自主防災組織でアンケートを取ろうとすると、最初に手が止まるのは設問ではなく「何のために聞くのか」のところです。町内会の役員会で「一度みんなの状況を聞いておこう」と決まり、用紙を作り始めたものの、備蓄のこと、家族のこと、手伝えること、訓練の感想と、聞きたいことが際限なく増えていく。そして回覧で回した結果、戻ってきたのは半分ほどで、集計したものの何に使えばよいのか分からない。
自主防災組織のアンケートは、災害が起きたときに地域で動ける人手と、支えが要る場所を見積もるための道具です。意見を集める調査とは作り方が根本から違います。ここでは、聞く目的の分け方、設問の形、締め切りを置く時期、答えない世帯の扱い、集計を班ごとの地図に落とすところまでを、とりまとめる立場から順に整理します。
自主防災組織のアンケートは、町内会の意見調査とは目的が違う
町内会や自治会が取るアンケートの多くは、行事を続けるか、会費をどうするかといった「決めるための意見」を集めるものです。賛成と反対の割合が分かれば役目を果たします。
自主防災組織が知りたいのは、そうした意見ではありません。平日の昼に大きな地震が起きたとき、この班には何人の大人が残っているのか。消火器を扱える人、担架を持てる人、応急手当ができる人はどこにいるのか。水や食料の備えがない家は何軒あるのか。答えは数と場所で出てきます。賛否ではなく、人手と備えの分布です。
組織の規模もこの性格を強めます。消防庁の手引によると、令和4年4月1日現在の自主防災組織は全国平均で1組織あたりおよそ300世帯で、結成単位は町内会単位が94.8%を占めます。300世帯の用紙は、班長が手で数えるには多く、表計算に打ち込むにはそれなりの時間がかかる量です。聞いた項目をすべて集計する前提で設問を削らないと、集めたまま眠ることになります。
もう1つの違いは、答えの鮮度です。意見は数年たっても大きくは変わりませんが、在宅の状況は転職や子どもの進学、親の介護で1年のうちに変わります。一度取って終わりではなく、更新し続ける台帳の入り口として設計する必要があります。この前提に立つと、設問の数も、締め切りの置き方も、結果の返し方も変わってきます。
聞く目的を4つに分け、1枚の用紙に混ぜない
自主防災組織が住民に聞く内容は、おおむね次の4つに分かれます。
・昼と夜、平日と休日に、地域に何人いるか(班編成の見直しに使う) ・災害時に声をかけてよい技能や道具があるか(救出・救護や給食・給水の担い手探しに使う) ・家庭の備えがどこまで進んでいるか(啓発の的と、資機材や備蓄の購入の優先度に使う) ・訓練に参加してどう感じたか(次の訓練の中身に使う)
この4つは、答えの扱いが別物です。1つめと2つめは、班長や会長が災害時に見る台帳になります。誰の家に何人いるかという情報なので、見られる人を絞り、年度をまたいで保管します。3つめは、世帯ごとの答えよりも地区全体の割合が分かれば足ります。無記名でも用が済みます。4つめは、訓練が終わればほぼ役目を終える一時的なものです。
これらを1枚の用紙に並べると、無記名にしてよい設問と記名が必要な設問が混ざり、答える側は「備蓄が足りないことまで名前付きで知られるのか」と身構えます。回答率が落ちる一番の原因はここにあります。
用紙を分けるのが面倒なら、少なくとも紙面を上下で切り分け、「ここから下は名前を書かなくてかまいません。切り離して別の封筒に入れてください」と書くだけでも反応は変わります。聞く目的ごとに、誰が見るのか、いつまで持つのかを1行ずつ用紙に書いておくと、答える側の不安がかなり減ります。
昼間に地域にいる人を、時間帯の表で聞く
自主防災組織のアンケートで最も価値があるのは、時間帯ごとの在宅状況です。班編成を紙の上で作ると、たいてい会長や班長の顔ぶれで組みます。ところが、その人たちの多くは平日の昼には勤め先にいます。
消防庁の手引も、班編成でこの点を考慮するよう書いています。
