自主防災組織の安否確認の手順書は、多くの場合、役員が家にいる前提で書かれています。情報班の班長が各班から報告を集め、本部に上げ、本部が集計する。その情報班の班長が勤め先にいる平日の昼に大きな揺れが来たとき、手順書は最初の行から動きません。この記事では、自主防災組織として安否確認を組み立てるときに、数える、探す、照らし合わせるという3つの作業をどう分けるのか、無事の表示がない家をどの順で回るのか、返事が来ない人をどう見分けるのか、避難所の名簿とどう突き合わせるのかを順に書きます。先に結論を書くと、未確認の世帯を減らすのは巡回の人数ではなく、未確認の理由を見分ける手がかりを平時に集めておくことと、避難所の名簿と突き合わせる役を決めておくことです。
自主防災組織は、全国で16万を超えている
自主防災組織は、地域の住民が自発的に作る防災の組織で、多くは町内会や自治会を母体にしています。その数と広がりについて、消防庁の消防白書は次のように記しています。
自主防災組織は、地域住民の連帯意識に基づく自発的な防災組織であり、令和6年4月1日現在で、全国1,741市区町村のうち1,697市区町村で16万7,233の自主防災組織が設置され、自主防災組織による活動カバー率(全世帯数のうち、自主防災組織の活動範囲に含まれている地域の世帯数の割合)は増加傾向にある(第4-2図、資料4-1)。 出典: 総務省消防庁
数字の上では、ほとんどの市区町村に組織があります。ただ、組織が設置されていることと、発災時に安否確認が回ることは別の話です。町内会の役員がそのまま自主防災組織の役員を兼ねている地域では、会長が防災会長を、班長が各班の防災担当を兼ねる、いわゆる充て職の形が多く見られます。役員は1年や2年で交代し、交代のたびに防災の役割も入れ替わります。
こうした組織では、訓練のときにはそれなりに形が整います。訓練は休日の昼に開かれ、役員は参加するつもりで予定を空けているからです。安否確認の手順が本当に試されるのは、予定されていない時間に災害が起きたときで、そのときには訓練の前提がほとんど残っていません。
この記事で扱うのは、町内会そのものの安否確認ではなく、自主防災組織として班を編成し、役割を分担している組織での安否確認の組み立てです。
安否確認は、3つの作業が別々の人に分かれている
自主防災組織の多くは、本部の下に機能別の班を置いています。情報班、消火班、救出救護班、避難誘導班、給食給水班といった分け方で、自治体の手引きに沿った形です。安否確認は、このうち情報班か避難誘導班の仕事とされていることが一般的です。
ところが、安否確認と一口に呼ばれているものを分解すると、性質の違う3つの作業が混ざっています。
・数える作業:一時集合場所に集まった人、無事の表示を出した世帯を数えて記録する ・探す作業:表示のない世帯を回り、応答を確かめる ・照らし合わせる作業:避難所の名簿、地域の外からの連絡、家族からの問い合わせと、地区の安否表を突き合わせる
この3つは、求められる人の条件が違います。数える作業は、一時集合場所にとどまって記録を付けられる人に向きます。足腰に不安がある人でも担えます。探す作業は、余震の中を歩いて回れる体力が要り、2人1組で動く人数が必要です。照らし合わせる作業は、避難所や本部との間を行き来し、文字の記録を丁寧に扱える人に向きます。
手順書でこの3つをまとめて情報班に割り当てていると、情報班の人数が足りない日には全部が止まります。3つを分けておけば、たとえば数える作業は一時集合場所に早く着いた高齢の住民に、探す作業は動ける世代に、照らし合わせる作業は情報班の役員に、と振り分けられます。平日の昼に役員がいなくても、数える作業と探す作業は始められます。
分けることのもう1つの利点は、進み具合が見えることです。数える作業が終わったのに探す作業が進んでいない、探す作業は終わったのに照らし合わせる作業が手つかず、というように、どこで止まっているのかが分かれば、人を回す先が決まります。
一時集合場所に来た人を、世帯ごとに数える
