マンションの管理組合で新しい住戸の受け付けを担当することになったなら、最初に頭を切り替えておくべきことがあります。管理組合に入会という手続は存在しません。部屋を買った瞬間に、本人の意思とは関係なく組合員になっています。とりまとめる側がやるのは加入を勧めることではなく、既に組合員になっている人に、そのことと必要な手続を伝えることです。この記事では、届出をどう受けるか、最初に何を渡すか、賃借人をどう扱うか、前の所有者の滞納がどう付いてくるかを順に整理します。
入会という手続はなく、資格は自動的に発生する
管理組合の性格は、区分所有法で決まっています。区分所有者は全員で建物と敷地と附属施設の管理を行うための団体を構成する、と定められていて、加入するかどうかを選ぶ余地がありません。標準管理規約もこれを受けて、組合員の資格は区分所有者となったときに取得し、区分所有者でなくなったときに喪失すると定めています。
つまり、決済が終わって所有権が移った瞬間に、その人は管理組合の一員です。管理費の納入義務も、総会での議決権も、その時点から発生します。組合が承認する手続はありませんし、断ることもできません。
この性質は、町内会や自治会とは正反対です。標準管理規約のコメントは、その違いをはっきり書いています。
管理組合は、区分所有法第3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体であり、居住者が任意加入する地縁団体である自治会、町内会等とは異なる性格の団体であることから、管理組合と自治会、町内会等との活動を混同することのないよう注意する必要がある。 出典: mlit.go.jp
強制加入と任意加入という言葉が並んでいます。新しく入居した人から「入らないという選択はできますか」と聞かれる場面は実際にありますが、答えは決まっています。管理組合については選べません。同じマンションの中に自治会がある場合、そちらは任意です。この2つを分けて説明できるようにしておくと、最初の会話が短くて済みます。
届出を出してもらうところから、受け付けが始まる
資格が自動的に発生するといっても、組合の側が黙っていて分かるわけではありません。誰が新しい所有者かを知る手段が要ります。それが届出です。
標準管理規約は、新たに組合員の資格を取得し、または喪失した者は、直ちにその旨を書面により管理組合に届け出なければならないと定めています。届け出た内容に変更がある場合も、直ちに届け出る義務があります。届出は義務であって、任意の協力ではありません。
とはいえ、義務だからといって自動的に出てくるわけではありません。買った本人は、そんな条文を読んでいません。実務で届出が出てくるのは、次の3つの経路のどれかです。
1つ目は、売買の仲介業者が引き渡しの書類に混ぜて渡す経路です。管理会社が重要事項の調査に応じるときに、届出書の様式を一緒に渡す運用にしている組合があります。最も確実な経路です。
2つ目は、前の所有者が喪失の届出を出したことをきっかけに、組合の側から新しい所有者へ連絡する経路です。ただし前の所有者も届出を忘れることが多く、あてにできません。
3つ目は、引っ越しの当日に管理員が気づいて渡す経路です。エレベーターの養生や搬入の届出で管理員と接触するので、そのタイミングで届出書を渡します。管理員がいる組合では、これが実質的な最後の砦になります。
受け付けを整えるとは、この3つの経路のどれが自分の組合で機能しているかを確認し、機能していないなら埋めることです。管理会社に委託している組合なら、委託契約の中でどこまで担ってもらえるのかを1度確認してください。
最初に渡すものを、5点に決めておく
新しい所有者に何を渡すかは、組合ごとにばらばらです。渡す物を固定しておくと、担当が代わっても水準が落ちません。5点で足ります。
1点目は、管理規約と使用細則です。買主は購入時に重要事項説明で概要を聞いていますが、全文を手元に持っているとは限りません。全国調査では、購入時に管理規約を読んだ区分所有者は79.3%で、5人に1人は読んでいません。冊子で渡すのが重いなら、どこで見られるかの案内でも構いませんが、案内先が実在することは確認してください。
2点目は、組合員資格取得の届出書です。書き方の見本を付けると、返ってくる率が上がります。
3点目は、管理費等の口座振替依頼書です。標準管理規約は、管理費等を組合員が各自開設する預金口座からの口座振替により受け入れることとしています。この手続が終わるまで、引き落としが始まりません。届出書と同時に渡してください。
