合唱団に入りたいという問い合わせは、団にとって何よりうれしい知らせです。それなのに、見学に来た人がそのまま来なくなる、入団して数か月で辞めてしまう、という話は多くの団で聞かれます。原因の多くは、入ってくる人の熱意ではなく、受け入れる側の段取りにあります。合唱団は、パートに分かれて、すでに進んでいる曲の途中から加わるという、ほかの団体にはない入り方を新人に求めるからです。この記事では、問い合わせを受けてから、新しい団員が自分のパートに落ち着くまでの流れを、受け付ける立場から順に書きます。
合唱団の入会は、5つの段階を踏む
町内会やPTAの入会は、書類を出せば済むことが多いものです。合唱団の入会は、もう少し段階が多くなります。多くの団で、次のような流れを踏んでいます。
・問い合わせ:練習の日時や場所、会費、経験がなくてもよいかを尋ねてくる ・見学:実際の練習を見に来る ・体験:何回か練習に加わって、実際に歌ってみる ・声の確認とパート分け:指揮者が声域を確かめ、どのパートで歌うかを決める ・入団:入団届を出し、会費を払い、連絡の場に加わる
段階が多いのは、合唱団が「入ってみないと合うか分からない」団体だからです。練習の雰囲気、取り組んでいる曲の難しさ、団員の年齢層、指揮者の指導の仕方は、外から見ても分かりません。入ってくる人にとっても、団にとっても、何回か一緒に歌ってから決めるほうが、あとで辞める人が減ります。
一方で、段階が多いぶん、どこかで連絡が途切れやすくなります。見学のあとに誰も声をかけなかった、体験の回数を決めていなかったので、いつ入団を決めればよいのか分からないまま来なくなった、ということが起きます。受け付ける側は、それぞれの段階で、誰が何をするかを決めておく必要があります。
特に決めておきたいのが、新しい人の窓口を1人に決めることです。問い合わせに答えた人、見学の日に案内した人、体験のあとに声をかけた人がばらばらだと、新しい人は誰に相談すればよいのか分かりません。入団するまでは、同じ人が最初から最後まで受け持つ形にします。
問い合わせには、決まった返事を3日以内に返す
入会の問い合わせは、団のホームページの問い合わせ窓口や、演奏会のチラシに載せた連絡先、団員の知人を通して入ってきます。問い合わせをする人は、ほかの合唱団にも同時に問い合わせていることがあります。返事が遅いと、その間に別の団に決めてしまうことがあります。
返事は、問い合わせから3日以内を目安に返します。そのためには、返事の文面をあらかじめ用意しておきます。問い合わせで聞かれることは、ほぼ決まっているからです。
・練習の曜日、時間、場所 ・会費と、入会金の有無 ・合唱の経験がなくても入れるか ・楽譜が読めなくても大丈夫か ・団員の年齢層 ・見学はできるか、どう申し込めばよいか ・次の演奏会はいつで、何を歌うか
このうち、経験や楽譜についての質問は、入ってくる人がいちばん不安に思っていることです。「経験がなくても大丈夫です」とだけ答えるより、「団員の中にも、入団してから楽譜を読めるようになった人がいます。音取り用の音源を用意しているので、耳で覚えるところから始められます」のように、どう支えるのかを具体的に書くほうが安心してもらえます。
返事の中では、見学に来てほしい日を2つか3つ、日付で示します。「いつでもどうぞ」と書くと、相手はいつ行けばよいか決められず、そのまま先延ばしになります。
見学に向く日と、向かない日がある
合唱団の練習は、日によって中身が大きく違います。見学に来てもらう日は、団の都合ではなく、見学する人が団の様子をつかめる日を選びます。
見学に向かないのは、次のような日です。
・演奏会やコンクールの直前で、指揮者が細かい仕上げに集中している日 ・ステージの立ち位置の確認や通し練習ばかりの日 ・パートごとに別々の部屋に分かれて練習する日 ・総会など、練習以外の議事がある日
