マンションの管理組合で「集金」という言葉が出てくるとき、たいていは毎月の管理費のことではありません。管理費と修繕積立金は口座振替で入ってくるのが前提で、人の手で集める必要があるのは、振替ができなかった分と、臨時に集める分だけです。この記事では、管理組合のお金の流れを口座振替を軸に整理したうえで、振替不能への対応、滞納が起きたときの督促の順番、遅延損害金を請求できる条件、理事が毎年代わる前提での記録の残し方を書きます。理事になった人が最初にやるべきことは、いま誰がいくら払っていないかを1枚の表で見られる状態を作ることです。
管理組合の集金は、口座振替が出発点になっている
町内会や子ども会の集金と、管理組合の集金は、仕組みからして違います。管理組合は、口座振替を前提に作られています。
国土交通省が示しているマンション標準管理規約には、次のように書かれています。
管理組合は、第25条に定める管理費等及び第29条に定める使用料について、組合員が各自開設する預金口座から口座振替の方法により第62条に定める口座に受け入れることとし、当月分は別に定める徴収日までに一括して徴収する。 出典: 国土交通省
これがひな型として示されている以上、多くの管理組合の規約も同じ形になっています。組合員それぞれの口座から、決められた日に自動で引き落とされ、管理組合の口座に入る。理事が各戸を訪ねて現金を受け取る場面は、本来ありません。
このことは、理事になった人にとって重要です。集金の負担を減らそうとして、集め方の工夫を考える前に、まず確かめるべきことがあります。いま現金で集めているものがあるなら、それはなぜ振替になっていないのか。振替にできない理由があるのか、それとも昔からの慣習で残っているだけなのか。後者であれば、集め方を工夫するのではなく、振替に移すのが正しい方向です。
なお、標準管理規約のコメントには、徴収日を規約本文でなく別に定めることとしている理由として、管理業者や金融機関の変更に伴う納入期日の変更に円滑に対応できるようにするため、という説明があります。日付を規約に書き込んでしまうと、変えるたびに総会の決議が要るということです。
それでも現金が残る場面は、4つある
口座振替が原則でも、実務では人の手が要る場面が残ります。整理すると4つです。
第1に、振替ができなかった分です。残高が足りない、口座を解約した、名義が変わった。これは毎月一定の割合で発生します。
第2に、臨時に集めるものです。大規模修繕のための一時金、災害への対応、訴訟の費用。標準管理規約でも、臨時に要する費用として特別に徴収する場合は別に定めるところによるとされています。
第3に、使用料のうち、随時に発生するものです。集会室の利用料、駐車場の一時利用、粗大ごみの処理に関わる実費など。金額が小さく、発生が不定期なため、振替に載せにくいものです。
第4に、管理組合とは別の集まりが集めるものです。自治会費、防災の積立、行事の実費。管理組合と自治会が別組織であるマンションでは、ここが混ざりやすい部分です。
このうち、第1と第2は管理組合の会計そのものです。第3と第4は、金額は小さいものの、扱いを間違えると会計の説明がつかなくなります。最初にやるべきことは、いま何を現金で扱っているかを、この4つに仕分けることです。仕分けてみると、第3と第4が思ったより多く、しかも記録が残っていない、という状態がよく見つかります。
振替不能が起きたときの、その月の扱いを決めておく
振替ができなかったという連絡は、管理会社を通じて、あるいは金融機関から、月の半ばに届きます。ここからどう動くかを、あらかじめ決めておいてください。
決めておくべきことは4つです。
ひとつめは、誰が連絡するかです。管理会社に委託しているなら、委託契約の中に督促の業務が含まれているかを確かめてください。含まれている場合でも、何か月分までを管理会社が行い、そこから先を管理組合が引き取るのかという線があります。この線を理事が知らないまま、両方が動かない期間が生まれることがあります。
