災害時の連絡網は、平常時の連絡網の順番をそのまま使うと動きません。電話がつながらないこと、担当者自身が被災していること、夜中に起きることの3つが同時に来るためです。この記事では、つながらない前提で順番を組み直す手順と、公的に用意されている手段の提供条件、名簿の持ち方、訓練の日程までを並べます。町内会やPTA、部活、教室をとりまとめる立場の人が、次に何を決めればよいかが分かる形にしています。
平常時の連絡網が災害時に止まる理由
多くの会が持っている連絡網は、順番に電話をかけていく形です。会長から班長へ、班長から会員へ。この形は平常時には機能しますが、災害時には3か所で止まります。
1か所めが、回線です。地震のあと、被災地の安否を気遣う通話が一気に増えると、つながりにくい状況が起きます。この状態をふくそうと呼びます。かけ直せば通じるという性質のものではなく、通話そのものを絞る仕組みが働くため、何度かけても同じです。
2か所めが、人です。連絡網は1人が止まると、その先の全員に届きません。班長が自宅の外にいる、けがをしている、電話を持っていない。どれも起こります。順番でつなぐ形は、平常時の手間を減らす代わりに、1人の不在に耐えられない作りになっています。
3か所めが、時間です。発災は勤務時間内に起きるとは限りません。夜間や休日に起きた場合、連絡先が会の事務所にしかない、鍵を持つ人しか名簿を開けないという状態では、誰も動けません。
企業向けの案内でも、この点は同じ形で指摘されています。
緊急連絡網は、作成しただけでは十分に機能しません。実際の災害時に確実に運用できるかどうかは、平常時の訓練にかかっています。そのため、安否確認や緊急連絡の訓練を定期的に実施し、連絡網が正しく機能するかを確認することが重要です。 出典: sol.kepco.jp
会の連絡網も同じで、紙に書いた時点では動くかどうか分かりません。動くかどうかは、実際に流してみるまで確かめられません。
順番を組み直す前に決める3つのこと
作り直すときに手順書から書き始めると、たいてい使われないものができます。先に決めるのは次の3つです。
1つめは、何を知りたいのかです。災害時に会として集めたい情報は、ほとんどの場合2つに絞れます。無事かどうか、そしていまどこにいるか。この2つだけを集める形にすると、答える側の負担がほぼゼロになります。被害の詳しい状況、必要な物資、家屋の損壊の程度を最初の1通で聞こうとすると、答えが返ってきません。詳しい話は無事を確かめたあとに聞きます。
2つめは、誰が知る必要があるのかです。会長だけが知る形にすると、会長が動けないときに止まります。少なくとも3人が同じ情報を見られる状態にします。正副の役員と、地区の中で自宅が離れている人を1人入れると、同じ被害で全員が動けなくなる確率が下がります。
3つめは、いつ動くのかです。震度がいくつなら連絡を回すのか、誰の判断を待つのかを先に決めます。判断を待つ形にすると、待っている間に誰も動きません。現場で続いているのは、条件を決めて自動で始める形です。震度5弱以上の地震が地域で起きたら、会長の指示を待たず班長が自分の担当に連絡を入れる。これを決めておくと、判断する人が動けなくても回り始めます。
この3つが決まってから、手段を選びます。順番が逆になると、道具の機能に合わせて運用を作ることになり、実際の発災時に思い出せない手順ができます。
つながらない前提で使える手段
使える手段は、公的に用意されているものと、日常で使っているものに分かれます。それぞれ性質が違うため、組み合わせて考えます。
災害用伝言ダイヤル(171)は、災害の発生によって被災地への通話がつながりにくくなった場合に提供が始まる声の伝言板です。電話サービスを提供する各通信事業者の協力で運営されています。提供条件は公式に公開されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 伝言の録音時間 | 1件あたり30秒以内 |