直前の仕上げの日は、団員の緊張が高く、見学者に目を向ける余裕がありません。通し練習の日は、ひたすら曲を通すだけなので、どう練習を進めている団なのかが見えません。
見学に向くのは、新しい曲の音取りを始めた時期の日です。団員もまだ曲に慣れていないので、見学者が加わっても差がつきにくく、指揮者が曲の背景や歌い方を説明する場面も多くなります。発声練習から始まる日の最初から見てもらうと、団の練習の組み立てが伝わります。
見学の日には、次の準備をしておきます。
・見学者が座る椅子を、声が聞こえやすい位置に用意する ・その日に歌う曲の楽譜を、団の貸し出し用から1部用意する ・練習の最初に、指揮者か団長から見学者を短く紹介する ・休憩時間に、窓口の人が見学者のそばに行って話す
紹介は、名前を言うだけの短いもので十分です。見学者に自己紹介を求めると、それだけで次から来にくくなる人もいます。
体験の回数と、その間の扱いを決めておく
見学のあと、実際に一緒に歌ってみる体験の段階に進みます。この段階でよくある問題は、体験が何回までなのか、その間の会費はどうなるのかが決まっていないことです。
体験の回数が決まっていないと、新しい人はいつ入団を決めればよいのか分かりません。団の側も、いつ入団の意思を確かめればよいのか分からず、なんとなく練習に来ている人が数か月いる、ということになります。その間に、演奏会の出演の申告や、衣装の発注の締め切りが過ぎてしまうこともあります。
体験は、2回から3回程度と決めておき、問い合わせへの返事の中でも伝えておきます。回数を決めておくと、最後の体験の日に、窓口の人が入団の意思を確かめる流れが自然に作れます。
体験の間の扱いとして、決めておきたいのは次の点です。
・体験の間は、会費をもらうか、無料にするか ・楽譜は貸し出すか、コピーではなく団の備品を使うか ・音取り用の音源を渡すか ・団の連絡の場に入れるか
楽譜は、団の貸し出し用のものを使ってもらいます。体験の人にだけ楽譜をコピーして渡すことは、楽譜の複製に著作権の扱いが関わるので避けます。貸し出し用が足りない場合は、体験の人数を絞るか、隣の団員の楽譜を一緒に見てもらいます。
団の連絡の場には、入団するまで入れないほうが、団の運営の話が外に出る心配がなく、体験の人にとっても気が楽です。体験の間の連絡は、窓口の人が直接行います。
声の確認は、オーディションではないと伝える
合唱団に入るとき、新しい人がいちばん緊張するのが、指揮者による声の確認です。ピアノの横で音階を歌い、どこまで高い音、低い音が出るかを確かめる。この場面を、合格か不合格かを決める試験だと受け止める人は少なくありません。
団によっては、実際に入団の可否を決めるオーディションを行っているところもあります。そうでない団では、声の確認の目的を、事前にはっきり伝えておきます。
・声の高さの範囲を確かめて、歌いやすいパートを決めるためであること ・うまく歌えるかどうかを見るものではないこと ・その場で決めたパートは、あとから変えられること
伝えるのは、声の確認の当日ではなく、体験の段階からです。当日になって「オーディションではありません」と言われても、緊張はほとんど和らぎません。
パートの決め方でもうひとつ気をつけたいのが、団の都合と本人の声の兼ね合いです。多くの合唱団で、男声、特にテノールが足りないという悩みがあります。新しく入った男性に、声域の確認より先に「テノールをお願いしたい」と伝えてしまうと、無理な高さで歌い続けて喉を痛めることがあります。パートは、声の高さの範囲で決めるのが原則で、団の人数の釣り合いは、そのうえで調整します。
女声の場合も、「ソプラノに入りたい」という希望を持って来る人が多くいます。声域の上ではアルトのほうが楽に歌える人に、アルトの役割と面白さを指揮者から説明してもらうと、納得して入ってもらえます。
