緊急連絡簿を作る段階で手が止まるのは、書式ではなく判断のほうである。どこまでの項目を集めるのか、誰に配るのか、更新は誰がやるのか。ここを決めないまま表計算の様式を埋め始めると、完成したあとに配れない書類ができる。この記事では、緊急連絡簿を作る手順を項目の決め方から更新の回し方まで順に並べ、公的機関が公開している考え方に沿って、見せてよい範囲の線をどこに引くかを整理する。
緊急連絡簿と緊急連絡網は、役割が違う
言葉が似ているため同じものとして扱われがちだが、この2つは別の書類である。混ぜると、どちらも使いにくいものになる。
緊急連絡簿は名簿である。誰に、どの手段で連絡が付くかを一覧にしたもので、氏名、電話番号、住所、所属の班や学年、家族や勤務先といった連絡の先が並ぶ。緊急連絡網は経路である。誰から誰へ伝えるかの順番と、判断を出す人が誰かを示した図になる。
実務で困るのは、この2つを1枚にまとめてしまった書類である。経路の図に電話番号を書き込むと、順番を変えるたびに番号を書き写すことになる。逆に名簿だけを作って経路を決めていないと、いざというときに誰が最初に動くのかが分からない。
作る順番は、名簿が先である。連絡の付く手段を洗い出してから、経路を決める。経路を先に決めると、番号を持っていない人が途中に入ってしまい、そこで止まる。
そしてもう1つ、経路の形そのものを見直すかどうかも同時に考えたい。名簿の順に電話をかけていく直列の形は、途中の1人が不在だとその先へ届かない。一斉に届く手段を持っているなら、連絡簿は名簿としてだけ整え、経路は簡単にできる。作り方の手間が半分になるのはここである。
載せる項目は、緊急のときに使うものだけに絞る
様式を探すと、項目が並んだ表が見つかる。全部を埋める必要はない。集めた項目は、そのあと守る対象になるためである。
必ず要るのは4つである。氏名、日中に繋がる連絡先、所属を示す区分、そして本人に繋がらないときの連絡先。この4つで、緊急の連絡はほぼ回る。
住所は、目的で判断する。安否を確かめに人が向かう可能性のある町内会や自治会では要る。連絡だけを流す部活や教室では、住所がなくても困らない。使わない項目を集めると、守る手間だけが増える。
勤務先の電話番号は、平日の日中に子どもに関する連絡を取る必要がある団体では効く。ただ、勤務先が変わったときに更新されにくい項目でもある。書いてもらう欄には、変わったときに知らせる先を添えておく。
血液型や持病は、慎重に扱う。個人情報保護委員会は、要配慮個人情報に当たるものとして人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実、そのほか政令で定めるものを挙げており、政令で定めるものには障害があることや健康診断その他の検査の結果、診療や調剤の情報が含まれると説明している。持病やアレルギーの記載は、この病歴に当たり得る項目である。全員に配る名簿の中に並べるのではなく、必要な人だけが確認できる形に分ける判断がある。
写真は、緊急連絡簿には要らない。顔が分かる名簿を作ると、配布の範囲を絞る必要が一段強くなる。子どもの写真を扱う場では、撮影の場で伝えるか参加の案内に一文添えるかで同意を取る手順を決めている会が多い。
無料の様式を使うときに、最初に直すところ
表計算やワープロの無料の様式は数多く配られていて、そこから始めるのは合理的である。ただし、そのまま使うと後から困る箇所がいくつかある。
1つめは、並び順である。配られている様式は氏名の順に並んでいることが多いが、緊急のときに引くのは所属の区分からである。班ごと、学年ごと、パートごとに分けた並びに直しておくと、探す時間が短くなる。
2つめは、1行に入れる情報の量である。1人の情報を横に長く並べた表は、印刷したときに欄が切れる。A4の紙1枚に何人分が収まるかを先に決めて、列を絞る。
