マンションの管理組合で回覧板をやめようという話が出ると、たいてい途中で止まります。理由は「高齢の方が困る」ではなく、回っているものが1種類ではないからです。管理組合が出す掲示、管理会社が出す点検の案内、自治会から預かった行政の配布物。この3つが1つのファイルに束ねられているせいで、どれを電子にしてよいのかが判断できなくなります。ここでは、回っているものを分解して、紙をやめてよい順番を決める手順を示します。
マンションで回っているものは3系統ある
まず、いま回覧板に挟まっている紙を全部抜き出して、机の上に並べてください。ほぼ間違いなく、出どころの違う3つの系統に分かれます。
1つ目が、管理組合が自分で作って出しているものです。理事会の報告、総会の案内、工事の説明会の告知、共用部分の使い方についてのお願い、防災訓練の案内。これは管理組合が発信者なので、出し方も含めて自分たちで決められます。
2つ目が、管理会社が作って出しているものです。消防設備の点検、貯水槽の清掃に伴う断水、エレベーターの法定点検、給排水管の高圧洗浄、植栽の剪定。日付と時間帯が入っていて、住戸内に立ち入る作業のときは在宅の依頼が付きます。これは委託契約に基づいて管理会社が実施する業務の一部で、配布の方法まで含めて仕様書に書かれていることがあります。勝手にやめると、契約の履行が確認できなくなります。
3つ目が、外から預かったものです。自治会や町内会の回覧、市区町村の広報誌、社会福祉協議会の募金の依頼、消防団や交通安全協会からの案内。これは管理組合が作ったものではありません。回すか回さないかを管理組合の判断だけで決められない場合があります。
この3系統を分けずに「回覧板を廃止するか」を議題にすると、議論が噛み合いません。1つ目は管理組合の裁量で決められ、2つ目は管理会社との合意が要り、3つ目は自治会や行政との関係が絡みます。決められる範囲が違うものを、同じ議案にまとめないでください。
分解してみると、実は1つ目の分量が全体の3分の1もないという管理組合が多くあります。自分たちで決められる部分が少ないのに、廃止の是非だけを総会に諮っても、否決される確率が上がるだけです。
法律が「掲示」に効力を与えている場所がある
紙をやめるときに最初に確認すべきなのが、建物内の掲示板です。区分所有法は、掲示という行為そのものに法的な効果を与えている条文をいくつも持っています。ここは電子に置き換えて済ませられる場所ではありません。
まず、集会の招集通知です。
建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。 出典: laws.e-gov.go.jp
規約に定めがあれば、掲示が通知の代わりになり、掲示した時点で到達したとみなされます。逆に言えば、この掲示をやめると、規約でこの方法を採用している管理組合は通知の手段を1つ失います。
次に、規約の保管場所です。規約は管理者が保管しなければならず、その保管場所は建物内の見やすい場所に掲示しなければならないと定められています。これは義務です。掲示板から剥がしてはいけません。
3つ目が、賃借人など占有者に対する掲示です。集会を招集する者は、招集の通知を発した後遅滞なく、集会の日時、場所、会議の目的たる事項、議案の要領を建物内の見やすい場所に掲示しなければならないという定めがあります。賃借人には議決権がありませんが、使用方法に関わる議案では意見を述べる権利があり、その機会を知らせるための掲示です。
つまり、掲示板は「紙の一種」ではなく、法律上の到達の場所です。デジタルに移すのは、掲示板の外にあるもの、つまり各戸に配っている紙のほうです。この線引きを最初に決めておくと、議論が短く済みます。
回覧板が止まるのは、いつも同じ4か所
紙を回す方式が破綻する場所は決まっています。切り替えの理由を総会で説明するときは、感覚ではなくこの4つを具体的に挙げてください。
1つ目が、留守の住戸です。出張、入院、長期の帰省。次の住戸へ渡す人が不在だと、そこで丸1週間止まります。急ぎの案内が入っていても、止まっている間は誰にも届きません。
2つ目が、貸し出されている住戸です。賃貸住戸が1戸もないマンションは12.8%しかなく、賃貸戸数の割合が20%を超えるマンションが15.5%あるという調査結果があります。賃借人は管理組合の構成員ではないので、回覧の輪に入れるかどうかの整理が必要です。入れないと使用ルールが伝わらず、入れると区分所有者向けの内容まで見えてしまいます。
