立替金精算書が必要になる場面は2つに分かれます。会の役員が自分の財布から払った代金を会計から戻してもらう場合と、事業者が他社の代金を一時的に払い、その相手へ税額の内訳を伝える場合です。前者は書式を決めれば片づきますが、後者は記載する項目が制度で決まっているため、そこを外すと相手が困ります。この記事では、両方の書き方を分けて並べ、会の運営でつまずきやすい箇所を順に整理します。
立替金精算書が要るのは、領収書の宛名が本人になっているとき
会の運営で立替金精算書が必要になる合図は決まっています。買った物の領収書に、会の名前ではなく買った人個人の名前が書かれているときです。
会計を預かる立場からすると、会のお金が出ていく根拠が要ります。領収書の宛名が会になっていれば、その領収書1枚で根拠になります。宛名が個人になっている場合、その領収書は「その人が買った」という記録でしかありません。会が誰に何を戻したのかを示す書類が別に要ります。それが立替金精算書です。
会計の帳簿の上では、立替金は一時的な貸し借りとして扱われます。役員が3,000円を払った時点で、会はその役員に3,000円の借りができます。精算書を作って支払った時点で、その借りが消えます。この流れを書類で追えるようにしておかないと、会計監査のときに「この支出は誰に払ったのか」が説明できません。
もう1つ、精算書が要る理由があります。同じ人が何回も立て替えると、金額と回数が記憶の中でしか追えなくなることです。買い出しの回数が年に10回を超える会では、月末にまとめて精算する形にしないと、本人も何を立て替えたか分からなくなります。1件ごとに精算書を作らず、月ごとに1枚へまとめる形でも構いません。まとめる単位を最初に決めてください。
書類の名前にこだわる必要はありません。立替金精算書、立替経費精算書、実費精算書、どれでも通ります。会の中で1つに決めて、毎回同じ名前を使ってください。名前が揺れると、過去の書類を探すときに引き出せません。
会で使う立替金精算書に書く8つの項目
会で使う書式に入れる項目は8つです。これより多くすると書く人が書かなくなり、少なくすると監査で説明できなくなります。
1つめが書類の名前と作成日です。2つめが提出先で、「〇〇町内会 会計 〇〇様」のように、誰に出す書類かを書きます。3つめが立て替えた人の氏名です。役職があれば併記してください。「〇年度 環境部長 〇〇」の形にしておくと、翌年に見返したときに誰の立場での支出か分かります。
4つめが明細の表です。日付、買った物の名前、買った先の店名、金額の4列を作ります。1行に1件です。まとめて「消耗品一式」と書くと、何を買ったのか分からなくなります。5つめが合計金額です。表の下に「合計 〇〇円」と書き、数字は算用数字で書いてください。
6つめが使った目的です。「〇月〇日の秋祭りの準備のため」のように、どの行事のための支出かを1行で書きます。これがないと、年度をまたいだときに何の行事の費用だったか追えません。7つめが受け取りの方法です。現金で受け取るのか、口座へ振り込んでもらうのかを書きます。振込の場合は、金融機関名、支店名、口座の種類、口座番号、名義を書いてください。
8つめが領収書の枚数です。「領収書 4枚を添付」と書いておくと、受け取る側が枚数を数えて確かめられます。途中で1枚なくなったことに気づけるのは、この一行があるときだけです。
この8項目に加えて、会計が処理した日と、承認した人の欄を作っておくと、あとから流れを追えます。会計が受け取った日付と、会長や監事が確かめた印を残す欄です。会の規模が大きく、年間の支出が100万円を超えるようであれば、この2欄は必ず作ってください。
行事と部活と教室で使える立替金精算書の書式
丸括弧の中を差し替えれば、そのまま使える形を並べます。
町内会の行事で使う形です。
立替金精算書
作成日 〇年〇月〇日 〇〇町内会 会計 〇〇 様 立替者 〇年度 環境部長 〇〇
下記のとおり立て替えましたので、精算をお願いいたします。
日付 品名 購入先 金額 〇/〇 ごみ袋(大)50枚 〇〇ホームセンター 1,280円 〇/〇 軍手 20組 〇〇ホームセンター 1,960円 〇/〇 飲料水 24本 〇〇スーパー 2,880円
合計 6,120円
用途 〇月〇日の秋季清掃活動の準備のため 受取方法 下記口座へお振り込みをお願いいたします 〇〇銀行 〇〇支店 普通 1234567 〇〇〇〇 添付 領収書 3枚
部活や少年団で使う形では、生徒から集めたお金と会の支出が混ざりやすいので、その区別を1行足します。
立替金精算書
作成日 〇年〇月〇日 〇〇中学校〇〇部 会計係 〇〇 様 立替者 顧問 〇〇