人口や世帯数、昼間地域にいる人員等を考慮し、災害の発生時間帯によって班の人員に偏りのない配置等 出典: 総務省消防庁「自主防災組織の手引(令和5年3月)」
これを知るための設問は、文章で聞かずに表で聞きます。縦に「平日の昼」「平日の夜」「休日の昼」「休日の夜」の4行、横に「中学生以上で動ける人の数」「手助けが必要な人の数」の2列を置き、数字だけを書いてもらう形です。「日中はご在宅ですか」と聞くと、在宅が週に何日なのかで答えがぶれますが、表にすると迷いが減ります。
聞かないほうがよいこともあります。勤め先の名前、帰宅時刻、家を空ける曜日の詳細は、防犯の面から出したがらない人が多い項目です。自主防災組織が知りたいのは「その時間帯に地域に何人いるか」だけなので、それ以上は聞かないと用紙に明記します。
集計すると、平日の昼に動ける大人が1人もいない班が、たいてい見つかります。これが分かることが、アンケートの最大の成果です。その班の消火や安否確認を、隣の班の在宅者や、昼間も地域にいる商店、事業所に頼む相談を始められます。
住民だけでなく、地区の事業所にも別の用紙で聞く
平日の昼に動ける住民が少ないと分かったら、次に聞く相手は地区の中にある事業所です。工場、倉庫、介護施設、スーパー、ガソリンスタンド、寺社。平日の昼間は、住民より事業所の従業員のほうが地区に多くいる、という地域は珍しくありません。
消防庁の手引も、班編成を考えるときの視点として、地域内の事業所の自衛消防組織や従業員の配置を踏まえること、応援協定などで補うことを挙げています。ただし、事業所に住民向けの用紙をそのまま渡しても答えは返ってきません。聞く中身が違うからです。
事業所に聞くのは次のような項目です。
・平日の昼と夜、休日に、敷地にいるおおよその人数 ・自衛消防の体制があるか、訓練をしているか ・災害時に地域へ貸し出せるかもしれない道具(発電機、投光器、フォークリフト、トラック、井戸、広い駐車場) ・連絡を取るときの窓口の部署と、夜間や休日の連絡方法
回覧や郵送ではなく、会長や副会長が訪問し、用紙を置いてくる形にします。担当者が決裁を取る必要があるため、締め切りは住民の調査より長めに1か月ほど取ります。「貸し出せる」と書くと約束になると受け取られやすいので、ここでも「相談してよいか」という聞き方にします。
答えをもらった事業所には、地区の訓練の案内を送り、見学だけでも来てもらうところから関係を作ります。アンケートは、協定を結ぶ前の最初の接点として使うのがちょうどよい距離感です。
手伝えることは「できる」ではなく「声をかけてよい」で聞く
技能の調査は、聞き方を誤ると誰も書いてくれません。「看護師の資格をお持ちの方は記入してください」と書くと、資格を持つ人ほど「災害時に責任を負わされる」と考えて空欄にします。
聞き方は「災害のとき、様子を見て声をかけてもよいこと」にします。約束ではなく、声をかけてよいかどうかの確認です。選択肢は具体的な行動で並べます。
・応急手当や看護の心得がある ・重いものを持ち上げたり、担架を運んだりできる ・チェーンソーや発電機、小型の重機を扱える ・大工仕事や設備の修理ができる ・無線機を扱える ・外国語で簡単な案内ができる ・車を出せる(軽トラック、ワゴン車など) ・炊き出しの段取りに慣れている
消防庁の手引には、住民に「自分はこんなことができる」という特技を登録してもらい、災害時に協力を頼む取り組みが紹介されています。ここで大切なのは、その登録が性別や年齢で役割を決めつけるものにならないことです。炊き出しの欄に女性の名前だけが並び、力仕事の欄に男性の名前だけが並ぶ用紙にしないために、選択肢は行動だけで書き、誰が何を選んでもよい形にしておきます。
技能の答えは毎年は変わりにくいので、2〜3年に一度の更新でかまいません。そのかわり、転居してきた世帯には入会の時点で同じ用紙を渡すと、台帳の穴が広がりにくくなります。
家庭の備えを聞く設問は、責める形にしない
