避難所開設マニュアルを作るように言われて、まず困るのは分量です。市町村が公開している冊子は100ページを超えるものもあり、そのまま地域に配っても当日に読まれません。当日に使われるのは、鍵を誰が持っているか、最初に何をするか、誰に報告するかを書いた数ページだけです。この記事では、地域で作るマニュアルに何を書き残せば当日に機能するのかを、公的機関が示している目安と合わせて順に整理します。
最初に決まっていないと動けないのは、鍵と人
避難所の開設で最初に止まるのは、施設に入れないことです。指定されている避難所は学校の体育館や公民館が多く、夜間や休日は施錠されています。開ける役目が学校の職員だけに置かれていると、その人が被災して来られない場合に誰も入れません。
そのため多くの市町村では、施設の鍵を複数の経路で持つ形にしています。施設の管理者、市町村の派遣職員、そして地域の役員の3者が持つ形が一般的です。地域のマニュアルに書くべきなのは、この3者のうち誰が何番目に開けるのか、その人に連絡が取れなかったときは誰に回るのかという順番です。名前だけを書くと異動や引っ越しで使えなくなるため、役職と名前の両方を書き、更新する時期を決めておきます。
鍵を地域で預かる場合は、保管場所と持ち出す条件を書きます。役員の自宅で預かると、その家が被災したときに取り出せません。施設の敷地内に施錠できる箱を置いて、暗証番号を複数の役員が知っている形にしている地域もあります。どの形にするにしても、暗証番号や保管場所を書いた紙が1か所にしかない状態は避けます。
人の手配も同じ構造です。開設に必要な人数は、受付、案内、記録、外との連絡で最低4人と考えられています。この4人を役職で決めておき、来られなかったときに誰が代わるのかを書きます。当日に集まった人で分担すればよいという考え方は現実的ですが、集まった人がその場で役割を決める時間は、実際には取れません。先に紙に書いてあるものを読み上げるほうが早く動けます。
最初の30分で何をするか
開設の手順は、施設に入ってから使えるかどうかを確かめる作業から始まります。国が示している考え方も、この順番を最初に置いています。
避難所を開設するにあたっては、最初に施設の被害状況を把握したうえで、被災者を受入れられる状態か否かを確認する必要があります。次に、災害対策本部が各避難所の被害状況と避難者の人数を把握し、地域の中で避難所の数が足りているかを判断します。つまり、開設した地域の側から報告が上がらないと、市町村は次の手を打てません。
確かめる項目は5つに分かれます。建物の構造に被害がないか、建物の内部に危険な箇所がないか、敷地や外まわりに危険な箇所がないか、備蓄しているものが使える状態か、電気と水とガスと通信が使えるかです。建物の構造の判断は専門的になるため、地域のマニュアルでは「明らかな傾きや亀裂があれば使わない」という線までを書き、判断が付かない場合は市町村に連絡する形にします。
危険な箇所が見つかったら、その場所に立入禁止の表示を出します。この作業は忘れられやすく、避難者が入ってしまってから気づくことになります。表示に使う紙とテープを備蓄品の中に入れ、マニュアルの最初のページに「立入禁止の表示を先に出す」と書いておきます。
確かめ終わったら、結果を市町村の災害対策本部に報告します。報告する内容は、施設が使えるかどうか、受け入れられる人数の見込み、いま来ている人数、足りないものの4つです。報告の宛先と手段を書いておき、電話がつながらない場合の代わりの手段も書きます。電話とインターネットが同時に止まる状況は実際に起きるため、市町村が配備している無線の使い方を役員が知っているかどうかで、最初の1時間の動きが変わります。
熊本市避難所開設・運営マニュアルを、令和7年(2025年)7月に改訂しました。改訂版と新旧対照表を公開しますので、避難所運営の参考としてご活用ください。 出典: city.kumamoto.jp