日付 品名 購入先 金額 〇/〇 練習用ボール 3個 〇〇スポーツ 9,600円 〇/〇 救急用の消耗品 〇〇薬局 2,150円
合計 11,750円
用途 〇月〇日の練習試合の準備のため(部費からの支出分) 備考 生徒から集めた交通費は本書には含みません 受取方法 現金でお受け取りします 添付 領収書 2枚
教室や習いごとで使う形では、講師が自分で立て替える場面が多いので、立て替えの上限を備考に書いておくと確認の手間が減ります。
立替金精算書
作成日 〇年〇月〇日 〇〇教室 〇〇 様 立替者 講師 〇〇
日付 品名 購入先 金額 〇/〇 発表会の記念品 15個 〇〇文具店 7,500円
合計 7,500円
用途 〇月〇日の発表会の記念品として 備考 事前に承認をいただいた1万円以内の支出です 受取方法 現金でお受け取りします 添付 領収書 1枚
3つを見比べると、変わるのは備考の1行だけです。項目の並びを固定したひな型を1枚作って共有の保存先に保存しておけば、次の担当者は差し替えるだけで済みます。
領収書とレシートの扱いを、会の決まりとして先に決める
精算でもめる箇所は、金額ではなく領収書のほうです。決まりを先に作っておくと、毎回の確認が消えます。
決めることは3つです。1つめは、レシートで足りるのか、宛名入りの領収書が要るのかです。会の中の会計処理だけで済むのであれば、レシートで足ります。品名と金額と日付と店名が印字されているので、むしろ宛名だけの領収書より情報が多くなります。宛名入りの領収書が要るのは、行政の補助金を受けていて提出が求められる場合です。補助金の有無で分かれるので、そこを最初に確かめてください。
2つめは、レシートをなくしたときの扱いです。交通費や自動販売機での支払いのように、そもそも領収書が出ない支出もあります。この場合に備えて、支払証明書の形を1つ用意しておいてください。日付、内容、金額、立て替えた人の署名を書く簡単な紙で足ります。「領収書がないから精算しない」という決まりにすると、役員が自腹で負担する形になり、次の年に引き受け手がいなくなります。
3つめは、レシートの保存期間です。会の規約や過去の会計処理に合わせてください。決まりがなければ、直近の総会で承認を受けた年度の分と、その前の年度の分を残す形が実務的です。保存する場所は、会計の担当者個人の家ではなく、会で共有している保存先にしてください。担当者が代わったときに引き継げなくなります。
レシートは感熱紙で印字されているため、時間が経つと文字が消えます。1年で読めなくなることもあります。受け取った時点で写真に撮って保存しておけば、原本が薄くなっても金額が追えます。写真と精算書を同じ場所に保存できる形にしておくと、監査のときに突き合わせる手間が消えます。
仮払金と立替金は別のものとして扱う
会計の書類でよく混ざるのが、仮払金と立替金です。同じように見えますが、お金の流れる向きが逆なので、書式も別になります。
立替金は、先に個人が払い、あとから会が戻す形です。ここまで説明してきたものがこれです。仮払金は、先に会が渡し、あとから個人が精算する形です。行事の買い出しの前に会計から2万円を渡し、行事が終わったあとにレシートと残金を返してもらう流れです。
どちらを使うかは、金額で決めるのが分かりやすい基準です。数千円までは立替えで処理し、数万円になるものは仮払いにする形です。個人に大きな額を立て替えさせると、精算が遅れたときにその人の家計に影響が出ます。会の買い出しで3万円を超える見込みがあるなら、先に渡してください。
仮払いの場合の精算書は、渡した額と使った額と返す額の3つを書きます。「仮払額 20,000円/支出合計 17,340円/返金額 2,660円」の形です。立替金精算書との違いは、最後の1行が返金になる点だけです。この1行があるかないかで、どちらの処理か一目で分かります。
仮払いでよく起きる問題は、返金が忘れられることです。行事が終わって疲れている時期に精算するので、残金が担当者の財布に残ったままになります。仮払いを渡す時点で、精算の期限を書いた紙を一緒に渡してください。「〇月〇日までに精算をお願いします」の一行があるだけで、返金の遅れは目に見えて減ります。
インボイス制度のもとでの立替金精算書は、記載する項目が決まっている
ここまでは会の中の処理の話です。事業者が絡む場合、立替金精算書の役割が変わります。相手が消費税の仕入税額控除を受けるための書類になるからです。
インボイス制度は令和5年(2023年)10月1日から始まりました。事業者が納める消費税額は、売上げ時に受け取った消費税額から、仕入れなどの際に支払った消費税額を差し引いて計算します。この差し引く計算を仕入税額控除といい、そのためには記載事項を満たした書類の保存が必要です。
