団体ごとの決め方

マンションの管理組合の総会をどう回すか|招集から議事録までの段取り

2026年9月13日 ・ Tsudoo編集部

マンションの管理組合の総会は、町内会や保護者会の集まりとは前提が違います。参加するかどうかを本人が選べないからです。部屋を買った時点で全員が構成員になり、そこで決まったことは欠席した人にも、後から部屋を買った人にも効きます。だからこそ、通知の日付、議案の書き方、票の数え方といった手続の一つひとつが、後で効力を争われたときの防波堤になります。ここでは招集の準備から議事録の保管までを、実務の順番どおりに並べます。

参加を選べない人たちの会議である

管理組合には入会も退会もありません。区分所有法は、区分所有者は全員で建物と敷地と附属施設の管理を行う団体を構成すると定めています。加入届も脱会届も存在せず、専有部分を取得した瞬間に構成員になります。町内会が任意加入の団体で、入るか入らないかを世帯ごとに選べるのとは、根本から違う点です。

この違いは総会の運営にそのまま響きます。会に興味がない人、部屋を人に貸していて一度も来たことがない人、相続で持っただけで住んだことがない人。そういう人たちも全員が構成員であり、通知を出す相手であり、票を持っています。「関心のある人だけで決める」という運び方ができません。

さらに、決めたことの効力は本人が去った後にも残ります。規約と集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても効力を生ずると定められています。特定承継人とは、部屋を買った次の持ち主のことです。今年の総会で決めた駐輪場のルールは、来年その部屋を買った人にも適用されます。逆に言えば、手続を欠いた決議は、何年か経ってから新しい持ち主に「そんな決め方は無効だ」と言われる余地を残します。

2026年4月1日に施行された改正では、区分所有者の責務という条文も新しく置かれました。管理が適正かつ円滑に行われるよう、相互に協力しなければならないという内容です。罰則のある規定ではありませんが、総会に一度も反応しない区分所有者に対して、理事会が働きかける根拠にはなります。

そしてもう一つ、多くの管理組合が見落としているのが、管理者は少なくとも毎年一回集会を招集しなければならないという定めです。これは努力目標ではなく義務です。実際に年に1回開いている管理組合は89.9%、年に2回以上が6.4%という調査結果があります。裏を返すと、開いていない管理組合が一定数あるということです。管理会社に運営を任せきりにしていて、いつの間にか2年空いていたという相談は珍しくありません。

出席率は数字の上では9割、実際に来るのは4分の1

総会の空気を決めるのは出席率ですが、この数字は2通りの数え方があり、混同すると議論がかみ合いません。

国土交通省が5年ごとに実施している調査では、直近の通常総会への区分所有者の出席割合は、委任状と議決権行使書の提出者を含めると平均88.5%でした。ところが、それらを除いた実際に会場に来た人の割合は平均24.6%にとどまります。総戸数の規模が大きくなるほど低くなり、単棟型が26.0%、団地型が17.5%という差もあります。

内訳も出ています。委任状の提出割合は平均28.9%、議決権行使書の提出割合は平均35.6%です。つまり、総会を成立させている票の大半は、会場ではなく郵便受けと集合ポストから集まっています。

この構造を理解すると、理事会が力を入れるべき場所が変わります。当日の進行を磨いても、動く票は全体の4分の1です。残りの4分の3は、議案書が配られてから締切までの2週間ほどの間に、各戸の玄関先で決まっています。議案書が読みにくい、何を賛成すると何が起きるのか分からない、という状態を放置したまま当日の司会だけ練習しても、結果は変わりません。

もう一つ押さえておきたいのが、来ない人の内訳です。賃貸住戸が1戸もないマンションは12.8%しかなく、賃貸戸数の割合が20%を超えるマンションが15.5%あります。貸している区分所有者は建物内に住んでいないので、掲示板を見ることも、エレベーターで顔を合わせることもありません。この層に届く経路は、登録された送付先だけです。送付先の登録が古いまま放置されていると、その票は最初から失われています。

2026年4月に決議の数え方が変わった

区分所有法は2025年に大きく改正され、2026年4月1日から施行されています。総会に直結する変更がいくつもあるので、規約と議事の運び方を一度点検してください。

最も影響が大きいのは、普通決議の数え方です。改正前は、区分所有者と議決権の各過半数、つまり組合員全体を母数として数える建て付けでした。改正後はこうなっています。

集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数で決する。 出典: laws.e-gov.go.jp

