自治会の防災訓練の内容を決めるとき、いちばん困るのは毎年同じことを繰り返している自覚があるのに、何を変えればよいか分からない状態です。消火器を使って、消防署の話を聞いて、炊き出しを食べて解散する。参加者は毎年同じ顔で、数も減っていく。この記事では、訓練の内容を5つの型に分けて整理し、そのうち会の力で変えられるものを選び、参加が集まる段取りと記録の残し方までを並べます。決めるのは役員ですが、判断の材料になる数字と法令の根拠を先に置いておきます。
自治会の防災訓練は、全国でどれだけ行われているか
自分の会の訓練を見直す前に、全国の状況を1つだけ押さえておくと、役員会での説明が楽になります。
消防白書によると、令和6年4月1日現在、全国1,741市区町村のうち1,697市区町村で16万7,233の自主防災組織が設置されています。活動カバー率、つまり全世帯数のうち自主防災組織の活動範囲に含まれている地域の世帯数の割合は、増加傾向にあるとされています。
市区町村からの支援も数字で示されています。令和5年度では、1,024市区町村が資機材の購入費および運営費等に対する補助を実施し、176市区町村が資機材等の現物支給を実施していて、その経費は合計36億907万円にのぼります。
この数字が意味するのは2つです。1つめが、自主防災の活動は例外ではなく、ほとんどの市区町村で組織が作られているということ。2つめが、資機材の購入に補助を出している市区町村が1,024もあるということです。訓練で使う道具を会費から出すつもりで諦めていた会は、まず市区町村の担当課に補助の有無を聞いてください。発電機、簡易トイレ、担架、無線機。これらを会費だけで買う必要はありません。
役員会で「予算が無いから今年も同じ内容で」という話になったときに出せるのは、この2つめの数字です。全国で1,000を超える市区町村が補助を出している以上、自分の市区町村にも制度がある可能性は高いと言えます。
防災訓練の内容は5つの型に分かれる
訓練の内容は、目的で5つに分かれます。この分け方を先に持っておくと、今年何をやるかの議論が短く済みます。
1つめが、安否確認の訓練です。誰が無事か、誰が家に残っているかを確かめて、集約するまでの動きを確かめます。
2つめが、初期消火の訓練です。消火器と消火栓の使い方を身につけます。火災が起きた最初の数分で使える人が何人いるかが結果を変えます。
3つめが、避難と誘導の訓練です。集合場所までの経路を歩き、危ない場所を確かめ、足元の不自由な人をどう連れて行くかを試します。
4つめが、避難所の運営の訓練です。受付をどう作るか、名簿をどう取るか、物資をどう配るか。市区町村の職員が来られない場合を前提にします。
5つめが、生活支援の訓練です。簡易トイレを組み立てて使ってみる、水を運ぶ、炊き出しをする。災害の当日より、その後の数日に効く内容です。
本記事では、企業や自治体、地域団体で活用できる防災訓練について、6つのカテゴリー計20の具体的なアイデアを紹介しています。災害の多い日本では、防災訓練が非常に重要です。避難行動や防災訓練などの基本的なものから、SNSやアプリを活用する現代的なアプローチ、宿泊施設やキャンプ、防災フェスタといったイベント色の強いものまで、全国各地のさまざまな事例を示しています。 出典: asobi-bosai.com
5つ全部を1回の訓練でやる必要はありません。1回の訓練で扱えるのは、多くても2つです。3つ以上を詰め込むと、どれも説明を聞いて終わりになります。今年はこの2つ、来年はこの2つ、と3年で一周する形にすると、内容が毎年変わり、参加する側にも新しさが出ます。
安否確認は、確認したあとまで訓練する
5つの型のうち、いちばん手を入れる価値があるのが安否確認です。多くの会で、ここが形だけになっています。
よくある形は、決めた時間に玄関へ黄色い旗やタオルを出し、班長が歩いて数を数えるというものです。この形自体は良いのですが、数えたあとが抜けています。数えた結果をどこへ届けるのか。誰が集約するのか。集約した結果を誰に渡すのか。ここまでやらないと、災害の日に数字が止まります。
