自治会の個人情報について調べる人は、たいてい2つのうちどちらかの状況にいます。名簿を作ろうとして「どこまで聞いてよいのか」で止まっているか、すでにある名簿について会員から指摘を受けて、扱いを見直そうとしているかです。
結論を先に書きます。自治会で決めるべきことは、法律の細かい条文の解釈ではありません。何に使うかを先に決めて、そこから集める項目を逆算することです。使い道が決まっていない項目は集めない。この1点を守るだけで、扱いに悩む場面のほとんどが消えます。集めてしまったあとで「どう守るか」を考えると、置き場所も消し方も難しくなります。ここでは、法律上の位置づけ、集める項目の絞り方、置き場所の決め方、役員交代での消去、写真の扱いまでを順に見ていきます。
自治会も、個人情報を扱う事業者として扱われる
最初に押さえておきたいのは、自治会が法律の外にいる存在ではないという点です。会社ではないから関係ない、営利目的ではないから対象外、という理解をしている会は少なくありません。
個人情報保護法における「事業」とは、一定の目的をもって反復継続して遂行される同種の行為であって、かつ社会通念上事業と認められるものをいい、営利・非営利の別は問いません。したがって、非営利の活動を行っている団体であっても、個人情報データベース等を事業の用に供している場合は、個人情報取扱事業者に該当します。NPO法人や自治会・町内会、同窓会、PTAのほか、サークルやマンション管理組合なども個人情報取扱事業者に該当し得ます。 出典: 個人情報保護委員会
営利かどうかを問わない、と明記されています。会員名簿を検索できる形で持っていれば、自治会もこの枠に入ります。
とはいえ、身構える必要はありません。求められているのは、企業と同じ体制を作ることではなく、次の3つを決めることに集約されます。何のために集めるかを伝えること、決めた目的の外に使わないこと、要らなくなったら消すこと。この3つは、名簿を作る前に役員会で決められる範囲の話です。逆に、名簿ができあがってから決めようとすると、すでに集めた項目のうちどれが目的外なのかを1つずつ判定することになり、手が止まります。
利用目的を先に決めると、集める項目が決まる
名簿づくりでいちばんよくある失敗は、「とりあえず全部聞いておく」ことです。世帯主の氏名、家族全員の氏名と生年月日、勤務先、電話番号、携帯番号、メールアドレス、血液型、車のナンバー。ここまで集めている会もありますが、その多くは使われないまま毎年更新されています。
順番を逆にします。まず、自治会が名簿を使う場面を書き出します。実務では次の4つに収まることがほとんどです。
・回覧や配布物を回すため(世帯の並び順と住所) ・会費の徴収と記録のため(世帯名と班) ・行事の連絡と出欠のため(連絡の取り方) ・緊急時に連絡するため(連絡の取り方と、必要なら日中の在宅状況)
この4つに必要な項目だけを残すと、氏名、住所、班、連絡の取り方の4項目で足りる会がかなりあります。家族全員の氏名は、子ども会や敬老会と一体で運営している場合を除けば、自治会本体には要りません。勤務先と血液型は、どの場面でも使いません。
集める項目を減らすと、副次的な効果が2つあります。1つは、記入する住民の負担が下がり、提出率が上がること。もう1つは、漏れたときの被害が小さくなることです。持っていない情報は漏れません。守る仕組みを増やすより、持つ情報を減らすほうが確実で、費用もかかりません。
利用目的は、名簿の用紙に書いておきます。「この名簿は、回覧・会費・行事の連絡・緊急時の連絡にのみ使用し、外部には提供しません」の1文で足ります。書いてあれば、あとから「そんな話は聞いていない」という指摘は起きにくくなります。
世帯の名簿と、個人の名簿を分けて考える
自治会の名簿には、性質の違う2種類が混ざっています。この区別をしないまま1枚の表にしていることが、扱いを難しくしています。