最初に渡すものを、ひとまとめにしておく
入団が決まったら、新しい団員に渡すものがいくつもあります。これを練習のたびに少しずつ渡していると、渡し忘れが出て、新しい団員は必要なことを知らないまま過ごすことになります。入団の日に、ひとまとめにして渡す形にします。
合唱団で最初に渡すものは、次の通りです。
・団の規約と、会費や休団の決まり ・年間の予定表 ・いま取り組んでいる曲の一覧と、それぞれの楽譜 ・音取り用の音源の聞き方 ・連絡の場への招待と、使い方の説明 ・演奏会の衣装についての説明 ・パートリーダーの名前と連絡の取り方 ・困ったときに相談できる窓口
楽譜は、取り組んでいる曲の数だけ渡すと、新しい団員には量が多すぎることがあります。次の演奏会で歌う曲のうち、どの曲から覚えればよいかを、指揮者かパートリーダーに順番を付けてもらって渡すと、何から手を付ければよいかが分かります。
楽譜の代金を各自で負担する団では、入団の日に、どの楽譜をいくらで購入してもらうのかを一覧にして伝えます。数冊分の楽譜代が、入団した月にまとめてかかることがあるので、あらかじめ金額の目安を伝えておくと驚かれません。
年間の予定表には、次の演奏会の日と、出演するために必要な条件も書き添えます。これは次の節で詳しく書きます。
途中から入った人が、次の演奏会に乗れるかを先に伝える
合唱団の入会で、あとから問題になりやすいのが、次の演奏会に出られるかどうかです。新しい団員は、入団したら次の演奏会に出られるものと考えていることが多い一方、団の側には、出演のための条件があることがあります。
多くの団で設けているのは、次のような条件です。
・出演の申告の締め切りまでに入団していること ・演奏会までの練習に、一定の回数以上出席していること ・演奏会で歌う曲を、暗譜で歌う団では暗譜できていること ・衣装の発注の締め切りに間に合っていること
条件が決まっていない団では、演奏会の直前に入団した人が出演を希望し、ほかの団員から不満が出る、ということが起きます。逆に、条件はあるのに新しい団員に伝えていなかった団では、出演できないと分かったときに新しい団員が落胆し、そのまま辞めてしまうこともあります。
入団の時期によって、どの演奏会から出られるのかを、入団の日に具体的に伝えます。「秋の演奏会は、7月までに入団して、それ以降の練習の8割に出席すれば出演できます。いまからだと、次の春の演奏会からになります」のように、日付と条件で伝えます。
出演できない演奏会があっても、練習には参加してもらい、演奏会の当日は受付や客席の係として関わってもらう団もあります。本番の空気を客席の側から体験すると、次の演奏会に向けた意欲につながります。
入団届で聞くことと、聞かないこと
入団のときには、入団届を書いてもらいます。この入団届で何を聞くかは、団がどの個人情報を預かるかを決めることでもあります。団が本人から書面で個人情報を受け取る場面について、個人情報保護法には次の定めがあります。
個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電磁的記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。 出典: e-Gov法令検索
合唱団がこの定めの対象になるかは団の実態によりますが、入団届に何のために聞くのかを書いておくことは、対象かどうかに関わらず、新しい団員に安心してもらうために役立ちます。
合唱団の入団届で聞いておきたいことは、次の通りです。
・氏名と、連絡の取り方(電話、メールなど) ・住所(郵送で案内を送る必要がある場合) ・緊急連絡先 ・合唱の経験(あれば、どのくらいの期間か) ・楽譜を読むことに慣れているか ・練習に来られる頻度の見込み ・演奏会のプログラムへの名前の掲載と、写真や映像の公開についての希望