訓練で確かめるべき点は3つです。1つめが、旗が出ていない家をどう扱うかです。留守なのか、中で動けないのか、旗を忘れただけなのか。玄関を叩いて呼びかけるのか、次に回るのか、記録だけ残すのか。会として決めた手順があるかを確かめてください。
2つめが、集約の経路です。班長が数えた紙を、誰にどう渡すのか。歩いて本部まで持っていくのか、電話で伝えるのか、写真を撮って送るのか。当日、電話がつながらない前提で1つ試しておくと、弱点が分かります。
3つめが、集約した数字の使い道です。何世帯中何世帯が無事、残りが誰か。この情報を市区町村や消防に渡す必要があるのか、会の中で持っておくだけでよいのか。渡すなら、どこへどう渡すのかを先に聞いておいてください。
安否確認の訓練は、家を全部回る訓練ではありません。回った結果を集めて、次の判断に使えるところまでが1回分です。旗を出す練習だけで終わっている会は、今年ここを足すだけで内容が変わります。時間は30分ほど増えるだけです。
名簿と個別避難計画は、会の判断より先に制度がある
安否確認を組むとき、必ず出てくるのが名簿の話です。誰が1人暮らしの高齢者か、誰が手助けを必要とするのか。この点については、法令に根拠があるので、会の判断より先に制度を確かめてください。
平成25年の災害対策基本法の改正により、避難行動要支援者名簿の作成が市町村の義務とされました。さらに令和3年の同法の改正により、避難行動要支援者について個別避難計画を作成することが市町村の努力義務とされています。詳しい内容は内閣府の防災情報のページで公開されています。
つまり、名簿は市町村が作るものです。自治会が独自に作る必要はありません。確かめるのは、その名簿が自治会や自主防災組織に提供されているかどうかです。提供されている会では、名簿に載っている世帯を誰が受け持つかを決める作業が訓練の内容になります。提供されていない会では、市町村の担当課に提供の条件を聞くことが最初の一歩です。
個別避難計画についても同じです。1人ひとりについて、誰が助けに行き、どこへ避難し、何が必要かを書いたものです。市町村が作る努力義務を負っていますが、実際に作るには地域の人の協力が要ります。自治会として協力する用意があるかを役員会で決めておくと、市町村から声がかかったときに動けます。
名簿を扱う会では、扱い方も決めてください。誰が保管するか、いつ更新するか、役員が代わるときにどう渡すか。個人の情報が載った紙が引き継ぎのときに行方不明になる事態は避けなければなりません。法律の解釈を会で断定する必要はなく、市町村の担当課の案内に従う形で十分です。
初期消火と資機材は、使える人を増やすことを目標にする
初期消火の訓練は、どの会でもやっています。それでも毎年同じになるのは、目標を決めていないからです。
目標は「使える人を何人にするか」で立ててください。会員が40世帯で、消火器を実際に操作したことがある人が8人なら、今年は12人にする。この形にすると、参加者の数ではなく、操作した人の数を数えることになります。説明を聞いた人の数を数えても増えません。
同じ考え方は、他の資機材にも当てはまります。発電機、投光器、チェーンソー、担架、無線機。防災倉庫に入っている道具のうち、動かせる人が何人いるかを数えてください。多くの会で、動かせるのは倉庫の鍵を持っている1人か2人です。その人が不在の日に災害が起きたら、倉庫は開きません。
倉庫を開けてみる訓練は、内容として軽く見られがちですが、効きます。鍵が合うか、中の道具が動くか、燃料が入っているか、電池が切れていないか。年に1回開けるだけで、いざというときに動かない道具が見つかります。開けずに5年たった倉庫では、発電機の燃料が劣化して動きません。