4点目は、生活のルールをまとめた案内です。ごみの出し方と収集日、駐車場と駐輪場の申込方法、宅配や置き配の扱い、ペットの可否、専有部分の工事をするときの手続。規約と細則に書いてあることですが、条文のままでは読まれません。全国調査でも、定めている使用細則の種類は駐車場が81.8%、専有部分に係る使用や居住が81.1%、自転車置場やバイク置場が72.9%、専有部分の修繕等が71.4%、ペット飼育が70.5%と並びます。この5つは、ほぼどの組合でも案内に載せる対象になります。
5点目は、組合からの連絡がどこに来るかの案内です。掲示板の位置、緊急時の連絡先、理事会への連絡方法。ここが抜けていると、その人は1年間、掲示板を見ないまま過ごします。
届出書で聞いてよいこと、避けたほうがよいこと
届出書の様式を作るとき、つい項目を増やしたくなります。増やすほど返ってこなくなるので、必要なものに絞ります。
まず必要なのは、住戸番号、区分所有者の氏名、資格を取得した年月日、通知を受け取る宛先です。宛先は特に重要で、標準管理規約は、招集通知を管理組合に対し組合員が届出をしたあて先に発するものとし、その届出のない組合員に対しては対象物件内の専有部分の所在地あてに発するとしています。届出がなければ、その部屋に送ることになります。賃貸に出す予定の人がこれを届け出ないと、総会の通知が賃借人の手元に届き、本人が見ないまま議決権が使われないという事態が起きます。
次に、居住するのか賃貸に出すのかの別です。この1項目があるかないかで、後の運用がまるで変わります。
同居する家族の人数と氏名を聞くかどうかは、組合の方針によります。標準管理規約は、理事長が組合員名簿および居住者名簿を作成して保管すると定めていて、居住者名簿を整備するなら同居者の情報が必要になります。ただし、必要以上に細かい情報まで集めると、保管の負担と漏えいのリスクだけが増えます。生年月日や勤務先は、災害時の対応にも日常の運営にも使いません。
緊急連絡先は、本人の同意を得て任意で書いてもらう形にするのが実務的です。全国調査では、緊急連絡先を整備している管理組合が81.7%あり、多数派の運用です。
避けたほうがよいのは、勤務先、年収、家族構成の詳細、購入価格といった項目です。組合の業務に使いようがなく、聞いた瞬間に警戒されます。届出書が返ってこなくなる原因の多くは、この種の項目です。
所有している人と、住んでいる人を分けて受ける
マンションの受け付けで最も間違えやすいのが、ここです。区分所有者と居住者は同じとは限りません。
全国調査では、賃貸住戸がないマンションが12.8%で、賃貸戸数割合が20%を超えるマンションが15.5%あります。多くのマンションに、所有者が住んでいない住戸が混ざっています。
区分所有者は組合員で、議決権を持ち、管理費を納め、役員になる資格があります。一方、その部屋を借りて住んでいる人は組合員ではありません。区分所有法は、区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者について、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には集会に出席して意見を述べることができると定めていますが、議決権はありません。集会を招集する者は、招集通知を発した後遅滞なく、集会の日時、場所、会議の目的たる事項および議案の要領を建物内の見やすい場所に掲示しなければならないという定めもあります。掲示は占有者のためのものです。
この整理から、受け付けの実務が決まります。区分所有者からは組合員資格の届出を受け、賃借人からは入居の届出を受ける。渡す書類も分けます。区分所有者には規約と口座振替依頼書、賃借人には生活のルールと連絡先の案内。賃借人に振替依頼書を渡しても意味がありませんし、区分所有者にごみの出し方だけ渡しても足りません。
賃貸に出している区分所有者に対しては、借りている人に規約と細則を守らせる責任があることを伝えておく必要があります。標準管理規約は、区分所有者が専有部分を第三者に貸与する場合に、規約と使用細則に定める事項を遵守させる旨の契約上の条項を設けるという趣旨の定めを置いています。入居者が騒音や違法駐車で問題を起こしたときに、組合が誰に言えばよいのかが、この整理で決まります。
前の所有者の滞納は、買った人に付いてくる
新しい所有者に必ず確認しておきたいことが1つあります。前の所有者に管理費等の滞納がなかったか、です。
区分所有法は、管理者または管理組合法人が職務や業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権について先取特権を認めたうえで、その債権は債務者である区分所有者の特定承継人に対しても行うことができると定めています。標準管理規約にも同じ趣旨の条文があり、管理組合が管理費等について有する債権は区分所有者の特定承継人に対しても行うことができるとされています。
