自治会の会計ソフトを探し始める理由は、だいたい2つに分かれます。前任者から受け取ったエクセルが複雑で手が出せないか、手書きの出納帳と現金が合わなくなったかのどちらかです。どちらの場合も、機能の多いソフトを選べば片付く話ではありません。決め手になるのは、来年度に会計担当が代わったあとも同じ手順で続けられるかどうかです。この記事では、自治会で使える会計ソフトを3つの型に分けて比較し、無料で使える範囲の確かめ方、引き継ぎで止まらない条件、切り替えの手順までを順に並べます。
自治会の会計ソフトが探されるようになった背景
自治会の会計は、長いあいだ手書きの現金出納帳と電卓で回っていました。それが変わってきた理由は3つあります。
1つめが、自治体そのものが会計の様式を配るようになったことです。市や町のホームページから、自治会向けの収支計算書や会計簿のエクセルファイルを無料でダウンロードできるようになりました。自治体が作る側に回ったのは、会計の書類が整っていない自治会が多く、補助金の申請や実績報告のたびに窓口で作り直しが発生していたからです。
自治会活動で欠かせない会計処理について、事務や活動を支援するため、簡単に収支精算書ができる会計ソフトを作成しました。 ぜひ、活用してみてください。 ※この会計ソフトは専門の事業者が作成したものではありません。 ※このソフトを使用される場合は、一会計年度で使用されることをおすすめします。 出典: city.tosu.lg.jp
2つめが、任意団体向けの無料のクラウド会計ソフトが出てきたことです。企業向けの会計ソフトは、消費税の計算や決算書の様式が法人向けに作られていて、自治会には要らない機能のほうが多くなります。そこを削って、現金出納帳と収支計算書だけに絞った無料のサービスが選べるようになりました。
3つめが、会計担当の入れ替わりの速さです。役員の任期が1年か2年の自治会では、会計の手順を覚えた人が毎年入れ替わります。前任者のパソコンの中にしかないエクセルは、その人が抜けた時点で開けなくなります。この事情があるため、自治会の会計ソフトを選ぶときの軸は、機能の数ではなく引き継ぎのしやすさに寄っていきます。
会費の額そのものは大きく動いていません。それでも、集金の方法が現金から振込や電子決済に広がったため、記録すべき入金の種類が増えました。現金だけを数えていれば足りた時代と比べて、帳簿の照合にかかる手間が増えているのが今の状況です。
自治会で使える会計ソフトは3つの型に分かれる
自治会の会計ソフトと呼ばれているものは、中身を見ると3つの型に分かれます。それぞれの成り立ちが違うので、向いている会の規模も違います。
1つめが、自治体が配るエクセル様式です。市や町のホームページから無料でダウンロードでき、入金と出金を1件ずつ入力すると収支計算書ができあがります。関数があらかじめ組まれているだけの作りなので、エクセルが入っているパソコンなら誰でも使えます。ただし、作った自治体は一会計年度ごとに新しいファイルを使うことをすすめています。年度をまたいで使い続ける前提の作りにはなっていません。
2つめが、任意団体向けの無料のクラウド会計ソフトです。ブラウザから使うので、パソコンでもタブレットでもスマートフォンでも同じ画面が開きます。インストールが要らず、保存の操作もありません。現金出納帳、預金出納帳、収支計算書、収支予算書といった、総会で配る書類が自動で作られます。
サークル,自治会,PTA,ボランティア,スポーツクラブ…非営利組織向け「初」の無料のクラウド会計ソフトパソコン、スマホ、タブレットで使え、きっちり!会計報告に必要な書類がつくれます 出典: timakai.com
3つめが、市販の会計ソフトです。企業の経理向けに作られているため、仕訳や勘定科目の考え方を前提にした画面になります。簿記を学んだ会計担当がいる会では扱えますが、その人が抜けた翌年に同じ画面を引き継げるかという問題が残ります。自治会の規模で複式簿記が必要になる場面は多くありません。
3つのどれを選ぶかは、会の年間の入出金の件数で決まります。年に50件から100件くらいなら、自治体のエクセル様式で足ります。月に何度も集金と支払いがあり、年間で300件を超えるなら、入力のたびに保存とバックアップを気にせずに済むクラウド型のほうが楽になります。会計担当が複数いて、班ごとに集金する会も、同じ画面を複数人で見られるクラウド型が向いています。
無料の会計ソフトは、どこまで無料なのかを先に読む
無料と書かれた会計ソフトを選ぶときは、無料の範囲を先に読んでください。自治会の会計は年に一度の総会で外に出る書類を作るので、途中で有料に切り替わると面倒が起きます。
