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自主防災組織の回覧板をやめる|紙をなくす順番と、残す情報

2026年9月16日 ・ Tsudoo編集部

自主防災組織の回覧板をやめようという話が出ると、役員会では決まって慎重な声が上がります。「災害のときは電話もネットも使えなくなる。防災の組織が紙をやめてどうするのか」。もっともな指摘です。一方で、訓練の案内が回り終わる前に訓練の日が来てしまう、班の連絡網を載せた紙がどの家に残っているか分からない、という困りごとも現実に起きています。

この2つは矛盾しません。自主防災組織が扱う紙は、平時に「回す紙」と、災害時に使うために「置いておく紙」に分かれます。回す紙はやめてよく、置く紙はむしろ整えるべきものです。ここでは、回覧に乗っている紙の仕分け方、外す順番、各戸と防災倉庫に残す紙の中身、切り替えたあとの役割の変わり方までを順に整理します。

自主防災組織の回覧は、自治会の回覧板に相乗りしている

回覧板をやめる話を始める前に、自主防災組織の紙がどの回覧に乗っているのかを確かめます。多くの場合、防災だけの回覧板は存在しません。

消防庁の「自主防災組織の手引」によると、令和4年4月1日現在、自主防災組織の結成単位は町内会単位が94.8%です。手引は結成の手法として、自治会などの既存の団体がそのまま自主防災組織を兼ねる形と、既存の団体の中に自主防災の部門を作る形を挙げています。つまり、防災の案内は自治会の回覧板に、夏祭りや資源回収の案内と一緒に挟まって回っているのが普通です。

この構造には2つの意味があります。1つは、自主防災組織の判断だけでは回覧板そのものをやめられないことです。回覧板は自治会の持ち物で、市の広報紙や他団体のチラシも運んでいます。もう1つは、防災の紙だけを先に回覧から外すことはできる、ということです。回覧板を丸ごと廃止する議論を待たずに、自主防災組織として「この種類の紙は、もう回覧に乗せない」と決めることは、防災部門の判断で進められます。

回覧板の全面的な見直しは自治会の課題として別に進めてもらい、自主防災組織は自分たちの紙の扱いから手を付ける。この切り分けをしておくと、話が大きくなりすぎて止まることを避けられます。

防災の回覧に乗っている紙を5つに仕分ける

次に、1年分の回覧を思い出して、防災に関わる紙を並べてみます。おおむね次の5種類に分かれます。

・訓練の案内と参加の申込(春や秋の訓練、防災の日の訓練、避難所運営の訓練) ・防災だよりやかわら版(家具の固定、備蓄、住宅用火災警報器の点検などの啓発) ・市町村や消防から届く配布物(ハザードマップの改訂、防災講座の案内、啓発チラシ) ・会議の報告(役員会や幹事会、避難所運営の協議の内容) ・班編成表や連絡網(班ごとの担当者の名前と電話番号)

この5つは、回覧をやめたときの影響がそれぞれ違います。訓練の案内は、日付と申込の締め切りがあるので、回るのに時間がかかる回覧とは相性が悪い紙です。防災だよりは急ぎませんが、全戸に読んでもらいたい紙です。市町村の配布物は、自分たちの判断だけでは扱いを変えられないことがあります。会議の報告は、読みたい人が読めれば足ります。そして班編成表と連絡網は、そもそも回覧に乗せるべきではない紙です。

仕分けができたら、紙ごとに「急ぐかどうか」「全戸に届く必要があるか」「個人の情報が載っているか」の3つに丸を付けます。個人の情報が載っている紙から外し、急ぐ紙を移し、全戸に届けたい紙は最後まで丁寧に扱う。これが外す順番の基本になります。

最初に回覧から外すのは、名前と電話番号が載った紙

真っ先に回覧から外すのは、班編成表や連絡網のように、名前と電話番号が載った紙です。デジタルに移すかどうかより前に、回すことをやめます。

回覧は、1枚の紙を班の全世帯が順番に手に取る仕組みです。班長の携帯番号、救出・救護班の担当者の名前、場合によっては「声をかける担当」と「声をかけてもらう世帯」の組み合わせまでが、全戸の目に触れます。回覧が止まった家にしばらく置かれ、コピーを取られても分かりません。そして翌年に班編成が変わると、古い版がどこかの家に残り、災害時に古い番号へ電話がかかることになります。