3つ目が、住んでいない区分所有者です。部屋を人に貸している人、相続で持っているだけの人、遠方に転居した人。建物内を回るものは、この層には構造的に届きません。2026年4月1日に施行された改正では、国内に住所や居所を持たない区分所有者が国内管理人を選任できる制度も新設されました。海外在住の所有者がいる管理組合は、届け先の受け皿を先に整えてください。
4つ目が、単身で暮らす高齢の居住者です。マンションの世帯主の年齢は60歳代が最も多く、70歳以上の割合は前回調査の22.2%から25.9%へ増えています。手渡しでの受け渡しが負担になり、玄関先で長く立ち話になる、あるいは受け取ったまま止めてしまう。どちらも起きます。
この4つのうち3つは、紙をどれだけ丁寧に回しても解決しません。届かない相手が構造的に存在するからです。
もう1つ、数字として見落とされやすいのが空室です。3か月以上の空室が1戸もないマンションは55.4%で、残りの管理組合には回覧が必ず止まる住戸があります。空室は前回調査の47.9%から増えており、回覧の輪が切れる箇所は減っていません。組を作り直すたびに空室を飛ばす作業が発生し、その組み替えを誰が管理しているのかが曖昧になっていきます。順番を書いた紙が2年前のままというのは、よくある状態です。
紙をやめる順番を決める。全部を一度にやめない
一度に全部やめようとすると、必ずどこかで穴が空きます。1年かけて4段階で移すのが現実的です。
第1段階でやめるのは、期限のない告知です。防災訓練の案内、共用施設の使い方のお願い、管理組合からの季節の連絡。これらは届かなくても直ちに誰も困りません。電子で先に出し、掲示板にも同じものを貼り、紙の配布だけをやめます。
第2段階が、理事会だよりや議事の報告です。読む人は限られていますが、読みたい人には確実に届く必要があります。電子で配信し、希望する住戸にだけ紙を配る形に切り替えます。ここで「紙が要る人」の実数が把握できます。多くの管理組合で、全戸の1割前後に収まります。
第3段階が、管理会社が出す点検や工事の案内です。これは管理会社との調整が要ります。委託契約の仕様書に配布方法が書かれているなら、そこを更新してもらう必要があります。日付と在宅の依頼が入るものは、電子と紙の両方で出す期間を長めに取ってください。
第4段階が、総会の招集通知と議事録です。ここは最後です。法律上の通知の効力に関わるので、規約の定めを確認し、必要なら規約の変更を経てから移します。規約の設定、変更、廃止は、区分所有者の過半数かつ議決権の過半数を持つ人が出席したうえで、出席した区分所有者と議決権の各4分の3以上の多数が要ります。1回の総会で決めるつもりなら、その前年から説明を始めてください。
外から預かった配布物は、この4段階の外です。次の節で別に扱います。
配る手間を、実際の作業時間で数えておく
切り替えを総会に諮るとき、「手間が減ります」という説明だけでは票が動きません。いま何時間かかっているのかを数えて、議案書に載せてください。数字が出ると、反対していた人の理由が変わります。
数えるのは4つの工程です。1つ目が原稿を作る時間、2つ目が印刷して部数をそろえる時間、3つ目が仕分けと投函または回覧板への差し込み、4つ目が止まっている住戸への催促です。
100戸のマンションで、月に1回の理事会だよりを配る場合を考えます。原稿の作成が1時間、印刷が30分、100部を階ごとに仕分けして投函するのが2人がかりで1時間、合わせて3時間半程度です。これが年12回で、42時間になります。理事が1年交代なら、任期中にこの作業が丸ごと1人分の負担として乗ります。
回覧板の形式にすると投函の手間は減りますが、代わりに止まった住戸を追う作業が増えます。10組に分けて回して、1組でも止まれば、その組の残り全員に情報が届きません。1週間で1周する想定が、2週間になることも珍しくありません。
印刷の実費も出しておいてください。1枚あたり数円でも、100戸に年12回配れば紙とトナーだけで数千円から1万円台になります。管理費から出ている費用なので、収支報告に載っている数字を拾えば根拠として使えます。
この作業量は、理事の交代のしやすさにも直結します。外部の役員を選任する意向を持つマンションが34.6%あり、その理由として役員のなり手不足を挙げる管理組合が42.3%を占めるという調査結果があります。引き受け手が減っている状況で、月に3時間半の手作業を新任の理事に渡し続けるのは、次の担い手を遠ざける方向に働きます。
押印欄が担っていた「回った記録」をどう置き換えるか
回覧板の裏に付いている押印欄やチェック欄は、単なる慣習ではありません。3つの役割を同時に果たしています。
