消防訓練のやり方を調べはじめると、消火器の使い方を説明した資料と、企業の防災計画の話が混ざって出てきます。町内会や自治会、PTA、部活の集まりで実際に困るのはそこではなく、誰にどこまで声をかけ、消防署にいつ連絡し、当日の60分を何に使うかという段取りの部分です。この記事では、義務の範囲の確認から、当日の役割分担、終わったあとに残す記録までを、決める順番に並べて整理します。
消防訓練のやり方は、義務のある建物かどうかで変わる
最初に押さえておきたいのは、消防訓練には法律で回数が決まっているものと、集まりの判断で行うものの2種類があるという点です。ここを分けずに調べると、企業向けの厳しい要件を町内会にそのまま当てはめてしまい、必要のない準備で手が止まります。
消防法第8条では、一定の建物について防火管理者を選任し、消防計画を作成したうえで、その計画に基づいて消火・通報・避難の訓練を行うことが義務付けられています。つまり義務の主体は「集まり」ではなく「建物の管理権原者」です。公民館や集会所を借りて訓練を行う場合、義務を負っているのはその施設側であり、借りる側は施設の防火管理者と相談して中身を決める立場になります。
消防法により、一定の条件を満たした建築物や工作物においては、管理権原者に対し防火防災管理業務の実施が求められています。その業務の一環として、自衛消防訓練が定められており、防災訓練や防火訓練を毎年既定の回数実施しなければなりません。 出典: infocom-sb.jp
回数は建物の種類で変わります。集会場、遊技場、飲食店、百貨店、旅館のように不特定多数の人が利用する建物や、病院、福祉施設、幼稚園のように避難が難しい人が利用する建物は「特定防火対象物」と呼ばれ、消火訓練と避難訓練を年2回以上行うことが求められます。通報訓練は消防計画に定めた回数です。
一方、共同住宅、学校、図書館、神社、工場、倉庫、事務所などは「非特定防火対象物」にあたり、消火・避難・通報のいずれも消防計画に定めた回数を行うことになります。年2回という数字が独り歩きしていますが、非特定の建物では計画に書いた回数が基準です。自分たちが使っている建物がどちらなのか分からないときは、施設の管理者に「特定か非特定か」「消防計画に訓練の回数がどう書かれているか」の2点を聞けば済みます。
町内会の防災訓練や部活の避難確認のように、法律上の回数の定めがない集まりであっても、行う意味は変わりません。回数の義務がないぶん、いつ・何のために行うかを自分たちで決める必要があるだけです。義務がある建物の基準を参考にして、年1回は通しで行い、役員が交代する年は引き継ぎを兼ねて行う、といった形に落とすと続けやすくなります。
消火・通報・避難の3つをそろえると総合訓練になる
消防訓練は中身で3つに分かれます。消火訓練、通報訓練、避難訓練です。この3つを合わせて行うものを総合訓練と呼び、防火管理が必要な施設では総合訓練の形で実施することが推奨されています。3つのうちどれか1つだけを毎年繰り返している会は多く、そこを通しに変えるだけで訓練の質が変わります。
消火訓練は、建物に付いている消火器や屋内消火栓を使って手順を確かめるものです。実際に放射するのが最も効果的ですが、設置場所を確認して操作の順番を体で覚えるだけでも意味があります。水が出ない模擬操作として行うことも認められているので、集合住宅の駐車場が使えないといった事情があるなら、そこは無理をしなくて構いません。消防署に依頼すると、水が放射される消火器トレーナーを貸し出してもらえる地域もあります。参加者が20人を超えるなら、1台を全員で回すより、班に分けて交代したほうが待ち時間が短くなります。
通報訓練は、119番通報の手順と、自動火災報知設備や放送設備の使い方を確かめるものです。火災を見つけてから119番、館内への連絡、防災センターへの連絡という順番を声に出して確認します。ここで大事なのが、本番の回線を使う模擬通報を行う場合は、事前に消防署へ連絡しておくことです。予約が必要な地域もあります。