備蓄や家具の固定を聞く設問は、答える人が「できていない」と書くことに抵抗を感じます。点検されているように受け取られると、実態より良い答えが返ってきて、調査の意味がなくなります。
避けたいのは「備蓄をしていますか(はい・いいえ)」のような聞き方です。「水と食料の備えは、家族全員で何日分くらいありますか」と聞き、「ほとんどない」「1〜2日分」「3日分以上」「分からない」の中から選んでもらいます。「分からない」を置くと、正直な答えが増えます。
住宅用火災警報器も、自主防災組織が啓発を担うことの多い項目です。消防庁の手引によると、令和4年6月時点で住宅用火災警報器をまだ設置していない世帯は約2割にのぼります。地区で同じ傾向が出るなら、次の訓練で取り付け方の実演を入れる、共同購入をまとめる、といった判断に直結します。
設問は、答えを受けて組織が何をするかが決まっているものだけに絞ります。「感震ブレーカーを知っていますか」と聞くなら、知らない人が多かったときに説明会を開くのか、チラシを配るのかを先に決めておきます。行動につながらない設問は、答える人の時間を使うだけです。
備えの設問は、記名にする理由がほとんどありません。無記名にして、班の番号だけ書いてもらえば、どの班に啓発を厚くするかは分かります。
支援が必要な人のことを、アンケートで集めない
在宅状況を聞く流れで、「ご家族に持病のある方、介助が必要な方はいますか」と書き加えたくなります。ここは一度立ち止まる場所です。
病歴は個人情報保護法で「要配慮個人情報」とされ、取得にはあらかじめ本人の同意が要るのが原則です。回覧で回る用紙に書いてもらう形は、同意の取り方としても、情報の置き場所としても無理があります。
支援が必要な人の把握には、市町村が作る避難行動要支援者名簿という仕組みがあり、本人の同意を得たうえで自主防災組織に情報が提供される形になっています。アンケートでこれと同じものを別に作ると、名簿が二重になり、どちらが新しいのか分からなくなります。
アンケートで聞いてよいのは、ここまでです。「災害のとき、近所の方から声をかけてほしいと思いますか」という1問を置き、希望する人には別紙で連絡してもらう。病名や障害の内容は聞かず、希望があったことだけを受け取って、市町村の担当課や民生委員とどう連携するかを役員会で相談します。
この設問を置くときは、答えを誰が見るのか、何に使うのか、いつ消すのかを設問のすぐ下に書きます。書いていない用紙には、本当に助けが要る人ほど答えてくれません。
設問の言葉を、防災の用語から暮らしの言葉に直す
自主防災組織の役員は、研修や市町村の資料で防災の用語に慣れています。そのまま設問を書くと、住民には意味が伝わりません。
「在宅避難は可能ですか」と聞かれても、答える側は何を基準に判断すればよいか分かりません。「地震で家が壊れていなければ、避難所に行かずに家で過ごすつもりですか」と書けば迷いません。「初期消火に協力できますか」は「近所で小さな火が出たとき、消火器を持って駆けつけられますか」、「給食・給水」は「炊き出しや水くみの手伝い」、「避難行動要支援者」は用紙には書かず「一人で避難するのが難しい方」と言い換えます。
書き上げた用紙は、役員ではない人に一度読んでもらいます。できれば高齢の方と、地区に越してきて日の浅い方の2人です。読んで手が止まった設問が、実際に配ったときに空欄が増える設問です。この確認に1週間かけても、回収後に使えない答えを抱えるよりずっと安く済みます。
訓練のあとのアンケートは、その場で3問だけ
防災訓練の振り返りアンケートは、後日回覧で回すと、ほぼ戻ってきません。参加した人の記憶が新しいうちに、解散の前に書いてもらうのが原則です。
設問は3問に絞ります。
・今日の訓練で、次に災害が起きたとき役に立ちそうだったこと ・分かりにくかったこと、やってみて困ったこと ・次に訓練でやってみたいこと