| 伝言の蓄積数 | 電話番号あたり1件から20件(提供時に案内される) |
| 保存期間 | 運用期間が終わるまで |
| 利用料金 | 伝言の蓄積などのセンター利用料は無料 |
登録できるのは、被災地の方などの加入電話、ISDN、ひかり電話、携帯電話、PHS、IP電話の番号です。固定電話の番号は市外局番から入力する必要があります。ここに会の運営で使える工夫が1つあります。あらかじめ、伝言を録音する電話番号を1つ決めておくことです。公式の案内でも、家族や友人の間で番号を決めておくことがすすめられています。会の場合は、会館の固定電話の番号を「会の伝言を残す番号」として全員に配っておくと、誰がかけても同じ場所を見られます。
災害用伝言板(web171)は、インターネットを使って安否を確かめる伝言板です。171に録音された伝言をweb171側で音声ファイルとして再生できるほか、web171に登録された文字の伝言を音声に変換して171で再生できます。声と文字のどちらで入れても、相手が使える手段で受け取れる形になっています。
日常で使っている手段は、災害時には別の顔を見せます。通話は絞られますが、少ないデータで済む文字のやり取りは通じることがあります。停電が長く続けば、手元の電池が先に切れます。1つの手段に寄せきらず、文字で送る手段と、声で残す手段の両方を用意しておくことになります。
名簿をどう持つか
連絡網が動かない理由として、名簿が開けないという事例をよく聞きます。紙の名簿が会館の鍵の中にある、電子の名簿が前の担当者のパソコンにしかない、共有しているが誰も場所を覚えていない。どれも発災の夜には間に合いません。
現場で続いているのは、3つの持ち方を重ねる形です。
1つめは、手元に紙で持つことです。班長と役員は、自分の担当分だけを印刷して自宅に保存します。全員分ではなく担当分に限ることで、紛失したときの影響を小さくできます。電池も電波も要らないため、いちばん確実です。
2つめは、電子で複数の人が見られる形にすることです。名簿を1人のパソコンに保存すると、その人が動けないときに止まります。役員が入れ替わっても引き継ぎが1回で済むのは、会の側に保存場所がある形です。
3つめは、連絡先を交換しない形にすることです。会員同士が個人の電話番号を交換しなくても連絡が回る仕組みにしておくと、名簿そのものを配らずに済みます。メンバー以外は見られない形で名簿を扱えるかどうかは、個人情報の扱いを気にする会にとって大きな判断材料になります。
名簿を更新する頻度も決めておきます。年に1回、総会の時期に合わせて確かめる形が多くあります。転居と電話番号の変更は思ったより多く、2年放置すると1割近くが古くなります。更新していない名簿は、あることが安心につながるだけで、実際には使えません。
連絡の順番を並列に組み替える
順番を1本の線でつなぐ形を変えます。変え方は2つあります。
1つめは、同時に送る形です。班長を経由せず、会の全員に同じ内容を一度に送ります。1人が止まっても他に影響しません。このとき大事なのは、送る人を絞ることです。全員が全員に送れる状態だと、発災直後に同じ内容が何十通も飛び、必要な連絡が埋もれます。送れる人を役員に限り、答えるのは全員という形にします。
2つめは、答えを集める形です。送ったあと、誰が答えていないかが分かるようにします。ここが平常時の連絡網といちばん違うところです。平常時は「届いた人が動く」で足ります。災害時は「答えていない人を見つける」ことが目的になります。答えていない人の一覧が出るかどうかで、その後の動きが変わります。
具体的には、次の順で回します。
1つめの段階で、無事かどうかだけを聞きます。選ぶだけで答えられる形にします。2つめの段階で、答えがない人を割り出します。3つめの段階で、その人の家に近い会員に様子を見に行ってもらいます。4つめの段階で、集まった情報を1か所にまとめ、必要なら行政や消防への連絡に使います。