3つめは、更新した日付の欄である。様式には入っていないことが多い。誰がいつ直したかが分からない名簿は、どちらが最新かで必ず揉める。表の隅ではなく、1行目に置いておく。
4つめは、ファイルの置き場所である。表計算のファイルが会長のパソコンの中にしか保存されていない状態は、緊急連絡簿として成立していない。会長が不在のときに誰も開けないからである。役員が複数で開ける場所に保存しておく必要がある。
5つめは、パスワードである。ファイルに鍵をかけたまま引き継いで、次の担当が開けなくなった名簿は実際にある。鍵をかけるなら、鍵そのものの引き継ぎ先も一緒に決める。
紙と画面の両方を用意する理由
緊急連絡簿を電子の形だけにするか、紙も作るかは、よく迷うところである。答えは両方である。ただし役割を分ける。
紙が要るのは、電源と通信が止まったときである。停電の中で表計算のファイルは開けない。紙の1枚は、そのときにだけ効く。持ち出せる場所に、1部だけ保管しておく。
画面の側が要るのは、日々の更新と共有のためである。紙だけにすると、1人が書き換えた内容が他の役員に伝わらない。結果として、複数の版が生まれる。
分け方を具体的に決めるとよい。正しい名簿は電子の側が持ち、紙は年に1回、決まった時期に印刷したものを保管用に置く。紙に手書きで修正を入れる運用にすると、その修正が電子の側に戻らないまま次の年を迎える。
保管する場所も決める。会館の鍵のかかる場所、学校の職員室、道場の事務机。誰でも手に取れる棚の上は避ける。そして、どこにあるかを役員全員が知っている状態にしておく。場所を知っているのが1人だけでは、その人が不在のときに機能しない。
紙の部数は、少ないほうがよい。役員10人に配ると、退任した人の手元に残り続ける。持ち出す必要のある人だけに絞り、何部作ったかを記録しておく。
誰に配り、誰に見せるかを先に決める
緊急連絡簿でいちばん揉めるのは、この点である。作る前に決めておかないと、完成したあとに配れなくなる。
判断の基準は、目的に照らして必要かどうかである。班長が班の中の連絡を担うなら、その班の分だけが要る。全員分の名簿を全役員に配る必要はない。範囲を絞ることが、いちばん確実な事故の防ぎ方である。
会員に配る名簿と、役員が持つ名簿を分けるのも1つの形である。会員に配る側は氏名と班だけ、役員が持つ側に連絡先を入れる。この形にすると、会員全員へ番号が行き渡ることを避けられる。
非営利の団体だから緩く扱ってよい、という考えは通らない。個人情報保護委員会は、法律における事業とは一定の目的をもって反復継続して遂行される同種の行為であって社会通念上事業と認められるものをいい、営利と非営利の別は問わないと説明している。そのうえで、非営利の活動を行っている団体であっても個人情報データベース等を事業の用に供している場合は個人情報取扱事業者に該当するとし、NPO法人や自治会・町内会、同窓会、PTAのほか、サークルやマンション管理組合なども該当し得るとしている。町内会の名簿も部活の名簿も、この枠の中にあるという前提で扱うのが安全である。
配るときの伝え方も決める。何に使う名簿で、いつまで持つのか、退任したときにどうするのか。この3つを1行ずつ添えて渡す。口で伝えただけでは、次の代に引き継がれない。
更新の回し方は、時期と担当を固定する
作った名簿が古くなるのは、更新の仕組みを決めていないからである。気づいた人が直すという形は、誰も直さないという意味になる。
年に1回、時期を固定する。年度の切り替わりに合わせる会が多い。会員が入れ替わる時期に名簿の確認を重ねると、作業が1回で済む。
担当も固定する。名簿の担当を1人決め、その人が1年間持つ。複数人が同じファイルを直す形にすると、上書きが起きる。直せる人を絞って、他の役員は変更を伝える側に回る。
年の途中の変更は、届け先を1つにする。電話番号が変わった会員が、班長に言う人と会長に言う人に分かれると、片方が名簿に届かない。誰に伝えればよいかを、名簿の1行目に書いておく。