世帯の名簿は、住所の並び順に世帯名と班を並べたものです。回覧の順番、会費の管理、ゴミ集積所の当番の割り当てに使います。ここに必要なのは世帯を識別する情報だけで、家族の構成は要りません。
個人の名簿は、連絡先や役割を個人単位で持つものです。役員、班長、防災の担当、子ども会の担当。緊急の連絡や役割の引き継ぎに使います。こちらは人数が少なく、更新の頻度も高い。
この2つを1つの表にすると、全世帯分の個人の連絡先を持つことになります。実際に使うのは役員と班長の数十人分なのに、200世帯分の携帯番号を保管する状態になり、管理の対象だけが膨らみます。
分けて持つと、更新も楽になります。世帯の名簿は転入と転出のときだけ動きます。個人の名簿は年度替わりに大きく動きます。更新の周期が違うものを同じ表に入れると、どちらかが必ず古くなります。
名簿をどこに置くかが、いちばんの分かれ目
集める項目を絞ったら、次は置き場所です。ここが実務でいちばん詰まります。
紙で持つ場合、保管場所と鍵の管理者を決めます。会長の自宅の棚に置くと、会長が代わるたびに物理的な移動が発生し、コピーがどこかに残ります。集会所に鍵付きの保管場所があるなら、そちらのほうが引き継ぎは楽です。
データで持つ場合、役員個人のパソコンやスマートフォンに置かれることが多く、これが最大の穴になります。個人の端末は、その人が役を離れても残ります。家族が使うこともあります。故障して修理に出すこともあります。名簿が入ったファイルが、どの端末に何個あるのかを誰も把握していない状態は、珍しくありません。
もう1つ見落とされるのが、チャットの履歴です。連絡のやり取りの中で、住所や電話番号をそのまま書き込むと、その情報は参加者全員の端末に残ります。会を辞めた人の端末にも残ります。会員の連絡先を全員に共有するつもりがなかったのに、結果としてそうなっている。この形で漏れていることに、後から気づく会が多くあります。
置き場所を決めるときの条件は3つです。役員だけが見られること、退任したら見られなくなること、次の役員がそのまま引き継げること。個人の端末や個人のアカウントは、2つめと3つめを満たしません。会として持つ場所を用意する必要があります。誰が入ってこられるかという観点での違いはLINEオープンチャットとの比較で、参加の仕組みと見える範囲の差として整理しています。
役員が代わるとき、名簿はどこへ行くか
自治会の個人情報でもっとも起きやすい問題は、漏えいそのものより「消し忘れ」です。任期を終えた役員の手元に、名簿のコピーが残り続けます。
法律の側でも、要らなくなったデータの扱いには考え方が示されています。
「遅滞なく」が示す具体的な期間は、個人データの取扱状況等により異なり得ますが、業務の遂行上の必要性や引き続き当該個人データを保管した場合の影響等も勘案し、必要以上に長期にわたることのないようにする必要があると解されます。他方で、事業者のデータ管理のサイクル等、実務上の都合に配慮することは認められます。 出典: ppc.go.jp
実務上の都合に配慮してよい、とされています。つまり自治会であれば、年度末の引き継ぎのタイミングでまとめて処分する、という運用で構いません。大事なのは、そのタイミングを決めておくことです。
決めておくとよいのは次の4点です。
・任期終了後、いつまでに手元の名簿を処分するか(年度末から1か月以内など) ・紙はどう処分するか(そのまま捨てず、細断して集会所で処分するなど) ・データはどう消すか(端末の中と、クラウドの両方) ・処分したことを、誰にどう報告するか
4つめが抜けている会がほとんどです。報告の形がないと、処分したかどうかを誰も確かめられません。引き継ぎの場で「手元の名簿は処分しました」と一言もらう、それを引き継ぎ書に記録する。この程度で十分機能します。
もっと確実なのは、そもそもコピーを持たせないことです。会として1か所に置き、役員は必要なときにそこを見る形にすれば、任期が終われば見られなくなり、処分の作業そのものが要らなくなります。