この4段階のうち、道具が助けてくれるのは1つめと2つめです。3つめと4つめは人が動きます。道具を選ぶときは、2つめができるかどうかを必ず確かめてください。答えを集められても、答えていない人が分からない道具では、結局全員に電話をかけ直すことになります。
誰が誰を確かめるかの割り振り方
同時に全員へ送る形にしても、答えなかった人を見に行く役は人が担います。この割り振りを先に決めておかないと、発災の翌朝に「誰が行くのか」を相談する時間が生まれます。
割り振りの基準は、距離です。組織の役職ではなく、家が近い順に組みます。班長が担当の全員を見に行く形は、班が広い会では成り立ちません。徒歩で5分以内の相手を1人か2人ずつ受け持つ形にすると、道が塞がっていても動けます。
次に、優先する相手を決めます。高齢の一人暮らし、介護を受けている人、小さい子どもだけで留守番することがある家庭、日本語での連絡が難しい人。この4つに当たる会員は、答えを待たずに最初から見に行く対象にしている会が多くあります。名簿に印を付けるかどうかは会の判断ですが、担当者の頭の中だけに入れておくと、その人が動けないときに引き継げません。
3つめに、行った結果をどこに戻すかを決めます。見に行った人が誰にも報告しないと、会としては安否が分からないままです。結果を戻す先を1か所に決めて、そこへ短い文で入れる形にします。ここでも、詳しい報告を求めないほうが集まります。無事、連絡が取れない、支援が必要の3つから選ぶだけにすると、動きながら入れられます。
割り振りを紙にしたら、当人に渡します。名簿と同じで、会館に保管した割り振り表は発災の夜には使えません。担当する相手の名前と住所だけを書いた紙を、担当者が自宅に保存します。
手段が使えなくなる順番を知っておく
災害のあと、手段は一斉に止まるのではなく、順番に落ちていきます。順番を知っておくと、どこまでを想定して備えるかが決められます。
最初に絞られるのが通話です。安否を気遣う通話が増えて、つながりにくい状況になります。この段階では、文字のやり取りは通じることがあります。データの量が少ないためです。
次に落ちるのが手元の電池です。停電したまま1日が過ぎると、充電できていない端末が切れ始めます。会として備えるなら、役員の分だけでもモバイルバッテリーを用意し、年に1回充電を確かめます。ここは会費で買える範囲の備えです。
その次が、設備の電源です。携帯電話の基地局や光回線の設備は予備の電源を持っていますが、停電が長引けば影響が出ます。この段階になると、電子の手段は当てにできません。会館の掲示板、拡声器、直接訪ねることの3つに戻ります。
つまり、備える範囲は3段構えになります。1段めは文字で送る手段、2段めは声で残す手段、3段めは人が歩く形です。1段めだけを整えて安心してしまう会が多いのですが、3段めの割り振りが決まっていないと、停電が続いた時点で会としては何もできなくなります。
逆に、3段めだけで組んでいる会も止まります。担当者が全員の家を回るには時間がかかり、その間に会全体の状況が誰にも分かりません。3つを重ねる形が現実的です。
行政からの情報と、会の連絡を分ける
発災の直後、会の連絡に行政の情報をそのまま転送する動きが起きます。ここで混乱が生まれます。
分けるべきなのは、行政が出す情報と、会が判断したことです。避難情報や給水の場所は行政が出します。会が出すのは、会としてどうするかです。集会所を開けるのか、行事を延期するのか、誰が誰を確かめるのか。この2つを同じ流れで混ぜて流すと、受け取った側がどちらを見て動けばよいか分からなくなります。
現場で効いているのは、会の連絡には会が決めたことだけを書き、行政の情報は出どころを添えて短く触れる形です。「市の案内では給水所が開いている」と書くだけにして、詳しい内容は市の発表を見てもらいます。会が要約して流すと、間違って伝わったときに会の責任になります。
もう1つ、流す回数を決めておくことも効きます。発災直後に情報が入るたびに送ると、1日に何十通も届きます。すると、必要な連絡が埋もれます。朝と夕方の2回にまとめ、緊急のものだけ随時にする形が現実的です。回数を決めた会では、通知を切る人が減ります。