確かめる場所は4つです。作れる団体の数、1年間に登録できる伝票の数、データを保存できる期間、そして運営が何で成り立っているかです。
無料のクラウド会計ソフトの一例では、登録費や利用料や年会費はかからず、作れる団体の数が5つまで、1団体1会計期あたりの伝票が最大2,000枚まで、データの保存期間は無期限と書かれています。自治会1つを管理するなら、団体数の上限に当たることはありません。伝票の上限も、月に100件を超える入出金がない会なら余裕があります。この数字の読み方は、自分の会の昨年度の出納帳の行数を数えれば確かめられます。
運営が何で成り立っているかも読む価値があります。広告と寄附で運営しているサービスは、料金を取らない代わりに画面に広告が出ます。総会の場で画面を映すことがあるなら、そこも見ておいてください。
有料になる条件が書かれていないサービスは、書かれていないことをそのまま信じないほうが安全です。年度の途中で有料に変わる可能性があるので、年度末の決算書をパソコンに書き出せるかどうかを先に確かめてください。CSVかエクセルかPDFで書き出せるなら、サービスが終わっても書類は手元に残ります。逆に、書き出す機能がないサービスは、そのサービスに閉じ込められます。
無料で使えることの裏側に、続くかどうかという心配が残ります。ここは利用している団体の数と、続いてきた年数で見当が付きます。任意団体向けの無料のクラウド会計ソフトの一例では、2016年12月の開始から5万を超える団体で使われていることが公表されています。機能の追加の記録も残っているので、止まっているサービスなのかどうかは、その記録の最後の日付で判断できます。年に一度しか使わない道具ほど、次に開いたときに動いているかどうかが効いてきます。
自治体が配るエクセル様式は、完全に無料でありながら、この書き出しの心配がありません。ファイルそのものが手元にあるからです。反面、ファイルの保存場所を会として決めておかないと、担当者のパソコンの中で行方不明になります。
会計ソフトを比較する5つのポイント
自治会の会計ソフトを比べるときに、見るべき軸は5つです。機能の一覧表を眺めるより、この5つだけを確かめたほうが早く決まります。
| 比較の軸 | 確かめること |
|---|---|
| 引き継ぎのしやすさ | 会計担当が代わるとき、アカウントをそのまま渡せるか |
| 総会で配る書類 | 収支計算書と収支予算書がそのまま印刷できる形で出るか |
| 入力の手間 | 現金と預金を分けて記録できるか。1件の入力が何回の操作で終わるか |
| 手元への書き出し | エクセルかPDFで書き出せるか |
| 費用 | 無料の範囲と、有料になる条件 |
1つめの引き継ぎのしやすさが、自治会ではいちばん重みのある軸です。クラウド型のサービスでは、登録したアカウントを後任者にそのまま渡せる作りになっているものがあります。メールアドレスとパスワードを渡すだけで済むなら、引き継ぎの説明は短くなります。逆に、個人のメールアドレスで登録するしかないサービスは、前任者の私用のアドレスに紐づいたまま残ります。会として1つのメールアドレスを用意しておくと、この問題は起きません。
2つめの書類は、総会で配る形をそのまま出せるかで判断します。画面では見られても印刷が崩れるサービスでは、結局エクセルに写す作業が発生します。デモの画面を用意しているサービスなら、申し込みをせずに書類の形を見られます。
3つめの入力の手間は、1件を入れるのに何回タップするかで比べます。自治会の会計は入力の件数そのものは少ないので、1件あたりの操作が2回違うだけでも年間では差が出ます。
4つめの書き出しは、前の節で述べた通りです。5つめの費用は、無料の範囲を読んだうえで、有料になったときの月額が会費で払える額かどうかを見ます。
この5つに順番を付けるなら、引き継ぎのしやすさが1番で、書類の形が2番になります。費用は3番目でよく、入力の手間と書き出しは同じ道具の中でほとんど差が出ません。順番を逆にして費用から選ぶと、無料でも引き継げない道具に当たります。
現金と帳簿が合わない原因を、ソフトで減らす
会計ソフトを入れる目的の半分は、現金と帳簿を合わせることです。合わなくなる原因は、ソフトの性能ではなく記録の抜けにあります。
いちばん多いのが、立て替えの記録漏れです。役員が自分の財布から出した費用を、あとで精算する形にすると、精算までの間は帳簿に何も乗りません。その間に別の支出が入ると、どちらの領収書がどの行なのか分からなくなります。立て替えた時点で入力し、精算したときに支出として記録する形にすると、この抜けが起きません。クラウド型なら、買い物をしたその場でスマートフォンから入力できるので、家に帰ってから思い出す作業が消えます。