外したあとの渡し方は、班の担当者だけに封筒で手渡すか、見られる人を限定した場所に置く形にします。全戸に知らせる必要があるのは「あなたの班の班長は誰か」「集まる場所はどこか」までで、電話番号の一覧ではありません。

市町村から提供される避難行動要支援者の名簿情報は、そもそも回覧に乗せてはいけないものです。消防庁の手引は、名簿情報の提供を受けた者に守秘義務があること、市町村が求める管理の例として施錠できる場所での保管や必要以上の複製の禁止があることを紹介しています。回覧をやめる議論のついでに、名簿に関わる紙がどのように流れているかを一度たどっておくと、見落としていた写しが見つかることがあります。

次に移すのは、訓練の案内と参加の申込

2番目に移すのは、訓練の案内と申込です。回覧が最も不利になる紙だからです。

回覧の申込欄に参加人数を書いてもらう形では、班の最後の家に回るまでに1週間から2週間かかります。途中で止まる家があれば、さらに延びます。訓練の準備では、参加人数から炊き出しの量や資機材の数、避難所の体育館のどこまで使うかを決めるので、締め切りに間に合わない回覧は準備そのものを遅らせます。

もう1つの問題は、変更の連絡です。雨で屋外の訓練を中止する、集合場所を変える、市の総合防災訓練と時間を合わせるために開始を早める。こうした連絡は前日や当日の朝に決まることが多く、回覧ではまったく間に合いません。結局、班長が電話で回すことになり、電話を受けた人が「回覧には10時と書いてあった」と混乱します。

移すときは、案内と申込と変更の連絡を同じ場所に置くことが肝心です。案内だけを画面で見られるようにして、申込は紙、変更は電話、と経路が分かれると、どれが最新なのか分からなくなります。紙で申し込みたい世帯には、班長が画面の内容を印刷して手渡し、申込を聞き取って担当者が入力する、と決めておくと、情報の元は1か所に保てます。

防災だよりは、紙をやめるより「回し方」を変える

防災だよりやかわら版は、急ぎはしませんが、全戸に読んでもらいたい紙です。ここは、いきなり紙をなくすより、回し方を変えるほうが実情に合います。

消防庁の手引は、自主防災組織への関心を持ってもらう方法として広報紙やかわら版を挙げたうえで、紙だけでは足りないことにも触れています。

ケーブルテレビ、インターネットのホームページ、ブログ等による情報発信やSNSを活用することも有効であると考えられる。 出典: 総務省消防庁「自主防災組織の手引(令和5年3月)」

回覧で1枚を順番に見る形は、読んだかどうかにかかわらず押印して次に回せてしまいます。防災だよりの中身は、家具の固定の方法や備蓄の目安など、自分の家で手を動かすときに見返したい情報です。回覧で数分眺めるより、手元に残るほうが役に立ちます。

そこで、防災だよりは画面で読める形を基本にし、紙は年に数回、全戸配布の形で出す、という組み合わせにします。たとえば防災の日の前と、大雨の季節の前の年2回だけは、冷蔵庫に貼っておける大きさで各戸に配る。それ以外の号は画面で出し、紙で読みたい世帯には班長が印刷して届ける。回覧の回数は減りますが、紙として手元に残る機会はむしろ増えます。

市町村や消防から届く配布物は、自分たちだけでは止められない

防災に関わる紙のうち、自主防災組織の判断で扱いを変えにくいのが、市町村や消防から届く配布物です。

ハザードマップの改訂版や、防災講座の案内、住宅用火災警報器の点検を呼びかけるチラシなどは、自治会を通じて全戸に配ってほしい、あるいは回覧してほしい、という形で届きます。これを自主防災組織が「うちは回覧をやめたので画面に載せておきます」と勝手に変えると、市町村の側が想定している届け方と食い違うことがあります。

