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避難訓練のやり方|想定と連絡の段取りから決める

2026年10月6日 ・ Tsudoo編集部

避難訓練のやり方で本当に迷うのは、並んで歩く順番ではなく、その手前にある決めごとです。何から逃げる想定にするのか、どこへ避難するのか、来なかった人をどう確かめるのか。この3つが決まっていない訓練は、当日は形になっても本番で使えません。この記事では、想定の立て方から避難経路、安否確認、備蓄の点検、終わったあとの振り返りまでを、決める順番に沿って整理します。

避難訓練は「何から逃げるか」を決めてから組む

避難訓練という言葉は、中身の違う3つの訓練をまとめて指しています。火災から逃げる訓練、地震のあとに避難する訓練、水害の前に避難する訓練です。この3つは、逃げる方向も、判断のきっかけも、必要な時間もまったく違います。同じ「避難訓練」として毎年同じことを繰り返している会は、たいていどれか1つしか練習できていません。

火災の場合は、気づいてから動くまでの時間が最も短く、上ではなく下へ、建物の外へ出る動きになります。判断のきっかけは煙とベルです。考える時間はほとんどなく、迷わず動けるかどうかが結果を左右します。

地震の場合は、揺れが収まるまで動けません。動き出すのは揺れが止まったあとで、そこから建物の安全を確かめ、必要なら避難場所へ向かいます。火災と逆に、すぐ外へ飛び出すことが危険になる場面もあります。落下物とガラスが多い場所を通らない経路を選ぶ必要があり、経路の下見の意味が変わります。

水害の場合は、時間の余裕があります。気象情報や自治体の避難情報で数時間前から見通しが立つため、訓練で練習すべきなのは逃げ足の速さではなく、いつ動くかを決める手順と、決めたことを全員に伝える手順です。垂直避難を選ぶのか、離れた避難場所まで移動するのかも地域で変わります。

どれを選ぶかは、その地域で起こりやすいものから決めます。ハザードマップで浸水や土砂災害の区域に入っている地域なら水害を、古い木造住宅が多い地区なら火災を、避難場所までの道に狭い路地が多いなら地震を先に練習する、といった順番です。3つを1回で詰め込もうとすると、どれも中途半端になります。年ごとに1つを深く練習して、3年で1周させるほうが身に付きます。

義務で行う訓練と、集まりの判断で行う訓練

避難訓練のやり方を調べると、企業向けの手順書と地域の防災訓練の記事が混ざって出てきます。この2つは、そもそも義務の有無が違います。

消防法第8条では、一定の建物について防火管理者を選任し、消防計画に基づいて消火・通報・避難の訓練を行うことが義務付けられています。集会場や飲食店、病院、福祉施設のように不特定多数の人が使う建物は特定防火対象物と呼ばれ、消火訓練と避難訓練を年2回以上行うことになっています。共同住宅、学校、図書館、事務所などの非特定防火対象物では、消防計画に定めた回数です。

一方、町内会や自治会、部活、教室といった集まりそのものには、避難訓練の回数の定めがありません。ここが分かっていないと、「義務なのに足りていないのでは」という不安に引っ張られて、内容より回数を追いかけることになります。義務がないぶん、何のために行うのかを自分たちで決めることが、そのまま訓練の設計になります。

地域の防災活動については、平成25年の災害対策基本法の改正で、自助と共助に関する規定が追加されました。市町村内の一定の地区の住民が共同で防災の計画を作る仕組みが用意され、内閣府は地区防災計画という名前でその作成を後押ししています。地域で避難訓練を続けている会にとっては、毎年の訓練で分かったことを計画の形に残せる仕組みだと考えると使い道が見えます。自治体の防災担当課に相談すると、研修の資料や作成の手引きを紹介してもらえます。

義務のある建物で行う訓練に地域の住民が参加する形もよく取られています。集合住宅の管理組合が行う訓練に自治会が合流する、学校の避難訓練に保護者が加わる、といった形です。この場合、訓練の主催はどちらなのか、参加者の名簿はどちらが持つのかを先に決めておかないと、当日の点呼で混乱します。