ふたつめは、いつ連絡するかです。振替不能が判明してから1週間以内が目安です。遅れるほど、翌月分と重なって金額が膨らみます。
みっつめは、どう払ってもらうかです。翌月に2か月分を振替にするのか、指定の口座に振り込んでもらうのか、現金を受け取るのか。現金を受け取る形は、記録が残りにくいので最後の手段にしてください。
よっつめは、記録の形です。何月分が、いつ、いくら、どういう方法で入ったか。ここを毎回同じ形で書いていないと、年度末に照合できません。
振替不能の多くは、うっかり残高が足りなかっただけです。この段階で連絡が行けば、ほとんどが翌月には解消します。放置すると、そのまま滞納に育ちます。
滞納は、督促の順番を先に決めておく
滞納が起きてから、どうするかを理事会で議論し始めると、必ず遅れます。順番は先に決めておいてください。
国土交通省の標準管理規約のコメントには、督促の手順の例が示されています。
1ヶ月目 電話、書面(未納のお知らせ文)による連絡/2ヶ月目 電話、書面(請求書)による確認/3ヶ月目 電話、書面(催告書)/4ヶ月目 電話、書面、自宅訪問/5ヶ月目 電話、書面(内容証明郵便(配達記録付)で督促) 出典: 国土交通省
月ごとに段階が上がっていく形です。この表をそのまま管理組合の内規にして、理事会で承認しておくと、その年の理事が誰であっても同じ対応になります。
段階を決めておくことの効果は3つあります。
理事が判断に迷わなくなります。3か月目になったら催告書を出す、と決まっていれば、その都度理事会にかける必要がありません。
相手に対して公平になります。特定の住戸にだけ厳しい、あるいは緩い対応をしていると、後から問題になります。全員に同じ手順を適用していれば説明がつきます。
そして、理事の心理的な負担が減ります。滞納の督促は、顔を合わせる相手に対して行う嫌な仕事です。個人の判断でやっていると気が重いのですが、決められた手順を実行しているだけであれば、まだ耐えられます。
3か月目と6か月目という、2つの節目
同じ標準管理規約のコメントには、実務上重要な2つの目安が書かれています。
ひとつは、失念していたなど一時的な要因で滞納した人は、3か月以内に滞納を解消するという実績です。裏を返せば、3か月を過ぎても解消しない場合は、うっかりではない可能性が高いということになります。
もうひとつは、管理費の滞納者のほとんどは住宅ローンなどの支払いも滞納していることが多く、6か月以内に銀行が債権回収のために競売などに動き出すことが多い、という点です。
この2つを知っていると、対応の速さが変わります。3か月を過ぎたら、うっかりへの対応から、支払い能力の問題への対応に切り替える。6か月に近づいたら、他の債権者が先に動く前提で、管理組合として何をするかを理事会で決める。
管理組合の債権には区分所有法に定められた先取特権が付いており、銀行などが競売を実施した場合には裁判所に対して配当要求を行うという道があります。ただし、売却代金の配当で全額を回収できない場合には、買い受けた人に対して請求することになります。この先の話は専門的なので、6か月に近づいた時点で、管理会社やマンション管理士、弁護士に相談する段取りを組んでください。理事会だけで抱え込む話ではありません。
遅延損害金と弁護士費用は、規約に書いてあるかを確かめる
滞納が長引くと、督促に費用がかかります。内容証明郵便の実費、法的な手続きの印紙代、専門家への依頼。
標準管理規約では、期日までに納入しない組合員に対して、未払金額について年利で定めた遅延損害金と、違約金としての弁護士費用など、督促と徴収の諸費用を加算して請求することができるとされています。コメントでは、これらについて請求しないことに合理的な事情がある場合を除き、請求すべきものと考えられる、とされています。違約金としての弁護士費用には司法書士の費用も含まれるとされています。
