容を見られなくなるかどうかまで確認します
多くの会が最初に検討するのは、すでに使われているメッセージアプリのグループ機能です。導入は容易ですが、招待の管理が個人に依存する点と、メンバー一覧の扱いが判断の分かれ目になります。この違いはLINEグループとの比較に、参加の管理という観点で整理しています。
誰が入っているか分からない状態を避けたい会には、参加の管理と公開範囲の扱いが重要になります。この点はLINEオープンチャットとの比較にまとめてあり、招待制にできるかどうかが確認できます。
役員だけが見る場所と会員全員が見る場所を分けたい場合は、構造として分けられるかどうかを見ます。BANDとの比較に、投稿の置き場所と公開範囲の考え方をまとめています。
既存のアカウントで入れる形は登録が楽ですが、初期の公開範囲がどうなっているかを必ず確かめてください。設定の既定値はFacebookグループとの比較にまとめてあります。
役割ごとに見える範囲を細かく分けたい場合は、Discordとの比較も候補になります。設定の自由度が高い一方、操作の前提知識が要る点は考慮が必要です。
実際の町内会で名簿や連絡先をどう扱っているかは、町内会での使われかたに画面の流れとしてまとめてあります。役員だけが見る範囲をどう作るかが具体的に分かります。子どもの写真の扱いなど、判断が近い場面が多いPTAでの運用はPTAでの使われかたにあり、あわせて見ておくと線引きの参考になります。
保管期間、退会時の削除、管理者の変更といった、実際に総会で聞かれる項目はよくある質問にまとめてあります。名簿の扱いを議題にする前に確認しておくと、想定問答の準備が楽になります。
Q1. 小さな町内会でも個人情報保護法の対象になりますか?
なります。2017年5月30日以降は、取り扱う個人情報が5,000人分以下の事業者にも法が適用され、自治会などの非営利団体も含まれるようになりました。50世帯の会でも名簿を作っている以上は同じ扱いです。利用目的を先に決め、集めるときに示し、保管を適切に行うという3点が基本になります。
Q2. 町内会の名簿を会員全員に配ってよいですか?
集めるときに「会員へ配布します」と伝えて同意を得ていなければ、そのまま配ることはできません。近年は配布せず役員と班長までの閲覧にとどめる会か、掲載してよい項目を本人に選んでもらう会が多数です。配る場合は部数を記録し、翌年の配布時に古いものを回収する運用にします。
Q3. 役員交代のとき、名簿はどう引き継げばよいですか?
引き継ぐものの一覧を作り、前任者の手元に控えを残さないのが原則です。数年分の古い名簿や行事の参加者名簿も対象に含めます。電子の情報はファイルを送るのではなく、置き場所はそのままで見られる人を入れ替える形にすると、複製が増えません。引き継いだ日付は議事録に残します。
Q4. 会費の未納世帯を掲示板に貼り出してもよいですか?
避けるべき扱いです。本人の同意なく個人の状況を公にすることにあたり、会の中で本人の立場を悪くします。班ごとの集金率だけを共有する、班長が個別に案内する、振込や電子決済の経路を用意して対面の負担を減らす、といった方法で代替してください。