想定は時刻と季節と被害の程度で決まる

想定を作るときに埋める項目は3つです。時刻、季節、被害の程度です。この3つを変えるだけで、同じ会場でも別の訓練になります。

時刻は、参加できる人の顔ぶれを決めます。平日の日中を想定すると、その場にいるのは高齢者と在宅で仕事をしている人、乳幼児を連れた人が中心になります。力仕事ができる人が少ない前提で、誰がドアを開け、誰が声をかけるのかを考えることになります。休日の午前なら人手はそろいますが、本番でその時間に災害が起きるとは限りません。夜間を想定すると、明かりの問題が加わります。懐中電灯がどこにあるか、非常灯が点くかを確かめる訓練になります。

季節は、避難先で必要になるものを決めます。冬なら防寒、夏なら水と日陰です。避難場所に集まったあとの想定まで含めるなら、季節を決めないと持ち物が決まりません。真夏に屋外で1時間並ぶ訓練は、それ自体が危険になることもあります。訓練の時期と想定の季節をずらす場合は、「本番が冬だったら何が足りないか」を口に出して確かめるだけでも意味があります。

被害の程度は、訓練の難しさを決めます。全員が自力で歩ける想定にすると訓練は短く終わりますが、実際には歩けない人がいます。階段が使えない、道が塞がっている、電話が通じない、といった制約を1つだけ加えると、訓練の中身が急に濃くなります。制約を2つ以上重ねると混乱するので、1回に1つが目安です。

避難訓練を形だけの取り組みにしないためには、訓練の手順ではなく、なぜその行動が必要なのかまで理解しておくことが重要です。それぞれの行動の意味を社員に共有することで、社員は実際の場面でも迷わず行動できるようになります。 出典: asobi-bosai.com

想定を紙に書くときは、「いつ・どこで・何が起きて・誰が最初に気づくか」の4行で足ります。様式を作り込む必要はありません。4行が決まれば、そこから動きを並べられます。

避難経路と避難先は2本ずつ用意する

経路と避難先は、それぞれ2本用意します。1本しかない計画は、その1本が使えない日に何もできません。

経路を決めるときは、実際に歩いて時間を測ります。図面で見て3分の道が、実際には信号2つで6分かかることがあります。高齢者が多い会では、健常者の歩く速さの1.5倍から2倍の時間で見積もります。歩いてみると、塀が倒れそうな場所、ブロック塀が続く区間、街灯が1つもない区間が分かります。夜の想定を作るなら、夜に一度歩いておくのが確実です。

避難先も2か所決めます。近くの公園や広場のような一次的な集合場所と、自治体が指定している避難場所や避難所です。この2つを混ぜて呼んでいる会は多く、当日に「公園に集まる」と伝えたつもりが体育館に向かった人が出ます。呼び方を決めて、案内に同じ言葉で書いてください。自治体が発行している防災マップに載っている名称をそのまま使うのが、いちばん揺れません。

避難先が分かれる事情もあります。水害では浸水しない高い場所へ、地震では広い場所へ、火災では風上へ。想定ごとに行き先が変わることを、参加者に一度説明しておくと、本番で「いつもの公園」に集まってしまう事故を防げます。

訓練の日は、経路の途中に立つ人を決めておきます。曲がり角ごとに1人立てば、列がちぎれません。人手が足りないときは、先頭と最後尾に無線か携帯電話を持つ人を置く形で代えられます。最後尾の人が「全員通過」を伝える役です。これを決めておかないと、途中で戻った人に誰も気づきません。