市町村のマニュアルは、事前の準備編、開設と運営の編、そして様式集の3つに分かれている形が多く見られます。地域で作るときも、この分け方をそのまま借りると迷いません。事前に決めておくことと、当日に読むことと、書き込む紙を混ぜないことが要点です。
場所の割り振りは、開ける前に決まっている
避難所の運営で後から直せないのが、場所の割り振りです。いったん人が入って場所取りが始まると、あとから並べ替えることは実際には難しくなります。配慮が必要な人のためのスペースを事前に決めておかないと、後になって確保できません。
そのため、平時のうちに施設の平面図に線を引いておきます。書き込むのは、受付をどこに置くか、通路をどこに取るか、世帯ごとの区画をどの向きに並べるか、体調のよくない人のための部屋をどこにするか、授乳と着替えのための場所をどこにするかです。線を引いた図面を印刷して備蓄品と一緒に保管し、当日はその図面を壁に貼ってから受付を始めます。
区画の広さの目安として、国際的な基準では1人当たり最低3.5平方メートルの居住スペースが示されており、国のガイドラインもこの数字を引いて、開設時から間仕切りを設けて居住スペースを確保するよう促しています。体育館の広さを3.5で割れば、その避難所で無理なく受け入れられる人数が出ます。この数字を先に出しておくと、当日に「あと何人入れるか」を聞かれたときに即答できます。
間仕切りを入れるときに合わせて書いておくのは、見通しの確保です。世帯ごとに囲うとプライバシーは保てますが、中が見えない区画が並ぶと防犯の面で弱くなります。通路から人の動きが分かる高さにする、夜間の照明を通路側に置く、といった決め事をマニュアルに1行入れておきます。
寝る場所の改善も開設時の話として扱われています。床に長く寝ていると、血の流れが滞って起きる症状や、埃を吸い込むことによる体調の悪化が心配されるため、間仕切りと合わせて簡易のベッドを開設時から置けるようにすることが望ましいとされています。地域のマニュアルには、どこに何セット備蓄されているか、組み立てに何人必要かを書いておきます。組み立て方を当日に説明書を読んで覚えるのでは間に合いません。
トイレの数は、先に数えておく
避難所で最も早く問題になるのはトイレです。断水すると既設のトイレはすぐ使えなくなり、使えないまま人が入ると衛生の状態が一気に悪くなります。必要な数には公的な目安があるため、自分の避難所の数を先に数えておけます。
国のガイドラインは、国際的な基準に沿って次の目安を示しています。災害が起きた当初は避難者50人当たり1基、避難が長期化する場合には20人当たり1基、女性用と男性用のトイレの比率は3対1、トイレの平均的な使用回数は1日5回です。この4つの数字を使えば、自分の避難所で足りるか足りないかがその場で計算できます。
数え方は、施設の個室の数と、災害用のトイレの数を合わせた数で考えます。バリアフリーのトイレは、この数には含めず、避難者の人数や必要に応じて別に確保することが望ましいとされています。100人を受け入れる想定の避難所なら当初は2基、長期化すれば5基が目安になり、そのうち女性用が多くなる配分にします。既設の個室が3つしかない施設では、災害用のトイレを何基用意すれば届くかが具体的な数字になります。
携帯トイレの備蓄も同じ考え方で数えます。1人が1日5回使うとすると、100人で1日500回分です。何日分を地域で持ち、何日目から市町村の供給に頼るのかを決めておかないと、2日目に足りなくなります。備蓄の数量と保管場所は様式に書き込む形にして、点検した日付を毎年書き足します。
運用の決め事も先に書きます。掃除の当番をどう回すか、使用後の処理をどうするか、男女の表示をどう分かりやすくするか、夜間の照明をどうするかです。掃除の当番は当日に決めると引き受け手が出ないため、班ごとに回す形をマニュアルに書いておくほうが揉めません。