会の中で誰が流すかも決めます。複数の役員が同じ情報をそれぞれ流すと、内容が食い違います。流す人を1人に決め、その人が動けないときに代わる人を1人決める。この2人だけが送れる形にしておくと、食い違いが起きません。
訓練の日程を決める
訓練をしていない連絡網は、動かないと考えてよいです。回す練習をしていないと、発災の夜に手順を思い出せません。
日程を決めるときに使えるのが、伝言ダイヤルの体験利用日です。公式に公開されています。
災害時以外にも、災害用伝言ダイヤル(171)(電話サービス)をご体験していただけるように「体験利用日」を設定しております。是非、家族・親戚・友人間で体験していただきますようにお願いします。 出典: www.ntt-west.co.jp
体験利用日は、毎月1日と15日の0時から24時、正月三が日、防災週間(8月30日9時から9月5日17時)、防災とボランティア週間(1月15日9時から1月21日17時)です。体験利用のときの条件は、伝言の録音時間が30秒、保存は体験利用の期間が終わるまで、蓄積数は20件です。災害が発生した際には体験利用ができない場合があります。
会の訓練は、この日程に合わせると準備が要りません。防災週間に合わせて年1回、全員に安否確認の連絡を流し、答えが返る割合を数えます。数えると必ず穴が見つかります。よく出るのは、通知が切られていて気づかない人、機種を変えて設定が消えている人、そもそも登録していない人の3つです。
訓練で見る数字は3つに絞ります。送ってから半分の人が答えるまでにかかった時間、24時間で答えた人の割合、答えなかった人の内訳。この3つを毎年並べると、去年より良くなったかどうかが分かります。良くならないときは、道具ではなく案内の仕方に原因があることが多くあります。
時間帯を変えて訓練するのも効きます。昼にしか試していない会は、夜に流したときの答えの返り方を知りません。年に2回できるなら、1回は夜に回します。
無料でどこまでできるか
費用をかけずに組めるかどうかは、会の予算を握る立場では最初の関門です。結論から書くと、会の規模が数十人から数百人であれば、費用をかけずに組めます。
無料で使える手段は3つあります。伝言ダイヤルと伝言板は、センター利用料が無料です。すでに使っているメッセージの道具は、追加の費用がかかりません。団体向けの連絡の道具にも、費用がかからない範囲で使えるものがあります。
無料の範囲で組むときに確かめる点が3つあります。
1つめは、人数の上限です。無料で使える範囲に人数の制限が付いているものがあります。会員数が増えたときに乗り換えが必要になるかを、先に確かめておきます。
2つめは、広告の有無です。費用のかからない仕組みは、画面に広告が出る形で成り立っているものがあります。学校や公の場で使う場合に問題になることがあるため、使う前に見ておきます。
3つめは、答えを集める機能です。無料の範囲では連絡を送れるだけで、答えを集める機能が有料になっているものがあります。災害時の連絡網では答えを集めるほうが本体なので、ここが無料に入っているかどうかで選ぶ道具が変わります。
費用をかける判断をするときは、会費に対する割合で考えます。会員100人の会で年間の予算が数十万円あるなら、安否確認のために年に数万円を使う判断は説明が付きます。会員が20人の会では説明が付きません。規模で答えが変わる項目です。
個人情報と、答えない人の扱い
安否確認を始めると、必ず2つの相談が出ます。
1つめは、個人情報です。名簿を作ることそのものが不安だという声は、どの会でも出ます。現場では、集める項目を絞ることで折り合いをつけている会が多くあります。氏名と連絡先と住所の3つに限り、家族構成や勤務先は集めない。集めたものを誰が見られるかを書面で示す。年に1回、消してほしい人の申し出を受ける。この3つを決めておくと、説明ができます。法律の解釈まで会で決める必要はなく、公的な相談先に確かめるのが確実です。個人情報の扱いについては個人情報保護委員会の案内が入口になります。
