マンションの管理組合の会費をどう集めるかで悩んでいるなら、まず確かめておきたいことが1つあります。管理組合が集めるお金は、町内会や部活の会費と同じ性質のものではありません。任意に出してもらう会費ではなく、法律と管理規約に根拠を持つ債務です。ここを取り違えたまま集め方だけを変えようとすると、決議の取り方も、滞納したときの動き方も、全部ずれます。この記事では、現金の受け渡しを減らしていく順番を、法令と規約の根拠、全国調査の実数と合わせて並べます。
管理組合の会費は、集めるものではなく引き落とすもの
町内会の会費は、班長が各戸を回って現金で受け取る形がいまも残っています。管理組合はそうではありません。国土交通省が示しているマンション標準管理規約は、管理費等の徴収について、組合員が各自開設する預金口座からの口座振替によって管理組合の口座に受け入れる、と定めています。臨時に特別徴収する場合を別に定めるという但し書きはありますが、原則は口座振替です。
つまり、多くのマンションでは「現金の受け渡しを減らす」という課題が、すでに制度として片付いています。それでも会費まわりで手間が生まれているとしたら、詰まっているのは徴収そのものではなく、その周辺です。残高不足で落ちなかった住戸への連絡、名義が変わったときの振替依頼書の差し替え、臨時徴収の一時金、駐車場使用料の精算、収支報告をどう届けるか。この5か所に手間が集まります。
集め方を見直すなら、まず自分の組合がどの型かを確認してください。管理会社に管理を委託していて収納代行まで含まれているのか、自主管理で理事が口座を動かしているのか。前者なら理事会が触れるのは滞納の督促と決議の部分だけで、振替の仕組み自体は契約の中にあります。後者なら口座の名義、通帳と印鑑の保管、記帳のタイミングまで理事の手元にあります。同じ「会費を集める」という言葉でも、手を入れられる場所がまったく違います。
もう1つ、最初に押さえておきたいのは、管理組合が集めるお金は種類ごとに別の財布に入るという点です。管理費、修繕積立金、使用料。この3つは目的が違い、混ぜて経理してはいけないものが含まれます。集め方を変える話をするときも、この区別を保ったまま進める必要があります。
管理費と修繕積立金は、混ぜてはいけないと決まっている
標準管理規約は、修繕積立金について管理費とは区分して経理しなければならない、と定めています。区分経理は望ましい運用という水準の話ではなく、規約上の義務として書かれている項目です。理由ははっきりしていて、修繕積立金は取り崩せる用途が限定されているからです。計画的な修繕、不測の事故による修繕、共用部分の改良や変更など、あらかじめ挙げられた経費にしか充てられません。
一方の管理費は、日々の運営に消えていくお金です。管理員の人件費、公租公課、共用設備の保守維持費と運転費、備品費や通信費、共用部分の損害保険料、経常的な補修費、清掃費や消毒費やごみ処理費、委託業務費などが並びます。今年使い切ることを前提にした費用です。
この2つを1つの口座でまとめて動かしていると、修繕積立金を日常の支出に食われていることに気づけません。全国の管理組合を対象にした調査では、計画上の積立額に対して現在の積立額が不足しているマンションが36.6%ありました。不足の割合が20%を超えるマンションも11.7%あります。積立方式も、均等積立方式が40.5%に対して、将来の値上げを前提とする段階増額積立方式が47.1%で、完成年次の新しいマンションほど段階増額の割合が高くなっています。
集め方を変えるという話は、たいていこの数字とセットで出てきます。徴収の手間を減らしたいのか、足りない積立額を埋めたいのかで、やるべきことは正反対です。前者は事務の話、後者は決議の話です。理事会で議題に上げるときは、どちらを扱っているのかを最初に宣言してください。混ざったまま議論すると、事務の改善案に対して「値上げには反対」という反応が返ってきて、話が進まなくなります。
月額の相場を、全国の平均から見ておく
自分の組合の額が高いのか安いのかを判断する材料として、全国調査の平均値が使えます。駐車場使用料等からの充当額を含む月あたり戸あたりの管理費の総額は、平均で17,103円です。形態別では単棟型が17,214円、団地型が14,925円で、総戸数の規模が大きくなるほど1戸あたりは低くなる傾向があります。充当額を除いた管理費だけを見ると平均は11,503円で、単棟型が11,580円、団地型が10,394円でした。
修繕積立金のほうは、駐車場使用料等からの充当額を含む月あたり戸あたりの総額が平均13,378円、充当額を除くと13,054円です。管理費と合わせると、1戸あたり月3万円前後を管理組合に納めている計算になります。