受付と名簿をどう作るか
受付は、避難所の運営の入口にあたります。ここで作る名簿が、食料の数、安否の問い合わせへの返事、在宅で避難している人への物資の配布の全部につながります。
書いてもらう項目は、世帯ごとの代表者の名前、世帯の人数と名前、住所、連絡先、自宅の被害の状況、体調や配慮が必要なことの6つが基本です。項目を増やすと受付が詰まり、入口に行列ができます。当日に必要な最小限だけを書いてもらい、詳しいことはあとから聞く形にしている運営が多いです。
名簿の扱いは、地域で決めておく必要があります。安否の問い合わせに答えるかどうか、答えるとしたら誰の判断で答えるかを、平時に決めておきます。当日に判断を求められると、その場の人が困ります。個人情報の扱いは市町村の条例によって違うため、地域のマニュアルには「市町村の担当課に確認した結果をここに書く」という形で欄を作り、確認した内容を書き込むやり方が現実的です。法の解釈を地域の判断で書き切ってしまうと、あとで食い違います。
受付の様式は紙で用意します。停電と通信の断絶が同時に起きる可能性があるため、最初は紙に書いてもらうのが確実です。書いてもらった紙を、あとで表計算ソフトに入力する手順まで書いておくと、数を数える作業が早くなります。入力を誰がやるのかを決めていないと、紙の束が積まれたまま3日目を迎えます。
受付には、書けない人への手当ても要ります。手が使えない人、日本語を読めない人、子どもだけで来た人がいます。代わりに書く役を1人決めておき、その人が座る位置を図面に書いておきます。
在宅避難と分散避難を含めた形にする
避難所に来た人だけを対象にしたマニュアルは、実際の災害では足りません。自宅が無事な人には在宅での避難を勧める市町村が増えており、物資の配布も避難所の外にいる人を対象に含める形が広がっています。国も在宅と車中泊の避難者への支援の手引きを別に出しています。
在宅で避難している人を運営の対象に入れると、決めることが3つ増えます。1つ目は、その人たちをどうやって把握するかです。受付の様式に「自宅で過ごすが物資を受け取りたい」という欄を作り、住所と人数を書いてもらう形が多く使われています。2つ目は、物資をいつどこで渡すかです。避難所まで取りに来てもらうのか、班長が届けるのかを決め、時間帯を掲示します。3つ目は、情報をどう届けるかです。避難所の掲示板だけに貼ると、在宅の人には届きません。
3つ目がいちばん難しいところです。掲示だけでは在宅の人に届かず、班長が1軒ずつ回ると人手が足りません。連絡の手段を平時から地域で1つにまとめておけるかどうかで、ここの手間が大きく変わります。ふだんから回覧板や連絡網として使っているものが、そのまま災害時の連絡経路になります。ふだん使っていない手段は、災害時にも使われません。
車中泊の避難者も同じ扱いです。駐車場のどこに停めてよいか、トイレをどこで使うか、物資をどこで受け取るかを先に決めておきます。体調を崩す人が出やすいことが知られているため、声をかけて回る役を決めておくことも書いておきます。
当日に使う道具を、様式にして備える
マニュアルが当日に使われるかどうかは、様式が用意されているかで決まります。文章で手順を書いた冊子は読まれませんが、書き込む欄のある紙は使われます。
用意しておくとよい様式は、受付の用紙、避難者の名簿、備蓄品の在庫表、施設の被害の確認表、災害対策本部への報告用紙、掲示用の連絡の用紙、物資の要請の用紙、トイレの点検表の8種類です。すべて印刷して、クリアファイルに入れて備蓄品と同じ場所に保管します。市町村が様式集を公開している場合は、そのまま使うのが確実です。地域で新しく作ると、市町村への報告の形が合わなくなります。