そして、確かめる機会を年に1回だけ作る。関西電力の防災の解説は、この点を次のように整理している。
緊急連絡網は、作成しただけでは十分に機能しません。実際の災害時に確実に運用できるかどうかは、平常時の訓練にかかっています。そのため、安否確認や緊急連絡の訓練を定期的に実施し、連絡網が正しく機能するかを確認することが重要です。 出典: sol.kepco.jp
団体の場合、訓練という言葉を重く受け取る必要はない。総会や大会の案内を名簿の手段で1回流し、届かなかった人を数えるだけで足りる。届かなかった人数がそのまま、名簿の古さを示す数字になる。
作る手順を、5つの段に分ける
順番を決めておくと、途中で手戻りが起きない。5つの段に分けて進める。
第1段は、目的を1行で書くことである。何のために集める名簿なのかを決める。災害時の安否の確認、行事の中止の連絡、けがや体調不良のときの保護者への連絡。目的が違えば集める項目が違うので、ここを飛ばすと項目の議論が終わらない。
第2段は、項目を決めることである。第1段で書いた目的に照らして、使う項目だけを並べる。議論のときは、増やす提案ではなく減らす提案を歓迎する空気を作る。項目が多い名簿は、集める段階で回収率が落ちる。
第3段は、様式を作ることである。ここで初めて表計算を開く。列の順番、印刷したときの収まり、更新した日付の欄。前の節で挙げた直しどころを先に入れておく。
第4段は、集めることである。依頼の文面を作り、回収の締め切りを決める。ここに時間がかかるので、行事の予定と重ならない時期に置く。
第5段は、配ることである。誰にどの範囲を渡すかを決め、渡した記録を残す。ここまで終えて、ようやく名簿が使える状態になる。
この5段のうち、多くの会が省くのは第1段と第5段である。目的を書かずに項目を集め始め、作ったあとに配る範囲を決めていない。結果として、使いどころの分からない名簿が事務机の中に残る。
集めるときの依頼文で、回収率が変わる
名簿作りでいちばん時間を取られるのは、集める段である。ここを短くする工夫がある。
まず、何に使うかを最初の1行に書く。台風で行事を中止するときの連絡に使います、と書かれていれば、書く側は納得して埋める。目的が書かれていない依頼は、後回しにされる。
次に、書いてもらう欄を絞る。任意の欄には任意と明記する。全部が必須に見える様式は、埋めるのに時間がかかると判断されて後回しになる。
3つめに、締め切りを具体的な日付で書く。なるべく早く、という書き方では回収されない。締め切りの後に何が起きるかも添えておく。その日までに出ていない人は昨年の内容をそのまま使います、と書くと、直したい人だけが動く。
4つめに、変更があったときの届け先を同じ紙に書く。集めるときに書いておけば、翌年の更新のときに改めて案内する必要がない。
5つめに、書き方の見本を1人分だけ載せる。書式の揺れが減り、打ち直す作業が消える。氏名の欄に旧姓を併記する人、電話番号にハイフンを入れる人と入れない人。見本があると、そこが揃う。
回収の方法も、複数を用意する。紙で出す人、画面から入力する人、役員に口で伝える人。どれか1つに絞ると、その方法が苦手な人の分が集まらない。集める窓口が複数でも、たまる先が1か所であれば担当は困らない。
よく起きる失敗と、その直し方
同じ失敗が繰り返されている。先に知っておけば避けられる。
1つめは、最新がどれか分からなくなることである。ファイルの名前に日付が入っていない、複数の役員がそれぞれの控えを持っている、紙に手書きの修正が入っている。直し方は、正しい名簿を1か所に決めて、他はすべて控えとして扱うことである。控えには、いつ時点のものかを書いておく。
2つめは、退任した役員の手元に残ることである。紙で配った名簿は、回収しない限り残る。直し方は、配る部数を絞り、渡した記録を残し、退任のときに返してもらう手順を決めることである。返ってこないことを前提に、そもそも渡す範囲を狭くしておくほうが確実である。