つまり、滞納したまま部屋が売られた場合、その滞納分は買った人に請求できます。買った人にとっては寝耳に水の話ですが、法律上そうなっています。通常は決済のときに精算されるはずのもので、重要事項の調査で管理会社が滞納額を回答しているのが普通です。それでも漏れることがあります。
組合の側でやるべきことは、所有者が変わったと分かった時点で、その住戸の滞納の有無を確認することです。滞納があるなら、新しい所有者に速やかに伝えます。時間が経つほど話がこじれます。全国調査では、3か月以上の滞納住戸があるマンションが30.1%あり、3組合に1組合の割合です。他人事ではありません。
伝え方は文書にしてください。口頭だと言った言わないになりますし、新しい所有者が前の所有者に請求する際の材料にもなります。金額、対象の期間、内訳を明記します。
海外に住む所有者と、連絡が取れない住戸
近年の受け付けで増えているのが、日本に住んでいない区分所有者です。標準管理規約は、この場合の仕組みとして国内管理人の届出を用意しています。組合員が国内管理人を選任した場合は、直ちにその旨と国内管理人の氏名または名称、住所または居所を書面により理事長に届け出なければなりません。選任を終了させた場合や届出内容に変更があった場合も同様です。
国内管理人が届け出られていれば、招集通知はその国内管理人あてに発することになります。議決権についても、代理人として行使できる者の中に国内管理人が挙げられています。つまり、海外に住んでいても組合の運営から切り離されない仕組みになっています。
受け付けの担当としては、届出書に「国内に居住していない場合は国内管理人を届け出てください」という一文を入れておくだけで、後の連絡が楽になります。この一文がないと、海外の住所だけが書かれた届出書が返ってきて、総会のたびに国際郵便を出すことになります。
連絡先がまったく分からなくなる住戸もあります。全国調査によると、そうした住戸を1戸も抱えていないマンションが87.7%を占め、残る3.3%の組合が総戸数の20%以内の範囲でそうした住戸を抱えていました。20%を超える組合は1つもありません。割合としては小さいのですが、1戸でも発生すると管理費の請求も総会の通知も止まり、決議の定足数の計算にも影響が出ます。受け付けの段階で宛先を確実に取っておくことが、この状態を防ぐ最も安価な方法です。標準管理規約には所有者不明の専有部分について管理人を選任する場合の手続に触れた条文があり、招集通知の宛先としても位置づけられています。自分の組合の規約にこの規定が入っているかは、受け付けの様式を見直すタイミングで確認しておいてください。
名簿は2つあり、年に1回以上の確認が義務
受け付けた届出は、名簿に反映されて初めて意味を持ちます。標準管理規約は、理事長が組合員名簿および居住者名簿を作成して保管し、組合員の相当の理由を付した書面による請求があったときは閲覧させなければならないと定めています。
この条文には、見落とされやすい2つの義務が続いています。1つは、届出があった場合に遅滞なく名簿を更新しなければならないこと。もう1つは、毎年1回以上、名簿の内容の確認をしなければならないことです。届出を受けたら反映する、そして年に1度は全体を点検する。この2つが組み合わさって、名簿が現実に追いつきます。
全国調査では、組合員名簿を整備している組合が86.0%で、変更のたび都度更新しているか1年に1回以上定期的に内容を確認しているのが68.7%でした。居住者名簿は82.8%が整備していて、同様の更新をしているのが60.9%です。居住者名簿のほうが更新率が低いのは、入退去の把握が難しいからです。
閲覧の扱いも整理しておく必要があります。組合員名簿については、閲覧理由が妥当な場合は閲覧できるが37.1%、請求があれば閲覧できるが16.9%、配布しているので閲覧の必要がないが3.0%で、合計57.0%の組合が確認できる体制を持っています。一方、閲覧を認めていない組合が38.2%ありました。どちらの方針を取るにせよ、新しい所有者には「名簿がどう扱われるか」を届出のときに伝えておくべきです。何に使われるか分からない紙に個人情報を書きたい人はいません。
会えるのは引き渡しと引っ越しの日だけ、という前提で組む
町内会なら、班長が転入の翌週に訪ねていけます。マンションではそれができません。玄関はオートロックの内側にあり、誰が越してきたかを理事が知る手段もありません。顔を合わせられる機会は、実質的に引っ越しの当日1回だけです。
だから、その1回に必要なものを全部載せる設計にします。多くの組合では、引っ越しの前に搬入の届出を出す決まりがあります。エレベーターの養生、共用廊下の保護、作業できる時間帯の制限。この届出を受けるときに、組合員資格の届出書と案内一式を一緒に渡す形にすれば、確実に手元に届きます。