それぞれに利点がありますので、状況に応じて訓練してください。実際に通報訓練を行う場合は、事前にお近くの消防署までご連絡ください。 出典: city.gero.lg.jp
模擬通報を行うときは、第一声で「訓練通報です」または「訓練です」と伝えます。これを飛ばすと本番の出動につながる恐れがあるため、通報役の人にはその一言だけ紙に書いて持たせておくと安全です。固定電話は番号から場所が特定しやすく、携帯電話はスピーカー機能で指令員の指示を全員が聞けるという違いがあります。どちらの利点も体験させたいなら、1回目を固定電話、2回目を携帯電話に分けると理解が進みます。
避難訓練は、火災が起きたときにどこから避難するかを事前に確かめるものです。避難経路の決定、避難場所と避難方法の伝達、混乱の防止、非常口の開放、逃げ遅れた人の人数確認までを含めて組み立てます。毎年同じ場所を火元に設定していると、参加者は同じ階段しか覚えません。火元を階や棟で変えて、別の経路を通る回を必ず入れてください。防火戸や防火シャッターを閉じる訓練、避難器具の使い方の確認も、この中に入ります。
日程を決める順番を間違えない
消防訓練の準備で手戻りが起きるのは、たいてい日程を決める順番が逆になったときです。参加者へ日程を先に告知してから会場や消防署に連絡し、都合が合わずに案内をやり直すという流れが、いちばん起きやすい失敗です。決める順番は、会場、消防署、参加者の3段で固定しておくと崩れません。
最初に会場を押さえます。集会所や体育館は他の行事と重なりやすく、特に土曜日の午前は取り合いになります。放水や消火器の使用を予定しているなら、屋外で使える場所があるかもここで確認します。次に、その日程で消防署に連絡します。消防職員の立会いや指導を希望する場合は日程調整が必要になるため、会場が取れた段階で早めに相談するのが確実です。地域によっては春と秋の火災予防運動の期間に依頼が集中するので、その時期を狙うなら1か月以上前に動いたほうが通りやすくなります。
防火管理者を選任する必要がある建物では、訓練の実施を消防署へ報告することになっています。報告の形は自治体によって違い、消防訓練通知書を紙で提出する方法と、電子申請で提出する方法があります。紙で出すときに副本が必要なら2部作ります。この書類は借りる側が勝手に出すものではないので、施設の防火管理者に「通知書はどちらが出すのか」を先に確かめてください。
参加者への案内は、会場と消防署が固まってから出します。このとき一緒に決めておくべきものが3つあります。雨天のときの扱い、予備日、そして持ち物です。雨天中止にするのか、屋内の内容に切り替えるのかを先に決めて案内文に書いておくと、当日の朝に問い合わせが集中しません。予備日は、会場を取るときに一緒に押さえておくと後が楽になります。
季節の選び方にも目安があります。9月の防災の日の前後、春と秋の火災予防運動の期間は、地域全体が防災の話題に向いているので参加率が上がりやすい時期です。逆に年度末と年度初めは役員の交代と重なるため、準備の担当が途中で変わって引き継ぎ漏れが起きやすくなります。
当日の流れを紙1枚に落とす
当日の進行は、紙1枚のタイムテーブルにしてから始めます。これがないと、説明が長引いて避難の時間が削られ、いちばん大事な部分が駆け足になります。60分で組む場合の目安は、集合と趣旨の説明に10分、通報訓練に10分、避難訓練に20分、消火訓練に15分、振り返りに5分です。人数が多いときは消火訓練を班に分けて並行させ、全体の時間を延ばさない形にします。
役割は、通報係、初期消火係、避難誘導係、安全管理係、記録係の5つに分けるのが基本です。参加者が10人に届かない集まりなら、通報係と記録係、初期消火係と安全管理係を兼任させて3人で回します。役割を紙に書いて名札のように持たせると、見ている側にも誰が何をしているかが伝わり、振り返りの材料が増えます。