2つめは、答えない人の扱いです。訓練でも本番でも、一定の割合で答えない人が出ます。ここを「参加しない人が悪い」と扱うと、会の中に溝ができます。現場では、答えない人を責めずに、答えなかった場合に誰が見に行くかを先に決めておく形が続いています。高齢の一人暮らしの会員には、答えを待たずに最初から見に行く担当を付ける会もあります。
答えない理由は、たいてい技術的なものです。通知が切られている、機種を変えた、そもそも案内が届いていない。年に1回の訓練で洗い出して、1人ずつ直していくしかありません。ここを人の意識の問題として扱うと、何年たっても直りません。
連絡網の紙を作るときに入れる項目
紙の連絡網を作り直す会のために、入れる項目を並べます。順番も意味があります。
いちばん上に書くのは、動き始める条件です。「地域で震度5弱以上の地震があったとき」「気象の警報が出たとき」のように、誰が読んでも同じ判断になる書き方にします。ここに「会長の判断で」と書くと、会長に連絡が付かない場合に止まります。
2番目に書くのは、最初に流す文です。文面を先に作っておくと、発災の夜に考えずに送れます。無事かどうかだけを聞く1文と、答え方の案内で足ります。長い文を用意すると、そのときの状況に合わないため結局書き直すことになります。
3番目に、会の伝言を録音する電話番号を書きます。伝言ダイヤルは、番号を決めておかないと使えません。会館の固定電話の番号を市外局番から書いておきます。
4番目に、担当の割り振りを書きます。誰が誰を確かめるか、答えがない場合に誰が見に行くかです。
5番目に、集まった情報をどこへ戻すかを書きます。戻す先が決まっていないと、見に行った結果が会に集まりません。
最後に、更新した日付と作った人の名前を入れます。日付が無い連絡網は、いつのものか分からず、使う人が信用しません。年に1回更新したら日付を書き換えます。
この紙は、役員と班長の全員が自宅に保存します。会館に1枚だけ保管する形にすると、鍵を持つ人しか使えません。印刷して配る枚数は、会員全員分ではなく担当者分に絞ります。全員に配ると、住所と電話番号が会の外へ出る経路が増えます。
年度が替わっても続く形にする
災害時の連絡網は、作った年は動いても、2年後に動かなくなることがよくあります。原因は担当者の交代です。
引き継ぎで渡すものを3つに絞ると、続きます。1つめは連絡網の紙です。2つめは、名簿と担当の割り振りが保存されている場所です。3つめは、去年の訓練で答えが返った割合と、答えなかった人の内訳です。3つめがあると、次の担当者が同じ調べ物をせずに、去年の続きから手を付けられます。
渡し方も決めておきます。前の担当者から次の担当者へ口で伝える形は、抜けます。引き継ぎの場で、紙を渡して、実際に道具を開いて、送れることを一度試す。この3つをその場でやると、次の担当者が発災の夜に迷いません。
そして、引き継いだ直後に1回流すことをすすめます。訓練の日程を年1回と決めていても、担当が代わった直後にもう1回流すと、新しい担当者が操作を覚えます。会員には「担当が代わったので確認の連絡を送ります」と書けば、余計な心配をかけません。
年度替わりで落ちるものをもう1つ挙げると、送れる人の設定です。前の役員が送れる状態のまま残り、新しい役員が送れない、という形で止まる例をよく聞きます。引き継ぎの場で、送れる人を入れ替える作業まで済ませておいてください。
答えを集める形を1つに絞る
安否を集める手段を2つ以上並行して使うと、集計ができません。片方に答えた人がもう片方に答えていないため、答えていない人を割り出せなくなります。
そこで、集める場所は1つに決めます。決め方は、会員がいちばん多く使っている手段に合わせることです。会員の8割が同じ道具を日常で使っているなら、そこに寄せます。役員だけが使いやすい手段を選ぶと、答えが返りません。