経験と楽譜についての項目は、入団を断るためではなく、支え方を決めるために聞きます。楽譜に慣れていない人には、音取りの音源を先に渡し、パートリーダーが最初の数回、隣で歌う、といった手当てができます。
聞かなくてよいことも決めておきます。職業や勤め先、家族構成、生年月日は、合唱団の活動には多くの場合必要ありません。健康状態も、入団届で一律に聞くことは避け、本番で椅子が要るなどの配慮が必要になったときに、本人から申し出てもらう形にします。
会費と入会金は、入団した月の扱いまで決める
会費の話は、問い合わせの段階で聞かれることが多いものですが、入団のときに改めて整理して伝えます。合唱団の会費は、指揮者と伴奏者への謝礼、練習会場の使用料など、人数に関係なくかかる費用を団員で分け合う形になっていることが多く、月額で決めている団が多くあります。
入団のときに迷いやすいのは、次の点です。
・月の途中で入団した場合、その月の会費は満額か、日割りか、翌月からか ・入会金を取る場合、何に使うのか ・体験の期間の会費はどうするか ・次の演奏会に出られない場合、演奏会のための積立金や演奏会費を払うのか
月の途中の入団は、翌月から会費をもらう扱いにすると、会計の手間が少なく済みます。日割りは計算が面倒で、会計の負担が増えるからです。どちらにするにしても、規約に書いておき、入団の日に伝えます。
入会金は、楽譜ファイルや名札など、新しい団員のために最初にかかる費用をまかなう目的で設けている団があります。取る場合は、何に使うのかを伝えます。使い道が説明できない入会金は、入団をためらわせる理由になります。
演奏会に出られない期間の演奏会費は、特に丁寧に扱います。出演しない演奏会の費用を払うことに、新しい団員は納得しにくいものです。出演する演奏会の分から払ってもらう、という扱いにしておくと、もめ事を避けられます。
最初の3か月で辞めてしまう理由を、先に潰しておく
入団したのに数か月で来なくなる新しい団員には、よく似た理由があります。事前に分かっていれば、受け入れる側で手を打てるものがほとんどです。
ひとつめは、曲についていけないことです。団が演奏会に向けて仕上げの段階に入っている曲を、入ったばかりの人がいきなり歌うのは難しい。周りが歌えているほど、自分だけ歌えないことが気になり、練習に来るのがつらくなります。どの曲から覚えればよいかの順番を渡し、仕上げの段階の曲は無理に歌わなくてよいと伝えておきます。
ふたつめは、パートの中で孤立することです。合唱団では、パートごとにまとまって座り、休憩時間もパートの仲間と話すことが多くなります。長く在籍している団員どうしの輪に、新しい人が入りにくいことがあります。パートリーダーか、パートの中の1人を、最初の3か月の世話役として決めておき、休憩時間に声をかけてもらいます。
みっつめは、団の連絡についていけないことです。連絡の場に招待されても、過去の経緯を知らないので、書かれていることの意味が分からない。練習の変更や持ち物の連絡を見落とし、自分だけ知らなかった、ということが続くと、団に居場所がないように感じます。入団の日に、連絡の場のどこに何が書かれるのかを説明し、見落としやすい連絡を世話役が一声かけて補います。
入団して1か月ほどたったころに、窓口の人か世話役が、困っていることがないかを短く尋ねる機会を作っておくと、辞める前に相談してもらえることが増えます。
衣装は、入団してすぐに揃えなくてよい形にする
合唱団の入会で、新しい団員が戸惑いやすいのが衣装です。多くの団は、演奏会で揃いの衣装を着ます。女声はドレスやブラウスとスカート、男声は黒の上下にタイ、といった形です。団で決まった型の衣装を発注している団では、新しい団員もその型で揃える必要があります。