「出席した区分所有者」が母数になりました。委任状と議決権行使書の提出者は出席者に算入されるので、実務上の集計手順そのものは大きく変わりませんが、母数が全体から出席者に変わったことで、無反応な区分所有者が多い管理組合でも議事が前に進みやすくなります。

規約の設定、変更、廃止についても形が変わりました。区分所有者の過半数かつ議決権の過半数を持つ人が出席していることを条件に、出席した区分所有者と議決権の各4分の3以上の多数で決する、という組み立てです。定足数の要件が条文の中に明示された点が、実務上の新しい注意点になります。共用部分の変更についても同じ形の定めが置かれています。

建替え決議は原則として区分所有者と議決権の各5分の4以上のままですが、耐震性が基準に適合していない場合など、法務大臣が定める基準に該当するときは4分の3に下がる仕組みが加わりました。築40年以上のマンションは2025年末で約158.8万戸あり、10年後には約313.1万戸になると推計されています。将来この条文を使う管理組合は増えます。

さらに、区分所有者を知ることができない、または所在を知ることができないときに、裁判所の裁判によってその人を決議の母数から外せる制度も新設されました。所在不明や連絡先不通の住戸があるマンションは全体の3.3%という調査結果ですが、該当する管理組合にとっては決議が一歩も進まない原因そのものでした。国土交通省のマンション標準管理規約も2025年10月17日付で改正されているので、規約のひな型を参照している管理組合は最新版と突き合わせてください。

議決権は頭数ではなく床面積で決まる

管理組合の総会が他の会議と決定的に違うのが、票の重さです。区分所有法は、各区分所有者の議決権は規約に別段の定めがない限り共用部分の持分の割合による、と定めています。そしてその持分は、専有部分の床面積の割合です。床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積で測ります。

つまり、100平方メートルの部屋を持つ人は、50平方メートルの部屋を持つ人のおよそ2倍の票を持ちます。1戸1票ではありません。ただし、実務では規約で「1戸につき1議決権」と定めている管理組合も多くあります。どちらを採用しているかを規約で確認しないまま集計すると、結果そのものが違ってきます。

さらに厄介なのが、決議に2つの数え方が同時に必要になる点です。普通決議も特別決議も、「区分所有者の数」と「議決権の数」の両方で要件を満たす必要があります。集計表は最初から2列で作ってください。1列だけで集計して当日に気づくと、その場では直せません。

共有名義の部屋も手当が要ります。夫婦の共有、兄弟の共有、相続で持分が分かれた部屋。条文は、専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は各共有者の持分の価格に従いその過半数をもって議決権を行使すべき者1人を定めなければならない、としています。議決権行使者の届出を提出してもらう運用が要ります。届出がない場合、招集の通知は共有者の1人にすれば足りると定められていますが、票の扱いは別問題なので、届出用紙を通知に同封しておくのが実務的です。

そして、部屋を持っていない人には票がありません。同居している配偶者も、賃借人も、議決権は持ちません。「うちは夫が単身赴任中なので妻が出ます」という場合は、代理人としての委任状が要ります。ここを口頭で通してしまうと、後から採決の有効性を問われます。

招集通知は1週間前が下限、実務では3週間前

条文が定める招集通知の期限は、会日より少なくとも1週間前です。会議の目的たる事項と議案の要領を示して、各区分所有者に発しなければならないとされ、この期間は規約で伸長できます。多くの管理組合の規約は、標準管理規約に合わせて2週間前と定めています。

しかし、実務でこの下限に合わせると確実に足りません。理由は先に見たとおり、票の大半が委任状と議決権行使書で動くからです。締切を総会の前日に置くとして、そこから郵送や投函の時間、判断のための家族での相談、内容が分からないときの問い合わせと回答を差し引くと、3週間の余裕が要ります。

もう一つ、期限より重要なのが議案の要領です。条文は、集会においては第35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ決議をすることができる、と明記しています。通知に書いていない議題は、当日その場で全員が賛成しても決議できません。「その他」という枠を作って当日に持ち出す運びは、事実上使えないと考えてください。報告や意見交換にとどめるなら構いませんが、決議はできません。

議案の要領とは、何をどう決めるのかが読めば分かる程度の記述です。「大規模修繕工事の件」だけでは足りません。工事の範囲、概算の金額、資金の出どころ、施工者の選定方法まで書いて、初めて要領を示したことになります。ここが薄いと、決議そのものが不安定になります。