発災の後、住民の一部は一時集合場所に集まってきます。公園や空き地、集会所の前などが指定されていることが多く、ここで人数を数えることが、安否確認の最初の手がかりになります。
一時集合場所での記録でよく起きるのは、人を数えるだけで、世帯と結びつけていないことです。「47人集まった」と記録しても、どの世帯の誰が来ていて、同じ世帯の誰が来ていないのかが分かりません。家族の一部だけが来ている世帯は、残りの家族が家にいるのか、外出中なのかを確かめる必要がありますが、人数だけの記録ではそれが拾えません。
記録は、班ごとの世帯の一覧に書き込む形にします。一覧には世帯主の名前か住所の番地だけを載せ、来た人がその行に、来た人数と、家族のうち来ていない人がいるかどうかを書きます。「来ていない家族あり」に印がついた世帯は、探す作業の対象として、第1群と同じ扱いで回ります。
一時集合場所では、人が集まっては移動していきます。避難所に移る人、家に戻る人、親戚の家に向かう人。移動する人には、移動先を一覧の備考に書いてもらいます。書かずに移動されると、あとで照らし合わせる作業の手がかりが消えます。移動先を書いてもらう声かけを、数える作業の担当者の役目に含めておきます。
一覧は、班ごとに防災倉庫に紙で保管しておきます。発災時に通信が使えるかどうかに関係なく、紙なら書き込めます。年度の初めに、転入と転出を反映して印刷し直します。
班から本部までの集計を、1枚の様式に揃える
自主防災組織の安否確認は、多くの場合、班、ブロック、本部の3段で集計されます。班の担当者が自分の班の世帯を確認し、ブロックの担当者に報告し、ブロックから本部に上がります。
この3段の集計で起きる問題は、段ごとに書き方が変わることです。班の担当者は世帯ごとに詳しく書き、ブロックの担当者はそれを「無事何世帯、不明何世帯」に要約し、本部はさらに「けが人何人」だけを抜き出す。要約の段階で、「高齢の夫婦のうち夫は無事だが妻が見当たらない」といった情報が落ちます。
様式を揃えれば、この問題は小さくなります。班、ブロック、本部で同じ様式を使い、上の段は下の段の様式を束ねるだけにします。様式に入れる区分は、次の5つに絞ります。
・確認済み(無事) ・確認済み(けが人あり) ・要救助(閉じ込め、動けない) ・不在(地域外にいることが分かっている) ・未確認
区分を増やすと、班の担当者が判断に迷い、報告が遅れます。5つに絞り、それ以外の情報は備考の欄に書きます。とくに要救助の世帯は、区分と別に、住所と状況をすぐに本部に伝える経路を持っておきます。集計を待っていると救助が遅れるからです。
報告の時刻も様式に入れます。班の報告が何時の時点の情報なのかが分からないと、本部で集計したときに、30分前の情報と5分前の情報が混ざります。
無事の表示がない家を、どの順で回るか
多くの自主防災組織では、無事であれば玄関先にタオルや旗、表示の紙を出してもらう方式を採っています。表示がある家は確認済みとして扱い、表示のない家を回ります。この方式の手間を左右するのは、表示のない家が何軒あり、どの順で回るかです。
表示のない家には、事情の違う世帯が混ざっています。本当に助けが要る世帯もあれば、不在の世帯、表示の方式を知らない世帯、表示を出すことを忘れている世帯もあります。すべてを同じ順で回ると、助けが要る世帯にたどり着くまでに時間がかかります。
回る順番は、事前に分かっている情報で決めます。
・第1群:避難に支援が要ると把握している世帯、1人暮らしの高齢者の世帯 ・第2群:古い木造の住宅、崖や擁壁の近くの住宅など、建物の被害が大きくなりやすい世帯 ・第3群:それ以外の世帯
第1群の世帯の情報は、個人情報として扱いに注意が要ります。自治体から提供される名簿を受け取っている組織では、名簿の扱いの決まりに沿って、どこまでを巡回の担当者に渡すかを決めておきます。名簿の提供を受けていない組織でも、住民の側から「何かあったら見に来てほしい」と申し出てもらう仕組みを持っているところがあります。