問題は、衣装の発注が、ある程度の着数をまとめて行う形になっていることが多い点です。入団した人が1人だけのために、業者に同じ型の衣装を1着だけ頼むと、割高になったり、同じ生地がすでになかったりします。次の演奏会の衣装の発注の締め切りを過ぎてから入団した人は、その演奏会に衣装が間に合わないこともあります。
受け入れる側で用意しておきたい手立ては、次の通りです。
・団の予備の衣装を、サイズ違いで数着保管しておき、入団したばかりの人に貸し出す ・退団した団員から、衣装を団に譲ってもらえるかを退団のときに確かめておく ・衣装の発注は、年に1回の決まった時期にまとめ、その時期までに入団した人の分をあわせて頼む ・当面の演奏会では、黒の上下など手持ちの服で近い装いにしてよいとする
衣装にかかる費用の目安も、入団の日に伝えます。衣装の型や団の方針によって金額は大きく変わるので、団の実際の金額を伝えることが大切です。楽譜代と入会金、衣装代が同じ月に重なると、新しい団員の負担はかなり大きくなります。いつ、何に、いくらかかるのかを一覧にして渡しておくと、あとで驚かれません。
入団しなかった人との連絡を、きれいに閉じる
見学や体験に来た人が、全員入団するわけではありません。練習の曜日が合わなかった、取り組んでいる曲が好みと違った、ほかの団に決めた、といった理由で、入団を見送る人もいます。受け付ける側が意外に決めていないのが、この人たちとの連絡の閉じ方です。
入団を見送る連絡が本人から来た場合は、短くお礼を返し、また興味を持ったら声をかけてほしいと伝えて終えます。引き止めの言葉を重ねると、次に演奏会に来てもらう機会まで失うことがあります。演奏会の案内を送ってよいかを、このときに確かめておくと、客席の側で団を応援してもらえる関係を残せます。
連絡がないまま来なくなった人には、最後の体験の日から2週間ほどたったころに、窓口の人から一度だけ連絡を入れます。入団するかどうかを急かすのではなく、体験に来てくれたお礼と、疑問があれば答えるという内容にします。返事がなければ、そこで区切ります。
見学や体験の間に預かった連絡先は、入団しなかった人の分を、窓口の人の手元から消します。演奏会の案内を希望した人だけ、案内の送り先の一覧に移します。窓口の人の携帯電話に、何年分もの見学者の連絡先が残っている、という状態は避けます。
少年少女合唱団では、保護者の入会でもある
子どもが団員になる少年少女合唱団では、入会の手続きの相手は保護者になります。受け付ける側が考えることも、大人の合唱団とは違ってきます。
問い合わせは、保護者から来ます。保護者が知りたいのは、練習の日時と場所だけでなく、送り迎えが必要かどうか、保護者が当番などで関わる役割があるか、演奏会や合宿でどのくらい費用がかかるか、です。保護者の役割が大きい団ほど、入会の前に伝えておかないと、あとで保護者の側の負担感から辞めてしまうことがあります。
声の確認とパート分けでは、子どもの声の変化を考えます。特に男の子は、声変わりの時期に、歌える音域が大きく変わります。その時期にどう活動を続けるのかを、入会の段階で保護者に伝えておくと安心してもらえます。
入団届では、保護者の連絡先に加えて、送り迎えをする人、練習のあとに迎えが遅れた場合の連絡先を聞いておきます。写真や映像の公開については、保護者の希望を必ず確かめます。
連絡の場には、保護者に入ってもらう形になります。子どもに直接連絡する形にするか、保護者だけにするかは、子どもの年齢によって分けます。小学生の団員が多い団では、連絡はすべて保護者に向けて出す形にしておくと、伝わったかどうかを確かめやすくなります。
受け付けの流れを、交代しても続く形に残す
入会の受け付けは、毎月あるものではありません。新しい人が来るのは、演奏会のあとや年度の初めなど、一年のうちでも限られた時期に集中します。そのため、受け付けの段取りが担当者の記憶の中にしか残っておらず、担当が代わると、次に新しい人が来たときに一から考え直すことになりがちです。