通知の宛先にも定めがあります。区分所有者が通知を受けるべき場所を管理者に届け出ているときはその場所へ、届け出ていないときは所有する専有部分の所在地へ発すれば足り、通常到達すべき時に到達したものとみなされます。届出がないまま海外に転居した区分所有者宛でも、部屋のポストへ入れれば法律上は到達したことになります。ただし、実際にその人が読んでいないことに変わりはありません。2026年4月の改正では、国内に住所や居所を持たない区分所有者が国内管理人を選任できる制度も新設されました。海外の所有者が増えている管理組合は、この届出の受け皿を先に作っておくと後が楽になります。

議案書に何をどう並べるか

議案書は、読む順番で理解のしやすさが変わります。組み立ての定石は、報告事項を先に、決議事項を後にすることです。

前半に置くのは、事業報告、決算報告、監査報告です。管理者は集会において毎年一回一定の時期に事務に関する報告をしなければならない、という定めがあります。これは決議事項ではなく報告事項ですが、省いてよいものではありません。決算については、会計の締めから監事の監査までに時間がかかるので、総会の2か月前には草案を仕上げて監事の日程を押さえてください。

後半に置くのが決議事項です。第1号議案から順に番号を振り、それぞれに「普通決議」「特別決議」の別を明記します。特別決議が必要な議案を普通決議のつもりで採決してしまう事故は、この表示が抜けているときに起きます。規約の変更、共用部分の変更、建替えは要件が違います。

数字の見せ方にも工夫が要ります。決算書の数字をそのまま当日に読み上げても、誰の頭にも残りません。前年との差が大きい項目だけを3つ選び、なぜ変わったのかを1行で添えると、質疑の質が上がります。修繕積立金の額を議案にするなら、月あたり1戸の金額と、値上げ後に何年でいくら貯まるのかを並べて示してください。調査では、駐車場使用料等からの充当額を含む月あたり1戸の管理費の総額は平均17,103円、修繕積立金の総額は平均13,378円という結果が出ています。自分のマンションの水準を全国の平均と並べて示すと、議論の土台がそろいます。

委任状と議決権行使書は別物として扱う

この2つを混同している管理組合は多く、後で揉める原因になります。

議決権行使書は、議案ごとに賛成か反対かを本人が書いて出す書面です。本人の意思がそのまま票になります。当日に議案が修正されたときは、修正前の議案への賛否として扱われるのが原則で、修正の程度が大きければその票は使えなくなります。

委任状は、議決権の行使を他人に任せる書面です。誰に任せるかを書く欄があり、多くは議長への一任として集まります。この場合、当日に議案が修正されても、受任者の判断で票を投じられます。理事会が提出した議案を通す方向に働くので、白紙委任がどれだけ集まっているかは、実質的に理事会の権限の大きさを意味します。

条文は、議決権は書面または代理人によっても行使することができ、書面または代理人によって議決権を行使した区分所有者の数は出席した区分所有者の数に、当該議決権の数は出席した区分所有者の議決権の数に、それぞれ算入すると定めています。どちらも出席者として数える点は同じです。

実務で決めておくべきことが3つあります。1つ目は、代理人の資格を規約で限定するかどうかです。同居の親族、他の区分所有者、といった限定を置いている管理組合が多くあります。2つ目は、同じ人から議決権行使書と委任状の両方が出てきたときにどちらを優先するかです。先に規約か細則で決めておけば、当日に迷いません。3つ目は、提出の締切と受付場所です。締切を過ぎた分をどう扱うかも、事前に決めて通知に書いてください。

なお、書面による議決権の行使に代えて、規約または集会の決議によって電磁的方法で議決権を行使できる、という定めもあります。オンラインでの議決権行使を導入するなら、まずこの決議か規約の定めが要ります。運用だけ先に始めると根拠を欠きます。

賃借人は票を持たないが、意見は述べられる

貸し出されている住戸が多い管理組合では、ここが毎年の火種になります。賃借人は区分所有者ではないので議決権を持ちません。しかし、法律は意見を述べる機会を保障しています。

区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる、という条文があります。ペットの飼育、楽器の演奏時間、駐輪場の使い方、宅配ボックスや置き配のルール。こうした議案は、実際にそこに住んでいる賃借人の生活を直接変えます。

そして、その機会を知らせる義務が管理組合側にあります。招集の通知を発した後、遅滞なく、集会の日時、場所、会議の目的たる事項、議案の要領を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない、と定められています。掲示を忘れると、手続の瑕疵になります。エントランスの掲示板に、総会の案内とは別に占有者向けの掲示を出す運用を、年間の作業として組み込んでください。