そのうえで、その手段が使えない人への逃げ道を用意します。電話で答える、担当者に直接伝える、紙を掲示板に貼る。どれでも構いませんが、逃げ道で受けた答えを、集める場所へ担当者が入れ直す形にします。入れ直す担当を決めておかないと、電話で受けた答えがその人の記憶にしか残りません。
数えるのは、答えた人ではなく答えていない人です。名簿と突き合わせて引き算します。ここを手作業でやると、会員が100人を超えたあたりから追いつきません。答えていない人の一覧が出る道具を使うか、名簿を表計算に入れて照合できる形にしておくか、どちらかを先に決めておいてください。
日常の連絡と災害時の連絡をつなげる
最後に、続けるための話をします。災害時専用の仕組みを作った会は、たいてい使われないまま忘れられます。理由は単純で、使う日が来ないからです。
続いているのは、日常の連絡と同じ場所で災害時の連絡も回す形です。毎月の行事の案内、出欠の確認、写真の共有を同じ場所で回していれば、全員が場所と操作を覚えています。発災の夜に「どこを見ればいいのか」を思い出す必要がありません。
いま連絡をLINEのグループで回している会は、そのまま災害時にも使えるのかを一度確かめておくとよいです。グループでの連絡と団体向けの道具では、答えを集める機能と、答えていない人が分かるかどうかに差があります。LINEグループとの比較に、その差が整理されています。会員が誰でも書き込める形が発災直後に向くかどうかも論点になるため、LINEオープンチャットとの比較も併せて確かめてください。連絡と予定と写真を1か所にまとめる形を検討しているなら、BANDとの比較が判断材料になります。
会の種類によって、決める順番が変わります。自治会や町内会は、高齢の会員が多く、新しいアカウントを増やさないことが最初の関門になります。町内会での使われかたに、回覧板と連絡網をどう畳むかが整理されています。学校の場合は、休校の連絡と安否確認を同じ経路で流せるかが論点になるため、学校での使われかたを見てください。PTAは役員が1年で代わるため、引き継ぐものを1つに減らすことが効きます。PTAでの使われかたにその形がまとまっています。
導入の手順や費用の疑問が残っている場合は、よくある質問に、会の単位で使い始めるときの疑問がまとめられています。
災害時の連絡網で最後に効くのは、道具の性能ではありません。誰がいつ動くかを決めてあること、名簿が担当者の手元にあること、年に1回流していること。この3つが揃っていれば、多少手段が古くても回ります。3つが欠けていれば、どんなに新しい仕組みを入れても動きません。
Q1. 災害用伝言ダイヤル(171)はいつでも使えますか?
災害の発生によって被災地への通話がつながりにくい状況になった場合に提供が始まります。平常時は使えませんが、体験利用日が設定されており、毎月1日と15日の0時から24時、正月三が日、防災週間、防災とボランティア週間に試せます。会の訓練はこの日程に合わせると準備が少なく済みます。
Q2. 伝言は何秒まで、何件まで残せますか?
1件あたり30秒以内で、電話番号あたり1件から20件です。件数は提供のときに案内されます。保存期間は運用期間が終わるまでで、体験利用のときは体験利用の期間が終わるまでです。伝言の蓄積などのセンター利用料はかかりません。
Q3. 連絡網は順番にまわす形のままでよいですか?
災害時は1人が止まると先に届かないため、同時に全員へ送る形に組み替えたほうが確実です。そのうえで、答えていない人が分かる仕組みを用意します。災害時の目的は届けることではなく、答えていない人を見つけることに変わります。
Q4. 費用をかけずに安否確認の仕組みを作れますか?
会員が数十人から数百人の規模であれば、費用をかけずに組めます。伝言ダイヤルと伝言板はセンター利用料が無料で、団体向けの連絡の道具にも費用のかからない範囲で使えるものがあります。確かめる点は、人数の上限、広告が出るかどうか、答えを集める機能が無料の範囲に入っているかの3つです。