回る順番を地図に落としておくと、担当者は迷いません。班ごとの地図に、第1群と第2群の世帯に印をつけ、巡回の経路を書き込みます。この地図は発災時に紙で使えるよう、一時集合場所の防災倉庫にも入れておきます。
巡回する人の安全の決まりを、先に書く
表示のない家を回る巡回は、安否確認の中でもっとも危険を伴う作業です。大きな揺れの後は余震が続き、ブロック塀や瓦が落ちてくることがあります。建物が傾いた家に入れば、巡回した人自身が閉じ込められる恐れがあります。
自主防災組織の構成員は、救助の訓練を受けた専門職ではありません。安否確認のために、巡回する人が危険にさらされることのないよう、決まりを先に書いておきます。
・2人1組で回る。1人で回らない ・傾いた建物、壁にひびのある建物、ガスの臭いがする建物には入らない ・玄関先から声をかけ、返事があるかを確かめる。返事がなければ、外から窓越しに確かめられる範囲に留める ・閉じ込めが疑われる場合は、その場で救出を試みず、住所と状況を本部に伝え、救出救護班と消防につなぐ ・巡回の開始と終了の時刻を本部に伝える。一定の時刻までに戻らなければ本部が確認する ・余震が続く間、日没後は巡回を中断する
最後の決まりは、巡回を打ち切る条件です。未確認の世帯が残っていても、暗くなってからの巡回は危険が大きく、翌朝に再開します。打ち切った時点での未確認の世帯を記録し、翌朝の最初の巡回の対象にします。
巡回の担当者に渡す道具も決めておきます。ヘルメット、軍手、懐中電灯、笛、班の地図、様式の用紙、筆記具。これを一時集合場所の防災倉庫に、班の数だけまとめて置いておけば、担当者はそこで受け取って出発できます。
返事が来ない人を、4つに見分ける
安否確認で最後まで残るのは、返事が来ない人、表示も出ていない、巡回しても応答のない世帯です。この未確認の世帯は、そのままにしておくと、いつまでも集計の数字から消えません。見分けるには、未確認の理由を4つに分けて考えます。
1つめは、地域の外にいる人です。勤め先や学校、買い物や通院の外出先にいて、家は無人です。本人は無事かもしれませんが、地域からは確かめられません。家族が地域の中にいれば家族に聞き、いなければ本人からの連絡を待ちます。
2つめは、すでに避難している人です。一時集合場所を経由せずに、直接避難所や親戚の家、車の中に移っている世帯です。避難所の受付の名簿と照らし合わせれば見つかることがあります。
3つめは、家の中にいて動けない人、あるいは応答できない人です。これが最も急ぐべき世帯で、巡回で応答がなく、外出や避難の手がかりもない場合は、この可能性を考えて本部に報告します。
4つめは、表示の方式を知らない人です。引っ越してきたばかりの世帯、賃貸の集合住宅の住民、町内会に加入していない世帯です。こうした世帯は、無事でも表示を出していません。
見分けるための手がかりは、事前に集めておくことができます。平日の昼に家にいることが多いか、家族構成、避難先として予定している場所。これを任意で登録してもらっておけば、未確認の世帯のうち、どれがどの群に入る可能性が高いかを推し量れます。
確認の進み具合を掲示して、住民自身に気づいてもらう
安否確認を進めている間、その進み具合は本部の担当者の手元にしかないことがほとんどです。住民の側からは、自分の世帯が確認済みとして数えられているのかどうかが分かりません。無事の表示を出し忘れた世帯は、自分が未確認のまま残っていることに気づかず、巡回の担当者が来るのを待つことになります。
ここで効くのが、確認の進み具合を、住民が見られる形で出すことです。一時集合場所の掲示板に、班ごとの「確認済み何世帯、未確認何世帯」を書き出し、時刻とともに更新します。個々の世帯名は出さず、班ごとの数だけにします。自分の班に未確認が残っていると分かれば、住民は隣の家に声をかけたり、自分の世帯の表示を確かめたりします。
さらに一歩進めて、未確認の世帯に「確認が取れていない方は一時集合場所の受付に声をかけてください」と呼びかける方法もあります。巡回の担当者が回り切れない地区では、住民の側から名乗り出てもらうほうが早いことがあります。