3つめは、抜けた会員が残り続けることである。連絡の宛先からは外したのに名簿には残っている、あるいはその逆。直し方は、外す作業を1か所で済む形にすることである。名簿と連絡の宛先が同じ場所にあれば、この食い違いは起きない。
4つめは、緊急のときに開けないことである。鍵をかけたファイル、1人のパソコンの中、電源が要る形。直し方は、紙を1部だけ持ち出せる場所に保管し、電子の側は複数の役員が開ける場所に保存することである。
5つめは、更新が1年以上されないことである。気づいた人が直す形にしていると、誰も直さない。直し方は、時期と担当を固定することである。年度の切り替わりに、名簿の担当が確認を出す。この1行を会の申し合わせに入れておく。
連絡が付かない人を減らすための工夫
名簿を整えても、届かない人は残る。ここを減らす工夫を挙げる。
1つめは、連絡の手段を2つ持ってもらうことである。電話番号だけの人には、もう1つ届く先を聞いておく。家族の番号でも、同じ班の隣の人でも構わない。1つしかない人は、その1つが変わった瞬間に繋がらなくなる。
2つめは、届かなかった記録を残すことである。行事の案内を出したときに、返事が来なかった人の名前を書き留める。3回続けて返事がない人は、連絡先が古い可能性が高い。名簿を全部確認するのではなく、この数人だけを確かめる。
3つめは、年配の会員に新しいIDとパスワードを作らせないことである。すでに端末に入っている手段を使うほうが、参加の率が高い。覚えることが増えると、そこで止まる人が出る。
4つめは、参加しない人の受け持ちを決めることである。どの手段を選んでも、入らない会員は残る。その人に紙か電話で届ける係を先に決めておく。全員が入ることを前提にした運用は、いちばん助けが必要な人を取りこぼす。
5つめは、集まりの場で確かめることである。総会や大会の受付で、名簿の自分の行を見てもらい、違っていたらその場で直してもらう。紙を配って持ち帰らせる形より、回収率が高い。会員が集まる機会を、名簿の更新に使える機会として数えておくとよい。
表計算で作り続けるか、別の形に移すかの判断
無料で始められるという点で、表計算の様式は強い。どこまでそれで足りるのかを、数で線を引いておく。
会員が50人までで、年に1回しか更新しない団体なら、表計算のままで足りる。1人の担当が年度末に直し、印刷して保管する。この回し方で回っているなら、変える必要はない。
100人を超えると、印刷したときの枚数が増え、班ごとに切り出す作業が発生する。ここで、抽出の操作を覚えている人が1人しかいないという状態になりやすい。その人が退任すると、班ごとの名簿が作れなくなる。
年に数回以上の更新が発生する団体では、別の問題が出る。複数の役員が同じファイルを直そうとして、上書きが起きる。誰かの修正が消えたことに、次の更新まで気づかない。
そして、連絡の手段が名簿の外にある構造そのものが、手間の元になる。名簿を直しても、連絡先の一覧は別に直す。ここを2回やっている会は、片方が必ず古くなる。
移す判断の目安は3つである。会員が100人を超えたか、年に3回以上の更新が発生しているか、名簿を直せる人が1人しかいないか。1つでも当てはまるなら、名簿と連絡が同じ場所にある形を検討する時期である。
移すときは、全部を一度に移さない。まず連絡の手段だけを移し、名簿は表計算のまま残す。連絡が届くようになってから、名簿の側を寄せる。一度に変えると、役員も会員も覚えることが増えて止まる。
学校や職場の名簿と、団体の名簿を混ぜない
同じ人の情報を扱っていても、持ち主が違えば別の名簿である。ここを混ぜると、責任の所在が分からなくなる。
学校が持つ児童の連絡先と、PTAが持つ会員の連絡先は別のものである。学校から渡された一覧をPTAの名簿として使う形は、渡した側の想定を超えることがある。使い道が広がるときは、渡した側に確かめるのが筋である。