管理員が常駐または日勤している組合なら、この受け渡しは管理員に頼むのが確実です。委託契約の中で管理員の業務範囲が決まっているので、書類の受け渡しを頼めるかどうかを1度確認してください。管理員がいない組合では、理事長が渡すか、郵便受けに投函するかになります。投函だけだと開封されない可能性が高いので、届出書には返送先と期限を大きく書いておきます。
搬入の届出そのものにも、確認しておきたい項目があります。作業日と時間帯、業者の名称、使用するエレベーター、養生の実施者。これは組合の共用部を守るための手続で、組合員資格の届出とは目的が違います。2つを1枚の紙にまとめてしまうと、引っ越し業者が代筆して、肝心の所有者の情報が空欄のまま返ってくることがあります。紙は分けてください。
新築の一斉入居と、中古の1戸ずつでは設計が違う
受け付けの仕組みを作るとき、自分の組合がどちらの局面にいるかで、やるべきことが変わります。
新築の分譲直後は、全戸が同時に組合員になります。第1回の総会で規約が承認され、役員が選ばれ、管理会社との委託契約が始まります。この時期の受け付けは、事業主と管理会社が組み立てた仕組みをそのまま引き継ぐ形になります。組合として決めることは少ない代わりに、渡された様式が自分たちの実態に合っているかを最初の1年で点検しておく必要があります。
一方、竣工から年数が経った組合では、年に数戸ずつ所有者が入れ替わります。この局面の受け付けは、頻度が低いぶん手順が忘れられます。3年に1度しか使わない様式は、どこにあるかを誰も覚えていません。
対策は、手順を1枚の紙にまとめて、届出書の様式と同じ場所に保存することです。誰が渡すか、何を渡すか、返ってきた紙をどこに入れるか、名簿の更新は誰がやるか。この4行があれば、その年の担当が初めてでも動けます。
もう1つ、中古で入ってくる人は、新築で入った人と持っている情報が違います。新築の人はモデルルームで管理の説明を受けていますが、中古の人は仲介業者からの重要事項説明だけです。全国調査では、マンション選定時に共用部分の維持管理をどの程度考慮したかについて、考慮した割合が43.5%で、考慮しなかった割合の54.8%を下回っていました。管理を意識せずに買っている人のほうが多数派だと思って案内を作ってください。
受け付けの窓口を、管理会社と理事会でどう分けるか
多くの組合は管理業務を管理会社に委託しています。全国調査では、マンション標準管理委託契約書への準拠状況について、概ね準拠しているが93.8%でした。委託の内容が標準的な形に揃っているということです。
窓口を分けるときの基準は、判断が要るかどうかです。
判断が要らない事務は、管理会社に寄せます。届出書の受け取り、口座振替依頼書の金融機関への提出、名簿への転記、引っ越しの搬入届の受付。これらは手順が決まっていて、理事が関与する意味がありません。
判断が要る場面は、理事会が持ちます。滞納が引き継がれていることが分かったときの対応、規約違反が疑われる使い方の申し出があったとき、賃貸に出すという届出に条件を付けるかどうか。ここを管理会社に丸投げすると、組合として説明できない結論が出ます。
この線引きを文書にしておく価値は、区分所有者の側の行動からも分かります。マンションの管理や運営に疑問を持ったときの相談先として、マンション管理業者を挙げた区分所有者が71.2%で最も多く、理事長または理事が45.4%、他の居住者が25.1%でした。新しく入ってきた人は、まず管理会社に聞きます。そこで返ってきた答えと、理事会の方針が食い違うと、後から面倒なことになります。
なお、区分所有者が管理委託契約の内容をどれだけ知っているかも調べられていて、だいたい知っているが23.5%、よく知っているが6.3%で、合計29.8%でした。7割の人は、何がどこまで委託されているかを知りません。案内に「この件は管理会社へ、この件は理事会へ」と1行ずつ書いておくだけで、問い合わせの行き先が整理されます。
最初の1年で、その人が総会に来るかが決まる
受け付けの目的は、書類を集めることではありません。その人がこの先、管理組合の運営に関わってくれるかどうかが、最初の1年で決まります。
全国調査では、現状の管理に満足している区分所有者が61.3%いる一方、不満と答えた人が挙げた理由の1位は「一部の居住者の協力が得られにくいので」で56.4%でした。協力が得られないという不満は、担い手が細っていく組合の実感そのものです。
新しく入った人に最初に伝わることが「管理費を払え」と「ルールを守れ」だけだと、関わる動機は生まれません。渡す案内に1つ足すとすれば、この組合がいま何に取り組んでいるかです。大規模修繕の検討中なのか、駐輪場の増設を議論しているのか。1行でも書いてあると、次の総会の議案が自分ごとになります。