もう1つ効くのは、役割ごとの1枚紙です。最初にやることを書いた紙、役割の分担を書いた紙、受付の担当者用の紙、会場の設営の担当者用の紙、情報を集める担当者用の紙を、それぞれ1枚に収めて用意します。この形を取り入れた市町村では、手順書をチェックリストの形に変えて、災害の経験がない人が来ても運営できる体制を目指しています。読む冊子から、順に印を付ける紙に変えるという発想です。
紙以外に用意するものも書き出します。表示に使う紙とマジック、養生テープ、ホワイトボードか黒板の代わりになるもの、懐中電灯、電池、拡声器、そして携帯電話を充電する手段です。どれも当日に買いに行けません。年に1度の点検で数を確かめ、様式に日付を書き足します。
ペットを連れてきた人の扱いを先に書く
当日にもめる場面として必ず挙がるのが、ペットを連れてきた人の扱いです。決めていない避難所では、入口で足止めになり、受付の列が止まります。
市町村の方針は分かれています。すべての指定避難所で屋外への避難を受け入れ、一部の避難所だけ屋内への避難も認めるという形を取っている市もあります。屋外と屋内のどちらを認めるかが施設ごとに違うため、地域のマニュアルには「この避難所はどちらか」を最初に書きます。自分の避難所の扱いを役員が知らないまま当日を迎えると、その場の判断になり、あとで不公平だという話になります。
屋外で受け入れる場合に決めることは4つです。どこに置くか、雨と日差しを避けられるか、水をどこで飲ませるか、鳴き声への苦情が出たときに誰が対応するかです。置く場所は図面に書き込みます。渡り廊下の下や自転車置き場を使う例が多く見られます。
飼っている人に用意してもらうものも書き出します。ケージかキャリー、餌と水、食器、排泄物を持ち帰るための袋、飼育の記録や予防接種の記録です。これらは避難所に備蓄されていないため、平時のうちに各家庭で用意してもらう必要があります。回覧や連絡の場で年に1度伝える内容として、マニュアルの事前準備の側に書いておきます。
同行を断る形にする場合も、書かないという選択はしないほうがよいです。書いていないと、断る人が悪者になります。市町村の方針としてこう決まっている、この避難所は屋外まで、という事実を紙に書いておけば、受付の人はそれを読むだけで済みます。
感染症と体調を崩した人への備え
避難所は人が密に集まる場所です。体調を崩した人が出たときの手順を決めていないと、その人が一般の区画の中で過ごすことになります。
用意しておく手当ては5つに整理できます。避難してきた人の健康状態を受付で確かめること、十分な換気と間隔を取ること、掃除で衛生の状態を保つこと、熱のある人のための専用の場所を確保すること、そして保健の担当や医療機関と連絡が取れる形にしておくことです。この5つを1枚紙にして、受付と設営の担当者に渡します。
専用の場所は、図面に先に書いておきます。一般の区画から離れていて、出入口が別に取れて、トイレが近い部屋が向いています。学校の施設なら、保健室ではなく別の教室を使う形が多く見られます。保健室は手当てをする場所として空けておくためです。場所を当日に探すと、条件の合わない部屋が選ばれます。
掃除の割り振りも決めておきます。共用の場所を1日何回拭くか、誰が回すか、消毒するものをどこに置くかです。当番の形にしないと、気が付いた人だけがやる状態になり、続きません。トイレの点検表と同じ紙に、掃除をした時刻を書き込む欄を作っておくと、やったかどうかが見えます。
換気の記録も残す形にしておくと役に立ちます。窓を開けた時刻を1行書くだけで、苦情が出たときに説明できます。冬場は寒さとの兼ね合いになるため、何時に何分開けるかを決めて掲示する運用が現実的です。
配慮が必要な人と、福祉避難所への引き継ぎ
一般の避難所で過ごすのが難しい人がいます。介助が必要な人、医療の機器を使っている人、音や光に敏感な人、小さな子どもを連れた人です。この人たちをどこで受け止めるかを、開設の段階で決めておく必要があります。