扱いは、市町村の担当課に確認してから決めます。確認することは3つです。全戸に紙で配ることが求められているのか、回覧でよいのか、画面に載せる形でもかまわないのか。画面に載せてよい場合、元のデータを提供してもらえるのか。そして、ハザードマップのように各戸で保管してほしいものは、紙の配布を続けるべきかどうかです。

確認の結果にもよりますが、各戸に保管してほしい資料は紙のまま配布を続け、講座の案内のような期限のあるものは画面に載せる、という分け方が現実的です。確認した結果は、翌年の担当者のために「配布物ごとの扱い」として一覧にしておきます。担当課の担当者も数年で代わるので、一度確認した内容を記録として残しておかないと、毎年同じ確認を繰り返すことになります。

会議の記録は、回すのをやめて置き場所を決める

5種類のうち、回覧をやめて最も得をするのが会議の記録です。役員会や幹事会の報告、避難所運営の協議の内容は、回覧で1回見て終わる紙として扱われがちですが、自主防災組織にとっては何年も参照する記録です。

避難所運営の協議を例にとると、指定避難所になっている学校や公民館の管理者、市町村の職員、隣接する自治会や自主防災組織が集まり、体育館のどこを受付にするか、備蓄倉庫の鍵を誰が持つか、ペットをどこで受け入れるか、といったことを決めていきます。決まったことは、次の年の役員が知らなければ意味がありません。ところが回覧で回した報告は、回り終えると班長の家の棚に入るか、捨てられます。

回覧から外したら、記録の置き場所を1か所に決めます。年度ごとに並べ、決まった事項が一目で分かるように、議事の要点を先頭に書く形にそろえます。住民に知らせたい内容は、記録とは別に短い案内として出します。記録の全文を全戸に読ませる必要はなく、「避難所の受付は体育館の東口になりました」の1行が届けば足ります。

記録の置き場所は、役員が代わっても開ける場所であることが条件です。前任の会長の自宅のパソコンや、個人の端末の中に置かれると、交代のたびに失われます。避難所運営の協議の記録は、災害が起きたときに本部で開くことになるので、紙で1部を防災倉庫にも置いておくと安心です。

回す紙をやめても、各戸に「置く」紙は残す

ここからが、防災の組織として回覧をやめるときに欠かせない部分です。平時に回す紙は減らしても、災害時に各家庭で使う紙は、むしろきちんと作って配ります。

理由ははっきりしています。消防庁の手引は、スマートフォンなどによる情報のやり取りが盛んになっている一方で、災害時には電気や電話、インターネットの回線が不通になる可能性を考慮する必要があると書いています。停電で端末の電池が切れたとき、画面の中にしかない情報は見られません。

各戸に置く紙は、A4の1枚に収まる量にします。書くのは次のような項目です。

・地震のときに最初に集まる場所と、そこから向かう避難所 ・大雨のときに向かう場所(地震と違う場合) ・自分の家が属する班の番号と、班長の名前 ・無事を知らせる方法(玄関に目印を出す、集合場所で名前を書くなど、地区で決めた方法) ・家族と連絡がつかないときの災害用伝言ダイヤル(171)の使い方 ・停電や断水のときに、自主防災組織の情報を掲示する場所

電話番号の一覧は載せません。各戸に配る紙は、どこに置かれ、誰の目に触れるか分からないからです。班長の連絡先は、班の中で別に共有します。

この1枚は、冷蔵庫や玄関の内側など、家族全員が知っている場所に貼ってもらうようお願いします。更新は年に1回、防災の日の前に配り直すと決めておくと、古い版が残り続けることを防げます。

防災倉庫には、災害時に書き込む紙を置いておく

各戸に置く紙とは別に、防災倉庫や集会所にも紙を用意しておきます。こちらは、災害時に本部を立ち上げたときに使う紙です。

消防庁の手引は、情報収集・伝達用の資機材の例として、携帯用ラジオや電池メガホンと並べて、住宅地図、模造紙、メモ帳、油性マジックを挙げています。安否や被害の状況を集め、書き出して共有するための道具です。停電の中で本部を開いたとき、頼りになるのはこうした紙と筆記具です。