当日の進行を紙1枚にする

当日の進行は、紙1枚のタイムテーブルにしてから始めます。これがないと最初の説明が長引き、いちばん練習したかった部分が駆け足になります。90分で組む場合の目安は、集合と趣旨の説明に10分、想定の読み上げと役割の確認に10分、避難の移動に20分、安否確認に20分、備蓄品の点検に20分、振り返りに10分です。移動の時間は、経路を歩いて測った時間の1.5倍で見ておくと崩れません。列が伸びるぶんと、途中で止まるぶんを吸収できます。

役割は、進行役、誘導役、最後尾の確認役、点呼役、記録役の5つに分けます。参加者が10人に届かない集まりでは、進行役と記録役、点呼役と最後尾の確認役を兼任させて3人で回せます。役割を書いた名札か腕章を用意すると、見ている側にも誰が何をしているかが伝わり、振り返りの材料が増えます。

進行役がやることは、時間を守ることだけではありません。各場面の終わりに「いまの動きで困った人はいますか」と一度だけ聞くことです。その場で出た一言は、あとの振り返りでは出てきません。歩き終えた直後、点呼が終わった直後の2回だけ聞けば十分です。

タイムテーブルは、参加者にも配ります。終わる時刻が分かっている訓練は、参加のためらいが減ります。配る紙には、集合場所、解散時刻、持ち物、雨天のときの扱いの4点を入れておけば、当日の問い合わせがほとんど消えます。

子どもと高齢者が混ざる会での組み方

地域の避難訓練には、小学生から80代までが同じ場に集まります。全員に同じ動きを求めると、どちらにも合わない訓練になります。分けて考える点が3つあります。

1つ目は、歩く速さです。同じ経路を全員で歩くと、先頭と最後尾で5分以上開くことがあります。班を年齢でそろえるのではなく、速い班と遅い班に分けて、出発を5分ずらす形にすると列が団子になりません。遅い班に付く誘導役は、いちばん慣れた人を当ててください。

2つ目は、説明の仕方です。子どもには短い言葉で1つずつ、高齢の参加者には理由を添えて伝えるほうが伝わります。同じ内容を2回言い方を変えて話すと、どちらにも届きます。時間は2倍かかりませんが、説明が長くなるぶん、体を動かす時間を確保してから組んでください。

3つ目は、役割の与え方です。子どもに役割がないと、ただ付いて歩くだけになって記憶に残りません。人数を数える補助、持ち物の確認、地図を持つ役といった小さな役割を用意すると、訓練の意味が変わります。高齢の参加者には、経路の危ない場所を教えてもらう役を頼むと、その人が持っている地域の記憶が全員に共有されます。どこの塀が古いか、どの道が雨で冠水するかは、長く住んでいる人しか知りません。

子どもが参加する訓練では、写真の扱いも先に決めておきます。撮る人を1人か2人に決め、共有する範囲を案内文に書いておくと、当日に断られる場面が減ります。会の中だけで見られる形で保存しておけば、翌年の案内にも使えます。

安否確認の手順を先に決める

避難訓練でいちばん練習しておく価値があるのは、実は歩く部分ではなく安否確認です。本番で最も時間がかかり、最も混乱するのがここだからです。

手順は3段で組みます。第1段は、避難先での点呼です。名簿を持つ人を決め、班ごとに数えます。全体で一度に数えると必ず合いません。第2段は、来ていない人の確認です。誰が来ていないかを名前で挙げ、その人に連絡を取る担当を決めます。ここで初めて、連絡の道筋が試されます。電話が通じない想定なら、その人の家に誰が行くのかを決めることになります。第3段は、確認した結果を1か所に集める作業です。班ごとに紙で集めてから合計するのか、その場で1つの表に書き込むのかを決めておきます。

避難に手助けが必要な人がいる会では、名簿の扱いを事前に決めておく必要があります。自治体が作る避難行動要支援者名簿の提供を受けている会もあります。この名簿は扱いに条件が付いているため、訓練で使う場合は自治体の担当課に確認してから使います。名簿を紙で持ち歩く場合は、訓練が終わったあとの回収まで手順に入れてください。回収し忘れた名簿が外に出る事故は、訓練のたびに起きています。