名簿を配らない運用に変える
以前は、全戸に配る名簿を作っている自治会が一般的でした。氏名、住所、電話番号が並んだ冊子を、加入世帯に配る形です。いまはこの形をやめる会が増えています。
やめる理由は明快で、配ってしまうと回収できないからです。転出した世帯の手元にも、退会した世帯の手元にも残ります。会員の誰かが紛失しても、会には把握のしようがありません。会として管理できない状態に、自ら情報を置いていることになります。
配らずに済ませる方法は、用途ごとに次のように分かれます。
回覧の順番を知るためなら、班ごとの並び順だけを班長に渡せば足ります。全世帯の一覧は要りません。
会員どうしが連絡を取るためなら、名簿を配るのではなく、連絡できる場所を用意するほうが安全です。連絡先そのものを渡さなくても、同じ場所にいれば連絡は取れます。この形にすると、退会した人は場所から外れるので、連絡先が残りません。
緊急時に備えるためなら、次の節で触れる市区町村の制度との関係を整理してから決めます。
現場では、配布用の名簿をやめる際に「今年から配らないことにしました」とだけ伝えて反発を受けた例がよく聞かれます。理由を先に説明し、かわりにどうするかを示す。この2つを同時に出せば、反対はほとんど出ません。
災害時の要支援者の情報は、自治会が独自に抱えない
災害の備えとして、高齢の単身世帯や支援が必要な人の一覧を自治会で作ろうとする動きがあります。善意から出る話ですが、ここは慎重に進める場面です。
多くの市区町村には、避難行動要支援者の名簿を作る制度があり、本人の同意を得たうえで、自治会や自主防災組織に提供される仕組みが用意されています。制度の枠組みで受け取るのと、自治会が独自に聞き取って作るのとでは、扱いの重さが違います。健康状態や介護の状況は、通常の会員名簿とは別の配慮が求められる情報です。
実務としては、次の順で確認するのが安全です。まず市区町村の担当課に、制度で提供される名簿があるかを聞きます。あるなら、その枠組みで受け取り、市区町村が定める管理方法に従います。ないなら、独自に作る前に、何を集めて誰が持つのかを役員会で決め、本人の同意を書面で取ります。
独自に作った名簿を、役員全員で共有しない、という判断をしている会も多くあります。持つのは会長と防災担当の2人だけにして、必要が生じたときに開く。持つ人が増えるほど、漏れる経路が増えます。防災を理由にすれば何でも集めてよい、とはならない点だけは押さえておく必要があります。
行事の写真をどう扱うか
自治会の行事では写真を撮ります。夏祭り、清掃活動、防災訓練、敬老会。この写真の扱いで揉めることは珍しくありません。
判断を分ける軸は、誰が見られる場所に置くかです。会員だけが見られる場所に置くのと、掲示板や広報誌のように誰でも見られる場所に出すのとでは、必要な配慮が違います。
会員だけが見られる場所に置く場合でも、あらかじめ伝えておくのが一般的です。行事の案内に「当日の様子を撮影し、会の記録として共有します」と1行入れておく。撮られたくない人はその場で申し出られます。
誰でも見られる場所に出す場合は、写っている人に個別に確認する運用をとる会が多く見られます。特に子どもが写っている写真は、掲示板に貼らず、会員だけが見られる場所に留めるという判断をする会が増えています。法律上どこまで許されるかを断定するのは難しい領域ですが、揉めたときの負担を考えると、確認してから出すほうが結果的に楽です。
置き場所の面では、役員個人のスマートフォンに写真が溜まる形が問題になります。端末を変えるときに消える、役を離れても残る、家族が見られる。会として置く場所を決めておくと、この3つが同時に解決します。写真と連絡と予定をまとめて置く形は町内会での使われかたに、行事ごとの流れとして載せています。
会員から「載せたくない」と言われたときの対応