職場の緊急連絡網と、その職場の有志のサークルの名簿も別である。サークルの連絡に職場の名簿を使うと、参加していない人の情報まで扱うことになる。
分けておく利点は、範囲が明確になることである。何に使う名簿かが決まっていれば、集める項目も配る相手も自然に絞れる。逆に、1つの名簿を複数の目的に使い回すと、どの目的にも合わない項目構成になる。
保管の場所も分ける。同じ場所に置くと、どちらの名簿かを判別できないまま引き継がれる。名簿の1行目に、どの団体のものでいつ時点のものかを書いておくと、この混同が起きない。
学校の側で使われている形と、PTAが持つ範囲の分け方は学校での使われかたに整理してあるので、どこまでを学校が持ちどこからを団体が持つかを決める材料になる。
事故が起きたときに、何をすることになるか
名簿を扱う以上、漏らしたときの手順も知っておいたほうがよい。知っていれば、防ぎ方のほうに手が回る。
個人情報保護委員会は、漏えい等の報告が義務付けられる場合を整理して公開している。要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい、不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい、不正の目的をもって行われたおそれがある行為による漏えい、そして本人の数が1,000人を超える漏えいの4つが挙げられている。不正な目的で行われたおそれがある場合の報告は、発覚日から60日以内とされている。
団体にとって現実的なのは、送り間違いである。同じ委員会は例の1つとして、会員にメールマガジンの配信を行う際、本来メールアドレスをBCC欄に入力して送信すべきところをCC欄に入力して一括送信した事例を挙げている。宛先を自分で並べて送る形を続けている限り、この事故はいつでも起きる。
紙の名簿を落とす、鍵をかけていないファイルを添付して送る、退任した役員の端末に名簿が残り続ける。起きているのはこの種類である。防ぎ方は、持ち出す部数を絞り、宛先を自分で並べる形をやめ、名簿を置いた場所を1か所にまとめることである。
会の中で誰が対応するかも、先に決めておく。気づいた人が会長に伝え、会長が判断する。この1行があるだけで、対応が数日早くなる。
そのうえで、記録を残す。いつ、どの範囲の情報が、誰の手元に渡った可能性があるのか。この3点を書き留めておくと、相談する先に持っていける材料になる。記憶だけで説明しようとすると、範囲を広く言いすぎるか狭く言いすぎるかのどちらかになる。
防ぐ側の作業に戻ると、効くのは範囲を絞ることだけである。暗号化の設定や複雑な鍵よりも、そもそも渡す部数と載せる項目を減らすほうが確実に効く。手元にない情報は漏れない。名簿の作り方を決める段で項目を減らしておくことが、事故の対策としても最も強い。
名簿を持たせる道具を選ぶときのポイント
表計算のファイルで作るのが最も手軽だが、人数と更新の頻度が増えると別の手段が要る。選ぶときに見る点を挙げる。
1つめは、名簿と連絡の手段が同じ場所にあるかである。別々だと、会員が増えたときに2か所を直すことになり、片方が古くなる。名簿がそのまま送信先になる形なら、この食い違いが起きない。
2つめは、誰が見られるかを人ごとに分けられるかである。役員だけが連絡先を見られて、会員には氏名と班だけが見える。この分け方が仕組みの側でできると、名簿を2つ作る手間がなくなる。
3つめは、会員自身が自分の情報を直せるかである。番号が変わった人が自分で直せる形なら、担当の作業が消える。紙の届け出を受けて誰かが打ち直す形は、そこが詰まる。
4つめは、抜けた人を外したときに、すべての場所から消えるかである。連絡の宛先からは外れたのに名簿には残っている状態は、事故の原因になる。