消防署に依頼する内容も、目標から決めてください。説明を聞くだけの時間を減らし、1人ずつ操作する時間を増やすようお願いすると、対応してもらえる場合があります。市区町村の消防で、事業所向けに段階を分けた訓練の内容と動画を公開しているところもあります。自治会向けにも同じ内容を案内している市区町村があるので、担当課に問い合わせてみてください。
簡易トイレと水の訓練は、当日より後の数日に効く
5つめの型が、いちばん抜けています。災害の当日は緊張で動けますが、困るのはその後の数日です。
簡易トイレは、組み立てて使ってみるところまでやってください。箱から出して組み立てるだけで終わる会が多いのですが、実際に使わないと分からないことが3つあります。1つめが、1回で使う袋と凝固剤の量です。2つめが、使ったあとの袋をどこに集めるかです。3つめが、どこに設置すれば人が並べるかです。集会所のどの部屋を使うのか、屋外に立てるのか。決めていないと、当日は誰も判断できません。
水の訓練も同じです。給水車が来る場所はどこか、運ぶ容器は何を使うか、集会所まで何分かかるか。実際に運んでみると、20リットルの容器を高齢の会員が運べないことが分かります。分かった時点で、小分けの容器を用意するという対策が出てきます。
炊き出しについては、やり方を変えている会があります。大鍋で作って配る形から、各家庭で備蓄している食料を持ち寄って食べる形へ変える。持ち寄る形にすると、自分の家に何が何日分あるかを会員が数える機会になります。備蓄の点検が訓練の内容に組み込まれる形です。
生活支援の訓練は、見栄えがしません。写真に撮っても地味で、来賓に見せる内容にはなりません。それでも、災害のあとに効くのはここです。役員会で内容を決めるとき、見せる訓練と役に立つ訓練のどちらを選ぶかという議論になります。両方を1回に詰め込まず、年によって比重を変えるのが現実的です。
避難と誘導の訓練で確かめる4つの点
避難と誘導の訓練は、集合場所まで歩くだけで終わっている会が多くあります。歩く途中で確かめる点を決めておくと、同じ時間で得られるものが増えます。
1つめが、危ない場所です。倒れそうな塀、割れそうなガラス、落ちそうな看板、狭くて人がすれ違えない道。歩きながら書き留めて、地図に印を付けてください。この地図が会の資料になり、来年の訓練でも使えます。市区町村に補修を求める根拠にもなります。
2つめが、夜と雨の状態です。訓練は晴れた日の昼にやりますが、災害は夜にも起きます。歩いた経路のどこに街灯が無いか、どこに水が溜まるかを確かめてください。確かめた結果から、懐中電灯を各家庭に用意してもらう案内が出てきます。
3つめが、歩く速さの差です。元気な人は10分で着く経路を、杖を使う人は25分かかります。25分かかる人がいる前提で、出発の時刻を決める必要があります。訓練で実測しておけば、当日の判断が変わります。
4つめが、集合場所そのものです。看板があるか、鍵が必要か、雨をしのげるか、トイレがあるか。集合場所として決めていても、行ってみると使えない場所があります。学校の校庭が集合場所なのに、休日は門が閉まっていて入れない会がありました。訓練で気付けば、鍵の管理を市区町村と決められます。
歩く距離は長くなくて構いません。300メートルでも、この4つを確かめれば内容のある訓練になります。距離を伸ばすと高齢の会員が参加できなくなるので、短い経路を丁寧に見るほうが得るものが多くなります。
避難所の運営の訓練は、受付から始める
避難所の運営は、市区町村の職員が来て仕切ってくれると思われがちですが、災害の規模によっては来られません。最初の数時間を地域の人だけで回す前提で組んでください。
最初にやることは受付です。誰が来たかを記録しないと、物資の数も、探している家族への回答も出せません。受付の訓練では、紙の様式を先に用意してください。氏名、住所、世帯の人数、持病や薬の有無、連絡先。この5項目があれば足ります。書く欄を増やすと、行列ができて止まります。