1つ目が、どこまで回ったかを追う機能です。止まっている住戸が一目で分かるので、翌日に声をかけられます。2つ目が、回し忘れの抑止です。次に渡す相手の名前が見えていると、手元に置きっぱなしにしにくくなります。3つ目が、後から「聞いていない」と言われたときの反証です。押印があれば、少なくとも紙は届いていたことになります。
紙をやめると、この3つが同時に消えます。ここを埋めないまま移行すると、半年後に「連絡が来なくなった」という不満が出ます。
代わりに保存するものは、内容の重さで分けてください。読んだかどうかを追う必要がないもの、たとえば季節の案内は、確認の仕組みを付けないでよいものです。全員に届いていることさえ担保できれば足ります。
在宅の依頼や、締切のある回答が要るものは、返事が返ってきた住戸を数える形にします。押印は「見た」の記録ですが、実務で必要なのは「対応した」の記録です。工事のために在宅してもらう必要があるなら、押印よりも希望時間帯の回答が集まっているかのほうが重要です。押印欄の代わりに回答欄を置くと考えると、設計が単純になります。
法的な到達が問題になるもの、つまり総会の招集通知は、掲示と送付の記録で担保します。押印は元々そこまでの証明力を持っていません。掲示した日の写真を残す、発送した日の記録を残す。この2つで足ります。
自治会から預かる配布物という、自分では動かせない部分
マンションの管理組合と、地域の自治会や町内会は、まったく別の団体です。管理組合は区分所有者が全員で構成する団体で、加入も脱退もありません。自治会は任意加入の団体で、入るかどうかを世帯ごとに選べます。この違いを踏まえずに配布物を扱うと、後で揉めます。
よくあるのが、マンション全体で自治会に加入していて、管理費と一緒に自治会費を集め、回覧も管理組合が回しているという形です。この場合、自治会から回ってくる紙は管理組合が作ったものではないので、電子化するかどうかを管理組合だけで決められません。
対応の選択肢は3つあります。1つ目は、自治会に電子での提供を依頼することです。行政の広報誌は、多くの市区町村が電子版を公開しています。紙の配布が難しくなった旨を伝えれば、掲示だけで足りると回答されることもあります。
2つ目は、掲示板への集約です。回覧する代わりに、エントランスの掲示板に1部貼り、必要な人が読める状態にします。募金の依頼や催しの案内は、この形で足りることが多くあります。
3つ目は、集合ポストへの一斉投函です。1部ずつ配る手間はかかりますが、回覧のように止まりません。理事や班長が1日で終わらせられる作業量かどうかで判断してください。
なお、自治会費を管理費と一緒に引き落としている場合は、そもそもその徴収方法が適切かという論点が別にあります。加入が任意である以上、退会した世帯からは徴収できません。回覧の見直しをきっかけに、この整理も一緒に済ませておくと二度手間になりません。
高齢の居住者を置いていかないための組み方
紙をやめる話で最も強い反対が出るのは、ここです。反対そのものは正当なので、真正面から設計してください。
まず、全戸を一律に扱わないと決めます。電子に移すのは配布の主たる経路であって、紙をゼロにすることではありません。希望する住戸には紙を配り続ける形にすると、反対の理由の大半が消えます。実際に紙を希望する住戸を集計すると、想定より少ない数字が出ます。
次に、新しい仕組みを増やさないことを条件にします。年配の会員が最初に詰まるのは操作ではなく、IDとパスワードの管理です。すでに使っているメッセージアプリの延長で読めるのか、新しいアプリを入れる必要があるのか、この違いが導入の成否を分けます。
3つ目に、代理の登録を認めます。同居していない家族が代わりに受け取る形です。離れて暮らす子どもが管理組合の連絡を受け取れると、緊急時の連絡先の把握にもつながります。ただし、区分所有者以外に管理組合の情報を渡すことになるので、どこまでの情報を渡すかは決めておいてください。
4つ目に、切り替えの説明会を1回だけ開きます。総会の後の30分で構いません。実際に画面を見せて、その場で登録まで済ませます。書面の手順書を配るより、この30分のほうが効きます。管理組合の運営に疑問を持ったときの相談先として、マンション管理業者を挙げる区分所有者が71.2%、理事長または理事を挙げる人が45.4%という調査結果があります。詰まったときに聞ける相手が近くにいることを、切り替えの前に示しておいてください。
電子と紙を並走させる期間を、先に決めておく
移行でいちばん失敗しやすいのが、並走の期間を決めずに始めることです。「しばらく両方出します」とだけ言って始めると、2年経っても紙が減りません。理由は単純で、紙が届く限り誰も電子に登録しないからです。