高齢の参加者や小さい子どもがいる場合は、階段を使う経路と使わない経路の2本を用意します。実際の火災では、同じ建物にいる全員が同じ速さで動けるわけではありません。逃げ遅れた人の人数確認をどうやるかを決めておくことのほうが、速く避難できたかどうかより重要です。点呼の担当と、名簿をどこに保管しておくかを当日の朝に確認してください。
当日持ち込むものも、前日までに紙に書き出しておきます。名簿と点呼用の用紙、筆記具、拡声器か笛、腕章か名札、救急箱、記録用のカメラ、雨天時のための予備の案内、この7点がそろっていれば大きな抜けはありません。拡声器は屋外で20人以上に指示を出すときに効きます。声だけで回そうとすると、指示が届いた人と届かない人が生まれ、避難の列が二手に分かれます。笛は拡声器が使えない場面の代わりになり、電池も要りません。救急箱は、消火器の操作中に手を切る、階段で足をひねるといった小さなけがのために置いておきます。
会場に持ち込む機材のうち、消火器トレーナーや起震車のように消防署から借りるものは、受け取りと返却の担当を分けずに1人に決めておきます。借りたものが誰の手元にあるか分からなくなると、返却の連絡が遅れ、次の年に借りにくくなります。
写真については、撮る人を1人か2人に決めておきます。全員が思い出として撮ると、あとから公開してよい写真とそうでない写真の区別がつかなくなります。子どもが写った写真の扱いは会によって方針が違うため、案内文の段階で「記録用に撮影します。会の中だけで共有します」と書いておくと、当日に断られる場面を減らせます。共有する範囲を決めておくことは、写真を残すかどうかより先に決める話です。
シナリオは5つの項目を埋めるだけで作れる
消防訓練のやり方を調べた人がいちばんつまずくのが、シナリオの作成です。企業向けの資料には何ページもある様式が載っていますが、地域の集まりで必要なのは5項目です。想定、時刻、火元、気づき方、そこからの動きの順に埋めれば、それがシナリオになります。
想定は、火災か地震かを最初に決めます。火災を想定するなら、調理中の鍋からの出火、電気ストーブに布が触れた、たばこの不始末など、その建物で起こりやすいものを選びます。集会所の厨房を使う行事があるなら厨房、体育館なら舞台裏の電気設備、といった具合に、実際に火の気がある場所を選ぶほうが参加者の納得が違います。地震を想定するなら、揺れが収まってからの避難と、その後の安否確認までを含めます。
時刻の設定は、参加者の顔ぶれを決めます。平日の昼を想定すると、在宅しているのは高齢者と乳幼児を連れた人が中心になり、力仕事ができる人が少ないという前提で動きを組むことになります。休日の夜を想定すると人手はそろいますが、暗さと視界の悪さが加わります。毎年同じ時刻を想定していると、その時間に強い会にしかなりません。2年か3年で想定の時刻を回すようにすると、弱いところが見えてきます。
火元の位置は、避難経路を決める材料です。1階の入口付近が火元なら、玄関から出る経路は使えません。階段が1本しかない建物なら、その階段が使えないときにどうするかを考えざるを得ません。このとき「できません」で終わらせず、窓から声を出して知らせる、ベランダで待つ、といった次善の動きまで決めておくのが訓練の値打ちです。
気づき方は、自動火災報知設備がある建物とない建物で分かれます。設備がある建物では、ベルが鳴ったあと誰が現場を見に行くのか、誤報かどうかをどう判断するのかが実際の課題になります。設備がない建物では、見つけた人が大声で知らせるところから始まります。どちらの型で組むかによって、訓練の最初の1分の作り方が変わります。