選択肢を並べるより、短い自由記述のほうが実のある答えが返ってきます。「避難所まで歩いたら、坂の途中でベビーカーが止まった」「消火器の安全栓の外し方が分からなかった」といった具体的な記述が、次の訓練の内容を決めます。
鉛筆と用紙は受付の机に置き、回収箱は出口に置きます。「書いてから帰ってください」とお願いするより、帰り道の動線上に箱があるほうが集まります。参加者が多い訓練なら、班ごとに用紙の色を変えておくと、どの班から不満が出たのかが一目で分かります。
班長や情報班の担当者の振り返りは、住民のアンケートとは分けます。担当者には「伝達にかかった時間」「伝わり方の誤り」「足りなかった資機材」を記録用紙で出してもらい、住民の感想と突き合わせます。訓練をやりっぱなしにしないための仕組みは、ここで作られます。
締め切りは、防災の暦から逆算して置く
自主防災組織のアンケートは、締め切りを置く時期に決まりがあります。結果を使う場面から逆算して決めます。
結果を使う場面の代表は3つです。1つめは総会です。消防庁の手引に載っている規約の例では、総会は毎年1回開き、事業計画や予算を審議することになっています。資機材の購入や訓練の内容に結果を反映させるなら、総会資料を作る1か月前には集計が終わっている必要があります。2つめは防災の日(9月1日)や、春と秋の火災予防運動の時期に合わせた訓練です。3つめは、大雨や台風の季節の前です。避難の段取りを見直すなら、梅雨入り前に結果が出ていないと間に合いません。
たとえば総会を5月に開く組織なら、4月上旬に集計を終えたいので、締め切りは3月中旬、配布は2月下旬になります。年度末は役員の交代と重なるので、配布と回収を担うのは前年度の班長になる、という点まで決めておかないと、引き継ぎの隙間で回収が止まります。
締め切りは「月末ごろまで」ではなく、「3月15日まで」と日付で書き、曜日も添えます。回答期間は2週間が目安です。それより長いと後回しにされ、短いと留守がちな世帯が答えられません。中間の1週間目に一度だけ、「締め切りまであと1週間です」と知らせます。督促は1回にとどめ、それで戻らない世帯には別の方法で聞きます。
自治会の回覧に乗せると、防災の調査は後回しになる
自主防災組織は、自治会や町内会がそのまま兼ねているか、その中の防災部として置かれている形が一般的です。そのため、アンケートも自治会の回覧板に乗せて回すことになりがちです。
回覧板には、夏祭りの案内、資源回収の日程、市の広報紙が一緒に挟まっています。その中で、書いて返す必要がある用紙は後回しにされます。しかも回覧で回すと、1枚の用紙を班の全世帯が順番に見る形になり、在宅の人数や技能を書いた欄を次の家の人が読めてしまいます。記名の設問がある時点で、回覧は向きません。
配り方は、各戸に1枚ずつ配布し、回収は封筒に入れて班長に渡すか、集会所や防災倉庫の近くの回収箱に入れてもらう形にします。班長が手渡しで配ると、「何のアンケートか」を一言添えられるので回答率が上がります。
画面から答えられる形を並べると、日中に在宅していない若い世帯の回答が増えます。ただし、紙と画面の二本立てにする場合は、同じ世帯が両方で答えて二重に数えられないよう、世帯に番号を振っておくのが実務上の工夫です。紙で答えた世帯の分を担当者が画面側に入力する、と決めておくと、集計は一か所で済みます。
答えない世帯にこそ、情報が要る
回収率が6割程度で止まったとき、残りの4割をどう扱うかで、アンケートの価値が決まります。
答えない世帯には傾向があります。日中ほとんど家にいない共働きの世帯、字を書くのが難しくなった高齢の単身世帯、転居してきたばかりで自治会との接点が薄い世帯、そして日本語で書かれた用紙が読みにくい外国籍の世帯です。このうち高齢の単身世帯と外国籍の世帯は、災害時に情報が届きにくく、自主防災組織が最も気にかけるべき人たちでもあります。