この数字を役員会で示すときに注意したいのは、平均から離れていること自体は問題ではないという点です。エレベーターの基数、機械式駐車場の有無、24時間有人管理かどうかで、必要な額は大きく変わります。平均より高いことが無駄を意味するわけではありませんし、平均より安いことが健全さを意味するわけでもありません。安いということは、そのぶん将来の修繕で足りなくなる可能性があるということでもあります。
比較すべき相手は全国平均ではなく、自分のマンションの長期修繕計画です。計画に書かれた各年度の必要額に対して、いまの積立ペースが足りているか。全国調査では、修繕積立金の額を長期修繕計画で算出された必要額に基づいて決めた組合が78.4%まで増えています。決め方としてはこれが本筋です。
自治会費を一緒に引き落としているなら、確かめる点が4つある
マンション特有の論点で、いちばん見落とされているのがここです。管理組合と自治会や町内会は、法律上まったく別の団体です。管理組合は区分所有法に基づいて区分所有者全員で構成される強制加入の団体であり、自治会や町内会は居住者が任意に加入する地縁団体です。それにもかかわらず、管理費と自治会費を一体で引き落としている組合が実際にあり、標準管理規約のコメントはこの点に踏み込んで注意を書いています。
自治会費又は町内会費等を管理費等と一体で徴収している場合には、以下の点に留意すべきである。 ア 自治会又は町内会等への加入を強制するものとならないようにすること。 イ 自治会又は町内会等への加入を希望しない者から自治会費又は町内会費等の徴収を行わないこと。 ウ 自治会費又は町内会費等を管理費とは区分経理すること。 エ 管理組合による自治会費又は町内会費等の代行徴収に係る負担について整理すること。 出典: mlit.go.jp
この4点は、そのまま点検表として使えます。いま一体徴収している組合は、順に確かめてください。総会資料や重要事項説明で「管理費に自治会費が含まれます」と書いていないか。自治会に入らないと申し出た区分所有者から、それでも引き落としていないか。会計帳簿で自治会費が管理費と分けて記帳されているか。代行徴収にかかる事務の手間を、誰がどう負担すると整理してあるか。
引っかかった項目があるなら、集め方を変える機会にまとめて直すのが早いです。実務的には、自治会費だけを別の振替に分ける、あるいは自治会側の口座へ直接納めてもらう形に移す組合が多いです。移すときに必ず出る質問は「自治会に入らない人が出て、行事が回らなくなるのでは」というものですが、そこは自治会側で判断することであって、管理組合が徴収を続ける理由にはなりません。役員会でこの整理をしておくと、あとから「加入を強制された」という苦情が来たときに、組合として説明できる状態になります。
滞納が起きたときの順番は、法律で先に決まっている
会費の集め方を考えるうえで、町内会と決定的に違うのがここです。管理費等の滞納は、単なる未納ではなく債権の不履行として扱えます。区分所有法は、管理者や管理組合法人が職務や業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権について、その区分所有者の区分所有権と建物に備え付けた動産の上に先取特権を有すると定めています。しかもこの先取特権は、優先権の順位と効力について共益費用の先取特権とみなされます。
さらに強いのが次の条文です。この債権は、債務者である区分所有者の特定承継人に対しても行使できます。つまり、滞納したまま部屋を売却しても、買った人に請求が向かいます。標準管理規約にも同じ趣旨が置かれていて、管理組合が管理費等について有する債権は区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる、と書かれています。
督促の道具も規約に用意されています。期日までに納入しない組合員に対しては、未払金額に遅延損害金を加え、さらに違約金としての弁護士費用等と督促および徴収の諸費用を加算して請求できます。理事長は、理事会の決議により、管理組合を代表して訴訟その他の法的措置を追行できます。ここまでが規約に書いてあるので、滞納が出てから対応を考える必要はありません。
大事なのは、この手順を滞納が起きる前に理事会で共有しておくことです。輪番で理事が入れ替わる組合では、督促の経験が引き継がれません。何か月遅れたら文書を出すのか、誰の名前で出すのか、内容証明に切り替える基準は何か。この3点を細則か内規に落としておけば、その年の理事が判断に迷わなくなります。
滞納の実態は、思っているより多い
3か月以上の滞納住戸があるマンションは30.1%で、およそ3組合に1組合です。滞納がないと答えた組合は62.1%でした。築年数別に見ると差が大きく、昭和49年以前に完成したマンションでは48.4%に滞納住戸があります。古いマンションほど滞納が起きやすいという傾向は、はっきり出ています。