もう1つ効くのは、連絡が届く経路にその人を確実に載せることです。掲示板とポスティングだけの組合では、新しい住戸が届出を出したあと、次に組合と接点を持つのが半年後の総会通知になります。半年空くと、関心は戻りません。月に1度でも何かが届いていれば、関心は細く続きます。
連絡の経路を見直すなら、住戸番号や氏名が絡む情報を扱う以上、メンバー以外は見られない状態を保てることが条件になります。誰でも検索して入れる場所に、組合の連絡は保存できません。仕組みの違いはLINEグループとの比較やLINEオープンチャットとの比較に、参加方法と公開範囲の観点で並べてあります。
出ていくときの届出も、同じ様式で受ける
受け付けを整えるときは、必ず退出の側も一緒に整えてください。標準管理規約の届出義務は、資格を取得した者と喪失した者の両方にかかっています。取得だけ受け付けて喪失を受け付けない組合では、名簿に幽霊が残ります。
喪失の届出で確認すべきことは3つです。所有権が移った日、新しい所有者が分かっているか、口座振替をいつ止めるか。3つ目を確認しないと、引き渡し後の1か月分が前の所有者から引き落とされ、返金の手続が発生します。
同じ様式の紙に、取得と喪失のどちらかを丸で囲む形にすると、管理が1本で済みます。様式が2種類あると、片方だけ更新されて内容が食い違うことが起きます。
貸していた部屋の賃借人が退去する場合も、届出を受ける対象です。居住者名簿から外さなければ、災害時の安否確認で存在しない人を探すことになります。入居の届出を受ける仕組みがあるなら、退去の届出も同じ経路で受けてください。
退出のときに回収するものも決めておきます。集会室の鍵、駐車場のリモコン、宅配ボックスの暗証番号の解除、掲示板やエントランスの表示。渡したものの一覧が届出書の控えに残っていれば、回収漏れが起きません。役員を務めていた人が退出する場合は、輪番表の扱いと、預かっている書類の引き渡しも同時に確認する必要があります。
もう1つ、相続で所有者が変わる場合は、通常の売買とは進み方が違います。遺産分割が終わるまで、誰が組合員なのかが確定しないことがあるためです。この期間の管理費を誰に請求するか、総会の通知をどこへ送るかは、個別の事情によって答えが変わります。判断に迷う場面なので、管理会社や専門家に相談する前提で、理事会が単独で結論を出さないようにしてください。全国調査では、専門家を活用しているマンションが41.4%あり、弁護士の活用が14.5%を占めています。相談すること自体は特別な選択ではありません。
とりまとめる立場から見た受け付けの本質は、書類を集める作業ではなく、名簿を現実に合わせ続ける作業です。届出の様式、渡すものの一覧、名簿の更新の担当、そして年1回の確認の月。この4つが決まっていれば、担当が毎年代わっても水準が落ちません。他の団体が名簿と連絡をどう畳んでいるかは町内会での使われかたに例があり、始める前に出やすい疑問はよくある質問にまとまっています。
Q1. マンションの管理組合は、入会を断ることができますか?
断るという場面がありません。区分所有法は区分所有者が全員で管理を行うための団体を構成すると定めており、標準管理規約も組合員の資格は区分所有者となったときに取得すると定めています。部屋を買った時点で自動的に組合員になり、本人が加入を拒むこともできません。任意加入の自治会や町内会とは、この点が根本的に違います。
Q2. 新しく入居した人に、最初に何を渡せばよいですか?
管理規約と使用細則、組合員資格取得の届出書、管理費等の口座振替依頼書、生活のルールをまとめた案内、組合からの連絡がどこに来るかの案内の5点です。生活のルールには、ごみの出し方、駐車場と駐輪場の申込方法、ペットの可否、専有部分の工事の手続を入れておくと、問い合わせが減ります。
Q3. 部屋を借りて住んでいる人は、管理組合の一員になりますか?
なりません。組合員は区分所有者で、賃借人は占有者という位置づけです。区分所有法では、利害関係がある議題については集会に出席して意見を述べることができるとされていますが、議決権はありません。受け付けの実務では、区分所有者から組合員資格の届出を、賃借人から入居の届出を、それぞれ別に受けてください。
Q4. 前の所有者の管理費の滞納は、買った人に請求できますか?
できます。区分所有法は管理組合の債権について先取特権を認めたうえで、その債権を債務者である区分所有者の特定承継人に対しても行使できると定めており、標準管理規約にも同じ趣旨の条文があります。所有者が変わったと分かった時点で滞納の有無を確認し、あれば金額と期間と内訳を明記した文書で速やかに伝えてください。