一方で、決議に従う義務は賃借人にもあります。占有者は建物や敷地の使用方法につき、区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う、とされています。使い方のルールは賃借人にも効きます。だからこそ、決まったルールを賃借人へどう届けるかが実務の課題になります。貸主である区分所有者を経由するのか、管理会社の賃貸部門を通すのか、掲示だけで済ませるのか。経路を決めていない管理組合では、ルールを守っていないのが賃借人であるケースが目立ちます。届いていないだけ、ということが多いからです。

当日の運営と、票の数え方

当日の作業は、受付の設計でほぼ決まります。

受付では、出席者の本人確認、議決権行使書と委任状の受領、資料の配付を同時に処理します。ここで詰まると開会が遅れます。名簿は住戸番号順に並べ、事前に届いている書面の分は先に印を付けておいてください。当日に届く分だけを処理すれば済むようにすると、行列が消えます。

議長は、規約に別段の定めがある場合と別段の決議をした場合を除いて、管理者または集会を招集した区分所有者の1人が務めます。多くの管理組合では規約で理事長と定めています。

採決では、賛成の数を2つの軸で数えます。区分所有者の数と、議決権の数です。書面と委任の分は事前に集計しておき、当日の挙手分だけを足す形にすれば、その場での計算量が減ります。集計係を2人置いて、独立に数えて突き合わせる管理組合もあります。金額の大きい議案では、この二重確認が効きます。

質疑の扱いも先に決めておきます。1つの議案を説明するたびに質疑を挟む形にするか、説明を全部終えてから受ける形にするか。前者は論点がずれにくい代わりに、終了の時刻が読めなくなります。1議案あたりの質疑時間の目安を議事次第に書いておくと、進行が止まりません。

修繕積立金の値上げや大規模修繕のように賛否が割れる議案では、採決の前に「この議案が否決された場合に何が起きるか」を議長が一度説明してください。否決も選択肢の一つですが、その先に何があるかを知らずに投じられた反対票は、翌年に同じ議案が出たときに同じ結果を生みます。

議事録に何を残すか

総会が終わって最初にやる仕事が議事録です。条文は、集会の議事については議長が書面または電磁的記録により議事録を作成しなければならない、としています。記載するのは議事の経過の要領とその結果です。

「要領」なので、発言をすべて起こす必要はありません。ただし、次の項目は落とさないでください。開催の日時と場所、議長の氏名、区分所有者の総数と総議決権数、出席した区分所有者の数と議決権数(書面と代理を含む内訳)、議案ごとの賛成数と反対数、可決か否決かの結果、質疑で出た主な論点とそれに対する回答。特に出席の内訳と賛否の数は、後から決議の有効性を検討するときの一次資料になります。

署名の要件もあります。議事録が書面で作成されているときは、議長および集会に出席した区分所有者の2人が署名しなければならない、という定めです。この2人は総会の冒頭で指名して、議事録署名人として議事録に名前を残します。当日に決めておかないと、後から探すことになります。

保管と閲覧の扱いは規約に準じます。規約の保管者は、利害関係人の請求があったときは正当な理由がある場合を除いて閲覧を拒んではならないとされ、この規定は議事録にも準用されます。中古で部屋を買おうとしている人や、その仲介業者から議事録の閲覧を求められることがあるのは、この条文が根拠です。加えて、規約の保管場所は建物内の見やすい場所に掲示しなければならないという定めもあります。掲示板に貼ってあるか、一度確認してください。

保管の年数は法律に定めがありませんが、大規模修繕の周期が12年前後であることを考えると、最低でも2周期分は遡れる状態にしておきたいところです。紙の議事録だけが管理員室のキャビネットにある状態は、役員が代わるたびに所在が怪しくなります。

集会を開かずに決める2つの方法

日程が合わない、緊急で決めなければならない、という場面のために、条文は2つの抜け道を用意しています。ただしどちらも要件が厳しく、日常的に使えるものではありません。

1つ目は、招集手続の省略です。区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで集会を開くことができるとされています。集会そのものは開くので、集まる必要はあります。小規模なマンションで全戸が顔見知りという場合には使えますが、1戸でも同意が取れなければ成立しません。

2つ目は、書面または電磁的方法による決議です。集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面または電磁的方法による決議をすることができる、という定めです。さらに、全員の書面または電磁的方法による合意があったときは、決議があったものとみなされます。この決議は集会の決議と同一の効力を持ちます。

注意すべきは、どちらも「全員」が要ることです。過半数でも4分の3でもありません。1戸でも反応がなければ成立しません。所在不明の区分所有者が1戸でもいる管理組合では、事実上使えないと考えてください。