問題が起きるのは、A社がB社のために代金を払い、領収書がA社の宛名で発行された場合です。B社はその領収書を自社の仕入れの証拠として使えません。宛名がA社になっているためです。そこでA社が立替金精算書を作り、B社に交付します。B社は領収書と精算書の両方を保存することで、仕入税額控除を受けられる形になります。
記載事項で外せないのが、税率ごとに分けて書くことです。
立替金精算書では、税率ごとの合計額および適用税率を分けて記載します。消費税率は、標準税率の10%と軽減税率の8%の2つです。インボイス制度では事業者の納税を正確かつスムーズに行うため、適用税率を必ず記載する必要があります。 出典: keihi.com
書類の名称は問われません。所定の事項が記載された書類であれば、請求書でも領収書でも納品書でも、記載事項を満たした書類として扱われます。求められる記載事項は、交付先の氏名または名称、発行する側の氏名または名称と登録番号、取引年月日、取引内容と軽減税率の対象品目である旨、税率ごとの対価の総額と適用税率、税率ごとの消費税額等の6つです。制度の内容は国税庁のインボイス制度についてのページで確かめられます。
会の運営では、この形の精算書が必要になる場面はほとんどありません。町内会やPTAは消費税を納める立場ではないため、仕入税額控除の話が出てこないからです。必要になるのは、会が事業者として何かを請け負っている場合や、補助金の精算で税額の内訳を求められた場合に限られます。自分の会がどちらなのか分からないときは、会計を見てもらっている税理士か、所轄の税務署に確かめてください。
無料の書式を使うときに確かめる3点
立替金精算書の書式は、無料で配られているものが多くあります。Excel形式やPDF形式でダウンロードできるので、体裁を作る手間はかかりません。使う前に3点だけ確かめてください。
1点めが、想定している使い方が合っているかです。会社の経費精算を想定した書式には、部署名、上司の承認欄、社員番号の欄が並んでいます。会で使うなら、これらは要りません。逆に会で必要な「どの行事のための支出か」を書く欄がないことが多いので、そこは自分で足してください。
2点めが、消費税の欄が要るかどうかです。インボイス制度に対応した書式には、税率ごとの内訳を書く列が入っています。会の中の処理だけに使うなら、この列は使いません。空欄のまま残すと、記入漏れに見えて監査で聞かれます。使わない列は消してから配ってください。
3点めが、来年も同じ書式で開けるかです。ダウンロードしたファイルを担当者のパソコンに保存すると、次の担当者が探せません。完成した書式は、会で共有している保存先に保存してください。探し直すより、去年の書式をそのまま使うほうが早く終わります。
Excelで作る場合の利点は、合計が自動で計算されることです。手で足すと、桁を1つ間違えても気づけません。金額の列に合計の式を入れておくだけで、この間違いは消えます。紙で回す場合は、電卓で2回計算して同じ数になることを確かめる習慣を作ってください。
精算が遅れる原因と、締め切りの決め方
精算書の書式を整えても、精算が遅れる会は遅れます。原因は書式ではなく、締め切りが決まっていないことです。
遅れる原因は3つに分かれます。1つめは、立て替えた人が出すのを忘れることです。行事が終わった直後は片づけと報告で手が回らず、精算は後回しになります。2つめは、会計が処理する日が決まっていないことです。出された精算書が机の上でとまり、次の会計の作業日まで動きません。3つめは、承認する人がつかまらないことです。会長の印が要る形にしていると、その人と会える日まで進みません。
対策は締め切りを2つ決めることです。1つめが、立て替えた人が出す期限です。行事の終了から2週間以内、と会の決まりに書いてください。2つめが、会計が支払う日です。毎月の決まった日、たとえば月末の営業日に払う形にすると、立て替えた人がいつ戻るか分かります。この2つが決まっていれば、催促のやり取りが消えます。
承認の手順も軽くしてください。金額で分けるのが実務的です。1万円までは会計の判断で処理し、それを超える分だけ会長の承認を取る形です。全部に承認を求める形にすると、会長が忙しい時期に精算が全部止まります。
締め切りを伝える場所も決めてください。行事の準備を始める段階で、担当する人へ精算の期限を一緒に伝えます。行事が終わったあとに伝えると、もう買い出しは済んでいて、レシートが行方不明になっていることがあります。
立て替えの記録を1か所に残すと、監査と引き継ぎが軽くなる
立替金精算書で本当に困るのは、書き方ではありません。去年の精算書が見つからないことです。