実際に取られている措置も調査されています。滞納者に対して行ったことのある措置は、文書等による催促が65.2%で圧倒的に多く、以下は支払請求等の訴訟が5.9%、少額訴訟が3.8%、競売が3.1%、強制執行が1.1%と続きます。特に措置を行っていない組合が6.4%ありました。
この並びが示しているのは、ほとんどの滞納は文書の催促で片が付くということです。裁判まで行くのは全体の1割に満たない。ということは、督促文書をいつ、どういう文面で、誰が出すかを整えておくことの費用対効果が非常に高いということでもあります。滞納の督促は、専門家に頼む前にやることがまだ残っている分野です。
もう1つ読み取れるのは、初動の遅れが被害を大きくするという点です。3か月分なら管理費と修繕積立金を合わせて10万円弱ですが、放置して2年に育てば70万円前後になります。督促を始める基準を「2か月連続で落ちなかったら文書」と決めておくだけで、育つ前に止まります。トラブルの調査でも、費用負担に係るトラブルは全体の24.2%で発生していて、その具体的な内容としては管理費等の滞納が20.2%を占めていました。
口座振替の穴は、5か所しかない
口座振替にしていれば手間がないかというと、そうではありません。穴は決まった場所に開きます。
1つ目は残高不足です。引落日に残高が足りないと振替が失敗し、翌月に2か月分をまとめて請求するか、個別に振り込んでもらうことになります。ここで連絡が必要になります。2つ目は名義変更です。売買、相続、金融機関の統廃合。どれも振替依頼書を出し直してもらう必要があり、この提出が遅れると数か月にわたって未納が続きます。
3つ目は口座の解約です。本人が引っ越して口座を閉じたのに、届出が出ていないと気づけません。4つ目は臨時徴収です。一時金や特別修繕費は毎月の振替に乗らないことがあり、振込か現金で集める場面が生まれます。5つ目は少額の精算です。駐車場を途中で解約したときの日割り、鍵の再発行費、集会室の使用料など、金額が小さいものは現金でやりとりされがちです。
つまり、現金の受け渡しを減らすという課題は、実際にはこの4つ目と5つ目の話です。臨時徴収は振込にして受付口座を明示する、少額の精算は翌月の管理費に加算するか減算する形で振替に寄せる。この2つを決めるだけで、理事が現金を預かる場面がほぼ消えます。現金を預かる人がいなくなると、集金袋の紛失や、誰が誰から受け取ったかが分からなくなる事故もなくなります。
使用料は、会計のどこに入るかを確認しておく
駐車場使用料は、管理組合の会計で扱いを間違えやすい項目です。標準管理規約は、駐車場使用料その他の敷地および共用部分等に係る使用料について、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てるものとする、と定めています。つまり使用料は、その施設の維持費に充てて、余った分は修繕積立金に回すという構造です。
これを知らずに、駐車場使用料を管理費の一部として日常経費に混ぜている組合があります。混ぜると2つの問題が出ます。1つは、修繕積立金に回るはずだったお金が日常経費で消えること。もう1つは、機械式駐車場の更新時期が来たときに、その財源をどこから出すのかが分からなくなることです。
集め方を見直すタイミングは、この整理をやり直す好機です。使用料を別項目として立て、収支報告書のどこに載せるかを決める。空き区画が増えて使用料収入が減っている組合では、この数字が長期修繕計画の前提を崩していることに気づけます。近年は車を持たない世帯が増えて、駐車場の稼働率が下がっている組合が珍しくありません。
値上げを決めるとき、必要な多数決はどれか
会費の額を上げる決議で、まず確認すべきは「規約に額が書いてあるか」です。標準管理規約は、管理費等の額について各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出すると定めているだけで、具体的な金額は別表や細則に置く形が一般的です。額そのものが規約本文に書かれている組合では、値上げが規約変更にあたり、より重い決議が必要になります。
普通決議は、総会で議決権総数の過半数を有する組合員が出席したうえで、出席組合員の議決権の過半数で決します。これに対して規約の制定、変更または廃止は、組合員総数の過半数であって議決権総数の過半数を有する組合員の出席を要し、出席組合員およびその議決権の各4分の3以上で決すると定められています。定足数の数え方も、決議に必要な割合も違います。
自分の組合がどちらなのかは、規約と別表を1度読めば分かります。総会の直前に気づいて招集をやり直す事態を避けるため、議案を作る段階で確認してください。なお標準管理規約は、管理費等に不足を生じた場合には、管理組合が組合員に対して負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることができるとも定めています。恒常的な値上げと、一度きりの不足補填では、使う条文が違います。
