講義の文字起こしを調べている人の多くは、録音や録画はすでに手元にあります。困っているのは、その録音が資料として使えていないことです。2時間の講義の録画が10本たまっても、「あの話はどの回のどのあたりだったか」を思い出せなければ、誰も開きません。文字に起こす目的は、原稿を作ることではなく、後から探せる形にすることです。ここでは、録音の前に決めておくこと、章の区切りと時間の印の付け方、固有名詞の直し方、受講者への渡し方までを順に整理します。
録音は増えたのに、聞き直されないまま溜まっていく
講座や教室の運営で、録画を残すことは当たり前になりました。欠席した人のため、復習のため、次の期の準備のため。理由はいくつもあり、録るための手間はほとんどかかりません。
問題は、そのあとに起きます。録画は時間の順に並ぶだけで、中身では並びません。ファイル名に日付と回数が入っていても、話の中身は入っていません。「あの説明をもう一度聞きたい」と思った受講者が、10本の録画の中から該当箇所を見つけるには、心当たりのある回を開いて早送りするしかありません。
これは受講者だけの問題ではありません。運営する側も同じ壁にぶつかります。次の期の案内を作るとき、前の期にどんな質問が出たかを見返したい。教材を直すとき、どの説明でつまずく人が多かったかを確かめたい。どちらも録画のままでは調べようがありません。
文字に起こすと、この壁がひとつ下がります。文字は検索できるからです。ただし、文字にしただけでは半分しか解決しません。2時間の講義の逐語原稿は、そのままでは3万字を超える1本の塊です。塊の中を検索して該当行が見つかっても、その行の前後がどういう話の流れだったのかは分かりません。
必要なのは、文字にすることと、探せる形に整えることの両方です。この二段階を分けて考えると、どこに手間をかけるべきかがはっきりします。文字にするところは、いまは仕組みに任せられます。探せる形にするところは、講義の中身を知っている人でないとできません。運営する側が時間を使うのは、後半だけで足ります。
目的を、記録か配布か検索かで先に分ける
文字起こしを始める前に決めることが1つあります。その原稿を何に使うかです。用途が3つに分かれ、それぞれ求められる精度がまったく違います。
記録として残す場合
後から問い合わせが来たときに確かめるための控えです。読みやすさは要りません。誤変換が多少あっても、検索で引っかかれば役目を果たします。ここに人手をかけるのは無駄になります。自動の文字起こしをそのまま置いておくだけで構いません。
受講者に配る場合
読み物として通用する必要があります。話し言葉の繰り返しを削り、「えー」「あの」を落とし、文の途中で言い直した部分を整える。ここは人の手が要ります。2時間の講義を読める原稿にすると、作業時間は講義そのものより長くなるのが普通です。
検索して使う場合
いちばん費用対効果が高いのがこれです。全文を読ませる前提を捨て、見出しと時間の印だけを人が付ける。原稿そのものは自動のままでよく、探し当てた場所から録画を再生してもらう。作業は1本あたり30分程度で済みます。
3つを同時に満たそうとすると、どれも中途半端になります。講座の性質で選ぶと決まりやすくなります。資格試験の対策講座のように、受講者が何度も戻ってくる講座は検索型。単発の講演を後日に販売するなら配布型。内部の研修や、会の記録として残すだけなら記録型です。
配布型にするかどうかで迷ったときは、受講者が原稿を本当に読むかを考えます。動画がある講座では、文字の原稿を頭から読む人はほとんどいません。読まれない原稿を整えるために何時間も使うより、探せる印を付けて動画に戻してもらうほうが、受講者の役に立ちます。
講義の録音は、会議の録音より条件がよい
文字起こしの精度は、話し方と録音の条件でほぼ決まります。その点で、講義は会議よりずっと有利です。
・ひとりが長く話す。話者が入れ替わる回数が少ない ・話す人の位置が固定されている。マイクとの距離が変わらない ・あらかじめ組み立てられた話なので、言い直しや中断が少ない ・専門用語が繰り返し出てくる。同じ語が何度も出れば、直しも一括でできる
会議の録音で起きる崩れ方、つまり同時に話す人が重なる、遠い席の声が反響に埋もれる、といった問題は、講義ではほとんど起きません。自動の文字起こしでも、そのままで意味が通る原稿になることが多いのはこのためです。
一方で、講義ならではの崩れ方があります。
板書とスライドの内容が原稿に入らない
「ここに書いたとおり」「この図を見てください」という発言だけが残り、何を指していたのかが分かりません。原稿だけを後から読むと、話の筋が切れます。