倉庫に置いておきたい紙は、次のようなものです。

・住宅地図(班の境界と、集合場所、消火栓、防火水槽の位置を書き込んだもの) ・安否の確認に使う記録用紙のひな型(班、確認した時刻、確認した人の名前を書く欄があるもの) ・被害の報告に使う用紙のひな型(場所、状況、けが人の有無、報告者、時刻) ・避難所の受付に使う用紙のひな型 ・班ごとの世帯の一覧(封をして、開けてよい条件と、開けられる人を封筒に書いたもの)

最後の世帯の一覧は、倉庫に置くかどうかを役員会で慎重に決めます。災害時にすぐ取り出せる利点と、平時に誰でも見られる危うさがあるからです。置くなら施錠できる箱に入れ、鍵を持つ人を決めます。

これらの紙は、資機材の点検日に一緒に確認します。ペンのインクが乾いていないか、地図が古くなっていないか、ひな型が足りているか。回覧をやめて平時の紙が減るぶん、倉庫の紙の手入れに時間を回せます。

停電した日に紙を貼り出す場所を、平時に決めておく

回覧をやめた組織が災害時に困るのは、画面が使えなくなったときに、住民がどこへ行けば情報が得られるのか分からないことです。回覧板という「紙が回ってくる道」がなくなるぶん、「紙を見に行く場所」をはっきり決めておく必要があります。

候補になるのは、一時集合場所の近くの掲示板、集会所の入口、防災倉庫の扉、地区の中心にある商店の店先などです。1か所では地区の端の住民が遠くなるので、班の数や地形に合わせて2〜3か所を決め、各戸に置く1枚にその場所を書いておきます。

貼り出す紙の書き方も、平時に決めておきます。消防庁の手引は、情報収集・伝達の注意点として、事実を確認して報告すること、難しい言葉を避けること、流言には数字がからむことが多いので数字の伝達に注意すること、「異常なし」も重要な情報であること、定期的に報告することを挙げています。貼り出す紙にも同じ考え方が当てはまります。

・紙の上に、書いた時刻と、情報の出どころ(市町村の発表、消防からの連絡、班からの報告)を書く ・確かめていない話は書かない ・変化がなくても、決めた時刻に「変わりなし」と書いた紙に貼り替える

貼り替える時刻を朝と夕方の2回などと決めておくと、住民は見に来る時間の目安を持てます。この段取りを、年に1回の訓練で実際に試しておくと、回覧をやめた不安への一番の答えになります。

押印欄が担っていた「回った」という確認を、どう置き換えるか

回覧をやめるときに必ず出る心配が、「押印がなくなると、誰が見たか分からなくなる」というものです。自主防災組織にとって、この心配は他の団体より重い意味を持ちます。見ていない世帯は、災害時に情報が届かない世帯でもあるからです。

ただ、押印欄は「読んだ」ことを示していたわけではありません。回ってきた紙に、中身を見ずに判を押して次に回すことは珍しくありません。押印が保証していたのは、紙がその家を通過したことだけです。

画面に移したあとで確かめるべきなのは、1通ずつの既読ではなく、「連絡が届く状態にない世帯はどこか」です。これは、班長が年に1回、班の世帯を思い浮かべて印を付けるだけでも把握できます。画面を見ている世帯、家族が代わりに見ている世帯、紙で届けている世帯、どれにも当てはまらない世帯。最後の世帯が、平時から気にかけるべき先です。

もう1つの確かめ方は、訓練です。消防庁の手引は、情報伝達訓練の例として、模擬の情報を地域の伝達経路で次々に伝え、最後にどの程度正確に伝わったかを確認する方法を紹介しています。回覧をやめたあとの経路で同じことを試せば、押印欄よりずっと実態に近い形で「届いたかどうか」が分かります。

回覧をやめると、情報班の平時の仕事が変わる

自主防災組織の班編成の例では、情報班の日常の役割は情報の収集・伝達と広報活動とされています。回覧が中心だった組織では、この広報活動の中身が、紙を印刷して班長に配り、回覧板に挟むことになっていたはずです。