掲示の内容は、紙に書いて貼るだけでなく、住民の連絡の場所にも同じ文面で出します。地域の外にいる住民や、在宅で動けない住民の家族が、そこを見て状況を知ることができます。ただし、未確認の世帯の住所や名前を出すことは避けます。不在の家が分かる形の情報は、悪用される恐れがあるからです。
進み具合を出すことには、担当者の側の利点もあります。本部に「うちの班はどうなっているか」という問い合わせが集中するのを減らせます。問い合わせに答える時間を、照らし合わせる作業に回せます。
安否確認を、どの時点で次の段階に引き継ぐか
安否確認は、未確認の世帯がゼロになるまで続けるものだと思われがちです。実際には、ゼロになることはまずありません。長期の旅行で不在の世帯、連絡先が分からない空き家に近い世帯、表示の方式を知らないまま避難した世帯が、いくつか残ります。
ゼロを目指して巡回を続けると、担当者が疲弊し、他の作業が止まります。そこで、自主防災組織としての安否確認を、どの時点で次の段階に引き継ぐかを決めておきます。
引き継ぐ時点の目安は、発災の翌日の朝の巡回が終わった時点です。この時点で残っている未確認の世帯について、次の3つを行います。
・要救助の疑いがある世帯は、すでに消防や救出救護班に伝えているかを確認する ・それ以外の未確認の世帯は、一覧にして自治体の担当窓口に渡す ・自主防災組織の役割を、確認から、在宅避難の世帯への情報と物資の橋渡しに切り替える
未確認の一覧を行政に渡すときは、未確認の理由として推し量れることを備考に書き添えます。「平日の昼は不在の世帯」「一時集合場所で家族の一部の来場を確認」といった手がかりがあれば、受け取った側が次に何をするかを判断しやすくなります。
引き継ぎの時点を決めておくことは、担当者を守ることにもつながります。いつまで続けるのかが決まっていないと、責任感の強い人ほど休まずに巡回を続けます。区切りがあれば、その後の数日間に及ぶ避難生活の支えに、力を残しておけます。
避難所の名簿と、地区の安否表を突き合わせる
大きな災害では、地区の住民の一部は指定避難所に移ります。避難所には受付があり、避難者の名簿が作られます。このとき、自主防災組織の安否表と避難所の名簿が別々に作られ、突き合わされないことがよくあります。
地区の安否表では「未確認」のままになっている世帯が、実は避難所の名簿に載っている。避難所の側では、どの地区の誰が来ているかは分かっても、その地区でまだ誰が見つかっていないのかは分からない。この2つを突き合わせる作業を誰がするのかが、決まっていないことが原因です。
突き合わせは、自主防災組織の情報班の仕事として決めておきます。発災の当日の夕方と翌朝のように時刻を決め、情報班の担当者が避難所の受付に出向き、地区の未確認の世帯の一覧を持って名簿と照らし合わせます。見つかった世帯は、安否表の区分を「確認済み」に移し、避難先を備考に書きます。
避難所の運営に自主防災組織の役員が入っている地域では、この突き合わせを避難所の運営の手順に組み込んでおくと抜けがなくなります。避難所は複数の地区の住民を受け入れるので、地区ごとに担当者を決め、受付の名簿を地区ごとに分けて書いてもらうよう、平時のうちに運営の側と話しておきます。
在宅で避難を続ける世帯も忘れてはいけません。避難所の名簿には載らないので、突き合わせでは見つかりません。在宅の世帯は、地区の安否表の中で「確認済み(在宅避難)」と分かるように備考を書き、物資や情報を届ける対象として別に一覧にしておきます。
地域の外にいる住民からの連絡を、どこで受けるか
平日の昼に災害が起きると、地域の住民のかなりの割合が地域の外にいます。この人たちは、自分の家族や家がどうなっているかを知りたがり、同時に、自分が無事であることを地域に伝えたいと考えています。