2つめが、現金と預金を分けていないことです。会費を集めた現金をそのまま口座に入れると、手元の現金は減り口座は増えます。これを1行で書くと、現金がどこへ行ったのか追えません。現金出納帳と預金出納帳を分けて持ち、口座への預け入れは現金の支出と預金の入金の2行で書きます。会計ソフトを使うと、この2行が自動で対応する作りになっているものがあります。
3つめが、領収書の保管です。帳簿の1行と領収書の1枚が対応していないと、監査のときに突き合わせられません。領収書に帳簿の行番号を鉛筆で書き入れるだけで、照合の手間はかなり減ります。
4つめが、年度をまたぐ入出金です。3月に集めた会費が4月の活動の分だったり、3月に頼んだ印刷代の請求が4月に来たりします。どの年度に入れるかを会として決め、決めた通りに毎年そろえてください。年度ごとに判断が変わると、去年と今年の数字を並べたときに増減の理由が説明できなくなります。
この4つを押さえると、現金と帳簿が合わない状態はほぼ起きなくなります。会計ソフトの値打ちは、計算を速くすることよりも、入力の順番を決めてくれることにあります。
会計ソフトに切り替えるステップ
年度の途中で切り替えると二重の手間が生じます。次の順で進めてください。
ステップ1は、切り替える時期を決めることです。いちばん楽なのは、総会で決算を承認してもらったあと、新年度の最初の入出金からです。前年度の数字を移す必要がなく、期首の残高だけを入れれば始まります。
ステップ2は、会として使うメールアドレスを1つ用意することです。個人のアドレスで登録すると、引き継ぎのときにアカウントを渡せません。無料のメールサービスで会計担当用のアドレスを1つ作り、そのアドレスとパスワードを引き継ぎの書類に書いておきます。
ステップ3は、勘定科目を決めることです。会費収入、補助金収入、寄附金収入、雑収入。支出は、会議費、印刷費、通信費、行事費、備品費、慶弔費、繰越金。この程度に絞ってください。科目を細かくすると、入力のたびにどれを選ぶか迷います。迷う科目は、翌年の担当者も同じところで迷います。
ステップ4は、期首の残高を入力することです。前年度の決算書に載っている次年度繰越金を、現金と預金に分けて入れます。ここがずれていると、以降ずっと合いません。通帳の残高と手提げ金庫の中身を、切り替える日に数えて記録してください。
ステップ5は、1か月分を入力して手元の数字と合わせることです。最初の1か月で合えば、あとは同じ手順の繰り返しになります。合わなければ、原因は入力の抜けか期首残高のどちらかです。
ステップ6は、引き継ぎの手順を書き残すことです。どのサービスを使っているか、アカウントのメールアドレス、月にやること、年度末にやること。1枚に収めてください。会計ソフトを入れても、この1枚がなければ翌年に止まります。
自治体が配るエクセル様式を使うときのポイント
無料で確実に手に入る選択肢として、市や町が配るエクセル様式があります。会計ソフトを探し始めた段階では、まずここを見ておく価値があります。
配っているのは、会計処理そのものを軽くする目的で作られた入力用のファイルです。
本市では、自治会をはじめとする地域活動団体の事務や活動を支援するため、汎用ソフト(会計簿)の入力フォーマットを作成しました。 出典: city.utsunomiya.lg.jp
使うときに確かめることが4つあります。
1つめが、自分の市や町が配っているものを探すことです。他の自治体のファイルでも仕組みは同じですが、補助金の実績報告に添える書式は市や町ごとに決まっていることがあります。窓口に出す書類と帳簿の様式がそろっていると、年度末の転記が消えます。役所のホームページで、自治会や地域活動を扱う部署のページを見るのが早い順路になります。
2つめが、ファイルの作りに手を入れないことです。あらかじめ組まれた数式が、入力した行を合計して収支計算書の欄に送る作りになっています。行を挿入したり、列を削ったりすると、その道筋が切れます。科目を増やしたいときは、用意された予備の行や空いている欄を使ってください。それでも足りないときは、様式を作り替えるのではなく、無料のクラウド型に移すほうが安全です。
3つめが、年度ごとに別のファイルにすることです。配っている側も、一会計年度で使うことをすすめています。前年度のファイルを上書きして使い続けると、去年の数字が消え、監査のときに見せるものがなくなります。年度が替わったら新しいファイルをダウンロードし、期首の残高だけを入れて始めてください。