未回答の世帯に督促状を重ねるのは逆効果です。班長が訪問するときに、2問だけの短い版を持っていき、その場で聞き取ります。「昼間は家にいらっしゃいますか」「災害のとき、声をかけてほしいですか」の2つで、台帳の最低限は埋まります。外国籍の世帯には、やさしい日本語で書いた用紙を用意します。
それでも答えがない世帯は、「未回答」として台帳に残します。空欄ではなく「未回答」と書くことに意味があります。災害時に安否確認をする順番を決めるとき、状況が分からない家として優先して回る対象になるからです。答えないことも1つの情報として扱う、という姿勢をとりまとめる側が持っておくと、回収率を無理に追いかけずに済みます。
集計は、班ごとの地図に落とすところまで
集計を表の数字で終わらせると、役員会で「平日昼の在宅は全体で42%」と報告して終わってしまいます。全体の割合は、災害時の行動にはほとんど役立ちません。
自主防災組織の集計は、住宅地図に落とすところまでやります。消防庁の手引も、情報収集・伝達用の資機材の例として住宅地図や模造紙を挙げています。地図の上で、班ごとに次の3つを書き込みます。
・平日の昼に動ける人の数 ・声をかけてほしいと答えた世帯の位置(名前ではなく印だけ) ・技能を登録してくれた人のいる家(技能の種類を記号で)
こうすると、「この通りの北側は平日昼に動ける大人がゼロ」「救護の心得がある人が東の端に集中している」といった偏りが一目で分かります。班の境界を見直す、隣の班と応援の約束をする、といった具体的な話に進めます。
地図の原本は、見られる人を会長と副会長、情報班の班長程度に絞り、置き場所を決めます。訓練で使う写しは、世帯の印を外した版を作ります。集計に使った個票は、台帳への転記が終わったら、いつ処分するかを役員会で決めて議事録に残します。
結果を返すときに、個人が分からない粒度にする
アンケートは、結果を返さないと次から答えてもらえません。一方で、自主防災組織の調査は班の単位が小さいため、返し方を誤ると誰の答えかが分かってしまいます。
たとえば10世帯の班で「平日昼に在宅している世帯は2世帯」と書けば、近所の人にはどの家かおおよそ見当がつきます。留守になりがちな家が分かることは、防犯の面でも好ましくありません。
住民に返すときは、班ではなく地区やブロックの単位でまとめます。そのうえで、数字より「分かったこと」と「これからやること」を中心に書きます。
・平日の昼に動ける人が少ない地区があることが分かったので、近くの事業所に協力をお願いする相談を始めます ・水の備えが「ほとんどない」と答えた世帯が一定数あったので、次の訓練で備蓄の実演を行います ・訓練で消火器の扱いが分かりにくいという声が多かったので、秋の訓練は消火の個別訓練を中心にします
「皆さんの答えがこう使われた」と伝わると、次の調査の回収率が上がります。反対に、集めたまま何も起きなかった調査は、住民の側に「どうせ出しても変わらない」という記憶を残します。2回目の調査の回収率を見れば、1回目の結果の返し方がうまくいったかどうかが分かります。
毎年全部を聞き直さない
在宅状況は毎年変わりますが、毎年同じ用紙を全世帯に配ると、答える側も集計する側も疲れます。3年もすると「去年と同じ」とだけ書かれた用紙が増え、中身が更新されなくなります。
続けやすいのは、更新型にする方法です。前年の答えを印字した用紙を配り、「変わったところだけ直してください。変わりがなければ、変更なしに丸を付けて返してください」とお願いします。記入の手間が大きく減り、回収も早まります。前年の答えを印字する以上、配布は封筒に入れて手渡しにし、他の世帯の目に触れないようにします。
聞く項目にも周期を付けます。
・在宅状況:毎年(更新型) ・技能や道具:2〜3年に一度 ・家庭の備え:訓練や啓発の効果を見たい年だけ(無記名) ・訓練の振り返り:訓練のたびに、その場で
転入や転出があった世帯は、そのつど入会や退会の手続きと一緒に扱います。年に一度の一斉調査に頼らず、日々の出入りで台帳を直していく形にしておくと、役員が代わっても台帳が崩れにくくなります。