固有名詞と専門用語が一般語に置き換わる
人名、法令名、商品名、業界で使う略語。これらは一般的な語として解釈されて出てきます。同じ語が何十回も出るため、1か所直せば済む話ではなく、全体の印象を大きく損ないます。
数式や記号を読み上げた部分が意味を成さない
理系の講義や会計の講座では、記号を読み上げた音がそのまま文字になります。この部分は、原稿だけを見ても復元できません。
質疑応答で、質問者の声が拾えない
講師にマイクが付いていても、受講者側にはないことがよくあります。質疑の場面だけ、答えだけが記録されて質問が消えます。
これらは、録音の前の段取りで大半が防げます。次の節でまとめます。
自動では通りにくい講義には、共通点がある
条件がよいとはいえ、すべての講義が自動でうまくいくわけではありません。通りにくい講義には、はっきりした共通点があります。始める前に自分の講座がどれに当たるかを見ておくと、期待の置きどころが決まります。
受講者の発言が多い講義
演習やグループワークが中心の講座では、話者が頻繁に入れ替わり、複数の人が同時に話します。会議の録音と同じ崩れ方をするため、講師の説明部分だけを文字にして、演習の時間は記録の対象外にする、という切り分けが現実的です。
方言や独特の言い回しが多い講義
地域の講座や、ベテランの講師による話では、標準的な言い回しから離れた表現が多く出ます。機械は標準的な言い回しを前提に推測するため、ここで外します。直しの量が読めないので、最初の1回で作業時間を測り、続けるかどうかを判断します。
手を動かしながら説明する実技の講義
料理、手芸、楽器、パソコンの操作。実技の講座では、説明の半分が手の動きで進みます。文字にしても骨格が残りません。この種の講座は、文字起こしより、動画に章の区切りを付けるほうが役に立ちます。
外国語が混ざる講義
日本語と英語が交互に出てくる講義では、言語が切り替わるところで大きく崩れます。片方の言語に固定して処理する仕組みが多いためです。対応している仕組みを選ぶか、言語ごとに分けて処理するかの判断が要ります。
周囲の音が大きい場所での講義
体育館、屋外、機械のある作業場。話し手にマイクを付けられれば解決することが多いので、まずそこを試します。それでも通らない場合は、文字起こしを諦めて、要点を手で書き留める形に切り替えるほうが早く済みます。
自分の講座がこのどれかに当たるなら、全部を文字にしようとしないほうが賢明です。講師が説明している時間帯だけを切り出して処理する。1回の講義から30分だけを取り出す。これで、使える資料は十分に作れます。
録る前に決める4つのこと
1. マイクを話す人に付ける
部屋の中央に置くのではなく、話す人の口元に近い位置に置きます。襟元に付ける形のマイクがあればそれが確実ですが、なければ演台の上、話す人から1メートル以内に置くだけでも結果が変わります。教室を歩き回って話す講師の場合は、手元に持てる形のものを用意します。
2. 資料を指すときに、口で読み上げる決まりにする
「ここ」「これ」で済ませず、「3ページの表の2行目」「図の右下の矢印」と言葉にします。話す側の負担は小さく、原稿の価値は大きく変わります。録画があっても、文字で場所が指定されていれば、その時間に飛べます。
3. 章の区切りを、口頭で宣言する
「ここから2つ目の論点に入ります」と一言入れるだけで、あとで見出しを付ける作業が半分になります。宣言の言葉を毎回そろえておくと、原稿の中を検索して区切りを一気に拾えます。
4. 録音することと、使い道を先に伝える
受講者の発言が入る講義では、録音の目的と配布範囲を開始前に伝えます。「欠席者への共有まで」なのか「後日の販売まで」なのかで、受講者の話し方は変わります。質疑で個人の事情に触れる講座では、質疑の部分だけ録音を止める運用にしている講座もあります。
この4つのうち、効果がいちばん大きいのは2番目です。講義の原稿が使えないものになる原因の大半は、指示語が文字に残ってしまうことだからです。
費用は、年に何時間ぶんを起こすかで決まる
講義は1本が長いので、会議の文字起こしとは費用の効き方が違います。無料の枠は、たいてい講義1本の長さに届きません。
無料の枠がどこまで届くか
Notta のフリープランは、文字起こしが月120分まで、しかも1回につき3分までという制限があります。90分の講義を1本通すことはできません。無料の範囲で回そうとすると、講義を3分ずつに切り分けることになり、現実的ではありません。
有料に上げると、Notta のプレミアムが月払いで1,980円(税込)、文字起こしは月1,800分です。90分の講義なら月20本分に相当します。時間の制限をなくしたビジネスは月4,180円(税込)です。