次が場所の割り振りです。集会所や学校の体育館のどこに誰が入るか。世帯ごとに区切るのか、通路をどこに作るのか。床に養生テープで線を引く作業を1回やってみると、思っていたより人が入らないことが分かります。40人が横になれると思っていた部屋に、実際は25人しか入らない場合があります。
物資の配り方も訓練の内容になります。数が足りないときに誰から配るのか。乳児と高齢者を先にするのか、並んだ順にするのか。決めていないと、当日その場で言い争いになります。会として順番を決めて紙に書いておけば、配る側が説明できます。
もう1つ、記録を残す担当を最初に決めてください。何時に何人来て、何を配り、何が足りなかったか。この記録が、市区町村へ支援を求めるときの根拠になります。誰も記録していない避難所は、必要なものを説明できません。
訓練の内容を決めるときに外してはいけない点
内容の議論で意見が割れたとき、判断の軸を3つ持っておくと決まります。
1つめが、会の弱点に当たっているかです。高齢の世帯が多い会なら、消火より安否確認と搬送が先です。木造の住宅が密集している会なら、初期消火が先です。集合住宅が多い会なら、階段での搬送とエレベーターが止まった場合の対応が先です。地形も効きます。川に近い会は水害、坂の多い会は土砂。全国共通の内容から選ぶのではなく、自分の会で起きることから選んでください。
2つめが、やった人の数が増えるかです。説明を聞いて終わる内容は、翌年になると誰も覚えていません。手を動かす内容を1つ以上入れてください。触った記憶は残ります。
3つめが、来年も続けられるかです。1年だけ大きな訓練をやって、翌年から縮むのは避けてください。役員が代わっても同じ規模でやれる内容にしておくほうが、5年たったときに差が出ます。来賓を呼んで規模を大きくした年の翌年に、役員が負担を嫌ってやめた会があります。
この3つで決まらないときは、会員に聞いてください。回覧板に3つの候補を書いて、どれを見たいかを選んでもらう形です。選んでもらうと参加が増えます。役員だけで決めた内容より、自分が選んだ内容のほうが来る理由になります。
避けたいのは、去年の資料をそのまま印刷して日付だけ変えることです。それでも実施すること自体には価値がありますが、5年続けると参加が半分になります。1つだけ変える、を守ってください。
参加が集まらない訓練を、集まる形にする
参加者が減っているという話は、どの会でも出ます。減る理由は3つに絞られます。
1つめが、時間です。日曜の朝9時から2時間という形が多いのですが、この時間は共働きの世帯にとって家事の時間です。1時間に短縮する、開始を10時にする、前日の夕方にする。時間を変えただけで参加が増えた会があります。
2つめが、内容が毎年同じことです。参加した人は、次の年に同じ内容だと分かると来ません。内容を3年で一周させる形にすると、この理由が消えます。
3つめが、子どもが参加できないことです。子どもが参加できる内容があると、保護者がついてきます。消火器の水消火器を使わせる、簡易トイレを組み立てさせる、担架で運んでみる。子どもは道具を触りたがるので、触れる内容を1つ入れるだけで空気が変わります。
集まる形にするために効くのは、訓練を別の行事にくっつけることです。祭りの前の朝に30分だけやる、清掃活動の後に続けてやる、総会の前に15分だけ体験の時間を作る。単独の行事として立てると、参加するかしないかの判断になりますが、すでに集まっている場でやると、その場にいる人が参加者になります。
参加が少なくても続ける価値はあります。8人で始めた訓練が3年で20人になった会があります。逆に、参加者が少ないから今年はやめようと決めた会は、翌年に再開できません。人数が少ない年は内容を1つに絞って、短く終わらせてください。やめないことのほうが効きます。
連絡の訓練を、内容に1つ入れる
5つの型のどれにも入りにくいのに、実際の災害でいちばん効くのが連絡の訓練です。内容に1つ入れてください。