最後に動きを書きます。発見、通報、館内への周知、初期消火、避難誘導、点呼、消防隊への情報提供の順に、誰が何をするかを1行ずつ並べます。これで紙1枚のシナリオが完成します。時間があれば、読み合わせだけを役員で1回行っておくと、当日の抜けが見つかります。
人が集まらない訓練を立て直す
訓練のやり方が固まっても、参加者が集まらなければ意味がありません。参加率が落ちる理由は、関心の低さではなく、案内の作り方に原因があることが多いです。とりまとめる側が見直せる点は4つあります。
第一に、所要時間を書くことです。「防災訓練を行います」だけの案内では、参加者は半日拘束される想像をします。「9時30分集合、10時30分解散」と書くだけで、参加をためらう人が減ります。終わる時刻を書くことが、集める側にできるいちばん安いてこです。
第二に、何をするかを具体的に書くことです。消火器を実際に使える、起震車が来る、子どもが煙の体験ができる、といった中身が分かると、参加の理由が生まれます。内容が地味な年でも、「非常口の鍵を全員で確認します」のように書けば、目的が伝わります。
第三に、対象を絞ることです。全戸に同じ案内を配ると、誰に来てほしいのかが伝わりません。今年は1丁目と2丁目、来年は3丁目と4丁目のように区切る、あるいは班長と新しく入った世帯に絞る形にすると、参加する側は自分に向けられた案内だと分かります。
第四に、前年の様子を見せることです。写真が数枚あるだけで、初めて参加する人の不安が下がります。ここで効くのは、写真が外へ出ない形で保管されていることです。会の中だけで見られる状態なら、子どもが写った写真も気兼ねなく使えます。前年の記録が残っていない会は、まずその1枚を残すところから始めてください。
うまくいかない訓練に共通する4つの型
相談の場でよく出てくる失敗には、型があります。自分の会がどれに当てはまるかを先に見ておくと、同じ年を繰り返さずに済みます。
1つ目は、説明で終わる型です。消防署の講話と資料の配布で予定の時間を使い切り、参加者が一度も体を動かさずに解散します。知識は残りますが、非常口が開くかどうかは分かりません。講話を入れるなら、体を動かす内容を先に済ませてから後ろに置くほうが、時間の食い合いになりません。
2つ目は、同じ人しか動かない型です。役員だけが通報と消火をやってみせ、参加者は見学して帰ります。見学は訓練ではありません。人数が多いときは班に分け、全員が1つは手を動かす形にします。
3つ目は、記録が残らない型です。当日は良い訓練ができたのに、記録がないため翌年の担当が去年と同じ調べ物から始めます。訓練の3時間より、終わったあとの5分の記録のほうが、翌年に効きます。
4つ目は、連絡が本番で使えない型です。訓練の案内は紙で配っているのに、本当の災害では紙を配る時間がありません。訓練のときに使った連絡の道筋が、そのまま本番でも使える形になっているかを一度確かめてください。訓練の日の朝に集合場所の変更を伝えられなかった会は、本番でも同じところで詰まります。
参加者への連絡でつまずく3つの場面
訓練そのものは短時間で終わりますが、とりまとめる人の手間はほとんど連絡に消えます。実際に崩れるのは次の3つの場面です。
1つ目は、案内が全員に届いていない場面です。回覧板で回すと最後の家に届くまでに1週間かかることがあり、その間に予定を入れてしまう人が出ます。紙とメッセージアプリを併用している会では、どちらが正式な案内なのかが曖昧になり、「聞いていない」という連絡が当日に来ます。案内の出し方は1本に決めて、紙はその写しとして扱うほうが揺れません。日常の連絡をどこに寄せるかを考えるときは、いま使っている道具との違いを先に見比べておくと判断が早くなります。無料で始められる手軽さと、名簿や過去の連絡が追えるかどうかの兼ね合いはLINEグループとの比較で整理しています。