収支報告を、いつ誰にどう届けるか
会費を集める話の最後は、集めたお金がどう使われたかを返す話です。ここが弱いと、次の値上げが通りません。標準管理規約は、理事長が会計帳簿や什器備品台帳その他の帳票類を作成して保管し、組合員または利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは閲覧させなければならないと定めています。請求があれば見せる、という受け身の建て付けです。
実務では、受け身のままでは足りません。総会の議案書に載る収支報告書は年に1回きりで、しかも読まれない資料の筆頭です。月次または四半期で、管理費の収支と修繕積立金の残高だけを1枚にして掲示板に貼る組合は、値上げの議案が通りやすくなります。数字を見慣れている人が増えるからです。
届け方の選択肢は、掲示板、各戸への配布、郵送、そして連絡用のアプリやグループです。掲示板は見る人が限られ、配布は紙代と手間がかかり、郵送は費用が重い。連絡の経路を1つにまとめている組合では、収支の要約もそこに流せます。ただし会計資料には住戸番号と滞納の情報が絡むことがあるため、誰が見られるかを管理できる場所に保存することが前提になります。メンバー以外は見られない状態を保てるかどうかが、金銭の情報を扱えるかどうかの分かれ目です。
この観点で連絡手段を選び直すなら、いま使っているものと候補を横に並べて比べるのが早いです。無料で使える身近な道具との違いはLINEグループとの比較に機能ごとに整理してあります。参加者の名前や連絡先がどこまで見えるかという点で仕組みが違うLINEオープンチャットとの比較も、名簿を扱う組合には判断材料になります。
会計年度と総会の日程が、徴収の予定を先に決めている
会費まわりの事務は、思いつきで動かせません。年間の流れが規約で固定されているからです。標準管理規約は、理事長が通常総会を毎年1回、新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならないと定めています。総会を招集するには少なくとも会議を開く日の2週間前までに、日時、場所、目的および議案の要領を示して組合員に通知を発する必要があります。
この2つを逆算すると、徴収に関わる決定の締切が自動的に決まります。会計年度が3月末で終わる組合なら、通常総会は5月末までに開かなければなりません。議案書は遅くとも5月中旬には発送しなければならず、そこに載せる収支決算と次年度予算は、その前に監事の監査を通す必要があります。値上げや徴収方法の変更を今年度中に決めたいなら、逆算して2月から3月にかけて理事会で固めておく必要があるということです。
この段取りを知らずに、総会の2週間前に「やっぱり管理費の値上げも議案に入れよう」と言い出すと、招集通知を出し直すか、来年に回すかの二択になります。徴収の仕組みを変える提案は、年度の後半に入る前に理事会へ出してください。臨時総会を開けば別の時期でも決議はできますが、その招集にも同じ2週間前の通知が必要です。
なお、標準管理規約は収支決算の結果について、管理費に余剰が生じた場合はその余剰を翌年度の管理費に充当するとしています。余ったお金を修繕積立金に振り替えるには、そのための決議が別途要ります。年度をまたぐときの扱いも、規約の該当条文を1度読んで確認しておくと安心です。
連絡先が分からない住戸に、どう請求するか
徴収の話でいちばん詰まるのが、そもそも相手に連絡が取れない住戸です。全国調査では、所在不明や連絡先不通の住戸がないマンションが87.7%で、0%超から20%までの住戸がある組合が3.3%でした。数としては多くありませんが、1戸でも発生すると事務が止まります。
標準管理規約は、招集通知の宛先について、組合員が届出をしたあて先に発するものとし、届出のない組合員に対しては対象物件内の専有部分の所在地あてに発するとしています。つまり届出がないなら、その部屋あてに送ればよいという建て付けです。届いていなくても、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす扱いが区分所有法にも置かれています。
さらに、海外に住む区分所有者のために国内管理人の届出の仕組みが用意されていて、届出があればその国内管理人あてに通知を出します。所有者不明の専有部分については、所有者不明専有部分管理人あてに出すことになります。督促の文書も、この宛先の順番に従って出せば、少なくとも組合として手続を尽くしたことになります。
現実的な対応としては、まず組合員名簿の届出を集め直すことが先です。名簿が更新されていない組合ほど、この問題が大きくなります。後述する名簿の確認義務と合わせて、年に1度は宛先の棚卸しをしておくと、いざ請求が必要になったときに動けます。