回覧をやめると、この作業は大きく減ります。そのかわり、情報班には別の仕事が生まれます。

・画面に載せた案内を、期限が過ぎたら片付け、最新のものが上に来るように整える ・紙で届ける世帯の分を印刷し、班長に渡す ・画面を見ていない世帯の数を、班長から聞き取って把握する ・各戸に置く1枚と、倉庫の紙のひな型を、年に1回更新する ・市町村から届いた配布物の扱いを、一覧に沿って振り分ける

作業時間で比べると、印刷して挟んで回す手間より少なくなることが多いのですが、仕事の性質が「配る」から「整える」に変わります。紙を配る作業は誰にでも頼めましたが、画面を整える作業は担当が決まっていないと放置されます。

このため、回覧をやめると決めるときに、情報班の担当を1人ではなく2人にしておきます。1人が不在でも案内が止まらないようにするためです。そして役員の任期が1年の組織では、年度替わりに画面の管理の権限をどう渡すかを、引き継ぎの項目に加えておきます。

紙が必要な世帯は、年齢ではなく申し出で決める

回覧をやめるとき、「高齢の世帯には紙を残す」と年齢で線を引きたくなります。これは実情とずれることがあります。

80代でも家族と一緒に画面を見ている世帯があり、50代でもスマートフォンを持たない世帯があります。年齢で決めると、紙が要らない世帯に紙が届き、要る世帯に届かない、ということが起きます。名簿の生年月日で紙の配布先を決めること自体、名簿の使い方として好ましくありません。

紙の配布先は、申し出で決めます。切り替えを知らせる紙を全戸に1回だけ配り、「今後も紙でのお知らせを希望される方は、班長にお知らせください」と書きます。申し出があった世帯には、班長が画面の内容を印刷して届けます。

申し出の期限は設けず、いつでも紙に戻れるようにしておきます。家族が引っ越して画面を見る人がいなくなった、目が見えにくくなった、という変化は、年度の途中で起きるからです。紙で届けている世帯の数は、年に1回、情報班が班長から聞き取って更新します。

そして紙で届けている世帯は、災害時の安否確認で優先して回る世帯の目安にもなります。平時の配り方の記録が、そのまま災害時の手がかりになる、という点で、紙の配布先の一覧は自主防災組織にとって意味のある記録です。

切り替えの知らせは、1枚で「何が変わり、何が変わらないか」を書く

回覧から紙を外すことを住民に知らせる紙は、全戸に1回だけ配ります。この1枚の出来で、切り替えのあとに寄せられる問い合わせの数が変わります。

書くことは4つに絞ります。

・これから回覧に乗らなくなるもの(訓練の案内、防災だより、会議の報告) ・これまでどおり紙で届くもの(各戸に置く1枚、市町村から紙で配るよう求められている資料) ・回覧に乗らなくなったものを、どこで見られるか ・紙で受け取りたいときの申し出先(班長の名前)

特に大切なのは、2つめの「変わらないもの」を書くことです。防災の組織が紙をやめると聞いた住民の多くは、災害時の案内まで画面だけになるのかと心配します。避難場所を書いた1枚はこれからも配ること、停電のときは決めた場所に紙で掲示することを書いておくと、その心配にあらかじめ答えられます。

見られる場所の説明には、始め方を長々と書かないようにします。操作の説明は別の紙にし、知らせの紙には「分からないときは班長に聞いてください」と書くだけにとどめます。1枚の紙に説明を詰め込むと、肝心の「何が変わるか」が読まれません。

切り替えの1年を、防災の暦に合わせて組む

回覧から紙を外す作業は、一度に全部やらず、防災の暦に合わせて1年かけて進めます。

年度の初めに役員が代わったら、最初の役員会で「防災の紙を回覧から外す」ことと、外す順番を決めます。総会がある組織は、総会で報告して了承を得ておきます。自治会が兼ねている場合は、自治会の役員会にも同じ説明をします。