2つ目は、雨天中止の判断と伝達です。前日の夜に決めるのか、当日の朝6時に決めるのかを先に書いておかないと、判断した人だけが動いて参加者が濡れて集合する事態になります。中止の連絡は、送った側が「届いたかどうか」を確かめられる形でないと安心できません。誰が読んだかが分かる仕組みは、こういう一度きりの連絡でこそ効きます。
3つ目は、直前の変更です。集合場所が駐車場から公園に変わった、持ち物に軍手が加わった、といった小さな変更が当日の混乱を生みます。最初の案内と最新の情報が別の場所にあると、参加者は古い案内を見て来ます。案内と変更が同じ画面に並び、メンバー以外は見られない形になっていると、名簿を外に出さずに周知だけを済ませられます。参加者が誰かを外から見られないことは、地域の集まりでは無視できない条件です。
参加の呼びかけが匿名の場と相性が悪い点についてはLINEオープンチャットとの比較に整理があります。町内会の1年をどう回しているかの例は町内会での使われかたにまとまっているので、行事ごとの連絡の流れを組み替えるときの下敷きになります。
会場の下見で見ておく6か所
当日の段取りが決まったら、一度会場を歩いて確かめます。図面や記憶で組んだ計画は、現場で必ず1か所か2か所つまずきます。見ておく場所は6つです。
消火器の位置と本数を最初に確認します。表示だけ残っていて中身が入れ替わっていない、棚の奥に押し込まれていて取り出せない、といった状態はよくあります。訓練で使う分を借りられるか、施設の管理者に聞いておきます。次に非常口を全部開けてみます。普段使わない扉は建具が歪んで開きにくくなっていることがあり、鍵の持ち主が分からないまま当日を迎えると、そこで訓練が止まります。
3か所目は避難経路の床です。廊下に椅子や段ボールが積まれていると、そこが本番で人の流れを止めます。訓練の前に片づけてしまうのではなく、まず写真を撮っておくと、施設側に改善を頼む材料になります。4か所目は屋外の集合場所です。駐車場を集合場所にしている会は、当日そこに車が止まっていないかを事前に押さえておく必要があります。
5か所目は放送設備と自動火災報知設備の操作盤です。どこにあるか、誰が触れるか、音の止め方が分かるかを確認します。訓練でベルを鳴らす場合は、近隣から通報が入ることがあるため、近所への予告も必要になります。掲示板への貼り出しと、隣接する建物への一声で足ります。6か所目は水を使う場所です。放水や消火器の放射を行うなら、水が流れる先と後片づけの段取りまで見ておきます。
下見は、当日の役割を担う人と一緒に回るのが効率的です。役員だけで回って口頭で伝えるより、通報係と誘導係が自分の目で見たほうが当日の動きが速くなります。下見のときに撮った写真は、そのまま当日の案内資料に使えます。
終わったあとに残すものを決めておく
訓練は、終わった直後の5分で記録を残せるかどうかで価値が変わります。記録として残したいのは、実施した日時、参加した人数、行った内容の3点と、気づいたことです。気づきは長く書く必要がありません。「非常口の鍵を持っている人が当日いなかった」「消火器の場所を知らない人が半分いた」といった一行が、次回の設計図になります。
備品の点検結果も同じ場所に残します。消火器には製造年から10年程度を目安とした交代の目安があり、訓練のついでに見ておくと期限切れを防げます。非常用持出品の乾電池や非常食の期限も、訓練の日に合わせて確認する会が増えています。点検の結果を紙に書いて事務局の棚に保管すると、翌年の担当が見つけられません。記録は、翌年の担当が最初に開く場所に残してください。
役員が交代する会では、引き継ぎのしやすさが訓練の継続を左右します。会場の予約先、消防署の担当窓口、通知書の様式、案内文のひな型、去年の記録。この5つが1か所にそろっていれば、引き継ぎは30分で終わります。ばらばらだと、新しい担当は去年と同じ調べ物からやり直すことになり、そこで訓練自体が止まります。学校の行事や保護者への連絡を同じ形で扱っている例は学校での使われかた、役員が毎年入れ替わる前提で組んでいる例はPTAでの使われかたにあります。