すでに使われている手段ごとの向き不向きは、機能を並べたページで確かめられる。会員全員が入っている前提で始める形と、そこで足りなくなる場所はLINEグループとの比較に整理してある。運営の道具をまとめて持つ形はBANDとの比較で仕様ごとに比べられる。会員以外の目に触れる危険をどう避けるかという観点では、公開の範囲を人ごとに設定できるかどうかを先に確かめておくとよい。
緊急連絡簿を、引き継げる形に畳む
ここまでを踏まえると、緊急連絡簿の出来を測る基準は3つに絞れる。
1つめは、いま連絡が付かない会員が何人いるかである。名簿の行数ではなく、実際に届く人数が名簿の質である。年に1回の確かめで、この数字を出す。
2つめは、この名簿を開ける役員が何人いるかである。1人しか開けない名簿は、緊急の場面で使えない。2人以上が、場所と鍵の両方を知っている状態にする。
3つめは、来年の担当に渡すものがいくつあるかである。名簿のファイル、印刷した紙、連絡の手段、過去のやりとり。これが4つに分かれているなら、引き継ぎの資料を作るところから時間がかかる。メンバー以外は見られない場所に、名簿と連絡と予定がまとまっていれば、渡すのはアカウントの管理だけになる。
団体の種類で、重い場所は変わる。町内会は住所を含む名簿を扱い、班ごとの配布の範囲を決める必要があるため、そこが最も重い。事情に沿った形は町内会での使われかたで確かめられる。PTAは役員の任期が1年で回るので、引き継ぎそのものが本題になる。こちらはPTAでの使われかたに整理してある。サークルは会員の出入りが多く、抜けた人の情報を外す作業が毎月発生する。その形はサークルでの使われかたにまとめてある。教室や道場では、保護者の連絡先と生徒の情報を分けて持つ必要が出る。そこは教室での使われかたにある。配る範囲や更新の頻度のように役員会で必ず聞かれる点はよくある質問に集めてあるので、会議の前に読んでおくと答えられる質問が増える。
項目を減らし、配る範囲を絞り、更新の担当を1人に決める。この3つを先に決めてから様式を埋めると、作り直しが起きない。書式の良さで決まる書類ではなく、決め方で決まる書類である。
最後に1つ添えておく。緊急連絡簿は、使わずに済むのがいちばんよい書類である。だからこそ、作った直後の熱意が切れたあとに残る形にしておく必要がある。凝った様式や細かい項目は、次の担当が引き継ぐときの障害になる。列が少なく、開ける人が複数いて、更新の時期が決まっている名簿が、結果としていちばん長く使われる。
Q1. 緊急連絡簿に載せる項目は何が必要ですか?
氏名、日中に繋がる連絡先、所属を示す区分、本人に繋がらないときの連絡先の4つで、緊急の連絡はほぼ回ります。住所は安否を確かめに人が向かう団体では必要ですが、連絡だけを流す団体では不要です。使わない項目を集めると、守る手間だけが増えます。
Q2. 持病やアレルギーを書いてもらってよいですか?
個人情報保護委員会は要配慮個人情報に当たるものとして病歴を挙げており、持病やアレルギーの記載はそれに当たり得ます。全員に配る名簿に並べるのではなく、必要な人だけが確認できる形に分ける判断があります。集める前に、誰が見る情報なのかを決めておきます。
Q3. 町内会やPTAの名簿も個人情報保護法の対象ですか?
個人情報保護委員会は、営利と非営利の別は問わないとし、非営利の団体でも個人情報データベース等を事業の用に供している場合は個人情報取扱事業者に該当すると説明しています。NPO法人や自治会・町内会、同窓会、PTAのほか、サークルやマンション管理組合なども該当し得るとされています。
Q4. 無料の様式をそのまま使ってもよいですか?
使ってかまいませんが、並び順を所属の区分ごとに直し、更新した日付の欄を1行目に追加し、役員が複数で開ける場所に保存するところまでを先に済ませます。配られている様式は氏名の順で、更新の記録がなく、1人のパソコンに保存される前提になっているものが多いためです。