4つめが、保存する場所を会として決めることです。エクセルの弱点は機能ではなく、担当者のパソコンの中に1つだけある状態です。年に一度しか開かないファイルほど、どこに保存したか分からなくなります。保存先とファイル名の付け方を、引き継ぎの書類に書いておいてください。
会の規模別に、おすすめの組み合わせを決める
どの型を選ぶかは、会の規模と担当者の人数で決まります。機能の多さで選ぶと、使わない画面の多いソフトが残ります。
世帯数が100世帯までで、入出金が年間100件を下回る会では、自治体のエクセル様式で足ります。会費は年に一度か二度の集金で、支出は行事と印刷と慶弔が中心になります。この規模では、入力の手間よりも、書類の様式が窓口と合っていることのほうが効きます。
世帯数が100から500くらいで、月ごとに集金や支払いがある会では、無料のクラウド型が向きます。入力のたびに保存の操作が要らず、買い物をしたその場でスマートフォンから入れられます。無料で使えるものでも、現金出納帳と預金出納帳、収支計算書、収支予算書までは作れます。書類はエクセルとPDFで書き出せるので、総会に配る形をそのまま印刷できます。
世帯数が500を超え、会計担当と会計補助が分かれている会や、複数の会計を持つ会も、クラウド型が向きます。同じアカウントで同じ画面を見られるので、班ごとに集めた現金の記録を持ち寄る作業が減ります。団体を分けて管理できる作りのものなら、本会の会計と行事の特別会計を別に持てます。
市販の会計ソフトを選ぶ場面は限られます。収益を伴う事業を行っていて税の申告が必要な場合、または法人化している場合です。任意団体のまま運営している自治会では、複式簿記の帳簿を作る義務はありません。必要のない機能のために、翌年の担当者が読めない画面を引き継ぐことになります。
迷ったときは、無料の範囲で1年やってみる順番をおすすめします。会計の書類は年度で区切られるので、合わなければ翌年度から別のものに移せます。データをエクセルかPDFで書き出せるものを選んでおけば、移るときに困りません。
監査と総会で聞かれることに答えられる形にする
会計ソフトを選ぶ基準として見落とされやすいのが、監査と総会で聞かれることに答えられるかどうかです。作業が楽になっても、ここで止まると評価は下がります。
監査で見られるのは4つです。帳簿の残高と通帳の残高が合っているか、帳簿の1行に対応する領収書があるか、予算と実績の差が大きい科目に説明があるか、前年度の繰越金が期首の残高と一致しているか。この4つは、どの型のソフトを使っていても同じです。会計ソフトが助けてくれるのは1つめと4つめで、2つめと3つめは書類の整え方の話になります。
監査の前に用意するものを先に決めておくと、当日が短く終わります。現金出納帳と預金出納帳を印刷したもの、通帳の写し、領収書を日付順に綴ったもの、収支計算書、予算と実績を並べた表。クラウド型なら、印刷する書類はまとめて書き出せます。領収書だけは紙で綴る作業が残ります。
総会で聞かれることは、監査とは違います。金額の正しさではなく、何にいくら使ったのかと、来年はどうするのかを聞かれます。答えるために効くのは、予算と実績を並べた表です。予算に対して実績が多い科目と少ない科目に、それぞれ一言の説明を添えてください。説明があると、金額そのものへの質問はほとんど出なくなります。
年度をまたぐ扱いも、聞かれたときに答えられるようにしておきます。3月に集めた翌年度分の会費を、どちらの年度に入れたのか。3月に頼んで4月に請求が来た印刷代を、どちらに入れたのか。会として決めた考え方を1行で書いておけば、毎年同じ答えができます。判断が担当者ごとに変わると、去年と今年を並べたときに増減の理由が説明できなくなります。
会計ソフトの選び方でやりがちな3つの失敗
相談の場でしばしば出るのが、次の3つです。どれも機能を見比べる前の段階で決まります。
1つめが、前任者のエクセルをそのまま引き継ごうとすることです。関数と入力規則が何層にも組まれたファイルは、作った本人以外には直せません。壊れたときに直せる人がいないファイルは、会の資産ではなく負債になります。年度の切り替わりに合わせて、様式の配られているものか、無料のクラウド型に移してください。移すのは新年度の最初の入出金からで、前年度の数字を作り直す必要はありません。
2つめが、個人のメールアドレスで登録することです。クラウド型のサービスは、登録したアカウントを後任者へそのまま引き継げる作りになっているものがあります。ところが、前任者の私用のアドレスで登録してしまうと、その人の受信箱を通らないとパスワードの再設定ができません。会計担当用のアドレスを会として1つ作り、そのアドレスとパスワードを引き継ぎの書類に書いてください。無料のメールサービスで足ります。