安否確認の練習で見落としがちなのが、「無事です」を返す側の手順です。確認する側の動きばかり練習して、返す側が何をすればよいか知らないと、本番では折り返しの電話が鳴り続けます。全員に「無事なら自分から1回だけ返す」と伝えておくだけで、確認の手間は半分以下になります。安否の返事を1か所に集められる形になっていれば、電話を受ける人を決める必要もなくなります。

備蓄と備品は訓練の日に点検する

避難訓練の日は、備蓄品を見る絶好の機会です。点検だけを別の日に行おうとすると、たいてい先送りになります。

地震を想定した避難訓練は、備蓄品の状態を確認する貴重な機会でもあります。非常食の賞味期限切れや、懐中電灯の電池切れなどは、実際に点検してみないと気づきにくいものです。 出典: asobi-bosai.com

見るものは5つです。非常食と飲料水の期限、乾電池と懐中電灯、簡易トイレの数、救急箱の中身、発電機や投光器が動くかどうか。期限が切れているものは、その場で数を記録して、買い足す担当と期限を決めます。訓練の日に「あとで買っておきます」で終わると、翌年も同じものが残っています。

数の目安も持っておくと判断が早くなります。飲料水は1人1日3リットルを3日分とされているのが一般的な目安で、集会所に何人分を保管するかは会の人数と近隣の状況で決めます。全員分を会で持つ必要はありません。各家庭で3日分、会は不足分の補いと共用の資材、という切り分けにしている会が多いです。会が持つべきものは、個人では持ちにくいもの、つまり発電機、投光器、簡易トイレ、担架、工具といった資材に寄せるほうが役に立ちます。

点検の結果は、翌年の担当が最初に開く場所に残します。紙に書いて事務局の棚に入れると、担当が代わった年に見つかりません。写真を撮って記録と一緒に保存し、期限が近いものだけ一覧にしておけば、翌年は買い足しから始められます。

参加者への連絡で崩れる場面

訓練の中身が決まっても、当日までの連絡がうまくいかないと参加者が集まりません。実際に崩れるのは3つの場面です。

1つ目は、案内が全員に届いていない場面です。回覧板は最後の家に届くまで1週間近くかかることがあり、その間に予定を入れる人が出ます。紙とメッセージアプリを併用している会では、どちらが正式な案内か曖昧になり、当日に「聞いていない」という連絡が来ます。日常の連絡をどこに寄せるかは、いま使っている道具との違いを並べてから決めたほうが早く固まります。無料で使える手軽さと、名簿や過去の連絡を追えるかどうかの兼ね合いはLINEグループとの比較に整理があります。

2つ目は、中止と延期の連絡です。前日の夜に決めるのか当日の朝に決めるのかを案内に書いておかないと、判断した人だけが動いて参加者が集合場所で待ちます。中止の連絡は、送った側が届いたかどうかを確かめられる形でないと安心できません。

3つ目は、直前の変更です。集合場所が変わった、持ち物に懐中電灯が加わった、といった小さな変更が当日の混乱を生みます。最初の案内と最新の情報が別の場所にあると、参加者は古い案内を見て来ます。案内と変更が同じ画面に並び、メンバー以外は見られない形になっていれば、名簿を外に出さずに周知だけを済ませられます。掲示板の形でグループを運営してきた会にとっての違いはBANDとの比較、既存の交流の場をそのまま連絡に使ってきた会との違いはFacebookグループとの比較にまとめています。

町内会が1年をどう回しているかの例は町内会での使われかたに、学校の行事と保護者への連絡を扱っている例は学校での使われかたにあります。

訓練の前に外へ知らせておくこと

避難訓練は、会の中だけで進めると当日に外から止められることがあります。事前に伝えておく相手は3つです。

第一に、自治体の防災担当課です。地域の訓練に対して、起震車や煙体験の道具の貸し出し、職員の派遣、資料の提供を行っている自治体があります。申し込みの締切が2か月前という地域もあるため、想定が決まった段階で一度聞いてみる価値があります。費用がかからない支援が意外に多く、聞かなければ使えないままになります。