Rimo Voice は、文字起こしプランが月1,650円(税込)で、文字起こしの時間は無制限とされています。プロプランは月4,950円(税込)です。長い講義を何本も扱うなら、時間で数えなくてよい形のほうが見通しが立ちます。
つまり、講座の運営で自動の文字起こしを使うなら、月あたり1,650円から2,000円程度が実際の入口になります。1期が3か月の講座なら、その期にかかるのは5,000円前後です。
すでに払っているものに含まれていないか
オンラインで講義を配信している場合、使っているアプリに文字起こしが付いていることがあります。Zoom はクラウドに録画したときの文字起こしが対象で、プロ、ビジネス、教育機関向け、エンタープライズのアカウントで使えます。無料のアカウントは対象外です。
Google Meet の文字起こしは、ビジネススタンダード以上、エンタープライズ各種、教育機関向けの上位、個人向けの有料版で使えます。日本語に対応しており、出力は主催者のドライブに保存されます。利用できる端末はパソコンとAndroidに限られます。
新しく契約する前に、いま払っているものに含まれていないかを確かめると、追加の費用がゼロで済むことがあります。
動画の字幕を使う手もある
講義を動画として置いている場合、動画の側の自動字幕を書き出して原稿の下地にする方法があります。YouTube は自動字幕に対応しており、字幕はSubRipやWebVTTといった形式で書き出せます。時間の情報が最初から入っているため、見出しに時間の印を付ける作業がそのまま進みます。
ただし、品質については公式に注意書きがあります。
こうした自動字幕起こしは、機械学習アルゴリズムによって生成されたものであるため、品質にばらつきが出る可能性があります。 出典: support.google.com
同じヘルプには、自動字幕が生成されない原因のひとつとして、複数の人が同時に話していて音声が重なっている場合が挙げられています。講師がひとりで話す講義は、この条件から外れます。講義が自動の文字起こしと相性がよいというのは、ここにも現れています。
人に頼んだ場合の実額
公開されている料金表では、素起こしやケバ取りで1分あたり200円前後、読める文に整える形で1分あたり300円前後が目安です。納期を早めると単価が上がり、特急では1分あたり350円から400円台になります。
これを講義に当てはめると、金額の桁が変わります。120分の講義を素起こしで頼むと24,000円前後、整えた形にすると36,000円前後です。全10回の講座なら、素起こしだけで24万円になります。
判断の目安
講義の文字起こしでは、自動を基本にして、人に頼むのは販売する原稿に限る、という線引きが現実的です。会議と違って話者が1人に固定され、マイクも近いため、自動でも意味が通る原稿になります。直しの手間は、用語の一覧を作れば回を追うごとに減ります。
人に頼む価値があるのは、その原稿自体を商品として売る場合、書籍の原稿にする場合、方言や専門用語が多くて自動では通らない場合の3つです。この3つに当たらないなら、月額の仕組みで回して、浮いた費用を見出しと時間の印を付ける作業に回すほうが、受講者に届くものが増えます。
後から探せる形にする3つの印
文字起こしが終わったあと、運営する側が手を入れるのはここだけです。3つの印を付けると、原稿が資料に変わります。
印1. 見出しを付ける
原稿を上から読み、話題が変わったところで見出しを立てます。講義の中で宣言した区切りがあれば、それをそのまま使います。1本の講義で8個から15個くらいが目安です。見出しの文言は、講師が使った言葉をそのまま採ります。受講者が思い出すときに頭に浮かぶのは、整理された言葉ではなく、その場で聞いた言い回しだからです。
印2. 時間の印を入れる
見出しごとに、録画の何分何秒から始まるかを書き添えます。原稿で場所を見つけた人が、そこから動画に戻れるようにするためです。自動の文字起こしには時間の情報が入っていることが多いので、見出しを立てた行の時間を拾うだけで済みます。
印3. 用語の一覧を作る
その講義で繰り返し出てくる固有名詞と専門用語を、正しい表記で一覧にします。これには2つの効き目があります。ひとつは、自動の文字起こしが間違えた表記を一括で直す手がかりになること。もうひとつは、次の回の文字起こしを始める前に、単語として登録できることです。同じ講座を何期も回すなら、この一覧は回を追うごとに効いてきます。