試すことは3つです。1つめが、役員から班長へ、班長から各世帯へ連絡が回るまでの時間です。決めた合図を流して、最後の世帯に届くまで何分かかったかを測ります。測ってみると、想定の倍かかる会が多くあります。2つめが、抜ける経路です。連絡が届かなかった世帯がどこか。留守だったのか、手段が無いのか、名簿が古いのか。3つめが、逆向きの連絡です。各世帯から役員へ、無事を伝える連絡が届くかどうかです。
電話がつながらない前提も1回試してください。災害の直後は通話がつながりにくくなります。文字のやりとりは通りやすいので、文字で回す経路を持っているかが分かれ目になります。ただし、文字の手段を使えない世帯が何軒あるかも同時に数えてください。数えていない会は、届いていると思い込んだまま運営します。
連絡の訓練で見つかる弱点は、たいてい名簿です。転居した世帯が残っている、電話番号が古い、世帯主が代わっている。名簿を直す作業が訓練の成果になります。年に1回、連絡を流すだけで名簿の点検ができると考えてください。
もう1つ、災害のときに何を流すかも決めておいてください。合図の文面を先に作っておく形が確実です。「訓練です。安否確認を行います。玄関に旗を出してください」という定型の文を作っておけば、当日誰でも流せます。文面をその場で考えると、送る人によって内容が変わります。
費用をかけずにできる訓練の内容
予算が無い会でも、費用をかけずにできる内容があります。無料でできることを先に並べておくと、予算の議論で止まらずに済みます。
1つめが、家の中の点検です。家具の固定、寝ている場所の上に落ちるものが無いか、玄関までの経路に物が無いか。紙を1枚配って各家庭で見てもらうだけです。印刷代しかかかりません。
2つめが、避難経路を歩くことです。集合場所まで実際に歩いて、危ない場所を確かめます。塀が倒れそうな場所、水が溜まる場所、夜に暗くなる場所。歩いて見つけた場所を地図に書き込めば、それが会の資料になります。
3つめが、連絡の訓練です。会の連絡の手段が災害の日に使えるかを試します。役員から班長へ、班長から各世帯へ、連絡が回るまでに何分かかるか。実際に1回流してみると、抜ける経路が見つかります。費用はかかりません。
4つめが、消防署や市区町村の出張講座です。救命講習や消火訓練を無料で実施している市区町村があります。資機材の貸し出しも、多くの市区町村で用意されています。会費から出すつもりで諦める前に、担当課に聞いてください。
5つめが、備蓄の点検です。各家庭の食料と水を数えて、何日分あるかを書いてもらう。これも紙1枚で済みます。会で買う備蓄の量を決めるときの材料にもなります。
予算がかかるのは、資機材を買う場合と、業者に依頼する場合だけです。それ以外は、役員の時間と紙で足ります。予算が無いことは、訓練をやらない理由にはなりません。
訓練の段取りは3か月前から始める
内容が決まっても、段取りが詰まると当日が回りません。3か月前から逆算して並べてください。
3か月前にやるのは3つです。内容を2つに絞ること、日程と予備日を決めること、市区町村と消防署へ依頼の連絡を入れること。消防署の日程は埋まりやすいので、いちばん先に押さえてください。
2か月前にやるのは2つです。役員の担当を決めること、必要な道具を数えることです。受付、誘導、記録、資機材の担当を紙に書いて、役員会で配ってください。当日になって誰が何をするか決める会は、開始の30分が空転します。
1か月前にやるのは、案内を出すことです。日時、場所、内容、持ち物、雨天のときの扱い。この5つを1枚に書いて全戸に配ってください。内容を具体的に書くと参加が増えます。「防災訓練を実施します」だけでは、何をするか分からないので来ません。「消火器を1人ずつ使います。簡易トイレを組み立てます」と書いてください。
1週間前にやるのは、道具の点検と最終の案内です。発電機に燃料が入っているか、消火器の期限が切れていないか、旗が足りているか。ここで足りないものが見つかっても、1週間あれば間に合います。