役員が1年で替わる前提で、事務を組む
管理組合の会費の事務が引き継がれない最大の理由は、役員の任期の短さです。全国調査によると、役員の任期は1年が57.1%、2年が38.1%で、3年以上はわずか1.2%でした。しかも役員の選び方は順番による輪番が78.3%を占めます。つまり、多くの組合では毎年、会計の経験がない人が会計担当理事になります。
この前提を受け入れると、事務の設計方針が決まります。属人的な工夫を積み上げるのではなく、誰がやっても同じ結果になる形に落とすことです。督促を出す基準を月数で決める、収支報告の様式を固定する、振替依頼書の保管場所を1つに決める、連絡の経路と管理者の権限を年度の切り替えで移す。この4つを文書にしておけば、引き継ぎの説明が1回で済みます。
将来への不安として管理組合が挙げた項目も、この文脈で読めます。区分所有者の高齢化が57.6%、居住者の高齢化が46.1%、修繕積立金の不足が39.6%でした。外部の専門家を役員に迎えることを検討している、または将来必要になれば検討したいという組合は34.6%あり、その理由は高齢化が42.7%、役員のなり手不足が42.3%です。担い手が細っていく前提のもとで、事務を軽くしておくことは、値上げと同じくらい重要な備えになります。
徴収の記録と、連絡の経路は分けて考える
最後に、集め方を変えるときに混同しやすい点を整理します。徴収の記録と、連絡の経路は別のものです。
徴収の記録は、誰がいくら納めたかという台帳です。これは会計の領域で、管理会社に委託しているなら委託先の帳票、自主管理なら会計担当理事の手元にあります。個人が特定できる金銭情報なので、閲覧できる人を絞る必要があります。
連絡の経路は、引き落としの日程、臨時徴収の案内、収支の要約、督促の一次連絡といった情報を届ける道です。こちらは記録より広い範囲に届ける必要があり、返信を受けられる必要もあります。
この2つを同じ場所に置こうとすると、必ずどちらかに無理が出ます。台帳を全員に見える場所に置けば個人情報の問題になり、連絡を会計担当だけが見られる場所に保存できば誰にも届きません。分けたうえで、連絡の経路のほうを整理するのが順番として正しい。会計の台帳は年度ごとに閉じて保管する性質のもので、頻繁に触るものではありません。対して連絡の経路は毎月動きます。手を入れて効果が出るのは、動いているほうです。台帳の様式を作り直すより先に、引き落としの案内と収支の要約が全戸に届いているかを確かめてください。
とりまとめる立場で見たときの本当の関門は、来年の理事にこれを引き継げるかどうかです。任期1年で入れ替わる組合では、引き継ぐものが多いほど落ちます。会費まわりで引き継ぐべきものは、振替依頼書の保管場所、督促の基準、収支報告の様式、そして連絡の経路の管理権限。この4つに絞れているかを、年度末に確認してください。他の団体がどう畳んでいるかは町内会での使われかたに、金銭と連絡を分けて運用している例が載っています。導入前に出やすい疑問はよくある質問にまとめてあります。
Q1. マンションの管理費は現金で集めてもよいのですか?
標準管理規約は、管理費等を組合員の預金口座からの口座振替で管理組合の口座に受け入れることを原則としています。臨時に特別徴収する場合は別に定めるとされていますが、毎月の管理費と修繕積立金を現金で集める運用は想定されていません。現金の受け渡しが残っているなら、臨時徴収と少額精算の2か所を先に見直してください。
Q2. 管理費を滞納している住戸には、どこまで請求できますか?
規約に基づき、未払金額に遅延損害金を加え、違約金としての弁護士費用等と督促や徴収の諸費用を加算して請求できます。区分所有法では管理組合の債権に先取特権が認められ、滞納したまま部屋を売却しても買主である特定承継人に請求できます。実際には全国調査で65.2%の組合が文書での催促にとどまっており、多くは訴訟前に解決しています。
Q3. 管理費と自治会費を一緒に引き落としても問題ありませんか?
一体徴収そのものが直ちに違法になるわけではありませんが、標準管理規約のコメントは4つの留意点を挙げています。自治会への加入を強制しないこと、加入を希望しない人から徴収しないこと、自治会費を管理費と区分経理すること、代行徴収の事務負担を整理することです。この4点を満たしていないなら、徴収を分ける方向で見直してください。
Q4. 管理費の値上げには、どのくらいの賛成が必要ですか?
額が規約本文や別表に書かれていて変更が規約変更にあたる場合は、組合員総数の過半数かつ議決権総数の過半数の出席のもとで、出席組合員および議決権の各4分の3以上が必要です。細則や総会決議で額を定めている場合は普通決議で、出席組合員の議決権の過半数です。議案を作る前に、自分の組合の規約がどちらの形かを確認してください。