地域の外からの連絡を受ける仕組みがないと、2つのことが起きます。1つは、地域の外にいる本人は無事なのに、地区の安否表では未確認のまま残り、巡回の対象になり続けること。もう1つは、地域の外にいる人が、役員の個人の電話番号に次々と問い合わせをし、役員の電話が塞がることです。
大きな災害の直後は、電話がつながりにくくなります。音声の通話より、文字でのやりとりのほうが届きやすいと言われています。地域の外にいる住民が、文字で「無事です、今は勤め先にいます」と地区に伝えられる場所を、平時のうちに決めておきます。
その場所には、条件があります。地区の住民だけが入れること、役員の個人の電話番号を公開しなくて済むこと、本部の担当者が交代しても見られること。安否の情報には、家族構成や不在の事実が含まれるので、誰でも見られる場所に置けば、空き巣などに悪用される恐れがあります。そうした場所として、メンバー以外は見られない形の連絡の場所を平時から使っておくと、発災時にも同じ場所に連絡が集まります。
平時に使っていない仕組みは、災害のときに使われません。訓練のときだけ登場する連絡の方法は、発災時には誰も思い出しません。日頃の地区の連絡と同じ場所で、安否の連絡も受ける形にしておくことが要点です。
安否の情報を、外からの問い合わせにどこまで出すか
発災の後には、地区の外から問い合わせが来ます。離れて暮らす家族からの「親は無事か」という問い合わせ、報道機関からの問い合わせ、ときには関係のはっきりしない人からの問い合わせもあります。
安否の情報には、個人に関する情報が含まれます。どこまでを誰に伝えてよいかは、個人情報の扱いに関わる判断で、状況によって変わるため、ここで一律の答えを示すことはできません。自治体から名簿の提供を受けている組織は、その提供の際の取り決めに扱いが書かれていることが多いので、まずそれを確かめてください。
実務としては、平時のうちに次の3つを決めておく組織が多くあります。
・問い合わせを受ける窓口を1つにする。個々の巡回担当者は答えない ・家族からの問い合わせには、本人の了解が取れている範囲で答える。了解が取れない場合は、「確認中」「避難所の受付に問い合わせてほしい」と伝える ・報道機関への対応は、自主防災組織としては行わず、自治体の窓口につなぐ
住民にも、平時のうちに「災害時に離れた家族から問い合わせがあったら、どこまで伝えてよいか」を尋ねておく方法があります。登録の用紙に1行加えるだけで、発災時の判断が格段に楽になります。
訓練は、役員を外した状態で1回やる
自主防災組織の訓練は、役員が揃った休日に開かれることがほとんどです。この訓練で安否確認の手順を試しても、役員がいない時間帯の弱点は見えません。
年に1度の訓練のうち、少なくとも1回は、役員を外した状態で安否確認を試します。方法はいくつかあります。訓練の当日に、防災会長と情報班長に「今日は不在の想定です」と伝え、指示を出さずに見守ってもらう。訓練の開始を平日の夕方にし、帰宅途中の役員が間に合わない状態を作る。班の担当者を当日にくじで入れ替える。
役員を外すと、手順書のどこが特定の人に頼っていたかがはっきりします。防災倉庫の鍵を誰が持っているのか分からない、様式の用紙がどこにあるのか分からない、集計を始める人が決まらない。こうした詰まりは、役員がいる訓練では一度も表に出ません。
訓練の後には、詰まった場所を書き出し、手順書を直します。直した手順書は、次の役員の交代のときにそのまま引き継げる形にします。紙の手順書を防災倉庫に入れるだけでなく、住民がいつでも見られる場所にも置いておくと、充て職で役員になった人が自分の役割を事前に確かめられます。
役員の交代で、安否確認の手順が消えないように
充て職で役員が交代する自主防災組織では、年度が替わるたびに、安否確認の手順を知っている人がいなくなります。前年度の訓練で直した点も、交代の引き継ぎで口頭で伝えられるだけで、翌年の役員には届かないことがあります。
引き継ぐべきものは、次の5つです。
・数える、探す、照らし合わせるの3つの作業の割り振りの表 ・班ごとの世帯の一覧と、班、ブロック、本部の様式と、記入の例 ・巡回の順番をつけた班ごとの地図 ・巡回の安全の決まり ・前回の訓練で詰まった点と、直した内容