名簿の作成を進めると、必ず一定数の世帯が記入を渋ります。ここでの対応を決めておくと、役員が個人で判断せずに済みます。
まず、何を渋っているのかを確かめます。全部を出したくないのか、電話番号だけを出したくないのかで、対応が変わります。多くの場合は後者で、氏名と住所は問題ないが、携帯番号を会に預けることに抵抗がある、というものです。
対応は3段階で用意しておきます。
・全項目の記入を求めるのではなく、必須と任意を分ける。回覧に必要な氏名と住所は必須、連絡先は任意 ・任意の項目を書かない世帯には、緊急時にどう連絡するかを個別に決める(班長が訪問する、家族の連絡先を班長だけが持つ、など) ・それでも加入自体を渋る場合、名簿と加入は切り離して扱う
3つめは意外に効きます。「名簿に載らないと入れない」という運用にしている会がありますが、そこを緩めるだけで加入が続く世帯があります。名簿は会の運営の道具であって、加入の条件ではありません。
渋る理由が「会の外に出るのではないか」という不安である場合も多くあります。このときは、集めた情報を誰が見るのかを具体的に伝えると、態度が変わることがあります。「見るのは会長と会計と班長の3人だけです」「紙は集会所の鍵付きの場所に置きます」といった説明は、抽象的な「適切に管理します」より、はるかに納得を得やすい言い方です。管理の方法を決めていれば、そのまま説明の言葉になります。決めていないから、説明が抽象的になります。
規約に書くことと、書かなくてよいこと
個人情報の扱いを整えようとすると、立派な取扱規程を作ろうとする流れになりがちです。企業の規程を写してきて、十数条の文書を作る。しかし、その文書を役員全員が読んで運用できるかというと、まず無理です。翌年の役員は読みません。
自治会で必要なのは、次の4行に収まります。
・この名簿は、回覧・会費・行事の連絡・緊急時の連絡にのみ使う ・会の外へは提供しない ・保管は会が定めた場所で行い、役員は個人の端末に控えを置かない ・役員の任期が終わったら、手元の控えは処分する
これを会則の付則か、名簿の用紙の冒頭に書いておけば、実務としては足ります。長い規程を作るより、全員が覚えられる短い決めごとを守るほうが、実際の漏えいは減ります。
総会で決議しておくかどうかは会によりますが、決議しておくと、翌年以降の役員が「なぜこうなっているのか」を説明できます。役員の口頭の申し送りだけだと、2年で理由が失われ、3年目には元に戻ります。個人情報の扱いは、決めた内容そのものより、決めた状態が続くかどうかで差がつきます。
デジタルに移すときに、新しく出てくる論点
紙からデジタルに移すと、個人情報の論点が減る部分と、増える部分があります。両方を把握しておくと、判断が早くなります。
減るのは、持ち出しと紛失です。紙の名簿は、持ち歩けば落ちます。コピーすれば増えます。データにしておけば、必要なときにその場で見る形にでき、控えを増やさずに済みます。
増えるのは、誰が入れるかという管理です。紙なら鍵1つで済んでいたものが、参加者の追加と削除という日常の作業になります。ここを担当者不在にすると、退会した人が入ったまま、という状態が生まれます。役員のうち1人を管理の担当と決め、年度替わりと退会時に見直す。これを引き継ぎ書に書いておきます。
もう1つ増えるのが、会社ではなく個人の持ち物に紐づいてしまう問題です。個人のアカウントで作った場所は、その人が辞めるときに一緒に消えるか、逆にその人だけが管理者のまま残ります。どちらも困ります。会として持つ形を最初に選んでおくと、この問題は起きません。手段ごとの違いはBANDとの比較に、管理者の設定や参加の仕組みという観点で整理してあります。
名簿の更新を、いつ誰がやるか
集める項目と置き場所が決まっても、更新の担当と時期を決めていない会が多くあります。古い名簿は、正しくないという以上に危険です。転出した世帯の情報を持ち続けているのは、要らなくなった情報を保管していることと同じです。