写真の保存先も決めておきます。撮った人の端末に残ったままになると、翌年に使える素材がありません。会の記録として保存するのか、参加者に配るのか、外へは出さないのかを、撮る前に決めておくほうが後始末が軽くなります。
連絡と記録を1か所にそろえると準備が軽くなる
訓練の準備を分解すると、日程調整、案内、出欠の把握、当日の変更連絡、記録の保管という5つの仕事になります。このうち4つが連絡に関わる仕事です。訓練のやり方を工夫するより、連絡の道筋を1本にするほうが、とりまとめる人の負担は目に見えて減ります。
道具を選ぶときの基準は3つに絞れます。第一に、役員が交代するときに引き継ぐものが1つで済むか。第二に、新しいIDとパスワードを会員に増やさずに始められるか。第三に、名簿と過去の連絡が外から見られない形になっているか。この3つを満たさない道具は、1年目は動いても2年目に止まります。無料で使えるかどうかより、2年目に誰が管理しているかのほうが、続くかどうかを決めます。
団体の種類によって、連絡の山が来る時期も違います。地域の集まりは防災訓練と夏祭りの前、学校に関わる集まりは年度初めと行事の前、習い事の教室は休講と振り替えの連絡が日常的に発生します。どの形に近いかで選ぶ基準が変わるので、サークルでの使われかたや教室での使われかたのように、近い運営の例を見てから決めたほうが外れません。料金や使い始めの手順でよく出る疑問はよくある質問にまとめてあります。
1年目に決めておくと後が楽になることが、もう1つあります。去年の担当が何に困ったかを、次の担当へ渡す形で書き残すことです。訓練の内容ではなく、段取りで詰まった場所を書きます。会場の予約が取れなかった曜日、消防署の返事に何日かかったか、案内を出してから出欠がそろうまでの日数。この3つが分かっていれば、次の担当は同じ壁で止まりません。
消防訓練は、年に1回か2回しか行わない行事です。だからこそ、去年の記録と連絡の履歴が残っているかどうかで、準備にかかる時間が何倍も変わります。訓練の中身を良くする工夫は、記録が残る形になってから考えても間に合います。まず、案内と記録が同じ場所に残る状態を作ることが、いちばん効く準備です。
Q1. 町内会の消防訓練は年に何回行う必要がありますか?
町内会そのものに回数の定めはありません。回数が決まっているのは消防法第8条で防火管理者を選任する建物で、集会場や飲食店などの特定防火対象物では消火訓練と避難訓練が年2回以上、共同住宅や学校などの非特定防火対象物では消防計画に定めた回数です。借りている施設がどちらかは、施設の管理者に確認できます。
Q2. 119番への模擬通報は勝手に行ってよいのですか?
事前に最寄りの消防署へ連絡してから行います。地域によっては予約が必要です。通報の第一声で「訓練通報です」または「訓練です」と伝えることも決まっているため、通報役の人にはその一言を紙に書いて持たせると安全です。連絡せずにかけると本番の出動につながる恐れがあります。
Q3. 参加者が少ない集まりでも総合訓練はできますか?
できます。役割は通報係、初期消火係、避難誘導係、安全管理係、記録係の5つが基本ですが、10人に届かない場合は通報係と記録係、初期消火係と安全管理係を兼任させて3人で回せます。人数が少ないほど1人が複数の動きを覚えられるので、通しで行う効果はむしろ大きくなります。
Q4. 雨天のときはどう連絡すればよいですか?
判断する時刻を案内文に先に書いておくことが最も効きます。前日の夜に決めるのか当日の朝に決めるのかを明記し、中止の連絡は届いたかどうかを送り手が確かめられる方法で出します。最初の案内と変更の連絡が別の場所にあると古い案内を見て集合する人が出るため、同じ場所に並ぶ形にしておくと行き違いが減ります。