最初の月に、班編成表や連絡網を回覧から外し、担当者への手渡しに変えます。これは準備が要らないので、決めたその月から始められます。

次に、秋の訓練の案内から画面での案内と申込に移します。防災の日の訓練を目標にするなら、夏の前に切り替えの知らせを全戸に配り、紙の希望を受け付けておきます。訓練が終わったら、申込が締め切りまでに集まったか、変更の連絡が届いたかを振り返ります。

年度の後半に、防災だよりの回し方を変え、各戸に置く1枚を作ります。倉庫の紙のひな型は、資機材の点検日に合わせて整えます。そして年度末に、1年の間に回覧に乗った防災の紙の枚数を数え、次の役員に引き継ぎます。

置き場所を選ぶときに見る点

回覧から外した紙の行き先を選ぶときは、機能の多さより、自主防災組織の事情に合うかどうかを見ます。見る点は3つです。

1つめは、案内が流れずに残るかどうかです。訓練の案内や各戸に置く1枚の元データは、次の訓練まで何か月も参照されます。新しい発言が来るたびに上に流れていく形だと、探し出せなくなります。LINEグループとの比較では、トークが流れていく形と、掲示板に1件ずつ残り、大事なお知らせを上に固定できる形の違いを項目ごとに並べています。

2つめは、見られる人を決められるかどうかです。防災の案内には地区の避難の段取りが含まれ、班の担当者あての連絡には名前が含まれます。誰でも入れる形より、承認した人だけが入れる形のほうが、回覧から外した意味を保てます。人を広く集める入り口と、顔の分かる会の連絡の場の違いは、LINEオープンチャットとの比較にまとまっています。

3つめは、役員が1年で代わっても記録が残るかどうかです。よくある質問には、年配の方が文字を大きくして使えることや、LINEのアカウントでそのまま入れることがまとめてあります。回覧板の代わりにお知らせを上に固定し、行事の写真と次の日程を同じ場所に残している例は町内会での使われかたで見られます。

ほかの道具と並べて考えるなら、BANDとの比較では保存容量と自動削除の扱いの違いを、Facebookグループとの比較ではアカウントの要否を、Discordとの比較では画面の作りの違いを見ておくと、地区の住民の顔ぶれに合うかどうかの見当がつきます。

どの道具を選んでも、画面の中だけで完結させないことが自主防災組織の前提です。回す紙はやめ、置く紙は整え、その両方の元になる情報を1か所で管理する。この形にしておけば、停電の夜にも、役員が代わった翌年にも、地区の防災の情報は途切れません。

Q1. 防災の組織が回覧板をやめると、災害時に情報が届かなくなりませんか?

平時に回す紙と、災害時のために置いておく紙を分けて考えれば、届かなくなることはありません。訓練の案内や防災だよりのような平時の紙は画面に移し、避難場所や無事を知らせる方法を書いた1枚は各戸に配って貼ってもらいます。防災倉庫には住宅地図や記録用紙のひな型を置き、停電や回線の途絶に備えます。

Q2. 自治会の回覧板と一緒に回っている場合、自主防災組織だけで回覧をやめられますか?

回覧板そのものは自治会の持ち物なので、廃止は自治会で決めることになります。ただし、防災に関わる紙を回覧に乗せないと決めることは、防災部門の判断で進められます。まず名簿や連絡網が載った紙を回覧から外し、訓練の案内を移すところから始め、自治会の役員会にも同じ説明をしておくと食い違いが起きません。

Q3. 市町村から届くハザードマップも、画面に載せるだけでよいですか?

自主防災組織の判断だけで決めず、市町村の担当課に扱いを確認してください。各戸で保管してほしい資料は、紙で全戸に配ることが求められている場合があります。確認した結果は配布物ごとの一覧にして残しておくと、担当者が代わっても毎年同じ確認を繰り返さずに済みます。

Q4. 紙のお知らせを残す世帯は、年齢で決めればよいですか?

年齢で線を引くより、申し出で決めるほうが実情に合います。高齢でも家族と画面を見ている世帯があり、若くても端末を持たない世帯があるからです。切り替えの知らせを全戸に配り、紙を希望する世帯は班長に伝えてもらいます。期限は設けず、いつでも紙に戻れるようにし、年に1回配布先を更新します。

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