更新のきっかけは3つあります。転入、転出、世帯内の変更です。このうち転出がいちばん見落とされます。転入は挨拶があるので気づきますが、転出は静かに起きます。班長が気づいたときに会計へ伝える、という口頭の流れだけだと、必ず抜けます。
実務としては、年に1回、全世帯に確認の紙を回す会が多く見られます。総会の前か、年度替わりの時期です。「現在の登録内容はこの通りです。変更があればご記入ください」という形にすると、記入する手間が小さく、返ってくる率も高くなります。白紙から書かせると、提出率が落ちます。
更新の担当は、会計か書記に固定します。役員全員が触れる形にすると、複数の版ができて、どれが最新か分からなくなります。更新できるのは1人、見られるのは役員全員、という分け方が扱いやすい形です。
転出した世帯の情報は、その場で消します。「年度末にまとめて」と後回しにすると、会費の記録と突き合わせるときに混乱します。転出の連絡を受けた時点で名簿から外し、会費の記録には転出日だけを残す。この分け方をしておくと、どちらも整理された状態を保てます。
会の外へ情報を出してよい場面を、先に決めておく
自治会には、外部から名簿や連絡先を求められる場面があります。求められてから慌てて判断すると、断りきれずに渡してしまうことがあります。
よくあるのは次の5つです。
・市区町村や社会福祉協議会からの照会 ・民生委員からの、高齢の単身世帯についての問い合わせ ・警察や消防からの照会 ・葬儀の際に、遺族側から会員の連絡先を尋ねられる ・地域の団体や事業者からの、配布物のための世帯数や宛名の依頼
このうち最後の1つは、原則として断る会がほとんどです。会の運営のために集めた情報を、外部の配布に使うのは、集めたときに伝えた目的の外にあたります。目的の外に使わない、という約束を最初に書いておく理由がここにあります。
前の4つは、状況によって判断が分かれます。判断を役員個人に任せず、「会長と副会長の2人で確認して決める」「必要なら本人に確認してから渡す」といった手順だけ決めておきます。手順が決まっていれば、その場で断る理由が立ちますし、時間を置いて判断できます。
もう1つ、会の内側でも同じことが起きます。会員から「隣の家の連絡先を教えてほしい」と頼まれる場面です。ここも「会からは渡さず、こちらから相手に伝えて折り返してもらう」という形にしておくと、断ったことによる角が立ちません。
漏れてしまったときに、最初にやること
対策をしていても、起きるときは起きます。名簿の入った封筒を落とす、間違った相手に送る、端末を紛失する。起きたあとの動き方を決めておくと、被害の広がり方がまったく違います。
最初にやるのは、範囲の特定です。何が、何人分、どの経路で外に出たのかを書き出します。ここを曖昧にしたまま謝罪だけを先に出すと、後から範囲が広がって二度目の説明が必要になり、信頼が大きく落ちます。
次に、拡大を止めます。誤送信ならすぐに相手へ連絡して削除を依頼する、端末の紛失なら遠隔で使えなくする、といった処置です。
そのうえで、本人への連絡です。誰の情報が出たのかが分かっているなら、その世帯に直接伝えます。全戸への告知より先に、当事者に伝えるのが順番です。
行政への報告が必要になる場合があるため、市区町村の担当課か個人情報保護委員会の窓口に相談する、という手順も決めておきます。制度の詳しい内容は個人情報保護委員会の案内で確認できます。自治会の役員がその場で判断するより、相談先を先に決めておくほうが確実です。
最後に、原因を1つだけ潰します。再発防止として規則を5つ作る会がありますが、守られないまま形だけ残ります。落としたのが紙の名簿なら、持ち出す必要をなくす。端末を紛失したのなら、端末にコピーを置かない。原因に直接効く変更を1つ決めるほうが、確実に効きます。
情報が流れやすい経路を、一度点検する