ここで理事が確かめるべきことは、自分のマンションの規約に、この条項が入っているかどうかです。標準管理規約はあくまでひな型で、実際の規約はマンションごとに違います。古い規約のままだと、遅延損害金の定めがない、率が空欄のまま、という状態があります。定めがなければ請求できません。
遅延損害金の率についても、コメントに考え方が示されています。管理費等の滞納はマンションの資産価値や居住環境に影響しうること、管理組合による回収は金融機関のような事業者による債権回収と違って手間や時間の費用が膨大になりうることなどから、利息制限法や消費者契約法における遅延損害金の利率よりも高く設定することも考えられる、という趣旨です。
規約に定めがない、あるいは率が空欄になっているなら、総会にかけて決めておいてください。滞納が起きてから直すことはできません。
督促を、理事個人の仕事にしない
管理組合の理事は、多くの場合1年で交代します。輪番制であれば、順番が回ってきただけの人が担当します。
この人に、同じマンションに住む相手への督促を1人でやらせるのは、無理があります。エレベーターで顔を合わせる相手です。子ども同士が同じ学校に通っていることもあります。
やるべきことは3つです。
ひとつめは、書面の名義を管理組合にすることです。理事長個人の名前ではなく、管理組合の名義で、理事会の決定として出します。文面の型を作っておけば、毎年書き直す必要もありません。
ふたつめは、直接の接触を減らすことです。標準管理規約のコメントに示された手順でも、自宅訪問が出てくるのは4か月目です。それまでは電話と書面で足ります。訪問を早い段階でやると、感情的な対立を生みやすくなります。
みっつめは、管理会社に委託している部分を明確にすることです。督促の初期の段階を管理会社が担っているなら、理事が出ていく必要はありません。委託契約の中身を、理事会の初回に確認してください。
そして、督促の記録は理事個人の手元ではなく、管理組合として残る場所に保存してください。いつ、誰が、どういう方法で、何を伝えたか。次の年の理事が、この記録を見て続きから始められる形になっていることが条件です。過去のやり取りが役員の交代をまたいで残るかどうかは、道具の選び方でも変わります。よく使われている手段との違いはLINEグループとの比較に、閉じた場をどう作るかについてはBANDとの比較にまとまっています。
滞納の情報を、どこまで見せてよいか
滞納は、管理組合の会計に直接影響します。だから総会で報告する必要があります。一方で、誰が滞納しているかは、その人にとっては知られたくない情報です。
実務としての線引きは、次のようになります。
総会の資料に載せてよいのは、滞納の総額と件数です。「管理費等の未収金は3件、合計48万円」という形です。これは会計の報告として必要です。
住戸番号や氏名を、総会の資料や議事録に載せることは避けてください。議事録は保管され、閲覧の対象になります。何年も後まで残ります。
掲示板に貼り出すことは、してはいけません。管理組合以外の人も目にします。
一方で、法的な措置を取る段階になれば、総会の決議が必要になる場面が出てきます。そのときは、対象を特定した議案になります。この段階に至る前に、理事会としてどこまでを公開の場に出すかを決めておいてください。
そして、理事が知り得た滞納の情報を、理事会の外で話さないという当たり前のことを、就任のときに確認してください。輪番で理事になった人が、悪気なく世間話で漏らす例があります。
臨時に集めるお金は、集金とは別の段取りで動かす
大規模修繕のための一時金、災害への対応、想定外の設備の更新。これらは金額が大きく、集め方も違います。
臨時徴収で気をつけるのは、次の点です。
決議が先です。総会の決議を経ずに集め始めることはできません。金額、対象、期日、支払いの方法を議案に書きます。
期日までの猶予を長く取ります。30万円や50万円といった金額を1か月で用意できない住戸があります。分割の方法を最初から用意しておくと、滞納の発生を減らせます。
説明の量が違います。毎月の管理費なら説明は要りませんが、臨時の徴収は「なぜ今、いくら必要なのか」の説明が要ります。総会の場だけでは足りないので、事前に文書で配り、質問を受ける期間を設けてください。