会計監査の場面を考えてください。監事が見たいのは、帳簿の数字と、その根拠になる書類が一致しているかです。精算書が会計担当者の家のファイルにあり、領収書の写真が別の人の端末に残り、行事の案内はトークの履歴の中にしかない状態だと、突き合わせるだけで半日かかります。3か所を探す時間は、監査の内容とは何の関係もない時間です。
役員が1年で代わる会では、この問題がさらに重くなります。前の年の精算の流れを知っている人がいなくなるので、次の担当者は形式から作り直すことになります。毎年ゼロから作り直している会は、書式の話ではなく保存先の話でつまずいています。
保存先を決めるときの条件は3つです。1つめが、役員が代わるときに引き継ぐものが1つで済むこと。2つめが、行事の名前でも日付でも引き出せること。3つめが、メンバー以外は見られない形になっていることです。精算書には立て替えた人の氏名と口座の情報が並びます。会の外から読めてよい情報ではありません。
会の種類ごとに、精算と記録の組み立て方は変わります。回覧板と紙の書類が主力の会での進め方は町内会での使われかたに、学年ごとの集金と支出が重なる場合はPTAでの使われかたに、活動費を会員から集めて使う形はサークルでの使われかたに、それぞれ画面つきで並べてあります。精算のやり取りを普段のトークで行っている場合に何が流れてしまうのかは、LINEグループとの比較に整理してあります。
判断に迷う点はよくある質問に、会員の登録の進め方や役員が代わるときの手順とあわせてまとめてあります。書式を磨く前に、去年の精算書を探すのに何分かかるかを数えてください。そこが最初に削れる時間です。
立て替えを頼む前に、会として上限と範囲を決めておく
精算書の書式より先に決めておくべきものが2つあります。1人がいくらまで立て替えてよいかと、何を立て替えてよいかです。
上限を決めていない会では、役員が「これくらいなら自分で出しておこう」と判断して買います。悪いことではありませんが、その判断が積み上がると、年度末に数万円をまとめて請求する形になります。会計は予算との差を確かめられず、総会で説明が苦しくなります。1回あたりの上限を1万円に決め、それを超える見込みなら先に相談する形にしてください。相談を経た支出は、精算のときに確認が1つ減ります。
範囲も決めてください。会の活動に直接必要な物は立て替えの対象になりますが、境目にあるものが毎年もめます。役員が会合に行くための交通費、打ち合わせで飲んだ飲み物の代金、自宅で印刷した用紙とインクの代金。これらを対象にするかどうかを、規約か申し合わせの形で残しておいてください。決めていないと、その年の会計の判断で扱いが変わり、前の年と違うことに気づいた人から指摘が出ます。
自宅での印刷は、とくに扱いを決めておく価値があります。会報を毎月80部刷っている会では、インクと用紙の実費が年間で数千円から1万円を超えます。個人の負担にしたままにすると、その役職を引き受ける人がいなくなります。実費として精算するか、月ごとに定額を渡すか、コンビニの印刷に切り替えるか。どれを選んでもよいので、決めて書き残してください。
決めた内容は、役員が代わる時期に伝えてください。口で伝えるだけだと、1年で消えます。申し合わせの文として保存しておけば、次の年の担当者が読めます。
作る側と受け取る側で、見ている場所が違う
精算が滞る会では、書く人と受け取る人が別のところを見ています。両方の目線を並べると、何を書けばよいかがはっきりします。
立て替えた人が気にしているのは2つです。いつ戻るのかと、足りない書類はないかです。この2つが分かっていれば、催促の連絡をしなくて済みます。だから精算書の書式に「支払予定日」の欄を作り、会計が受け取った時点で日付を書いて返すと、やり取りが1往復で終わります。
会計が気にしているのは3つです。予算のどの項目から出すのか、合計が合っているか、根拠の書類が揃っているかです。精算書に用途を1行書いてもらうだけで、1つめが解けます。「〇月〇日の秋祭りの準備のため」と書かれていれば、予算書のどの行に当てるか迷いません。「消耗品代」とだけ書かれた精算書は、会計がもう一度聞くことになります。
監事が気にしているのは、帳簿と書類が一致しているかです。精算書の合計と、帳簿に記録された金額と、通帳の出金が同じ数であることを確かめます。ここで手間がかかるのは、1枚の精算書に複数の行事の支出が混ざっている場合です。混ざっていると、行事ごとの集計ができません。行事が違うなら、精算書を分けてください。月ごとにまとめる場合も、行事の欄を明細の列に足しておけば集計できます。