最後に、いま会の中で個人情報がどこを流れているかを点検します。名簿だけを見ていると、他の経路を見落とします。
点検する場所は次の5つです。
・会員名簿そのもの(紙とデータ、それぞれ何部あるか) ・会費の記録(誰がいくら払ったかは、会員の状況が推測できる情報です) ・チャットや連絡アプリの履歴(住所や電話番号を書き込んでいないか) ・行事の申込用紙(回収後に処分しているか、役員宅に積まれていないか) ・掲示板と広報誌(氏名を出していないか)
このうち、3つめと4つめは見落とされがちです。行事の申込用紙は、行事が終われば役目を終えますが、そのまま保管されていることがよくあります。年度末にまとめて処分する日を決めておくと解決します。
チャットの履歴については、経路そのものの性質を確認しておく価値があります。個人のアカウントどうしで繋がる形だと、会の連絡と個人の連絡が同じ場所に混ざり、退会後も繋がりが残ります。会の場としてまとまっている形だと、外れた時点で見えなくなります。この違いはLINEグループとの比較に、参加の仕組みと退会時の扱いという観点で整理してあります。
持つ情報を減らすことが、いちばん効く
自治会からの相談を見ていくと、個人情報の悩みの中身は「守り方が分からない」よりも「どこに何があるか分からない」に寄っています。名簿が紙とデータで複数あり、役員それぞれの端末にコピーがあり、チャットの履歴にも連絡先が書かれている。この状態では、どれだけ管理の規則を作っても実効性がありません。
打ち手の優先順位は明快です。1つめは、集める項目を減らすこと。2つめは、持つ場所を1つにすること。3つめは、役員が代わったら見られなくなる形にすること。この順で進めると、規則を増やさずに扱いが軽くなります。
3つめを満たすかどうかは、会の場を選ぶときの判断基準にもなります。個人のアカウントに紐づく形だと、役割が終わっても繋がりが残ります。役割として権限を渡す形だと、外れた時点で見えなくなります。会として長く続けるなら、後者のほうが引き継ぎの手間が小さく、消し忘れも起きません。
導入や運用を検討する段階でよく出る疑問はよくある質問にまとめてあるので、役員会で説明するときの材料として使えます。個人情報の扱いは、決めてしまえば毎年悩む話ではありません。最初に4項目まで絞り、置き場所を1つにする。この2つを済ませておけば、あとは年度末に処分の日を決めるだけで回ります。
Q1. 自治会の名簿に、家族全員の氏名や生年月日は必要ですか?
子ども会や敬老会と一体で運営している場合を除けば、自治会本体には不要なことがほとんどです。回覧・会費・行事の連絡・緊急時の連絡という4つの用途から逆算すると、氏名・住所・班・連絡の取り方の4項目で足りる会が多くあります。使い道のない項目は集めないのが安全です。
Q2. 役員が任期を終えたあと、手元の名簿はどうすればよいですか?
年度末の引き継ぎのタイミングで処分する、と決めておけば十分です。紙は細断し、データは端末とクラウドの両方から消します。処分したことを引き継ぎ書に一言記録しておくと、確認ができます。そもそもコピーを持たせず、会として1か所に置く形にすれば、この作業自体が不要になります。
Q3. 全戸に配る会員名簿をやめたいのですが、どう説明すればよいですか?
配ったものは回収できず、転出や退会をした世帯の手元にも残る点を先に説明します。そのうえで、回覧の順番は班長に並び順だけを渡す、会員どうしの連絡は連絡先を配らずに連絡できる場所を用意する、と代替案を同時に示してください。理由と代替案をセットで出せば、反対はほとんど出ません。
Q4. 行事で撮った子どもの写真を、掲示板に貼ってもよいですか?
法律の解釈を断定できる領域ではありませんが、誰でも見られる掲示板には貼らず、会員だけが見られる場所に留める運用をとる会が増えています。掲示板には日時と結果だけを書き、写真は会の中で共有する。行事の案内に撮影と共有について一行入れておくと、当日の申し出も受けられます。