そして、入金の管理が要ります。誰が、いつ、いくら、何回目を払ったか。分割にすると管理の手間が増えるので、記録の形を先に決めてから始めてください。
なお、修繕積立金については、国土交通省がガイドラインを示しており、段階的に額を増やしていく方式から均等に積み立てる方式への切り替えを促す資料も公開されています。臨時の徴収が必要になる背景には、積立の方式そのものの問題があることも多いので、あわせて確認する価値があります。
管理組合の会費と、自治会の会費を同じ袋に入れない
マンションによっては、管理組合とは別に自治会や町内会があり、その会費を管理費と一緒に集めている場合があります。振替の金額に上乗せして、後から仕分ける形です。
この形は、集める側の手間は減りますが、会計を分かりにくくします。管理組合は区分所有者の団体で、自治会は住んでいる人の任意の団体です。目的も、対象も、加入するかどうかの性質も違います。
問題が表に出るのは、次のような場面です。
・自治会に入らないという住戸が出たとき。振替の金額を変える手続きが要ります ・賃貸に出したとき。管理費は所有者、自治会費は入居者、という分かれ方をします ・自治会の会計を管理組合の決算に載せてよいのか、という指摘が総会で出たとき ・自治会の側で使途が問題になったとき。管理組合が巻き込まれます
分けるのが原則です。一緒に集めている場合でも、会計は完全に分け、決算の資料も別に作ってください。振替の明細で内訳が分かる形にし、総会の資料でも管理組合の収支と自治会の収支を混ぜないようにします。
すでに一緒になっているものを分けるのは手間ですが、後から分けるほうがさらに手間になります。理事会で議題として一度取り上げておく価値があります。
滞納が長引いたときに、管理組合が取りうる手段
3か月、6か月と過ぎても解消しない場合、督促の先に何があるのかを知っておくと、理事会の判断が早くなります。詳細は専門家に委ねる領域ですが、全体像は把握しておいてください。
まず、滞納している人の財産の状況を調べる段階があります。専有部分に抵当権などが設定されているか、他に財産があるか。国土交通省の標準管理規約に付されている資料でも、この調査が最初の段階に置かれています。
次に、支払督促や訴訟によって、法的に請求できる形を作る段階があります。理事長は理事会の決議により、管理組合を代表して訴訟その他の法的措置を追行することができる、と標準管理規約には定められています。
さらに進むと、専有部分に対する担保権の実行や、判決などに基づく強制執行という手段があります。ただし、抵当権が優先するため、売却の代金から管理費を回収できるかどうかは状況によります。
最後に、区分所有法の定めに基づいて、区分所有権の競売を請求する道があります。この手段は要件が厳しく、他の手段では回収が困難であることを立証する必要があるとされています。
理事会として押さえるべきなのは、次の2点です。
ひとつは、これらの手段には時間と費用がかかることです。着手してから結論が出るまでに年単位の時間がかかることがあり、その間も滞納は増え続けます。
もうひとつは、どの段階で誰に相談するかを決めておくことです。6か月を超えた時点で管理会社を通じて専門家に相談する、といった目安を内規に書いておくと、理事が代わっても対応が遅れません。相談すること自体を理事会の議題にしていると、決めるまでにさらに数か月が過ぎます。
集金と督促の連絡を、どこで流すか
管理組合の連絡には、届け方が3つあります。それぞれ役割が違います。
掲示板は、居住者全員に同じ情報を出す場所です。総会の案内、工事の予定、共用部分の使用に関する連絡。ただし、居住していない所有者には届きません。
各戸への投函は、居住者に確実に届く手段です。臨時徴収の説明資料など、量のあるものに向きます。ただし、これも居住者向けです。
郵送は、区分所有者に届く唯一の確実な手段です。総会の招集通知、督促の書面。費用がかかるので、必要なものに絞ります。