この3つを付けた原稿は、全文が読まれなくても価値を持ちます。受講者は見出しを見て、必要な箇所の時間を見て、動画に戻ります。運営する側は、過去のどの回でどの話をしたかを検索で引けます。
逆に、この3つを付けずに逐語原稿だけを置いておくと、ほとんど使われません。文字起こしを続けているのに効果を感じない講座は、たいていここで止まっています。
2時間の講義を、1本のまま扱わない
もうひとつ、扱いやすさを大きく左右するのが分け方です。2時間の講義を、2時間のまま1本の原稿と1本の動画で置いておくと、受講者は開くのをためらいます。時間が取れるときにしか手が出せないからです。
分けるときの基準は、時間ではなく話題です。30分で機械的に区切ると、話の途中で切れます。講義の中で立てた見出しに沿って分け、1つが10分から20分に収まるようにします。
分けた単位ごとに、次の3つをそろえます。
・その単位で何が分かるようになるかを、1行で書いた説明 ・その単位に含まれる原稿の部分 ・元の動画の、何分何秒から何分何秒までか
この形にしておくと、受講者は「今日は15分だけ時間がある」というときに、開く単位を選べます。復習の場面では、この選べることが効きます。
運営する側にも利点があります。次の期に教材を組み直すとき、単位ごとに入れ替えたり順番を変えたりできます。2時間の塊のままだと、少し直すにも全体を見直すことになります。
分けたものをどこに並べるかも一緒に決めます。第1回から順に並ぶだけでなく、話題から探せる並べ方があると、受講が終わったあとも使われ続けます。資格試験の対策講座のように、受講者が何度も戻ってくる講座では、この並べ方が講座の評価に直結します。
同じ講座を何期も回すと、作業は回を追うごとに軽くなる
初回の文字起こしは、手間に見合わないと感じることがあります。用語の直しが多く、見出しを立てるのにも時間がかかります。ただ、同じ講座を繰り返し開くなら、この作業は積み上がります。
用語の一覧は、期をまたいで使える
1期目で作った用語の一覧は、2期目にそのまま使えます。文字起こしの仕組みに単語として登録しておけば、2期目の直しは1期目の半分以下になります。
見出しは、教材の目次とそろえられる
1期目で立てた見出しを教材の目次と突き合わせると、話した内容と教材のずれが見えます。ずれているところは、教材を直すか、話し方を変えるかの判断材料になります。2期目からは、教材の目次をそのまま見出しに使えます。
前の期との差分を見られる
同じ回の原稿が2期分あると、説明の量が増えた箇所、削った箇所が分かります。受講者からの質問が多かった論点に時間をかけるようになっているか、自分の講義の変化を確かめられます。
質問の蓄積が、次の教材になる
質疑の部分を期ごとに集めておくと、繰り返し出る質問がはっきりします。同じ質問が3期続けて出るなら、それは講義の説明が足りていない箇所です。教材を直す優先順位は、ここから決まります。
初回の作業を「1本の原稿を作るための手間」と見ると割に合いません。「講座の土台を作るための手間」と見ると、2期目から回収が始まります。何期も続ける予定がある講座なら、初回にきちんと手を入れておく価値があります。
受講者に渡すときに決める3つのこと
渡す範囲を、回ごとに決めるか通しで決めるか
欠席した回だけ渡す形にすると、誰が欠席したかの管理が要ります。全回を全員に渡す形にすると管理は楽ですが、講座の価値が下がると考える運営者もいます。有料の講座では、受講期間中だけ見られる形にして、期間が過ぎたら閉じる運用がよく見られます。
原稿と動画のどちらを主にするか
両方を渡すと、受講者はどちらを見ればよいか迷います。動画を主にして原稿は索引として位置づけるか、原稿を主にして動画は補足にするか、案内の文面で示します。文字で読みたい人と、聞いて覚えたい人は分かれます。両方あること自体は強みですが、使い分けを説明しないと、どちらも使われません。
再配布をどう扱うか
原稿は動画よりはるかに簡単に転送できます。有料の講座では、渡す前に扱いの範囲を伝えておきます。技術的に完全に防ぐことはできないため、閲覧できる人を限れる場所に置き、受講者ごとに配布先が分かる形にしておくのが実際的な対策になります。
渡す形式をそろえる
原稿を渡す形式も、決めておくと問い合わせが減ります。編集できるファイルで渡すと、受講者が書き込んで使える一方、内容が書き換わったものが出回る可能性が残ります。画面で読む形にすると、書き込みはできませんが、内容は固定されます。印刷して配る講座では、1回ぶんが何ページになるかを先に確かめます。120分の講義を整えた原稿は、印刷すると20ページを超えることがあり、配る前提なら分けて渡す形を考えることになります。