受け付けの流れは、次のものを一か所にまとめて残しておきます。
・問い合わせへの返事の文面 ・見学に向く日の選び方と、見学の日の準備 ・体験の回数と、体験の間の扱い ・入団の日に渡すものの一覧 ・入団届の書式 ・演奏会に出るための条件 ・世話役の決め方
これらがまとまっていれば、窓口の担当が代わっても、同じ流れで新しい人を迎えられます。新しい人が入るたびに、うまくいかなかったことを書き足していくと、団の受け入れ方は少しずつ整っていきます。
入会の流れと、連絡の道具の関係を考える
新しい団員の受け入れ方は、団がふだん使っている連絡の道具の性質にも左右されます。道具ごとの公開されている仕様を並べると、入会の段取りのどこで道具が効き、どこで効かないかが見えてきます。
入団するまで連絡の場に入れない、という運用は、参加の管理の仕組みで実現できるかどうかが関わります。LINEグループとの比較では、招待やURLで入る形と、申し込みに質問を付けて答えを見てから承認する形の違いを並べています。見学や体験を経てから入ってもらう合唱団では、誰が入ってよいかを団の側で確かめられる形かどうかが、確認点になります。
人を集める入り口としての道具と、団員どうしで記録を積み上げる道具は、役割が違います。LINEオープンチャットとの比較では、まだ知らない人どうしが匿名で集まる場と、顔と名前の分かる会のための場の違いを、見つかり方や参加の承認と合わせて扱っています。新しい団員を募る窓口と、入団したあとの連絡の場を分けて考える材料になります。
入ったばかりの団員が、過去の練習の内容に追いつけるかどうかも大切です。教室での使われかたでは、稽古の動画を上げると指導の言葉が話した人ごとに文字で残る様子を見られます。合唱団でも、指揮者が曲の歌い方を説明した練習の記録が残っていれば、途中から入った人が自分のペースで追いつく助けになります。
受け入れの段取りを決めてから道具を選ぶ順番で考えると、窓口の担当が代わっても続く形になります。導入の前によく出る疑問はよくある質問にまとめてあります。
Q1. 合唱団の見学は、どの日に来てもらうのがよいですか?
新しい曲の音取りを始めた時期の練習日が向いています。団員もまだ曲に慣れていないので見学者との差がつきにくく、指揮者が歌い方を説明する場面も多いからです。演奏会の直前の仕上げの日、通し練習ばかりの日、パートごとに分かれる日は避けます。問い合わせへの返事では、見学に来てほしい日を2つか3つ、日付で示すと先延ばしになりません。
Q2. 声の確認で緊張させないためには、どう伝えればよいですか?
体験の段階から、声の確認は歌いやすいパートを決めるためのもので、うまく歌えるかを見る試験ではないこと、決めたパートはあとから変えられることを伝えておきます。当日になって伝えても緊張はほとんど和らぎません。男声が足りない団でも、先にテノールをお願いするのではなく、声の高さの範囲でパートを決めるのが原則です。
Q3. 途中で入団した人は、次の演奏会に出られますか?
団ごとに条件が違うので、入団の日に具体的に伝えることが大切です。多くの団では、出演の申告の締め切りまでの入団、演奏会までの練習への一定回数以上の出席、衣装の発注の締め切りに間に合うこと、などを条件にしています。出られない演奏会がある場合も、練習には参加してもらい、当日は受付などで関わってもらうと次への意欲につながります。
Q4. 入団して数か月で辞めてしまう人を減らすには、どうすればよいですか?
よくある理由は、曲についていけない、パートの中で孤立する、連絡についていけない、の3つです。覚える曲の順番を渡し、パートの中から最初の3か月の世話役を決めて休憩時間に声をかけてもらい、連絡の場の見方を入団の日に説明します。入団して1か月ほどたったころに、困っていることがないかを短く尋ねる機会も作っておきます。