このほかに、日常の連絡を画面でやり取りしている管理組合が増えています。理事会の中の連絡、居住者からの問い合わせ、工事の進捗の共有。ここで扱ってよいものと、扱ってはいけないものの線を決めてください。
扱ってよいのは、全員に知らせてよい情報です。工事の日程、点検の予定、共用施設の利用状況。扱ってはいけないのは、特定の住戸に関わる情報です。滞納、苦情、トラブル。これを共有の場に出すと、取り返しがつきません。
理事会の中だけで共有する場と、居住者全体に出す場を分けられる形になっているかどうかは、選ぶときの条件になります。メンバー以外は見られないことに加えて、その中でさらに範囲を絞れるかどうかを見てください。閉じた場の作り方についてはFacebookグループとの比較に整理があります。
現金を扱うときは、必ず2人で
臨時の徴収や使用料の受け取りで、現金を扱う場面が残るなら、次のことを守ってください。
受け取るときは2人で立ち会います。1人で受け取って1人で記録する形は、間違いが起きたときに証明できません。金額が小さくても同じです。
領収の控えを作ります。渡す側と管理組合側の両方に残る形にします。
受け取った日のうちに記録します。翌日に回すと、金額を思い出しながら書くことになります。
そして、通帳と印鑑の管理です。標準管理規約のコメントには、預金口座に係る印鑑等の保管について、施錠の可能な場所に保管し、印鑑の保管と鍵の保管を理事長と副理事長に分けるなど、適切な取扱い方法を検討し、その取扱いについて総会の承認を得て細則等に定めておくことが望ましい、とされています。
1人が通帳と印鑑の両方を持っている状態は避けてください。これは特定の人を疑う話ではなく、その人を守る仕組みです。何かあったときに、1人しか触れない状態だったという事実そのものが、その人を苦しい立場に置きます。
住んでいない区分所有者に、どう連絡するか
マンションの管理組合が町内会と大きく違うのは、お金を払う相手が必ずしもそこに住んでいないことです。
・賃貸に出していて、所有者は別の場所に住んでいる ・相続が発生して、相続人が複数いる、あるいは確定していない ・海外に転出している ・投資目的で購入し、一度も住んでいない ・法人が所有している
こうした住戸に、掲示板やポスティングで連絡しても届きません。届かないまま滞納が積み上がり、督促の書面も宛先不明で戻ってくる、という事態が起きます。
対策は、連絡先の把握を制度として持つことです。
・区分所有者の届出住所を、定期的に更新してもらう仕組みを作る ・賃貸に出す場合は、その旨と連絡先の届出を規約や細則で求める ・相続が発生した場合の届出を求める ・届出がない場合にどうするか、あらかじめ決めておく
連絡先が古いまま何年も経つと、いざというときに手が打てません。年に1回、総会の案内を送る機会に、届出内容の確認を同封する形が現実的です。
そして、居住していない所有者には、掲示板の情報が届かないことを前提に、連絡の経路を分けてください。居住者向けの掲示と、所有者向けの通知は、別のものとして扱う必要があります。団体ごとの使い方の違いは町内会での使われかたにまとまっており、判断に迷う点はよくある質問を参照してください。
管理会社に委託している部分と、そうでない部分を切り分ける
管理を業者に委託している管理組合では、集金と督促の一部が委託の範囲に入っています。ここを理事が把握していないことが、意外に多くあります。
理事会の初回に、委託契約書を開いて次を確認してください。
・管理費等の収納は、どの口座で、誰の名義で行われているか ・振替不能が起きたとき、管理会社は何をするのか ・督促を何か月分まで管理会社が行うのか ・その先を管理組合が引き取る場合、どういう形で引き継がれるのか ・未収金の一覧は、いつ、どういう形で管理組合に報告されるのか