決めるのは3つの日付です。1つ目が、電子での配信を始める日。2つ目が、紙の一律配布をやめて希望制に切り替える日。3つ目が、希望の申し出の締切です。この3つを最初の案内に書いてください。
期間の目安は6か月です。3か月では登録が進まず、1年では緊張感がなくなります。6か月あれば、季節の行事を一巡できるので、電子だけで足りるかどうかの判断材料もそろいます。
並走の間に集めておくデータが2つあります。1つは、電子での配信を受け取れる住戸の数です。全戸に対する割合が7割を超えたら、希望制への移行に踏み切れます。もう1つは、紙を希望する住戸の内訳です。高齢の単身世帯なのか、電子機器を持っていない世帯なのか、単に手続をしていないだけなのか。理由が分かると、残す紙の量が読めます。
並走中に紙を出すときは、同じ内容を同じ日に出してください。紙のほうが数日遅れる運用にすると、「電子だと早く知れる」という不公平感が出て、かえって反発を招きます。速さで差を付けるのではなく、探しやすさと残りやすさで差を付けるのが筋です。
希望制に切り替えた後の紙は、投函の順路を1つにまとめられるように、階と号室を並べた一覧を作っておきます。全戸配布のときは考えなくてよかった作業ですが、10戸から15戸に減ると、順路を決めたほうが早く終わります。
回覧をやめても残る、対面のやりとり
紙をやめる話をすると、必ず「顔を合わせる機会が減る」という懸念が出ます。この指摘は、半分は当たっていて、半分は外れています。
当たっている部分は、手渡しの回覧が持っていた見守りの機能です。隣の住戸に渡すときの一言で、体調の変化や長期の不在に気づくことがあります。特に高齢の単身世帯が多い階では、これが唯一の接点になっている場合があります。マンションの管理組合が将来への不安として挙げる項目は、区分所有者の高齢化が57.6%で最も多く、居住者の高齢化が46.1%と続きます。接点を減らす方向の変更には、代わりの手当が要ります。
一方で外れている部分もあります。集合住宅の回覧は、多くの場合ドアノブに掛けるか、ポストに入れるかで済まされています。手渡しが実際に行われているかを確かめると、思っていたより少ないことがほとんどです。見守りの機能が本当に働いているかは、思い込みではなく現状を確認してから判断してください。
代わりに置ける接点は3つあります。1つ目が、防災訓練です。年1回でも、住戸の在不在と、支援が要る人の所在が把握できます。実際に防災訓練を定期的に実施している管理組合は39.8%です。2つ目が、消防設備の点検です。各住戸に立ち入るので、年に1回か2回、必ず対面の機会が生まれます。3つ目が、共用部分の清掃です。参加は任意でも、出てくる人の顔ぶれで様子が分かります。
紙をやめるときは、この3つのうちどれかを意識的に強化してください。回覧という副産物に頼っていた見守りを、目的を持った行事に移し替える作業です。
紙をやめたあとに起きやすい3つの揉めごと
移行が終わってから出てくる問題も、あらかじめ想定しておくと対処が早くなります。
1つ目が、緊急の連絡と通常の連絡が混ざる問題です。紙のときは、急ぎのものは別に投函するという区別が自然にできていました。電子に移すと全部が同じ場所に並ぶので、断水の告知が季節の案内に埋もれます。急ぎのものだけを別の扱いにする仕組みを、最初から用意してください。
2つ目が、過去のものが探せない問題です。紙のファイルは、めくれば見つかりました。電子に移すと、いつ何を出したかが流れていきます。半年前の工事の案内をもう一度見たい、という要望は必ず出ます。日付順に一覧できる保管場所が要ります。
3つ目が、役員が代わったときに何も引き継がれない問題です。理事会の連絡を個人のメッセージアプリで回していると、退任した人がグループに残り、新しい理事が入れない状態が起きます。管理費の滞納や居住者間のトラブルを扱う以上、退任した人が読み続けられる状態は避けたいところです。連絡の場がメンバー以外は見られない状態で、かつ入れ替えが管理できることが条件になります。
規約を変えるのか、細則で足りるのか
切り替えの実務で最後に引っかかるのが、どのルールを直せばよいのかという点です。ここを間違えると、総会で否決されるか、決めたのに根拠がないという状態になります。
判断の分かれ目は、変更する内容が通知の効力に関わるかどうかです。総会の招集通知をどの方法で発するか、規約や議事録をどこに保管しどう閲覧させるか。これらは規約の事項なので、変えるには規約の変更が要ります。規約の設定、変更、廃止は、区分所有者の過半数かつ議決権の過半数を持つ人が出席したうえで、出席した区分所有者と議決権の各4分の3以上の多数によります。