答えを集める場所を選ぶときに見る点
アンケートの設計ができても、周知と回収と結果の報告がばらばらの経路で行われると、とりまとめる側の手間は減りません。配布は回覧、回答は紙の封筒、督促は電話、結果は総会の資料、という形では、翌年の担当者はどこを見ればよいか分からなくなります。
見る点は3つあります。1つめは、お知らせが流れずに残るかどうかです。締め切りの告知が他の連絡に押し流されると、1週間前の知らせが意味を持ちません。LINEグループとの比較では、トークが新しい発言で上に流れていく形と、掲示板に1件ずつ残る形の違いが、項目ごとに並べてあります。
2つめは、年配の会員が新しいIDとパスワードを増やさずに入れるかどうかです。自主防災組織は高齢の世帯ほど調査の対象として大切なので、ここで入口を重くすると、いちばん聞きたい人に届きません。よくある質問には、LINEのアカウントでそのまま入れることや、文字を大きくする設定についてまとめてあります。
3つめは、投票や集計の機能が要るかどうかです。選択式の回答をその場で集計したいなら、BANDとの比較にあるとおり、BANDには投票や時間帯を分けた参加者募集の機能があります。反対に、周知と結果の報告を1か所に残すことを重視するなら、記録の残り方を見て選びます。参加者の顔ぶれが固定されない呼びかけならLINEオープンチャットとの比較、すでにFacebookを使っている世帯が多いならFacebookグループとの比較、若い世代の担い手が中心ならDiscordとの比較が判断の材料になります。
地域の集まりでの具体的な形は、町内会での使われかたに、回覧板の代わりにお知らせを上に固定し、行事の写真と次の日程を同じ場所に残している例があります。役員が1年で代わる組織では、PTAでの使われかたの、役員が代わっても記録がグループに残る例も参考になります。
アンケートの答えそのものは、名前や在宅状況を含むので、置き場所は慎重に選びます。一方で、配布の告知、締め切りの案内、結果の報告といった「誰が見てもよい部分」を1か所に積み上げておくと、翌年の担当者は前年の流れをそのままなぞれます。調査を毎年続けられるかどうかは、設問の出来よりも、この引き継ぎのしやすさで決まります。
Q1. 自主防災組織のアンケートは、記名と無記名のどちらにすべきですか?
聞く目的で分けます。時間帯ごとの在宅状況や技能の登録は、災害時に誰に声をかけるかを決める台帳になるので記名が必要です。家庭の備えや訓練の感想は、地区全体の傾向が分かれば足りるので無記名にします。1枚の用紙に混ぜると答える側が身構えるため、用紙を分けるか、切り離せる形にしてください。
Q2. 回収率はどのくらいを目標にすればよいですか?
割合を目標にするより、未回答の世帯を把握することを重視してください。答えない世帯には、高齢の単身世帯や日中不在の世帯など、災害時に情報が届きにくい人が含まれがちです。班長が訪問するときに2問だけの短い版で聞き取り、それでも答えがなければ「未回答」として台帳に残し、安否確認で優先して回る対象にします。
Q3. 持病や介助の必要があるかを、アンケートで聞いてもよいですか?
病歴は個人情報保護法の要配慮個人情報にあたり、取得には原則として本人の同意が要ります。回覧や一斉配布の用紙で集めるのは避けてください。聞くなら「災害時に声をかけてほしいか」の1問にとどめ、希望者には別に連絡してもらいます。市町村が作る避難行動要支援者名簿との関係は、担当課に相談して整理します。
Q4. アンケートの締め切りはいつに設定すればよいですか?
結果を使う場面から逆算します。総会で事業計画や資機材の購入に反映させるなら、総会資料を作る1か月前に集計を終え、その2週間前を締め切りにします。大雨の季節に向けて避難の段取りを見直すなら梅雨入り前に結果を出します。締め切りは日付と曜日で書き、中間で1回だけ知らせます。