標準管理規約のコメントには、管理費等の管理を業者に委託する場合には、マンションの管理の適正化の推進に関する法律の施行規則に定める方法に則した管理方法とする必要がある、という趣旨の説明があります。口座の名義や資金の流れには決まりがあり、任意に決められるものではありません。
理事として見るべきなのは、報告の頻度と形です。未収金の一覧が月に1回、住戸ごとに何か月分いくら滞っているかが分かる形で届いていれば、理事会で追えます。年に1回しか出てこない、あるいは総額しか出てこないなら、形を変えてもらうよう申し入れてください。
未収金の一覧は、1住戸1行、列は6つで足りる
理事会で追うための表は、複雑にしないでください。列が多いと、更新されなくなります。
必要な列は6つです。
・住戸番号 ・未納の対象月。何月分から何月分か ・未納の金額。管理費と修繕積立金を分けて書く ・滞納している月数 ・最後に督促した日と、その方法 ・次にやること。段階と、その予定日
これだけあれば、理事会でそのまま議題にできます。金額の大きい順ではなく、滞納している月数の順に並べてください。月数が長いものほど、対応が急がれます。
この表を毎月更新するのは、管理会社に委託していれば管理会社の報告から作れます。委託していない場合は、会計を担当する理事が作ります。どちらの場合も、表そのものは管理組合の側に保存してください。管理会社の報告書をそのまま綴じているだけだと、形式が変わったときに追えなくなります。
理事が毎年代わる前提で、記録を残す
管理組合の最大の特徴は、担当が毎年入れ替わることです。輪番制であれば、専門知識のない人が順番で理事長になります。
この前提で残しておくべきものは、次のとおりです。
・未収金の一覧。住戸ごとに、何月分がいくら、何か月分か ・督促の記録。いつ、誰が、どういう方法で、何を伝えたか、相手の反応 ・過去に取った措置と、その結果 ・規約と細則のうち、集金と滞納に関わる条文の抜粋 ・管理会社との委託の範囲を1枚にまとめたもの ・専門家に相談したときの記録と、連絡先
これらが、前任の理事長の手元やパソコンにしかない状態だと、毎年ゼロから始まります。滞納は時間との勝負なので、引き継ぎの空白の数か月が致命的になることがあります。
引き継ぎの場を形式的なものにしないでください。書類の入った箱を渡して終わり、という引き継ぎが最も多いのですが、箱の中身を1つずつ確認する時間を取るだけで、翌年の動きが変わります。
Q1. 管理費を理事が各戸から集めるのは、おかしいのですか?
標準管理規約では、管理費等と使用料は組合員それぞれの口座から口座振替で管理組合の口座に受け入れる形が示されています。理事が訪問して現金を受け取る形が残っているなら、振替にできない理由があるのか、昔からの慣習で残っているだけなのかを確かめてください。後者なら、集め方を工夫するより振替へ移すのが筋です。
Q2. 滞納の督促は、どのくらいの間隔で進めればよいですか?
標準管理規約のコメントには手順の例が示されており、1か月目は電話と未納のお知らせ、2か月目は請求書、3か月目は催告書、4か月目は自宅訪問、5か月目は配達記録付きの内容証明郵便という段階になっています。これを内規にして理事会で承認しておくと、その年の理事が誰でも同じ対応になり、公平性も保てます。
Q3. 滞納している住戸の番号を、総会資料に書いてよいですか?
避けてください。総会資料に載せるのは滞納の総額と件数までにとどめます。議事録は保管され閲覧の対象になるため、住戸番号や氏名を書くと何年も残ります。掲示板への貼り出しは、管理組合以外の人の目にも触れるため行いません。法的措置の決議を取る段階になったときに、改めて議案として扱います。
Q4. 遅延損害金は、どの管理組合でも請求できますか?
自分のマンションの規約に定めがあるかどうかで決まります。標準管理規約では遅延損害金と違約金としての弁護士費用等を請求できる旨が示されていますが、実際の規約はマンションごとに違い、古い規約では定めがない、利率が空欄のままという例があります。滞納が起きてから直すことはできないので、総会で先に決めておいてください。