第二に、消防署です。屋外で消火器を使う、放水する、119番への模擬通報を行うといった内容を含めるなら、事前の連絡が必要になります。消防職員の立会いを希望する場合は日程の調整が要るため、会場が取れた時点で相談するのが確実です。地域によっては春と秋の火災予防運動の期間に依頼が集中します。

第三に、近隣です。人が集まって声を出し、笛やベルを鳴らす訓練は、知らない人には本当の事故に見えます。掲示板への貼り出しと、隣接する建物への一声で足ります。マンションの管理組合が近くにある場合は、その日に来客の車が増えることも伝えておくと、駐車のもめごとを避けられます。訓練の日に通報が入って消防車が来てしまった例は珍しくありません。

伝える内容は、日時、場所、何をするか、音が出る時間帯の4点です。案内文をそのまま渡せば足ります。外への連絡は担当を1人に決めて、誰に伝えたかを記録に残してください。翌年の担当が同じ順番で回れます。

振り返りは「なぜ」まで戻す

訓練が終わったあとの振り返りは、5分で構いません。ただし、聞く内容を決めておく必要があります。「うまくいきましたか」と聞くと「はい」で終わります。聞くのは3つです。迷った場面はどこか、時間がかかったのはどの作業か、本番なら足りなかったものは何か。この3つは、参加者の記憶が新しいうちにしか出てきません。

出てきた意見は、その場で紙に書きます。「非常口の鍵を持っている人が当日いなかった」「点呼が2回合わなかった」「高齢の参加者が階段で遅れた」といった一行が、翌年の設計図になります。良かった点を並べるより、詰まった場所を1つ残すほうが役に立ちます。

避難訓練を「実施すること」自体に意義はありますが、実際に役立てるためには、日常業務と連動した仕組みづくりが欠かせません。 出典: kentem.jp

日常と地続きにするというのは、地域の集まりでも同じです。訓練のときだけ特別な連絡手段を使い、普段は別の方法で連絡している会は、本番で普段の方法に戻ります。訓練で使う道筋と日常の道筋が同じなら、練習しなくても本番で動けます。逆に言えば、日常の連絡が電話と口頭だけの会は、本番も電話と口頭で回すことになります。それで足りるかを一度考えてみる価値があります。

振り返りの結果は、次に何を変えるかを1つだけ決めて終わります。5つ直そうとすると何も変わりません。1つだけ決めて、来年の担当に渡す。それが続く会の形です。

記録は6項目を埋めるだけでよい

避難訓練の記録は、様式を作り込むと続きません。埋めるのは6項目です。実施した日時、参加した人数、想定した内容、行った作業、測った時間、気づいたことです。A4の紙1枚に手書きで足ります。

参加人数は、世帯数ではなく人数で数えます。世帯で数えると、実際に動ける人が何人いるのか分からなくなります。可能なら、年代のおおまかな内訳も残してください。翌年に「70代以上が半分だった」と分かっていれば、経路の選び方が変わります。

測った時間は、いちばん役に立つ記録です。集合にかかった時間、避難先までの移動時間、点呼が終わるまでの時間の3つを残します。この3つは、年ごとに比べられる数字になります。訓練の効果は感想では測れませんが、点呼が終わるまでの時間が去年より短くなったかどうかは、はっきり分かります。

気づいたことは、良かった点ではなく詰まった場所を書きます。「非常口の鍵を持っている人が当日いなかった」「点呼が2回合わなかった」のような一行が、翌年の設計図になります。書く量は3行で構いません。長い報告書は誰も読み返しません。

記録の保存先は、翌年の担当が最初に開く場所にします。紙で残すなら保管場所を引き継ぎの資料に書き、画面で残すなら会の全員が見られる場所に保存します。去年の記録が見つからない会は、毎年ゼロから準備をやり直しています。記録が1か所にそろっているだけで、準備にかかる時間は半分になります。