国は福祉避難所の確保と運営についてのガイドラインを別に出しています。福祉避難所は市町村が指定するもので、地域の役員が当日に作れるものではありません。地域のマニュアルに書くべきなのは、一般の避難所の中に配慮のためのスペースを取ること、そして福祉避難所へ移る必要がある人を見つけたら誰に連絡するのかという2点です。
配慮のためのスペースは、図面に先に書きます。静かで、トイレが近く、床に座らずに済む椅子が置ける場所が向いています。場所取りが始まってからでは確保できないため、受付を始める前にそこだけ区切っておきます。区切るための表示も、備蓄品の中に入れておきます。
見つけたときの連絡先は、市町村の担当課になります。担当課の名前と電話番号を書き、つながらないときの代わりの手段も書きます。移動の手段を誰が用意するのかも、事前に確認して書き込みます。ここが空欄のままのマニュアルは多く、当日に電話を掛け続けることになります。
受付での見つけ方も書いておきます。書いてもらう用紙に、体調や配慮が必要なことを書く欄を作るだけでは足りません。書きたがらない人がいるためです。受付の担当者が顔を見て声をかける、付き添いの人に聞く、といった一言を紙に書いておくと、気づける確率が上がります。
訓練で確かめないと、書いたことは使えない
マニュアルを作ったあとにやるべきことは、訓練で通してみることです。読み合わせだけでは、抜けている部分が見つかりません。実際に鍵を開け、図面を貼り、受付を並べ、名簿を書いてみると、書いてあるのに動けない箇所が出てきます。
よく見つかるのは4つです。鍵を開ける人に連絡が付かない、図面の印刷が備蓄品の中に無い、受付の机を出す場所が通路をふさぐ、報告の宛先が異動で変わっている。どれも紙の上では気づけません。
訓練は年に1度で構いませんが、毎年同じ人が同じ役をやると、その人以外が動けない状態が残ります。役を入れ替えて回すことを、マニュアルに書いておきます。役員が代わるときに引き継ぐものが1つで済むかどうかで、その仕組みが続くかが決まります。
訓練の題材として、避難所の運営を机の上で疑似体験する図上訓練も使われています。避難してくる人の事情が書かれたカードを平面図に配置していく形のもので、参加者が話し合いながら判断を重ねる作りになっています。実際に体を動かす訓練と組み合わせると、当日に判断が必要になる場面を先に経験できます。
訓練のあとには、必ずマニュアルを直します。直さないまま次の年を迎えると、同じ場所で同じようにつまずきます。直した日付と直した箇所を1枚目に書き足していけば、それが引き継ぎの資料になります。
市町村のマニュアルを、地域の版に落とす手順
多くの市町村は、避難所の開設と運営のマニュアルを公開しています。地域で作るときに白紙から書く必要はなく、市町村の版を土台にして、自分の避難所の事情だけを足すのが最も早い道です。
手順は4つです。1つ目に、自分の避難所を所管している市町村の版を探します。防災の担当課のページに置かれていることが多く、改訂の年月が書かれています。国のガイドラインも数年ごとに改定されており、避難生活の環境を確保するための指針、運営のためのガイドライン、トイレの確保と管理のガイドラインが、いずれも近年まとめて改定されています。土台にする版が古いと、改定前の考え方が残ります。
2つ目に、市町村の版のうち、自分の避難所に当てはまらない部分を消します。市町村の版は市内のすべての避難所を対象に書かれているため、学校にしかない設備の話や、自分の地区に関係のない項目が含まれています。消す作業を先にやると、残った部分が薄くなり、地域で決めるべき箇所が見えます。
3つ目に、空欄を埋めます。埋めるのは、鍵を持っている人、報告の宛先、備蓄の保管場所、図面、役割の分担、連絡の手段です。この6つが埋まっていれば当日は動けます。埋められない項目は、市町村の担当課に確認して埋めます。確認した日付と相手の部署を書き添えておくと、次の役員が同じことを聞かずに済みます。