よく混同されるのが、オンライン会議システムを使った総会です。画面越しに参加する形は、あくまで集会を開催しているのであって、書面決議とは別物です。開催の要件を満たすには、映像と音声で相互にやり取りできること、本人確認ができること、採決の意思表示が確認できることが要ります。会場に集まる人とオンラインの人が混在する形を採るなら、その運用を規約か細則に書いておくと、当日の異議に対応できます。

とりまとめる側から見た、総会まわりの詰まりどころ

ここまでの手続を踏まえて、実際に理事会が詰まる場所を並べます。相談の場でしばしば出てくるのは、次の3つです。

1つ目が、届け先の情報が更新されない問題です。組合員名簿を整備している管理組合は86.0%ありますが、変更があるたびに更新している、または年1回以上定期的に内容を確認しているのは68.7%にとどまります。残りは作ったまま古くなっています。通知が届かない票は、最初から数に入りません。名簿の更新は、総会の準備の一部として年間の作業に組み込むべきものです。

2つ目が、情報の保管場所が分散している問題です。議事録は管理員室のキャビネット、案内は掲示板、理事同士の連絡は個人のメッセージアプリ、資料は誰かのパソコン。この状態で役員が交代すると、引き継がれるのは紙の束と口頭の説明だけになります。外部役員の選任を検討している管理組合が34.6%あり、その理由として区分所有者の高齢化が42.7%、役員のなり手不足が42.3%を占めるという調査結果は、引き継ぎの重さを裏返しに示しています。

3つ目が、連絡の経路に外の人が混じる問題です。理事の連絡用に個人のメッセージアプリでグループを作ると、退任した人が残ったまま、あるいは住戸を売却した人が入ったままになりがちです。総会の議案には、滞納の状況、工事の見積もり、居住者間のトラブルなど、外に出したくない内容が含まれます。連絡の場がメンバー以外は見られない状態に保たれているかどうかは、扱える議題の幅を決めます。

いま使っている連絡手段を見直すなら、どこで詰まるかを先に確かめてから決めてください。日常の連絡でよく使われているグループチャットとの違いはLINEグループとの比較に、参加者を名前で管理する仕組みの違いはLINEオープンチャットとの比較に整理されています。写真や予定を扱う機能を持つサービスとの違いはBANDとの比較で確認できます。

似た規模の団体がどう運用しているかを見ておくのも判断の助けになります。地域の役員が輪番で回る運営の例は町内会での使われかたにまとまっており、年度で担当が入れ替わる団体の例はPTAでの使われかたで見られます。導入前に出やすい疑問はよくある質問に一覧があります。

総会は年に1回しかありません。1回失敗すると、取り返すのに1年かかります。招集の準備は3か月前から、通知は3週間前に、議事録は1週間以内に。この3つの日付を年間の予定表に固定するところから始めてください。

Q1. 管理組合の総会の招集通知は、いつまでに出せばよいですか?

区分所有法では会日より少なくとも1週間前と定められ、この期間は規約で伸長できます。多くの管理組合は規約で2週間前としています。ただし票の大半は委任状と議決権行使書で動くため、実務では3週間前の発送を目安にしてください。通知には会議の目的たる事項と議案の要領を書く必要があり、書いていない議題は当日決議できません。

Q2. 管理組合の議決権は1戸につき1票ですか?

原則は専有部分の床面積の割合です。100平方メートルの部屋は50平方メートルの部屋のおよそ2倍の票を持ちます。ただし規約で別段の定めができるため、1戸1議決権としている管理組合も多くあります。まず規約を確認してください。決議は区分所有者の数と議決権の数の両方で要件を満たす必要があるので、集計表は2列で作ります。

Q3. 委任状と議決権行使書はどう違いますか?

議決権行使書は議案ごとの賛否を本人が書いて出すもので、本人の意思がそのまま票になります。委任状は議決権の行使を他人に任せるもので、議案が当日修正されても受任者の判断で投じられます。どちらも出席者として数えます。同じ人から両方が届いたときにどちらを優先するかは、事前に規約か細則で決めておいてください。

Q4. 集会を開かずに総会の決議をすることはできますか?

できますが、要件は厳しく、区分所有者全員の承諾があるときに書面または電磁的方法による決議ができるという定めです。全員の書面または電磁的方法による合意があれば決議があったものとみなされます。過半数では足りず、1戸でも反応がなければ成立しません。オンライン会議での開催は集会を開いている扱いで、この書面決議とは別物です。

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