3者が見る場所を書式の中に収めると、聞き返しが消えます。用途、支払予定日、行事名の3つを足すだけで、精算にかかるやり取りは半分以下になります。
年度の締めと会計報告に、立替金がどう出るか
年度の終わりに立替金が残っていると、会計報告の数字が合わなくなります。ここを理解しておくと、締めの時期の処理が楽になります。
会計報告は、その年度に会から出ていったお金と入ってきたお金を並べる形です。3月に役員が立て替えて、精算が4月になった場合、支出の記録は3月に立てるのか4月に立てるのか。この扱いを会の中で1つに決めておいてください。多くの会では、通帳から出た日を基準にする現金の出入りで記録しています。その場合、3月の買い物は4月の支出として記録されます。
問題になるのは、総会で「3月の行事の費用がどこにも出ていない」と指摘される場面です。指摘は正しいので、会計報告の注記に1行書いておいてください。「〇月の〇〇の費用〇円は、翌年度に精算したため次年度の支出に記録しています」と書けば、それで説明が済みます。書いていないと、その場で数字を追うことになります。
これを避けたい会は、年度末の精算の締め切りを先に置きます。3月20日までに出す、と決めて、役員全員に伝えておく形です。年度末の行事が3月下旬にある会では間に合わないので、その分だけ注記で処理する運用にしてください。
会計報告に立替金の行を作るかどうかも決める点です。年度をまたいで残っている立替金がある場合、それを一覧の中に書くと分かりやすくなります。金額が小さい会では、注記の1行で足ります。年間の支出が大きい会では、行として立てたほうが説明しやすくなります。会の規模で判断してください。
立て替えの連絡が散らばると、精算書の前でとまる
精算書が出てこない原因をたどると、書式の問題ではなく連絡の問題だったことがよくあります。
買い出しを頼む連絡はトークで流れ、レシートの写真も同じトークに投稿され、精算書は紙で提出し、支払の連絡は電話でする。こうなると、1件の精算に4か所が関わります。会計はトークをさかのぼって写真を探し、紙の精算書と突き合わせ、金額が合わなければまた聞き返します。この往復に1件あたり15分かかっているなら、年に20件で5時間です。
この往復を減らす方法は1つで、1件の精算に関わるものを同じ場所に保存することです。頼んだ内容、レシートの写真、精算書、支払の記録が同じ1件にひも付いていれば、会計が見る場所は1か所になります。監事が確かめる場所も1か所になります。
行事ごとにまとめる形にすると、さらに効きます。秋祭りという1件の中に、案内の本文、出欠の一覧、当日の写真、支出の精算書が並んでいる状態です。翌年の担当者は、その1件を開くだけで去年の流れを追えます。書式を探す必要も、金額を推測する必要もありません。
とりまとめる立場から見て、続くかどうかを決めるのはここです。精算書の項目を増やしても、探す場所が4か所ある限り時間は減りません。逆に、保存する場所を1か所にまとめれば、書式が多少ざっくりしていても運用は回ります。順番を間違えないでください。
Q1. 領収書の宛名が個人の名前でも、会の支出として処理できますか?
できます。立替金精算書を作り、その領収書を添付してください。精算書には立て替えた人の氏名、明細、合計金額、どの行事のための支出かを書きます。この1枚があることで、会が誰にいくら戻したのかを帳簿の上で追えるようになります。補助金を受けている場合だけ、宛名入りの領収書を求められることがあります。
Q2. レシートをなくしてしまった支出は、精算できませんか?
支払証明書の形を用意しておけば精算できます。日付、内容、金額、立て替えた人の署名を書く簡単な紙で足ります。交通費や自動販売機での支払いのように、そもそも領収書が出ない支出もあるためです。領収書がないと精算しない決まりにすると、役員の自腹の負担になり、次の年に引き受け手がいなくなります。
Q3. 仮払金と立替金は、どう使い分ければよいですか?
金額で分けるのが分かりやすい基準です。数千円までは立替えで処理し、数万円になる買い出しは先に会から渡す仮払いにしてください。仮払いの精算書には、渡した額と支出の合計と返す額の3つを書きます。個人に大きな額を立て替えさせると、精算が遅れたときにその人の家計に影響が出ます。
Q4. 町内会やPTAでも、インボイス制度に対応した書式が必要ですか?
通常は必要ありません。仕入税額控除は消費税を納める事業者の話であり、会の中の精算処理には関わらないためです。税率ごとの内訳を書く列は使わないので、書式から消してから配ってください。会が事業者として何かを請け負っている場合や、補助金の精算で税額の内訳を求められた場合だけ、所轄の税務署に確かめてください。