一方、理事会だよりをどう配るか、行事の案内をどの経路で出すか、掲示物を何日で剥がすかといった運用の細目は、規約の事項ではありません。使用細則を作るか、理事会の申し合わせで足ります。使用細則や協定等がある管理組合は88.5%で、多くは駐車場や専有部分の使い方について定めています。連絡の方法についての細則を持っている管理組合はまだ少数です。
国土交通省が示しているマンション標準管理規約は2025年10月17日付で改正されており、同年に成立した区分所有法の改正を反映しています。自分たちの規約が古い版を写したままなら、連絡の方法だけを直すのではなく、通知や決議に関わる条文をまとめて点検する機会にしてください。規約の改正は総会1回では終わらないので、案文の作成から数えて1年から1年半の日程を見込んでおくと無理がありません。
現在の管理規約の内容を認知している区分所有者は84.8%、購入時に管理規約を読んだ人は79.3%という調査結果があります。読まれてはいるので、変えるときは変更点を1枚にまとめて示せば伝わります。全文を配り直すより、新旧の対照表を1枚作るほうが効きます。
保管場所を選ぶときに見る4つの点
回覧板と紙の配布をやめると決めたら、次は移す先を選ぶ作業です。機能の多さで比べても判断できません。管理組合の事情に照らして見るべきは、次の4点です。
1つ目が、届く相手を分けられるかです。全区分所有者に出すもの、建物内の居住者に出すもの、理事だけで共有するもの。この3つを1つの場所で切り替えられないと、結局は別の手段を併用することになります。
2つ目が、住んでいない区分所有者に届くかです。建物内の掲示は、貸している人には届きません。登録された連絡先に確実に届く経路があるかを確認してください。
3つ目が、引き継ぎの単位です。理事が1年から2年で交代する前提なら、引き継ぐものが1つで済むかどうかで、続くかが決まります。過去の掲示、名簿、写真がばらばらの場所にあると、交代のたびにどれかが失われます。
4つ目が、外の人が入らない作りかどうかです。管理組合の連絡には、住戸番号と個人が結び付く情報が出てきます。誰でも検索して入れる場所には保存できません。
比較の材料としては、日常的に使われているグループチャットとの違いをまとめたLINEグループとの比較、参加者を管理する仕組みが異なるLINEオープンチャットとの比較、掲示と写真の扱いを比べたBANDとの比較が判断の助けになります。公開範囲の考え方が違うFacebookグループとの比較も、公開の線引きを決めるときに参照できます。
運用の形を具体的に見るなら、地域の役員が輪番で回る例をまとめた町内会での使われかたが近い形です。導入の前に出やすい疑問はよくある質問に一覧があります。
紙をやめる作業は、1年がかりの段取りです。第1段階を今年の総会の後に始めれば、来年の総会では紙の量が半分になっています。全部を一度に決めようとせず、自分たちで決められる範囲から順に手を付けてください。
Q1. 管理組合の回覧板を廃止するのに総会の決議は必要ですか?
配布の方法だけを変えるなら、理事会の判断でできる範囲があります。ただし総会の招集通知を掲示や電子で行うことを規約で定めている場合、その定めを変えるには規約の変更が要り、出席した区分所有者と議決権の各4分の3以上の多数が必要です。まず規約に通知の方法がどう書かれているかを確認してください。
Q2. 掲示板の掲示までやめてしまってよいですか?
やめないでください。規約の保管場所の掲示は法律上の義務であり、賃借人など占有者に総会の開催を知らせる掲示も義務です。規約に定めがあれば掲示が招集通知の代わりになり、掲示した時点で到達したとみなされる条文もあります。電子に移すのは各戸へ配っている紙のほうで、掲示板はそのまま残します。
Q3. 自治会から回ってくる広報誌はどう扱えばよいですか?
管理組合が作ったものではないので、自治会や市区町村に相談してから決めます。多くの市区町村が広報誌の電子版を公開しているため、掲示板に1部貼って必要な人が読める状態にする形で足りることがあります。集合ポストへの一斉投函に切り替える方法もあります。
Q4. 紙をやめると高齢の居住者に届かなくなりませんか?
全戸を一律に電子へ移す必要はありません。希望する住戸には紙を配り続ける形にすると、実際に紙を希望する数は全戸の1割前後に収まることが多くあります。新しいIDとパスワードを増やさないこと、離れて暮らす家族の代理登録を認めること、切り替えの説明会を1回開くこと。この3つで大半の不安は解消します。