3つめが、機能の一覧を先に比べることです。任意団体向けのソフトは、必要な機能がほぼ同じで、差が出るのは画面の分かりやすさと書き出しの形です。一覧表で比べると差が見えないので、デモの画面を触るか、実際に1か月分を入力してみるのが早い判断になります。申し込みをせずに試せるデモを用意しているサービスもあるので、そこで総会に配る書類の形を見てください。
この3つを避けたうえで、無料の範囲と書き出しの形だけを確かめれば、選ぶのに何週間もかかりません。会計ソフトを選ぶ作業そのものを短く終えて、集金と決算の段取りに時間を使うほうが、会の運営は楽になります。
会計ソフトを入れても残る作業を見積もる
自治会の会計ソフトは会計の作業だけを引き受けます。実務では、その前後に連絡の作業が残ります。ここを見積もっておかないと、思ったほど楽にならなかったという感想になります。
前に残るのが、集金の連絡です。会費の額、締め切り、集める方法を伝え、まだ払っていない人に思い出してもらう作業は、会計ソフトの外にあります。班長を通して回すやり方では、班長ごとの伝え方の差がそのまま入金の遅れになります。
後に残るのが、決算の共有です。作った収支計算書を総会の前に会員へ配り、質問を受けます。紙で配ると印刷と配布の手間がかかり、回覧板で回すと最後の人に届くまでに時間がかかります。連絡の道具のほうで書類を共有できると、この工程が短くなります。
この前後の作業をどこでやるかを決めるとき、いまグループでの連絡に使っている道具の性質を知っておく価値があります。連絡の道具として広く使われているものと、団体向けに作られたものでは、できることが違います。LINEのグループを連絡に使っている会は、書類と連絡が混ざる問題に必ず当たります。その違いを整理したものがLINEグループとの比較にあります。会費の案内と会計の書類を同じ場所に保存できるかどうかで、会計担当の手間が変わります。
無料のグループ機能を使ってきた会が、団体向けの道具に移すときに何が変わるかはBANDとの比較にまとめてあります。掲示板と予定表を持つ道具と、連絡だけの道具では、総会の案内の出し方が変わります。
町内会での実際の使いかたを並べたものが町内会での使われかたです。回覧板、行事の出欠、会費の案内といった、会計の前後にある作業をどこでまとめるかの例が並んでいます。同じ流れをPTAの会計で見たい場合はPTAでの使われかたのほうが近くなります。学年ごとに会計が分かれる団体の例が入っています。
連絡の道具を選ぶときに、会員の情報が外に出ないかを気にする会は多いです。誰でも入れる公開の場所と、招いた人だけが入る場所の違いはLINEオープンチャットとの比較で整理しています。会費の金額や滞納の状況は、メンバー以外は見られない場所で扱うのが前提になります。
費用や使い始めの手順について、よく聞かれることをまとめたものがよくある質問にあります。会計ソフトと連絡の道具を別々に選ぶか、まとめるかを決める前に、両方の費用を足して年間でいくらになるかを出してください。会費で払える額かどうかが、総会で承認をもらえるかの分かれ目になります。
Q1. 自治会の会計ソフトは無料のもので足りますか?
年間の入出金が300件を下回る規模なら、無料のもので足ります。自治体が配るエクセル様式か、任意団体向けの無料クラウド会計ソフトで、総会に必要な収支計算書と収支予算書は作れます。確かめるのは、団体数の上限、1年間に登録できる伝票の数、決算書をエクセルやPDFで書き出せるかの3点です。
Q2. 会計担当が代わるとき、データはどう引き継げばよいですか?
クラウド型なら、会として用意したメールアドレスで登録しておき、そのアドレスとパスワードを渡します。個人のアドレスで登録すると渡せません。エクセルの場合は、ファイルの保存先とファイル名の付け方を引き継ぎの書類に書きます。どちらの場合も、決算書をPDFで書き出して別に保存しておくと安全です。
Q3. 簿記の知識がないと会計ソフトは使えませんか?
任意団体向けのソフトは、簿記を前提にしない作りになっています。入金と出金を日付と金額と科目で1件ずつ入れれば、帳簿と決算書が自動で作られます。企業向けの会計ソフトは仕訳の考え方が必要になるため、自治会の規模では選ばないほうが手間が少なくなります。
Q4. 切り替えるのはいつがよいですか?
総会で前年度の決算を承認してもらったあと、新年度の最初の入出金からです。前年度の数字を移す必要がなく、期首の残高を現金と預金に分けて入れるだけで始まります。年度の途中で切り替えると、同じ年度の帳簿が2つに分かれて、決算のときに突き合わせる作業が増えます。