受講者から「原稿だけ先にほしい」と言われる場面もあります。動画を見る時間が取れない人ほど、文字で先に全体像をつかみたがります。この要望に応えるには、見出しだけを抜いた1枚を別に用意しておくのが手軽です。見出しの一覧は、原稿に印を付ける作業の副産物として、すでに手元にあります。
もうひとつ、講義の中で他人の資料や書籍を引用した部分の扱いがあります。講義の場で口頭で紹介するのと、文字にして配るのとでは、条件が変わる場合があります。判断は、引用した量、引用元の種類、配る範囲によって変わるため、外部に販売する形を取るなら、引用元や専門家に確かめてから進めるのが確実です。
置き場所を決めないと、探せる形にした意味がなくなる
見出しと時間の印を付けた原稿を作っても、それがどこにあるか分からなければ使われません。講座の運営でよく起きているのは、次の形です。
録画は動画を置くサービスの中。原稿は運営する人のパソコン。受講者への案内はメッセージアプリのグループに流れていて、第3回の原稿を配ったメッセージは、もうスクロールで戻れないところにある。この状態だと、受講者は「前に配ってもらった原稿をもう一度ください」と個別に聞いてくることになり、運営する側の手間が回を追うごとに増えます。
置き場所を選ぶときに確かめるのは、次の3点です。
・回ごとに場所が分かれ、過去の回を日付や回数から開けるか。時間の流れで押し流される形式は、資料を置く場所には向きません ・受講していない人が見られない形になっているか。有料の講座では、メンバー以外は見られないことが前提になります ・運営する人が代わったときに、場所ごと引き継げるか。個人のアカウントに紐づいた保存先は渡せません
連絡と資料を同じ場所に置けるかどうかも、判断の分かれ目です。いま多くの講座が連絡に使っているメッセージアプリは、案内を届ける力は強い一方、資料を日付から探し直す用途には向いていません。その差はLINEグループとの比較で項目ごとに整理されています。受講者どうしが個人の連絡先を交換せずに参加する形については、LINEオープンチャットとの比較が近い論点を扱っています。
回ごとに投稿を分けて資料を積む形の考え方はBANDとの比較、話題ごとに場所を分ける設計はDiscordとの比較にまとめられています。
講座の形によって、必要なものも変わります。毎週決まった曜日に人が集まり、欠席者への共有が繰り返し発生する形は教室での使われかたが近い例です。学年や保護者への説明会の記録を残す形は学校での使われかた、有志の勉強会として続ける形はサークルでの使われかたが参考になります。登録のしかたや資料の扱いについての細かい疑問は、よくある質問にまとめられています。
講義の文字起こしは、原稿を作った時点では半分です。見出しを立て、時間の印を入れ、用語をそろえ、回ごとに開ける場所に置く。この4つがそろって初めて、録音が次の期にも使える資料になります。
Q1. 講義の文字起こしは、自動と人手のどちらを選べばよいですか?
用途で決まります。後から検索するための控えなら、自動のままで十分です。誤変換が残っても、検索で引っかかれば役目を果たします。受講者に読み物として配るなら人手が要り、作業時間は講義そのものより長くなります。迷ったときは、まず自動で起こして見出しと時間の印だけを付け、読まれているかを確かめてから人手をかけるかを判断します。
Q2. 固有名詞や専門用語が違う言葉になってしまいます。どうすればよいですか?
講義では同じ語が何度も出るため、まず正しい表記の一覧を作るのが早道です。一覧があれば、原稿の一括置換で大半が片付きます。あらかじめ単語を登録できる文字起こしサービスでは、次の回の前に登録しておくと、同じ直しを繰り返さずに済みます。同じ講座を何期も回す場合、この一覧は回を追うごとに効いてきます。
Q3. 板書やスライドを指した部分が、原稿だけでは意味が通りません。
録音の前に、資料を指すときは口で読み上げる決まりにしておくのがいちばん効きます。「ここ」ではなく「3ページの表の2行目」と言葉にします。すでに録り終えた分については、原稿に見出しと時間の印を入れ、動画に戻れるようにするのが現実的です。原稿だけで完結させようとすると、作業量が大きく膨らみます。
Q4. 受講者の質問が録音に入っていない場合は、どうしますか?
講師にだけマイクが付いている場では、よく起きます。講師が質問を復唱する決まりにしておくと、答えだけが残る状態を防げます。すでに録り終えた分は、答えの内容から質問を推測して書かず、「質問(音声なし)」と印を残して、答えの部分だけを記録します。推測で書くと、質問した本人の意図と食い違います。