連絡と記録を1本にすると訓練が続く

避難訓練の準備を分解すると、想定を決める、経路を歩く、案内を出す、出欠を把握する、当日の変更を伝える、記録を残す、という6つの仕事になります。このうち3つが連絡に関わる仕事です。訓練の内容を工夫するより、連絡の道筋を1本にするほうが、とりまとめる人の手間は目に見えて減ります。

道具を選ぶ基準は3つに絞れます。役員が代わるときに引き継ぐものが1つで済むか。新しいIDとパスワードを会員に増やさずに始められるか。名簿と過去の連絡が外から見られない形になっているか。この3つを満たさない道具は、1年目は動いても2年目に止まります。無料で使えるかどうかより、2年目に誰が管理しているかのほうが続くかどうかを決めます。

団体の形によって、連絡が集中する時期も違います。地域の集まりは防災訓練と夏祭りの前、学校に関わる集まりは年度初めと行事の前、習い事の教室は休講と振り替えの連絡が日常的に発生します。近い運営の例を見てから決めたほうが外れません。役員が毎年入れ替わる前提で組んでいる例はPTAでの使われかた、日程の変更が多い運営の例は教室での使われかたにあります。使い始めの手順や費用でよく出る疑問はよくある質問にまとめてあります。

初めて避難訓練を組む会が、最初の1年で決めておくとよいことは3つです。想定を1つに絞ること、避難先の呼び方を防災マップと同じ言葉にそろえること、そして記録を残す場所を決めることです。この3つが決まっていれば、2年目は想定を変えるだけで準備が進みます。逆に、初年度に内容を盛り込みすぎた会は、翌年に同じ規模を再現できず、そこで途切れます。小さく始めて、毎年1つだけ難しくしていくほうが長く続きます。

避難訓練は、年に1回か2回しか行いません。だからこそ、去年の記録と連絡の履歴が残っているかどうかで、準備にかかる時間が何倍も変わります。訓練の中身を良くする工夫は、記録が残る形になってから考えても間に合います。まず、案内と記録と点検の結果が同じ場所に残る状態を作ることが、いちばん効く準備です。

Q1. 町内会の避難訓練は年に何回行えばよいですか?

町内会そのものに回数の定めはありません。回数が決まっているのは消防法第8条で防火管理者を選任する建物で、集会場などの特定防火対象物では避難訓練が年2回以上、共同住宅や学校などの非特定防火対象物では消防計画に定めた回数です。地域の集まりでは、年1回を通しで行い、役員が代わる年は引き継ぎを兼ねる形が続けやすい組み方です。

Q2. 火災と地震と水害で、訓練の中身は変えるべきですか?

変えたほうがよいです。火災は気づいてすぐ屋外へ、地震は揺れが収まってから安全を確かめて移動、水害は数時間前に動くかどうかを決める手順が中心になります。逃げる方向も判断のきっかけも違うため、1回で3つを詰め込むとどれも身に付きません。年ごとに1つを深く練習して3年で1周させる形が現実的です。

Q3. 安否確認はどう練習すればよいですか?

避難先での点呼、来ていない人への連絡、結果を1か所に集める作業の3段で組みます。見落としやすいのは返す側の手順で、全員に「無事なら自分から1回だけ返す」と伝えておくだけで確認の手間が半分以下になります。名簿を紙で持ち出す場合は、訓練後の回収まで手順に入れてください。

Q4. 備蓄品の点検は訓練と一緒に行ってよいですか?

一緒に行うのが確実です。点検だけを別の日に予定すると先送りになります。見るのは非常食と飲料水の期限、乾電池と懐中電灯、簡易トイレの数、救急箱の中身、発電機が動くかどうかの5点です。期限が切れていたものは、その場で買い足す担当と期限を決めてから解散してください。

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