当日にやるのは、記録を残すことです。参加した人数、実際にやった内容、かかった時間、困った点。この4つをその場でメモしてください。終わってから思い出して書くと、困った点が抜けます。
訓練の記録が、来年の内容を決める
訓練が終わったあと、いちばん価値があるのは記録です。記録が無い会は、翌年また同じ内容から始めます。
残すべきものは4つです。1つめが、参加した人数と世帯数です。前年と比べられる形にしてください。2つめが、実際にやった内容です。予定していて時間が足りずにできなかったものも書いてください。3つめが、操作した人の数です。消火器を実際に使った人が何人か。これが年ごとに増えていれば、訓練は効いています。4つめが、来年変えることを1つだけ決めることです。
4つめが最も大事です。訓練の最後に役員で集まって、来年変えることを1つだけ決める。時間を1時間にする、簡易トイレを足す、案内の紙に内容を具体的に書く。1つだけにすると実行されます。5つ挙げた会は、翌年に1つも実行されません。
記録の保存先も決めてください。紙で残して役員のファイルに入れる形は、引き継ぎで行方不明になります。会員が誰でも読める場所に、行事ごとに残る形が理想です。連絡と記録が同じ場所にあると、翌年の役員が去年の案内文をそのまま使えます。町内会での使われかたでは、回覧板と行事の記録を同じ場所に集める運用の形をまとめています。会の連絡が押し流される形のままだと、去年の記録を探す作業から毎年始まります。LINEグループとの比較では、流れる形と1件ずつ残る形の違いを項目ごとに並べています。
いま使っている道具から移るかどうかを検討している会は、比較の項目を絞ってください。役員が代わるときに渡せるか、写真と記録が残るか、会員以外に見られないか。すでに団体向けのアプリを使っている会ならBANDとの比較、個人のアカウントに紐づく場を使っている会ならFacebookグループとの比較が近い比較になります。他の団体の運用を見たい場合はPTAでの使われかたも参考になります。費用や移り方はよくある質問に並んでいます。
最後に1つ。訓練の内容を毎年同じにしている会を責める必要はありません。毎年やっていること自体に価値があります。変えるのは1年に1つで十分です。1つずつ足していけば、5年で内容は別のものになります。
Q1. 自治会の防災訓練は、1回で何種類の内容をやればよいですか?
1回で扱えるのは多くても2つです。安否確認、初期消火、避難と誘導、避難所の運営、生活支援の5つの型のうち2つを選び、3年で一周する形にしてください。3つ以上を詰め込むと、どれも説明を聞くだけで終わります。内容が毎年変わると、参加した人が翌年も来る理由になります。
Q2. 予算が無い会でもできる訓練の内容はありますか?
あります。家の中の点検、避難経路を歩くこと、連絡が回るかを試すこと、備蓄の点検は紙1枚で実施できます。救命講習や消火訓練を無料で実施し、資機材を貸し出している市区町村もあります。消防白書によると令和5年度は1,024市区町村が資機材の購入費や運営費に補助を出しているため、まず担当課に制度の有無を聞いてください。
Q3. 安否確認の訓練は、旗を出すだけでよいのでしょうか?
旗を出して数えるところで止めると、災害の日に数字が止まります。旗が出ていない家をどう扱うか、数えた結果を誰にどう渡すか、集約した数字を市区町村や消防に渡す必要があるか、この3つを確かめるところまでが1回分です。増える時間は30分ほどで、内容は大きく変わります。
Q4. 要支援者の名簿は自治会で作る必要がありますか?
作る必要はありません。平成25年の災害対策基本法の改正により、避難行動要支援者名簿の作成は市町村の義務とされています。令和3年の改正では、個別避難計画の作成が市町村の努力義務になりました。自治会が確かめるのは、その名簿が提供されているか、提供の条件は何かです。市町村の担当課に問い合わせてください。