4つ目に、印刷して備蓄品の場所に置きます。データだけで持っていると、停電のときに読めません。印刷したものを1部、様式の束と一緒にクリアファイルへ入れます。あわせて、改訂した日付を表紙に書きます。日付のないマニュアルは、何年前のものか分からなくなり、次の人が使うのをためらいます。
この手順で作れば、地域で決める作業は実質的に6か所の空欄を埋めるだけになります。100ページの冊子を書く作業だと思われていることが、着手を遅らせている一番の理由です。
連絡の経路をどこに置くかで、当日の手数が変わる
避難所開設マニュアルを整えても、当日に人が集まらなければ動きません。集まるかどうかは、平時の連絡の経路がどこにあるかで決まります。
役員の連絡先が個人の携帯電話の中にしかない地域では、引き継ぎのたびに連絡網が組み直されます。組み直すときに漏れた人は、災害のときに呼ばれません。名簿と連絡の経路を地域で1か所に持てているかどうかが、開設に何人集まるかを左右します。連絡が流れていく性質と、あとから探せる性質がどこで分かれるのかはLINEグループとの比較で整理しています。参加者の出入りが多い場での事情はLINEオープンチャットとの比較で扱っています。
災害のときに効くのは、ふだん使っている経路です。防災のためだけに新しい手段を入れても、年に1度の訓練でしか開かれず、当日には思い出されません。回覧の代わり、行事の連絡、当番の割り振りといった日常の用事で毎週開かれている場所に、災害時の連絡も乗せるのが現実的です。班ごとの連絡と全体の連絡が分かれている運営の形は町内会での使われかたに、学校の施設を使う場合の連絡の流れは学校での使われかたにまとめています。
もう1つの判断材料は、見える範囲です。避難者の名簿や在宅で避難している人の一覧は、外に出てよい情報ではありません。連絡の場を作るときにメンバー以外は見られない状態が既定になっているかどうかで、名簿の扱いに気を使う量が変わります。誰でも入れる場所に名簿を保存する形にすると、運用の途中で必ず心配が出ます。
最後に、マニュアルそのものの保存先も決めます。役員の家のパソコンにしかない状態では、引き継ぎで失われます。地域で見られる場所に保存し、印刷したものを備蓄品と一緒に置く。この二重の備えが、次の役員に渡す形になります。運営の切り替えでよく出る疑問はよくある質問にまとめています。
Q1. 避難所開設マニュアルは、どのくらいの分量にすればよいですか?
当日に読む部分は数ページに収めます。鍵を開ける順番、最初に確かめる5項目、報告の宛先、役割の分担、場所の割り振りの図面だけを前に置き、詳しい説明は後ろに回します。市町村のように事前の準備編、開設と運営の編、様式集の3つに分ける形が扱いやすいです。
Q2. 避難所のトイレは何基あれば足りますか?
国のガイドラインは、災害が起きた当初は避難者50人当たり1基、長期化する場合は20人当たり1基、女性用と男性用の比率は3対1、平均の使用回数は1日5回という目安を示しています。施設の個室と災害用トイレを合わせた数で数え、バリアフリーのトイレは別に確保します。
Q3. 1人あたりどれくらいの広さを見込めばよいですか?
国際的な基準では1人当たり最低3.5平方メートルの居住スペースが示されており、国のガイドラインもこの数字を引いています。体育館の面積を3.5で割れば受け入れの目安が出ます。開設時から間仕切りを設けて世帯ごとの区画を作り、防犯のため通路からの見通しは残します。
Q4. 自宅で避難している人は、マニュアルに含めるべきですか?
含めてください。物資の配布は避難所の外にいる人も対象にする運用が広がっており、国も在宅と車中泊の避難者への支援の手引きを出しています。受付の様式に自宅で過ごす人の欄を作り、物資を渡す場所と時間、情報を届ける手段の3つを先に決めておきます。