このうち、班ごとの地図と世帯の一覧は、住民の転入と転出で毎年変わります。年度の初めに班の担当者が更新し、情報班が取りまとめる流れを、手順の中に書いておきます。更新の流れがないと、数年で地図と実態がずれ、第1群の世帯が転出したまま印だけが残る、ということが起きます。
連絡の相談から見える、自主防災組織の安否確認の詰まりどころ
地域の団体から寄せられる相談を並べると、自主防災組織の安否確認で詰まっている場所は、確認の方法そのものより、平時の連絡と災害時の連絡が別の仕組みになっていることに集まっています。平時の町内会の連絡は回覧板やグループのトークで行い、防災の連絡は訓練のときだけ配る名簿と電話の連絡網で行う。発災時には、使い慣れていない電話の連絡網が最初に動かなくなります。
もう1つは、役員の交代で手順が消えることです。前任者が作った安否表の様式や地図が、前任者の自宅にしかない、という話はよく聞きます。
他の団体の使われかたを見ると、日頃の連絡と防災の連絡を同じ場所に置き、役員が交代しても場所が変わらない形にしている例が参考になります。町内会での使われかたでは、町内会の日常の連絡を役員の交代をまたいで残す例を扱っていて、自主防災組織の手順書や様式の置き場所を考える材料になります。子どもの引き渡しや学校との連携を含めて考えたい地域では、学校での使われかたも、緊急時の連絡の流れを整理しています。
誰でも入れる形の連絡の場所と、住民だけが入れる場所の違いは、安否の情報を扱ううえで重要です。この違いはLINEオープンチャットとの比較で整理していて、参加者を把握できるかどうかという観点から並べています。高齢の住民が多い地域で、新しい連絡の場所に移るときの負担については、Facebookグループとの比較も判断の材料になります。
最後に、手を付ける順番を整理します。先に決めるのは、数える、探す、照らし合わせるの3つの作業を誰に振り分けるかです。次に、様式を5区分に揃え、表示のない家を回る順番と巡回の安全の決まりを書きます。そのうえで、避難所の名簿との突き合わせと、地域の外からの連絡を受ける場所を決めます。連絡の道具を選ぶのは、その後で足ります。導入前によく聞かれる点はよくある質問にまとめています。
Q1. 自主防災組織の安否確認は、情報班だけで担うべきですか?
情報班だけに任せると、人数が足りない日に全部が止まります。安否確認を、一時集合場所で数える作業、表示のない世帯を回る作業、避難所の名簿などと照らし合わせる作業の3つに分け、それぞれに向く人を割り当てます。数える作業は足腰に不安がある人でも担えるので、役員がいない時間帯でも始められます。
Q2. 無事の表示が出ていない家は、どの順番で回るべきですか?
事前に分かっている情報で順番をつけます。避難に支援が要る世帯や1人暮らしの高齢者の世帯を最初に、古い木造住宅や崖の近くの住宅を次に、それ以外を最後に回ります。班ごとの地図に印と経路を書き込み、発災時に紙で使えるよう防災倉庫にも入れておきます。名簿の扱いは自治体との取り決めに沿って決めてください。
Q3. 巡回で応答がない家には、中に入って確かめるべきですか?
入らないのが原則です。傾いた建物やガスの臭いがする建物には近づかず、玄関先からの声かけと窓越しに確かめられる範囲に留めます。閉じ込めが疑われる場合は、住所と状況を本部に伝え、救出救護班と消防につなぎます。巡回は2人1組で行い、開始と終了の時刻を本部に伝え、日没後や余震が続く間は中断します。
Q4. 避難所に行った住民の安否は、どうやって把握すればよいですか?
情報班の担当者が、地区の未確認の世帯の一覧を持って避難所の受付に出向き、避難者名簿と突き合わせます。当日の夕方と翌朝のように時刻を決めておくと抜けがなくなります。見つかった世帯は確認済みに移し、避難先を記録します。在宅で避難している世帯は避難所の名簿に載らないため、地区の安否表の備考で別に管理します。
